有形固定資産の売却の仕訳(日商簿記3級)

有形固定資産の売却では、売った資産の取得原価と減価償却累計額を取り消し、売却額と帳簿価額(取得原価−減価償却累計額)の差を固定資産売却益または固定資産売却損にします。3級では、期首の売却と、期中の売却(期首から売却日までの減価償却費を月割で計上する)が問われます。

出題:第1問・第2問 科目の確かめ:勘定科目一覧

要点

  • 帳簿価額=取得原価−減価償却累計額。期中の売却では、さらに当期分の減価償却費を引きます。
  • 売却額が帳簿価額より多ければ固定資産売却益(収益)、少なければ固定資産売却損(費用)です。
  • 間接法では、備品などの勘定は取得原価のまま残っています。売却したら取得原価で貸方に書き、減価償却累計額は借方に書いて消します。
  • 期中に売却したときは、期首から売却した月までの減価償却費(費用)を月割で計上します。
  • 代金を後で受け取るときは未収入金(資産)です。売掛金は商品の掛け売りだけに使います。
売却のときの帳簿価額
売却した時当期の減価償却費帳簿価額
期首計上しない取得原価 − 期首の減価償却累計額
期中期首から売却日までを月割で計上取得原価 − 期首の減価償却累計額 − 当期の減価償却費

3級の出題区分表(2027年度)では、減価償却の記帳は間接法です。資産の勘定を直接減らす直接法は2級の欄にあります。参考までに、直接法では資産の勘定がすでに帳簿価額になっているので、売却の仕訳に減価償却累計額は出てきません。

仕訳のパターン

場面借方貸方
期首に売却(売却益)減価償却累計額 ××/未収入金 ××備品 ××/固定資産売却益 ××
期首に売却(売却損)減価償却累計額 ××/未収入金 ××/固定資産売却損 ××備品 ××
期中に売却減価償却累計額 ××/減価償却費 ××/普通預金 ××(/固定資産売却損 ××)備品 ××(/固定資産売却益 ××)
売却代金を後で受け取った普通預金 ××未収入金 ××

例題

例題1

期首に、備品(取得原価 ¥640,000、減価償却累計額 ¥384,000、間接法(備品減価償却累計額勘定)で記帳)を ¥290,000 で売却し、代金は翌月末に受け取ることとした。

答えと解説
借方科目金額貸方科目金額
備品減価償却累計額384,000備品640,000
未収入金290,000固定資産売却益34,000
  1. 備品の取得原価 ¥640,000 を貸方、減価償却累計額 ¥384,000 を借方に書いて取り消す。
  2. 期首の売却なので当期の減価償却費は無い。帳簿価額は ¥640,000 − ¥384,000 = ¥256,000。
  3. 売却額 ¥290,000 − 帳簿価額 ¥256,000 = ¥34,000 の固定資産売却益(収益)。代金は後で受け取るので未収入金 ¥290,000。

ひっかけ:備品の売却代金を売掛金にしない。売掛金は商品の掛け売りだけ。

例題2

X5年4月1日(期首)に、X2年4月1日に取得した備品(取得原価 ¥900,000)を ¥330,000 で売却し、代金は普通預金口座に振り込まれた。この備品は定額法(残存価額ゼロ、耐用年数 5 年)で毎期償却し、間接法(備品減価償却累計額勘定)で記帳している。決算日は毎年3月31日である。

答えと解説
借方科目金額貸方科目金額
備品減価償却累計額540,000備品900,000
普通預金330,000
固定資産売却損30,000
  1. X2年4月1日からX5年3月31日までの3年分が償却ずみ。1年分は ¥900,000 ÷ 5 年 = ¥180,000 なので、減価償却累計額は ¥180,000 × 3 年 = ¥540,000。
  2. 帳簿価額は ¥900,000 − ¥540,000 = ¥360,000。
  3. 売却額 ¥330,000 は帳簿価額より ¥30,000 少ないので、固定資産売却損(費用)¥30,000。

ひっかけ:取得した年度から数えて何年分を償却したかを、前期末(X5年3月31日)までで数える。

例題3

X1年9月30日に、備品(取得原価 ¥1,200,000、期首の減価償却累計額 ¥450,000、間接法(備品減価償却累計額勘定)で記帳)を ¥580,000 で売却し、代金は翌月末に受け取ることとした。なお、会計期間は X1年4月1日から X2年3月31日までの1年であり、減価償却は定額法(残存価額ゼロ、耐用年数 8 年)により、当期分は月割で計上する。

答えと解説
借方科目金額貸方科目金額
備品減価償却累計額450,000備品1,200,000
減価償却費75,000
未収入金580,000
固定資産売却損95,000
  1. 当期首(4月1日)から売却日(9月30日)までは6か月。減価償却費は ¥1,200,000 ÷ 8 年 × 6 か月 ÷ 12 か月 = ¥75,000。
  2. 帳簿価額は ¥1,200,000 − ¥450,000 − ¥75,000 = ¥675,000。
  3. 売却額 ¥580,000 は帳簿価額より ¥95,000 少ないので、固定資産売却損 ¥95,000。代金は後で受け取るので未収入金。

ひっかけ:期中の売却で当期分の減価償却費を忘れると、売却損が ¥170,000 になってしまう。

例題4

X3年12月31日に、営業用の自動車(取得原価 ¥2,400,000、期首の減価償却累計額 ¥1,200,000)を ¥1,000,000 で売却し、代金は普通預金口座に振り込まれた。会計期間は4月1日から3月31日までの1年で、減価償却は定額法(残存価額ゼロ、耐用年数 6 年)により月割で計算し、間接法(車両運搬具減価償却累計額勘定)で記帳している。

答えと解説
借方科目金額貸方科目金額
車両運搬具減価償却累計額1,200,000車両運搬具2,400,000
減価償却費300,000固定資産売却益100,000
普通預金1,000,000
  1. 当期首(X3年4月1日)から売却日(12月31日)までは9か月。減価償却費は ¥2,400,000 ÷ 6 年 × 9 か月 ÷ 12 か月 = ¥300,000。
  2. 帳簿価額は ¥2,400,000 − ¥1,200,000 − ¥300,000 = ¥900,000。
  3. 売却額 ¥1,000,000 は帳簿価額より ¥100,000 多いので、固定資産売却益(収益)¥100,000。

ひっかけ:累計額の勘定は問題文の指示どおり車両運搬具減価償却累計額にする。

例題5

先月売却した備品の代金 ¥290,000 が、普通預金口座に振り込まれた。

答えと解説
借方科目金額貸方科目金額
普通預金290,000未収入金290,000
  1. 売却したときに計上した未収入金(資産)を回収したので、貸方で減らす。
  2. 普通預金が増えたので、借方は普通預金 ¥290,000。

ひっかけ:貸方を売掛金にしない。売却のときに計上したのは未収入金。

この論点をランダム仕訳で練習(問題の型 3 種類。数字と取引先が毎回変わります)

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まちがえやすい点

  • 期中の売却では、期首から売却した月までの減価償却費を月割で先に計上し、その後で帳簿価額と売却損益を出します。
  • 売却代金の後払い・後受けは未収入金です。売掛金にしません。
  • 減価償却累計額を消し忘れない。間接法では、資産の勘定は取得原価で貸方に書きます(帳簿価額で書かない)。
  • 売却益と売却損を逆にしない。売却額>帳簿価額が売却益、売却額<帳簿価額が売却損です。
  • 使わなくなった資産を売らずに帳簿から外すのは除却です(除却・廃棄)。

減価償却費の計算は減価償却、資産ごとの記録は固定資産台帳のページで扱います。

よくある質問

期中に売却したとき、減価償却費はいつまでの分を計上しますか?

期首から売却した日(月)までの分を月割で計上します。期首が4月1日で9月30日に売却したなら6か月分です。

固定資産の売却代金を後で受け取るときは売掛金ですか?

いいえ、未収入金です。売掛金は商品を掛けで売ったときだけに使います。

直接法で記帳した資産の売却は3級で出ますか?

2027年度の出題区分表では、3級の減価償却は間接法とされ、直接法は2級の欄にあります。3級は間接法の形で練習します。

出典:日本商工会議所「商工会議所簿記検定試験出題区分表」(2027年度 確定版)(2026-10-29 確認)

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