日商簿記3級の重要論点 第1問(仕訳15題)

公開 ・執筆・編集:試験対策プロジェクトチーム(スタジオインサイト)

第1問は、日本商工会議所が公開しているサンプル問題では仕訳15題で、配点は2027年3月31日までの受験(運営調べ)も4月1日以降の受験も45点です。ネット試験では仕訳の勘定科目をプルダウンで選ぶので、差がつくのは科目名を覚えているかより、似た科目(買掛金と未払金、前払金と前払費用など)から正しいほうを選べるかです。この記事では、出題区分表で3級の中心になる取引を論点ごとに並べ、当サイトで重要度Aと見ている論点を中心に、要点と引っかけを書きます。

第1問の形と、この記事の読み方

第1問は、取引の文を読んで仕訳を答える問題です。公開されているサンプル問題の第1問も15題の仕訳でできています。答え方のきまり(金額は数字だけ、1つの設問の中で同じ勘定科目は借方・貸方それぞれ1回まで)は出題方法と答え方にまとめています。

論点の後ろの「重要度」は、出題区分表と、公開されているサンプル問題の問題の形から当サイトが推定したものです。A は特に重要と見ている論点、B はその次に重要と見ている論点、C は出題が少ないと見ている論点です。出題の頻度を数で示すものではありません。

受験する日で変わる論点

論点2027年3月31日までの受験2027年4月1日以降の受験
約束手形・手形貸付金・手形借入金範囲内範囲外(出題区分表から手形の規定がすべて削除)
販売のつど売上原価勘定に振り替える方法範囲外(2級の論点)範囲内(2級から移行)
有形固定資産の除却・廃棄範囲外(2級の論点)範囲内(2級から移行)
減価償却の定率法範囲外(2級の論点)範囲内(簡易な出題)
普通預金(複数の口座の管理を含む)範囲内範囲内(出題区分表に明記)

どちらの範囲を勉強するかは、受験する日で決まります。ネット試験・統一試験・団体試験のどれでも同じです。くわしくは2027年度の改定をご覧ください。

商品売買と代金の受け払い

商品売買(三分法・返品・送料・手付金):重要度A

要点:仕入れのときに当社が払う引取運賃は仕入に含め、売るときに当社が払う送料は発送費にします。手付金は、払った側が前払金、受け取った側が前受金で、商品を受け渡したときに充当します。

引っかけ:手付金を充当するときも、仕入・売上は商品代金の全額で計上し、手付金を差し引くのは買掛金・売掛金のほうです。返品は元の仕訳を逆にするだけで、仕入の返品に売上を使うことはありません。

商品売買の仕訳の要点と例題 →

売掛金・買掛金・クレジット売掛金:重要度A

要点:クレジット払いの売上は、売上を全額で計上し、決済会社への手数料を支払手数料、手数料を引いた残りをクレジット売掛金にします。2027年度の出題区分表では、クレジット売掛金に「キャッシュレス決済を含む」と追記されました。

引っかけ:備品や土地など商品以外の代金を後で受け払いするときは、売掛金・買掛金ではなく未収入金・未払金です。当社負担の振込手数料を差し引かれて入金されても、売掛金は請求額の全額を減らします。

売掛金・買掛金・クレジット売掛金の要点と例題 →

電子記録債権・電子記録債務:重要度B

要点と引っかけ:受け取る側が電子記録債権(資産)、支払う側が電子記録債務(負債)です。売掛金・買掛金を減らすのは発生記録のときで、支払期日の決済では電子記録債権・債務を減らします。相手から発生記録の請求を受けて承諾したときも、当社が支払う側なら電子記録債務です。

電子記録債権・電子記録債務の要点と例題 →

販売のつど売上原価勘定に振り替える方法:重要度B(2027年4月から)

要点と引っかけ:仕入れた商品は商品勘定(資産)に記入し、売るたびに「売上原価/商品」を原価で記入します。売上・売掛金は売価、売上原価・商品は原価なので、1つの取引に2つの金額が出てきます。問題文に記帳方法の指示があれば、それに従います。

販売のつど売上原価に振り替える方法の要点と例題 →

約束手形・手形貸付金・手形借入金:重要度B(2027年3月まで)

要点と引っかけ:振り出したら支払手形、受け取ったら受取手形です。お金の貸し借りに使った手形は、受取手形・支払手形ではなく手形貸付金・手形借入金にします。2027年4月1日以降の受験では出題されません。

約束手形・手形貸付金・手形借入金の要点と例題 →

受取商品券(他者が発行した商品券を代金として受け取ったとき)は重要度Cです。精算しても売上は出てこず、資産の形が変わるだけです(受取商品券・前受金)。

現金・預金

現金・現金過不足:重要度A

要点:期中に帳簿残高と実際有高が合わないときは、帳簿の現金を実際有高に合わせ、差額を現金過不足に置きます。原因が分かったら本来の勘定に振り替え、決算になっても分からない分は雑損・雑益にします。

引っかけ:原因が分かったときに現金をもう一度動かさないこと。郵便為替証書は現金ですが、郵便切手(通信費)と収入印紙(租税公課)は現金ではありません。

現金・現金過不足の要点と例題 →

普通預金・当座預金・当座借越:重要度A

要点:口座の間の振替は、増えた口座が借方、減った口座が貸方です。口座ごとの勘定(「普通預金A銀行」など)を使う指示があれば、それに従います。2027年度の出題区分表では普通預金が明記され、複数の口座の管理も範囲に入りました。

引っかけ:問題文が「普通預金口座から」なのに当座預金を選ぶ、という取り違えです。両方が候補にあっても迷わないように、口座の種類を問題文で確かめてから選びます。

普通預金・当座預金・当座借越の要点と例題 →

小口現金は重要度Cです。小口現金係が支払っただけでは会計係は仕訳せず、支払報告を受けたときに費用を計上し、使った額と同じ額を補給します(小口現金)。

有形固定資産と賃借

有形固定資産の取得・資本的支出:重要度A

要点:取得原価は、購入代価に仲介手数料・登記料・引取運賃・据付費などの付随費用を加えた額です。改修の代金は、価値を高める・耐用年数を延ばす部分が資本的支出(資産に加える)、元に戻す・維持する部分が修繕費です。

引っかけ:固定資産の代金の後払いは未払金で、買掛金ではありません。取得した後に毎年かかる固定資産税は取得原価に含めず、租税公課にします。

有形固定資産の取得の要点と例題 →

有形固定資産の売却:重要度A

要点と引っかけ:取得原価と減価償却累計額を取り消し、売却額と帳簿価額の差を固定資産売却益・売却損にします。期中の売却では、期首から売却した月までの減価償却費を月割で先に計上します。売却代金の後受けは売掛金ではなく未収入金です。

有形固定資産の売却の要点と例題 →

有形固定資産の除却・廃棄:重要度B(2027年4月から)

要点と引っかけ:除却は売却ではないので、固定資産売却損や未収入金は出てきません。まだ売れる見込みの額(見積処分価額)は貯蔵品にし、残りの帳簿価額を固定資産除却損にします。

有形固定資産の除却・廃棄の要点と例題 →

差入保証金・支払家賃・支払手数料:重要度B

要点と引っかけ:店舗などを借りるときの敷金は、返ってくるので差入保証金(資産)、仲介手数料は返ってこないので支払手数料です。解約で敷金が戻るときは差入保証金の全額を減らし、差し引かれた修繕の分を修繕費にします。

差入保証金・支払家賃・支払手数料の要点と例題 →

給料・貸し借り・仮の勘定

給料・預り金・法定福利費:重要度A

要点:給料は差し引く前の総額で計上し、源泉所得税・住民税・社会保険料の従業員負担分は預り金にします。社会保険料を納付したときは、従業員負担分が預り金の減少、会社負担分が法定福利費です。

引っかけ:納付額の全額を法定福利費にしてしまう誤りです。預り金の納付は従業員の分を納めただけなので、租税公課や法人税等にもしません。

給料・預り金・法定福利費の要点と例題 →

貸付金・借入金・利息:重要度A

要点と引っかけ:利息は「元本×年利率×月数÷12」で、期間が1年に満たないのに年利率をそのまま掛けないこと。回収・返済で減らす貸付金・借入金は元本だけです。相手が役員なら役員貸付金・役員借入金を使います。

貸付金・借入金・利息の要点と例題 →

未収入金・未払金・仮払金・仮受金・立替金:重要度A

要点:仮払金は内容や金額が決まっていない支払い(旅費の概算払いなど)、仮受金は内容の分からない入金です。旅費の精算では、使った額ではなく渡した額の全額の仮払金を取り消し、差額を現金などで受け払いします。

引っかけ:仮受金の内容が分かったときに、普通預金をもう一度計上しないこと(入金のときに記録してあります)。商品代金の手付けは仮払金・仮受金ではなく前払金・前受金です。

未収入金・未払金・仮払金・仮受金・立替金の要点と例題 →

税金・貸倒れ・純資産

消費税(税抜方式):重要度A

要点と引っかけ:支払った消費税は仮払消費税、受け取った消費税は仮受消費税で、仕入・売上は税抜きの額です。請求書の合計は税込みなので、証ひょうから仕訳するときは本体と消費税に分けます。消費税の納付は租税公課ではなく、未払消費税の減少です。

消費税の要点と例題 →

法人税等:重要度A

要点と引っかけ:中間申告で納めた額は仮払法人税等にし、まだ法人税等(費用)にはしません。確定申告で納付するときは未払法人税等を減らすだけで、法人税等をもう一度計上しません。法人税・住民税・事業税は租税公課ではなく法人税等です。

法人税等の要点と例題 →

租税公課・貯蔵品:重要度B

要点と引っかけ:収入印紙と固定資産税は租税公課、郵便切手は通信費です。第1問では、前期末に貯蔵品にした切手・印紙を期首に戻す再振替仕訳も問われます。

租税公課・貯蔵品の要点と例題 →

貸倒れ・償却債権取立益:重要度A

要点:前期以前の売上で生じた債権の貸倒れは、貸倒引当金を取り崩し、足りない分を貸倒損失にします。当期の売上で生じた債権の貸倒れは、引当金の残高があっても全額を貸倒損失にします。

引っかけ:前期以前に貸倒れ処理した債権を回収したときは償却債権取立益(収益)で、売掛金は減らしません(すでに帳簿から消してあります)。

貸倒れ・貸倒引当金の要点と例題 →

株式の発行・剰余金の配当:重要度B

要点と引っかけ:3級では、設立・増資で払い込まれた額は問題文の指示どおり全額を資本金にします。配当を決議したときは繰越利益剰余金を減らし、相手は未払配当金と利益準備金です。支払うまでは預金を減らしません。

株式の発行・剰余金の配当の要点と例題 →

書類から読む仕訳・訂正・決算振替

  • 証ひょうからの仕訳(重要度B):請求書・納品書・領収書などを読み、当社が買った側か売った側かを先に決めます。当社が出した書類の控えか、取引先から受け取った書類かで、立場が逆になります。
  • 訂正仕訳(重要度C):誤った仕訳と正しい仕訳を書き出し、差だけを1つの仕訳にします。貸借を逆に記帳したときは金額の2倍で訂正します。
  • 決算振替・帳簿の締切(重要度B):収益は「収益の勘定/損益」、費用は「損益/費用の勘定」です。当期純利益は資本金ではなく繰越利益剰余金に振り替えます。

第1問の解き方と練習のしかた

  1. 当社の立場を決める:買った側か売った側か、払った側か受け取った側か。証ひょうの問題では、書類を出したのがどちらかを最初に確かめます。
  2. 増えたもの・減ったものを書き出す:資産・負債・純資産・収益・費用のどれが増減したかを決めると、借方・貸方が決まります。
  3. 候補の中から科目を選ぶ:似た名前の科目(買掛金と未払金、前払金と前払費用、仮払金と立替金など)が候補にあっても、取引の中身で選びます。
  4. 同じ科目を1行にまとめる:同じ側に同じ科目が2回出るときは合計して1行にします。
  5. 迷ったら飛ばす:第1問の15題に時間をかけすぎると、第3問の時間がなくなります。計算用紙に題の番号を控えて先に進み、最後に戻ります。

練習は、論点ページの例題で考え方を確かめ、仕訳ドリルで数字と取引先が毎回変わる問題を解く順番がおすすめです。答えの数字を覚えてしまうことがなく、取引の読み方そのものを練習できます。仕上げは模擬試験で、第1問の15題を時間を計って解きます。

第2問・第3問の論点は重要論点 第2問・第3問、論点の一覧は論点別の解説にあります。

よくある質問

日商簿記3級の第1問は何題で、何点ですか?

公開されているサンプル問題では仕訳15題で、配点は45点です。2027年4月1日以降の受験は日本商工会議所の公表、2027年3月31日までの受験は運営調べの配点で、どちらも45点です。

第1問で最初に固めるべき論点はどれですか?

当サイトで重要度Aと見ている、商品売買(送料・返品・手付金)、売掛金・買掛金・クレジット売掛金、現金過不足、預金、有形固定資産の取得と売却、給料と預り金、消費税・法人税等、貸倒れです。どれも第3問の決算整理にもつながります。

2027年4月以降に受けるなら、手形は勉強しなくてよいですか?

2027年4月1日以降の受験では、出題区分表から手形の規定がすべて削除されたので出題されません。代わりに、販売のつど売上原価勘定に振り替える方法と、有形固定資産の除却・廃棄、定率法が3級の範囲に入ります。

あわせて読む

出典・参考:出題区分表(2027年度 確定版・日本商工会議所・PDF)(2026-10-30 確認)、3級 サンプル問題(日本商工会議所)(2026-10-30 確認)、ネット試験について(日本商工会議所)(2026-10-30 確認)、2027年度以降の3級の配点(日本商工会議所)(2026-10-30 確認)

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