有形固定資産の取得の仕訳(日商簿記3級)

有形固定資産は、建物・備品・車両運搬具・土地のように、1年を超えて営業に使う形のある資産です。取得したときは、購入代価に仲介手数料・登記料・引取運賃・据付費などの付随費用を加えた額(取得原価)で記録します。3級では、付随費用の扱い、代金の後払い(未払金)、改良(資本的支出)と修繕費の区分が問われます。

出題:第1問・第2問 科目の確かめ:勘定科目一覧

要点

  • 建物・備品・車両運搬具・土地は資産です。取得したら借方に書きます。
  • 取得原価=購入代価+付随費用。付随費用は、その資産を使える状態にするまでにかかった費用です(仲介手数料、登記料、引取運賃、据付費、試運転費など)。
  • 付随費用は、支払手数料・租税公課・発送費などの費用にしません。資産の取得原価に含めます。
  • 商品ではない物の代金を後で払うときは未払金(負債)です。買掛金は商品を仕入れた代金の後払いだけに使います。
  • 取得した後の支出は2つに分けます。価値を高める・使える年数を延ばす支出(資本的支出)はその資産の取得原価に加え、元の状態に戻す・維持する支出(収益的支出)は修繕費(費用)にします。
取得のときに使う勘定科目
勘定科目区分例
建物資産店舗・事務所・倉庫
備品資産机・いす・パソコン・陳列棚・複合機
車両運搬具資産トラック・営業用の自動車
土地資産店舗の敷地・駐車場の用地(減価償却しない)
未払金負債固定資産の代金の後払い
修繕費費用修理・塗り替えなど、元の状態に戻す支出

仕訳のパターン

場面借方貸方
付随費用を含めて購入し、普通預金口座から支払った建物など ××(購入代価+付随費用)普通預金 ××
代金の一部を後払いにした備品 ××普通預金 ××/未払金 ××
後払いにした代金を支払った未払金 ××普通預金 ××
改修した(改良分と修繕分がある)建物 ××(改良分)/修繕費 ××(修繕分)普通預金 ××(後払いなら未払金)
土地付きの建物を購入した建物 ××/土地 ××普通預金 ××

2027年度の範囲では、小切手の振出しによる支払いは出題されない見込みです。当サイトの問題では、支払いを普通預金口座からの振込などで出題します(2027年度の改定)。

例題

例題1

事務用の机といすを ¥380,000 で購入し、代金は普通預金口座から支払った。なお、引取運賃 ¥8,000 と据付費 ¥12,000 は現金で支払った。机といすは備品として処理する。

答えと解説
借方科目金額貸方科目金額
備品400,000普通預金380,000
現金20,000
  1. 引取運賃と据付費は、備品を使える状態にするまでの付随費用なので、取得原価に含める。
  2. 備品の取得原価は ¥380,000 + ¥8,000 + ¥12,000 = ¥400,000。
  3. 支払いは、本体の代金 ¥380,000 が普通預金、付随費用 ¥8,000 + ¥12,000 = ¥20,000 が現金。

ひっかけ:引取運賃を発送費にしない。発送費は商品を売るときに先方へ送る費用です。

例題2

駐車場の用地として土地 250㎡ を 1㎡あたり ¥36,000 で購入し、代金は仲介手数料 ¥270,000 とともに普通預金口座から支払った。また、登記料 ¥90,000 と整地費用 ¥140,000 は現金で支払った。

答えと解説
借方科目金額貸方科目金額
土地9,500,000普通預金9,270,000
現金230,000
  1. 土地の購入代価は 250㎡ × ¥36,000 = ¥9,000,000。
  2. 仲介手数料 ¥270,000、登記料 ¥90,000、整地費用 ¥140,000 はすべて付随費用。土地の取得原価は ¥9,000,000 + ¥270,000 + ¥90,000 + ¥140,000 = ¥9,500,000。
  3. 普通預金から ¥9,000,000 + ¥270,000 = ¥9,270,000、現金で ¥90,000 + ¥140,000 = ¥230,000 を支払った。

ひっかけ:仲介手数料を支払手数料、登記料を租税公課にしない。土地を使える状態にするための整地費用も土地に含める。

例題3

営業用の自動車 ¥2,450,000 を購入し、代金のうち ¥1,000,000 は普通預金口座から支払い、残額は翌月末に支払うこととした。

答えと解説
借方科目金額貸方科目金額
車両運搬具2,450,000普通預金1,000,000
未払金1,450,000
  1. 営業用の自動車は車両運搬具(資産)。取得原価は ¥2,450,000。
  2. 普通預金から支払った ¥1,000,000 は普通預金の減少。
  3. 残りの ¥2,450,000 − ¥1,000,000 = ¥1,450,000 は、商品以外の物の代金の後払いなので未払金(負債)。

ひっかけ:固定資産の代金の後払いを買掛金にしない。自動車は備品ではなく車両運搬具。

例題4

先月に購入した営業用の自動車の代金のうち、未払いになっていた ¥1,450,000 を普通預金口座から支払った。

答えと解説
借方科目金額貸方科目金額
未払金1,450,000普通預金1,450,000
  1. 購入したときに計上した未払金(負債)を、支払ったので借方で減らす。
  2. 普通預金から支払ったので、貸方は普通預金 ¥1,450,000。

ひっかけ:支払ったときに車両運搬具をもう一度計上しない。資産は購入したときに計上ずみ。

例題5

店舗の建物の改修工事を行い、代金 ¥1,800,000 を普通預金口座から支払った。工事のうち ¥1,200,000 は建物の耐用年数を延ばす改良であり、残額は外壁の塗り直しなど現状を維持するための支出である。

答えと解説
借方科目金額貸方科目金額
建物1,200,000普通預金1,800,000
修繕費600,000
  1. 耐用年数を延ばす改良の ¥1,200,000 は資本的支出なので、建物(資産)に加える。
  2. 現状を維持するための ¥1,800,000 − ¥1,200,000 = ¥600,000 は収益的支出なので、修繕費(費用)。
  3. 代金は普通預金から支払った。

ひっかけ:改修の代金をまとめて修繕費(または建物)にしない。問題文の「改良」「価値を高める」「耐用年数を延ばす」が資本的支出の目印。

例題6

店舗として使う土地付きの建物を購入し、代金 ¥32,000,000(うち建物 ¥18,000,000、土地 ¥14,000,000)と仲介手数料 ¥960,000 を普通預金口座から支払った。なお、仲介手数料は建物と土地の代金の比で配分する。

答えと解説
借方科目金額貸方科目金額
建物18,540,000普通預金32,960,000
土地14,420,000
  1. 仲介手数料 ¥960,000 を、建物 ¥18,000,000 と土地 ¥14,000,000 の比(9:7)で分ける。建物分は ¥960,000 × 9 ÷ 16 = ¥540,000、土地分は ¥960,000 × 7 ÷ 16 = ¥420,000。
  2. 建物の取得原価は ¥18,000,000 + ¥540,000 = ¥18,540,000、土地の取得原価は ¥14,000,000 + ¥420,000 = ¥14,420,000。
  3. 支払いの合計は ¥32,000,000 + ¥960,000 = ¥32,960,000。

ひっかけ:土地付きの建物でも、建物(減価償却する)と土地(減価償却しない)は分けて記録する。

この論点をランダム仕訳で練習(問題の型 3 種類。数字と取引先が毎回変わります)

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まちがえやすい点

  • 付随費用(仲介手数料・登記料・引取運賃・据付費・整地費用)を、支払手数料・租税公課・発送費にしない。取得原価に含めます。
  • 固定資産の代金の後払いは未払金です。買掛金にしません(買掛金は商品の仕入れだけ)。
  • 改修の代金は、改良(資本的支出)と修繕(収益的支出)に分けます。「価値を高める」「耐用年数を延ばす」は資本的支出、「元に戻す」「維持する」「定期的な修繕」は修繕費の目印です。
  • 土地は減価償却しません。土地付きの建物を買ったときは、建物と土地を分けて記録します。
  • 取得した後に毎年かかる固定資産税は、取得原価に含めず租税公課(費用)にします。

取得した資産のその後は、減価償却・有形固定資産の売却・除却・廃棄・固定資産台帳のページで扱います。

よくある質問

固定資産を買ったときの仲介手数料は支払手数料ですか?

いいえ、その資産の取得原価に含めます。支払手数料(費用)にするのは、銀行の振込手数料や、部屋を借りるときの仲介手数料のように、資産の取得原価にならない手数料です。

資本的支出と収益的支出はどう見分けますか?

その支出で資産の価値が高まる、または使える年数が延びるなら資本的支出で、資産の取得原価に加えます。壊れた所の修理や定期的な手入れのように元の状態を保つための支出は収益的支出で、修繕費にします。

固定資産の代金の後払いは買掛金ですか?

いいえ、未払金です。買掛金は商品を仕入れた代金の後払いだけに使います。

出典:日本商工会議所「商工会議所簿記検定試験出題区分表」(2027年度 確定版)(2026-10-29 確認)

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