販売のつど売上原価に振り替える方法の仕訳(日商簿記3級)
販売のつど売上原価勘定に振り替える方法(売上原価対立法とも呼ばれます)は、仕入れた商品を商品勘定(資産)に記入し、売ったつど、その原価を商品勘定から売上原価勘定(費用)へ振り替える記帳方法です。2027年4月からの試験で2級から3級に移ります。販売の仕訳で、売上と同時に「売上原価/商品」を記入できるかが問われます。
要点:使う勘定と考え方
- 商品(資産):仕入れたときに増やし、売ったとき・返品したときに原価で減らします。引取運賃など当社負担の仕入諸掛も商品の原価に含めます。
- 売上原価(費用):売った商品の原価です。販売のたびに商品勘定から振り替えます。
- 売上(収益):三分法と同じく、売価で記入します。
- この方法では、仕入勘定と繰越商品勘定は使いません。
販売のたびに原価が分かるので、決算で売上原価を計算するための決算整理仕訳(三分法の「仕入/繰越商品」「繰越商品/仕入」)は要りません。期末の商品勘定の残高が、そのまま期末に残っている商品の原価になり、貸借対照表に「商品」として表示します。売った商品の原価は、商品有高帳(先入先出法・移動平均法)の払出しの金額と一致します。
三分法との違い
| 場面 | 三分法 | 販売のつど売上原価に振り替える方法 |
|---|---|---|
| 商品を掛けで仕入れた | 仕入/買掛金 | 商品/買掛金 |
| 商品を掛けで売り渡した | 売掛金/売上 | 売掛金/売上 と 売上原価/商品(原価で) |
| 決算(売上原価の計算) | 仕入/繰越商品、繰越商品/仕入 | 仕訳なし(売上原価は計上済み) |
| 期末の商品の勘定 | 繰越商品 | 商品 |
例えば、期首の商品 ¥50,000、当期の仕入 ¥300,000、期末の商品 ¥70,000 なら、どちらの方法でも売上原価は ¥280,000 です。三分法は決算でまとめて計算し、この方法は販売のつど ¥280,000 になるまで積み上げていきます。
仕訳のパターン
| 場面 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 商品を仕入れた(引取運賃は含める) | 商品 ×× | 買掛金 ××・現金 ×× |
| 商品を売り渡した | 売掛金 ××(売価)・売上原価 ××(原価) | 売上 ××(売価)・商品 ××(原価) |
| 売り渡した商品が返品された | 売上 ××(売価)・商品 ××(原価) | 売掛金 ××(売価)・売上原価 ××(原価) |
| 仕入れた商品を返品した | 買掛金 ×× | 商品 ×× |
例題
例題はすべて「商品売買は販売のつど売上原価勘定に振り替える方法で記帳している」ものとします。
例題12027年4月から
平野商店から商品 ¥300,000 を仕入れ、代金は掛けとした。なお、引取運賃 ¥5,000 は現金で支払った。商品売買は販売のつど売上原価勘定に振り替える方法で記帳している。
答えと解説
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 商品 | 305,000 | 買掛金 | 300,000 |
| 現金 | 5,000 |
- この方法では、仕入れた商品を商品勘定(資産)に記入します。
- 引取運賃は商品の原価に含めるので、商品は ¥300,000 + ¥5,000 = ¥305,000 です。
ひっかけ:三分法の仕入勘定は使いません。
例題22027年4月から
森下商店に商品 ¥280,000(原価 ¥200,000)を売り渡し、代金は掛けとした。商品売買は販売のつど売上原価勘定に振り替える方法で記帳している。
答えと解説
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売掛金 | 280,000 | 売上 | 280,000 |
| 売上原価 | 200,000 | 商品 | 200,000 |
- 売価 ¥280,000 で 売掛金/売上 を記入します。
- 同時に、原価 ¥200,000 を商品勘定から売上原価勘定へ振り替えます(売上原価/商品)。
ひっかけ:商品を減らすのは売価ではなく原価です。
例題32027年4月から
中島商店に商品 ¥450,000(原価 ¥320,000)を売り渡した。代金のうち ¥50,000 は注文時に受け取った手付金と相殺し、残額は普通預金口座に振り込まれた。商品売買は販売のつど売上原価勘定に振り替える方法で記帳している。
答えと解説
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 前受金 | 50,000 | 売上 | 450,000 |
| 普通預金 | 400,000 | 商品 | 320,000 |
| 売上原価 | 320,000 |
- 売上は ¥450,000 です。手付金として受け取っていた前受金 ¥50,000 を取り崩し、残りの ¥400,000 は普通預金の増加です。
- 原価 ¥320,000 を商品勘定から売上原価勘定へ振り替えます。
例題42027年4月から
先日森下商店に掛けで売り渡した商品のうち ¥28,000(原価 ¥20,000)が、品違いのため返品された。返品分は売掛金から差し引く。商品売買は販売のつど売上原価勘定に振り替える方法で記帳している。
答えと解説
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売上 | 28,000 | 売掛金 | 28,000 |
| 商品 | 20,000 | 売上原価 | 20,000 |
- 売価 ¥28,000 で売上と売掛金を取り消します(売上/売掛金)。
- 商品が戻ったので、原価 ¥20,000 を売上原価から商品へ戻します(商品/売上原価)。
ひっかけ:売上の取消しだけでなく、原価の振替えも逆にします。
例題52027年4月から
平野商店から掛けで仕入れた商品のうち ¥15,000 を、品違いのため返品した。返品分は買掛金から差し引く。商品売買は販売のつど売上原価勘定に振り替える方法で記帳している。
答えと解説
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 買掛金 | 15,000 | 商品 | 15,000 |
- 仕入れたときの仕訳(商品/買掛金)の逆を、返品した ¥15,000 で行います。
ひっかけ:まだ売っていない商品なので、売上原価は関係しません。
この論点をランダム仕訳で練習(問題の型 3 種類。数字と取引先が毎回変わります)
まちがえやすい点
- 問題文に記帳方法が書かれていたら、その方法に従います。この方法なら仕入・繰越商品ではなく、商品・売上原価を使います。
- 販売の仕訳では、売上・売掛金は売価、売上原価・商品は原価です。2つの金額を取り違えないでください。
- 売上の返品では、売上の取消し(売上/売掛金)と原価の戻し(商品/売上原価)の両方が要ります。
- 決算で売上原価を計算する決算整理仕訳は行いません。期末の商品の原価は商品勘定の残高です。
2027年度の改定
日本商工会議所は、3級でも商品有高帳を通じて販売時に売上原価を把握することをすでに学んでいることなどを理由に、この方法を2級から3級に移しました。2027年3月31日までの試験(2026年度の範囲)では3級に出ません。改定の全体は2027年度の改定、三分法は商品売買の仕訳をご覧ください。
よくある質問
売上原価対立法とは何ですか?
出題区分表の「販売のつど売上原価勘定に振り替える方法」の通称です。商品を売るたびに、その原価を商品勘定から売上原価勘定へ振り替えます。
3級ではいつから出ますか?
2027年4月1日以降に受ける試験(2027年度の出題区分表)からです。それより前の試験では2級の範囲です。
繰越商品勘定は使いますか?
使いません。期首・期末の商品も含めて、商品勘定で記帳します。
決算整理で売上原価の計算は要りますか?
要りません。販売のつど売上原価を計上しているので、売上原価勘定の残高がそのまま当期の売上原価になります。
出典:日本商工会議所「商工会議所簿記検定試験出題区分表」(2027年4月1日施行・確定版)(2026-10-29 確認)、日本商工会議所「商工会議所簿記検定試験出題区分表などの改定について【確定版】」(2026-10-29 確認)
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