小口現金の仕訳(日商簿記3級)

小口現金は、交通費や切手代などの少額の支払いに備えて、会計係が小口現金係(用度係)に前もって渡しておく資金を表す資産の勘定です。3級では、定額資金前渡法(インプレスト・システム)による支払報告と補給の仕訳が第1問で、小口現金出納帳の記入が第2問で問われます。

出題:第1問・第2問 科目の確かめ:勘定科目一覧

要点

定額資金前渡法は、一定額(定額)を小口現金係に渡しておき、一定期間(1 週間・1 か月など)ごとに使った額の報告を受けて、使った額と同じ額を補給する方法です。補給すると、小口現金係の手元の資金は定額に戻ります。

  1. 定額を渡す:小口現金(資産)が増える。資金を出した口座(普通預金など)が減る
  2. 小口現金係が支払う:会計係はこの時点では仕訳しない
  3. 支払報告を受ける:使った内容ごとに費用を計上し、小口現金を減らす
  4. 補給する:使った額と同じ額だけ小口現金を増やす。報告と同時に補給するときは、2 つの仕訳をまとめると小口現金が相殺される
支払いの内容勘定科目(分類)
電車・バス・タクシーの運賃旅費交通費(費用)
郵便切手・はがき・電話・インターネットの料金通信費(費用)
文房具・コピー用紙などの事務用品消耗品費(費用)
電気・ガス・水道の料金水道光熱費(費用)
収入印紙租税公課(費用)
お茶菓子など、ほかに当てはまらない少額のもの雑費(費用)

仕訳のパターン

場面借方貸方
定額を渡す(普通預金から引き出す)小口現金 ××普通預金 ××
小口現金係が支払う仕訳なし仕訳なし
支払報告を受ける(補給は後日)旅費交通費・通信費など ××小口現金 ××
報告の後に補給する小口現金 ××普通預金 ××
報告と同時に補給する(まとめて仕訳)旅費交通費・通信費など ××普通預金 ××

例題

例題1

定額資金前渡法を採用することにし、普通預金口座から ¥30,000 を引き出して小口現金係に渡した。

答えと解説
借方科目金額貸方科目金額
小口現金30,000普通預金30,000
  1. 小口現金係に渡した資金は小口現金(資産)。借方に ¥30,000。
  2. 資金は普通預金口座から引き出したので、貸方は普通預金 ¥30,000。

ひっかけ:小口現金は「現金」と別の勘定。借方を現金にしない。

例題2

小口現金係から、今週の支払いとして、タクシー代 ¥4,200、郵便切手代 ¥1,680、文房具代 ¥2,350 の報告を受けた。なお、定額資金前渡法を採用しており、補給は翌週の初めに行う。

答えと解説
借方科目金額貸方科目金額
旅費交通費4,200小口現金8,230
通信費1,680
消耗品費2,350
  1. タクシー代は旅費交通費 ¥4,200、切手代は通信費 ¥1,680、文房具代は消耗品費 ¥2,350。
  2. 小口現金係の手元の資金が ¥4,200 + ¥1,680 + ¥2,350 = ¥8,230 減ったので、貸方は小口現金 ¥8,230。

ひっかけ:補給は翌週なので、普通預金はまだ動かさない。

例題3

前週末に小口現金係から支払報告(合計 ¥8,230)を受け、その仕訳は済ませてある。本日、定額資金前渡法にもとづき、同額を普通預金口座から引き出して補給した。

答えと解説
借方科目金額貸方科目金額
小口現金8,230普通預金8,230
  1. 費用は報告のときに計上済みなので、今回は費用の科目を使わない。
  2. 小口現金が ¥8,230 増えて定額に戻る。資金は普通預金から出たので、貸方は普通預金 ¥8,230。

ひっかけ:補給するのは使った額と同じ ¥8,230。定額の全額を補給するのではない。

例題4

当社は定額資金前渡法(インプレスト・システム)を採用している。小口現金係から、今月の支払いとして、電気料金 ¥6,400、はがき代 ¥1,890、来客用のお茶菓子代 ¥1,200(雑費として処理する)の報告を受け、ただちに同額を普通預金口座から引き出して補給した。なお、支払報告と補給はまとめて 1 つの仕訳とし、小口現金勘定の増減は相殺する。

答えと解説
借方科目金額貸方科目金額
水道光熱費6,400普通預金9,490
通信費1,890
雑費1,200
  1. 報告の分は、水道光熱費 ¥6,400・通信費 ¥1,890・雑費 ¥1,200 を借方に計上し、貸方は小口現金 ¥9,490。
  2. 補給の分は、小口現金 ¥9,490/普通預金 ¥9,490。
  3. 2 つをまとめると小口現金が相殺され、貸方は普通預金 ¥9,490 だけになる。

ひっかけ:まとめて仕訳するので、小口現金を借方・貸方の両方に書かない。

この論点をランダム仕訳で練習(問題の型 2 種類。数字と取引先が毎回変わります)

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まちがえやすい点

  • 小口現金係が支払ったときは、会計係は仕訳しない。仕訳するのは報告を受けたとき
  • 小口現金と現金は別の勘定。小口現金係の手元の資金は小口現金で記録する
  • 補給額は使った額と同じ。定額そのものではない
  • 報告と同時に補給してまとめて仕訳するときは、小口現金が消えて、貸方は資金を出した口座だけになる
  • 郵便切手・はがきは通信費、収入印紙は租税公課。どちらも小口現金で払うことがある
  • 補給の資金をどの口座から出したか(普通預金・当座預金)を問題文で確かめる

2027年度の改定との関係

小口現金と小口現金出納帳は、2027年度の出題区分表でも変わらず3級の範囲です。補給の資金は、当サイトの2027年度の範囲の問題では、小切手の振出しではなく普通預金口座からの引出しなどで出題します。改定の全体は2027年度の改定にまとめています。

よくある質問

定額資金前渡法(インプレスト・システム)とは何ですか?

一定額を小口現金係に前もって渡し、一定期間ごとに使った額の報告を受けて、同じ額を補給する方法です。補給の後は、手元の資金がいつも定額に戻ります。

小口現金係が支払ったとき、仕訳は必要ですか?

会計係の帳簿では、その時点では仕訳しません。小口現金係から支払報告を受けたときに、内容ごとに費用を計上して小口現金を減らします。

報告と補給を同時に行うときの仕訳は?

費用の各科目を借方に、補給の資金を出した口座(普通預金など)を貸方に記入します。報告の仕訳と補給の仕訳をまとめると、小口現金の減少と増加が相殺されるためです。

出典:出題区分表(2027年度 確定版)(2026-10-29 確認)

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