決算振替・帳簿の締切(日商簿記3級)
決算振替とは、決算で収益と費用の勘定の残高を損益勘定に集めて当期純損益を出し、それを繰越利益剰余金勘定に移す手続きです。日商簿記3級では、損益勘定への振替仕訳、当期純利益・当期純損失の振替仕訳と、総勘定元帳の締切(英米式決算法)が問われます。
要点
- 収益の勘定は貸方に残高があるので、借方に記入して損益勘定の貸方へ移します(収益の勘定/損益)。
- 費用の勘定は借方に残高があるので、貸方に記入して損益勘定の借方へ移します(損益/費用の勘定)。三分法では、決算整理で売上原価を出した後の仕入勘定の残高を振り替えます。
- 損益勘定の貸方(収益)が多ければ当期純利益、借方(費用)が多ければ当期純損失です。
- 当期純利益は繰越利益剰余金(純資産)を増やし、当期純損失は減らします。
- 法人税等も費用として損益勘定に振り替えます。損益勘定の差額は、法人税等を差し引いた後の当期純損益です。
仕訳のパターン
| 場面 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 収益を損益勘定へ振り替えた | 売上 ××・受取手数料 ×× | 損益 ×× |
| 費用を損益勘定へ振り替えた | 損益 ×× | 仕入 ××・給料 ×× |
| 当期純利益を振り替えた | 損益 ×× | 繰越利益剰余金 ×× |
| 当期純損失を振り替えた | 繰越利益剰余金 ×× | 損益 ×× |
帳簿の締切(英米式決算法)
- 収益・費用の勘定は、損益勘定へ振り替えると残高が 0 になるので、借方と貸方の合計をそろえて締め切ります。
- 資産・負債・純資産の勘定は、振替の仕訳をしません。残高を「次期繰越」と記入して締め切り、翌期の最初に「前期繰越」と記入します(開始記入)。
- 次期繰越・前期繰越は、仕訳帳を通さずに総勘定元帳に直接記入します。
| 勘定 | 締め切り方 | 翌期の最初 |
|---|---|---|
| 収益・費用 | 損益勘定へ振り替えて締め切る | 残高 0 から始まる |
| 資産 | 貸方に「次期繰越」 | 借方に「前期繰越」 |
| 負債・純資産 | 借方に「次期繰越」 | 貸方に「前期繰越」 |
例題
例題1
決算にあたり、売上勘定の残高 ¥5,200,000 と受取手数料勘定の残高 ¥80,000 を損益勘定に振り替えた。
答えと解説
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売上 | 5,200,000 | 損益 | 5,280,000 |
| 受取手数料 | 80,000 |
- 収益の勘定は貸方に残高があるので、借方に記入して残高を 0 にする。
- 合計 ¥5,200,000 + ¥80,000 = ¥5,280,000 を損益勘定の貸方に記入する。
ひっかけ:収益の振替で損益を借方にしない。
例題2
決算にあたり、仕入勘定の残高 ¥3,100,000(売上原価を算定した後の額)、給料勘定の残高 ¥900,000、支払家賃勘定の残高 ¥480,000 を損益勘定に振り替えた。
答えと解説
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 損益 | 4,480,000 | 仕入 | 3,100,000 |
| 給料 | 900,000 | ||
| 支払家賃 | 480,000 |
- 費用の勘定は借方に残高があるので、貸方に記入して残高を 0 にする。
- 合計 ¥3,100,000 + ¥900,000 + ¥480,000 = ¥4,480,000 を損益勘定の借方に記入する。
ひっかけ:繰越商品(資産)は損益勘定に振り替えない。
例題3
決算において、損益勘定の貸方合計(収益)は ¥5,280,000、借方合計(費用)は ¥4,480,000 となった。当期純損益を繰越利益剰余金勘定に振り替える。
答えと解説
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 損益 | 800,000 | 繰越利益剰余金 | 800,000 |
- 収益が多いので、差額 ¥5,280,000 − ¥4,480,000 = ¥800,000 は当期純利益。
- 損益勘定の貸方残高を 0 にするため借方に損益、貸方に繰越利益剰余金(純資産の増加)を記入する。
ひっかけ:当期純利益を資本金や利益準備金に振り替えない。
例題4
決算において、損益勘定の貸方合計(収益)は ¥3,600,000、借方合計(費用)は ¥3,750,000 となった。当期純損益を繰越利益剰余金勘定に振り替える。
答えと解説
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 繰越利益剰余金 | 150,000 | 損益 | 150,000 |
- 費用が多いので、差額 ¥3,750,000 − ¥3,600,000 = ¥150,000 は当期純損失。
- 損益勘定の借方残高を 0 にするため貸方に損益、借方に繰越利益剰余金(純資産の減少)を記入する。
ひっかけ:純損失のときは、純利益のときと貸借が逆になる。
例題5
決算で計上した法人税等 ¥240,000 を損益勘定に振り替えた。
答えと解説
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 損益 | 240,000 | 法人税等 | 240,000 |
- 法人税等は費用の勘定で、借方に残高がある。
- 貸方に法人税等を記入して残高を 0 にし、損益勘定の借方に移す。
ひっかけ:未払法人税等(負債)は振り替えない。振り替えるのは費用の法人税等。
この論点をランダム仕訳で練習(問題の型 2 種類。数字と取引先が毎回変わります)
まちがえやすい点
- 収益と費用の振替で貸借を逆にする(収益は「収益の勘定/損益」、費用は「損益/費用の勘定」)
- 資産・負債の勘定まで損益勘定に振り替える(振り替えるのは収益・費用の勘定だけです)
- 当期純利益を資本金に振り替える(繰越利益剰余金に振り替えます)
- 当期純損失のときも「損益/繰越利益剰余金」にする(損失のときは逆です)
- 繰越商品を損益勘定に振り替える(三分法の売上原価は仕入勘定で算定し、仕入勘定の残高を振り替えます)
2027年度の改定でも、決算振替と帳簿の締切の範囲は変わりません。配当や利益準備金は株式の発行・剰余金の配当、法人税等の計上は法人税等の仕訳、建設業経理士2級の同じ論点は決算整理・経過勘定・帳簿の締切をご覧ください。
よくある質問
損益勘定とは何ですか?
決算で収益と費用の勘定の残高を集めて、当期純損益を計算するための勘定です。貸方に収益、借方に費用が集まり、その差額が当期純利益または当期純損失です。
当期純利益はどの勘定に振り替えますか?
繰越利益剰余金勘定です。当期純利益なら貸方(増加)、当期純損失なら借方(減少)に記入します。
資産や負債の勘定も損益勘定に振り替えますか?
振り替えません。資産・負債・純資産の勘定は残高を次期繰越として締め切り、翌期に前期繰越として引き継ぎます(英米式決算法)。
出典:日本商工会議所「商工会議所簿記検定試験出題区分表」(2027年度適用・確定版)(2026-10-29 確認)
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