建設業経理士1級の頻出論点(財務諸表・財務分析・原価計算)
1級は3科目とも、配点の重い第5問と、理論を問う第1問・第2問の組み合わせです。計算の型は科目ごとに固定されているので、「どの型が、どの大問で、どんな形で出るか」を先に知っておくと、過去問を回す効率が上がります。この記事では当サイトが重要度Aとしている論点を科目ごとに取り上げます。
1級 財務諸表の頻出論点
精算表(第5問・36点)
問われ方:整理事項は毎回ほぼ同じ顔ぶれで、機械装置の除却と減損、その他有価証券の償却原価法と税効果、工事進行基準の見積変更、退職給付、貸倒引当金・完成工事補償引当金、法人税等です。3点×12か所の採点とされています。
要点と引っかけ:税効果と法人税等は最後にまとめて処理します。減損は「当期の減価償却を先に行ってから」判定し、除却した資産は判定の対象から外します。工事進行基準で増えた完成工事未収入金を確定させてから貸倒引当金を計算する順番も、毎回同じです。
純資産・持分・株主資本等変動計算書(第1〜4問)
問われ方:理論では持分の概念や株主資本の区分(第38回・第39回)、計算では株主資本等変動計算書の作成、正誤では自己株式や新株予約権の処理が出ます。
要点と引っかけ:自己株式の処分差額はその他資本剰余金、新株予約権の失効は利益、という2つの処理が正誤判定で繰り返し狙われます。配当には利益準備金の積立が伴うことを変動計算書で忘れないようにします。
工事収益の認識・固定資産・有価証券・税効果
工事収益の認識は理論(進行基準と完成基準の意義・適用要件)と精算表の両方で出ます。固定資産は資本的支出と収益的支出の区分、耐用年数の変更を会計上の変更として扱う点が正誤で問われます。有価証券は4分類ごとの評価方法と、その他有価証券の評価差額を税効果控除後の純額で純資産に計上する処理が中心です。税効果会計は精算表で、貸倒引当金の損金不算入額×実効税率を繰延税金資産にする計算が定番です。
企業会計原則・繰延資産・退職給付(理論)
企業会計原則は、正規の簿記の原則と重要性の原則の関係(簿外資産が生じても原則に反しない)、明瞭性の原則の内容が、名称や要件を入れ替えた文で出ます。繰延資産は株式交付費3年以内・社債発行費は償還期間内という償却期間と、月割計算が引っかけです。退職給付会計は、年金基金から支払われた退職金では引当金を減らさない、という正誤が繰り返されています。
1級 財務分析の頻出論点
2期分の財務諸表による諸比率の算定(第5問・30点)
問われ方:別添資料から10個の比率(A〜J)を計算し(2点×10)、分析文の空欄10個を用語・数値群から選びます(1点×10)。分析文のテーマは回ごとに流動性・収益性・生産性などと替わります。
要点と引っかけ:公式の分母に「期中平均」を使う比率(資本利益率・回転率・労働生産性など)と「期末残高」を使う比率(自己資本比率・負債比率など)の区別が最大のポイントです。増減率はプラスなら「X」、マイナスなら「Y」(第39回から。以前はA・B)の記号を付け、数値に符号は付けません。
- 収益性分析:事業利益=経常利益+他人資本利子。ROEを売上高利益率×総資本回転率×財務レバレッジに分解する
- 活動性分析:回転率(回)と回転期間(月)は逆数の関係。受取勘定=受取手形+完成工事未収入金
- 建設業特有の流動性比率:未成工事収支比率は高いほどよく、立替工事高比率は低いほどよい
- 健全性分析(資本構造):有利子負債には社債・新株予約権付社債・コマーシャル・ペーパーを含める
- 生産性分析(付加価値)と設備投資効率:付加価値=完成工事高−(材料費+外注費)。労働装備率の分子から建設仮勘定を除く
- 利益分配性向:配当率は資本金(期中平均)で、配当性向は当期純利益で割る
- キャッシュ・フロー分析:純CF=当期純利益±法人税等調整額+減価償却実施額+引当金増減額−配当の額
財務諸表の空欄推定(第3問・20点)
問われ方:百万円単位のBS・PLの空欄A〜Dを、流動比率・当座比率・固定長期適合比率などの関連データから逆算し、さらに指定された比率を1つ求めます。
要点と引っかけ:流動比率・当座比率は「建設業特有の勘定科目を控除する方法」、固定長期適合比率は「一般的な方法」と注記されるのが通例です。流動性分析の別法(分子から未成工事支出金、分母から未成工事受入金を控除)を使うかどうかを注記で確認してから計算します。
損益分岐点分析・生産性分析(第4問・15点)
3月実施回は損益分岐点分析、9月実施回は生産性分析が続いています。損益分岐点では、建設業の慣行的な区分(固定費=販売費及び一般管理費+支払利息、変動費=完成工事原価+その他営業外費用−営業外収益)で経常利益段階の分析をする点が、一般の管理会計との違いです。安全余裕率には2つの定義があるので、問題の指示に従います。
経営事項審査・成長性(第2問・第5問)
経営事項審査の経営状況分析(Y)の8指標と、X2の利払前税引前償却前利益=営業利益+減価償却実施額は、第5問の分析文で計算させる形が定着しています。成長性分析の増減率は前期を分母にします。
1級 原価計算の頻出論点
完成工事原価報告書の作成と未成工事支出金(第5問・34点)
問われ方:工事ごとの月初未成工事原価に当月発生原価を加え、完成工事の合計を完成工事原価報告書(材料費・労務費・外注費・経費)に集計し、未完成分を月末未成工事支出金とします。材料費の計算(先入先出法・戻り・値引・仮設材料のすくい出し法)、労務費の計算(予定賃率・月給制の期間調整)、経費と人件費の区分(役員報酬の等価係数配賦)が、この大問の中で小問として組み込まれます。
要点と引っかけ:「うち労務外注費」「うち人件費」の内書きは、月初の内書き分も完成工事なら合算します。材料の戻りは出庫の取消しとして次回の払出で最初に出す、購入後の値引はそのロットの単価を下げる、という2つが先入先出法での引っかけです。役員報酬は施工管理と一般管理の従事時間に等価係数を掛けた比率で工事原価分を出します。
設備投資の経済性計算(第4問・18点)
問われ方:税引後キャッシュ・フローを各年で求め、現価係数を掛けて正味現在価値を出し、投資の有利・不利を記号で答えます。取替投資では旧設備の売却収入と売却損による法人税の節約額を初年度のCFに含めます。
要点と引っかけ:税引後CF=(現金収入−現金支出)×(1−税率)+減価償却費×税率。減価償却費そのものは現金支出ではなく、税金を減らす効果だけをCFに加えます。有利X・不利Yなどの記号の付け忘れが失点の典型です。
工事間接費の予定配賦と配賦差異(第3問・第5問)
2級の配賦差異を、予算差異と操業度差異に分ける形で問われます。固定予算と変動予算で予算差異の求め方が変わり、変動予算では「変動費率×実際時間+固定費予算」を予算額とします。第5問の問3では月初の差異残高に当月分を加えた勘定残高を借方A・貸方Bで答える形が続いています。
記述と理論(第1問・第2問)
建設業原価計算の目的・特徴と原価の本質が第1問で最も繰り返されるテーマです。目的は対内的(原価管理・利益計画・意思決定)と対外的(財務諸表・受注関係書類・官公庁提出書類)に分け、原価の本質は『原価計算基準』の4要件(経済価値の消費、給付との関連、経営目的との関連、正常性)で書きます。原価計算制度の理論では、原価計算制度(財務会計と結びついて常時行う)と特殊原価調査(随時・意思決定用)の区別、個別原価計算と総合原価計算の違いが、第2問の正誤・用語選択で出ます。
3科目に共通する学習のコツ
- 記号の付け忘れを最後に点検する。借方A・貸方B、有利X・不利Y、増減率のX・Yなど、金額が合っていても記号がなければ得点になりません。
- 端数処理の指示を問題ごとに読む。%は小数第3位四捨五入、金額は千円未満切り捨て、が多いものの、回によって円未満のこともあります。
- 記述は要点の数で自己採点する。模範解答を丸暗記するのではなく、「定義」「理由」「建設業での扱い」の3つの要点が入っているかで採点します。
- 第4問の周期を見る。財務諸表の第4問は連結・リース・ヘッジ・JVなどが順番に出ており、直近3回で出たテーマは次に出にくい傾向があります。
論点ごとの過去問は、各科目の過去問一覧で論点を選んで解けます。学習の順番は勉強法の記事、科目の組み合わせ方は学習スケジュールの記事にまとめています。
よくある質問
1級で最初に取り組む論点はどれがよいですか?
各科目とも配点30点以上の第5問からです。財務諸表なら精算表、財務分析なら2期分の財務諸表による諸比率の算定、原価計算なら完成工事原価報告書の作成です。型が固定されているので、3回分解けば出題のされ方が分かります。
財務分析の公式はどこまで覚える必要がありますか?
公式サイトで公開されている財務分析主要比率表の算式が出題の根拠です。分母が期中平均か期末残高か、建設業特有の控除(未成工事支出金・未成工事受入金)があるかまで含めて覚えてください。
原価計算の記述はどんなテーマが多いですか?
建設業原価計算の目的と特徴、原価の本質、原価計算制度と特殊原価調査の違い、原価管理(原価企画・原価改善・原価維持)、品質原価やライフサイクル・コストなどです。定義を書いてから建設業での活用に触れる順で書きます。
2級の頻出論点はどこにありますか?
建設業経理士2級の頻出論点は別の記事にまとめています。あわせて読むのリンクからご覧ください。
あわせて読む
出典・参考:検定試験の出題範囲等(建設業振興基金)、過去の試験問題(建設業振興基金)
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