有形固定資産の除却・廃棄の仕訳(日商簿記3級)
除却は、使わなくなった有形固定資産を帳簿から取り除くこと、廃棄はその資産を捨てることです。取得原価と減価償却累計額を取り消し、まだ売れる見込みの額(見積処分価額)は貯蔵品とし、残りの帳簿価額を固定資産除却損にします。2027年4月1日以降の試験から、2級から移って3級の範囲に入る論点です。
要点
- 除却:使うのをやめて帳簿から外すこと。資産が手元に残り、後で売れる見込みがあれば、見積処分価額を貯蔵品(資産)にします。
- 廃棄:資産を捨てること。処分価値が無いので、帳簿価額の全額が損失になります。
- 損失は固定資産除却損(費用)です。勘定科目表では廃棄のときも固定資産除却損が標準の科目で、固定資産廃棄損も認められています。
- 期中に除却・廃棄したときは、期首から除却した日までの減価償却費を月割で計上します。
- 廃棄のための費用を支払ったときは、その額も固定資産除却損に加えます。
| 場面 | 資産のゆくえ | 使う勘定科目 |
|---|---|---|
| 売却 | 他人に売る | 未収入金・普通預金、固定資産売却益/固定資産売却損 |
| 除却 | 使うのをやめて手元に残す | 貯蔵品(見積処分価額)、固定資産除却損 |
| 廃棄 | 捨てる | 固定資産除却損 |
仕訳のパターン
| 場面 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 期首に除却(見積処分価額あり) | 減価償却累計額 ××/貯蔵品 ××/固定資産除却損 ×× | 備品 ×× |
| 期中に除却 | 減価償却累計額 ××/減価償却費 ××/貯蔵品 ××/固定資産除却損 ×× | 備品 ×× |
| 廃棄(処分価値なし) | 減価償却累計額 ××/固定資産除却損 ×× | 備品 ×× |
| 廃棄して費用を現金で支払った | 減価償却累計額 ××/固定資産除却損 ×× | 備品 ××/現金 ×× |
例題
例題1
期首に、使わなくなった備品(取得原価 ¥560,000、減価償却累計額 ¥420,000、間接法(備品減価償却累計額勘定)で記帳)を除却した。なお、この備品の見積処分価額は ¥30,000 である。
答えと解説
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 備品減価償却累計額 | 420,000 | 備品 | 560,000 |
| 貯蔵品 | 30,000 | ||
| 固定資産除却損 | 110,000 |
- 備品の取得原価 ¥560,000 を貸方、減価償却累計額 ¥420,000 を借方に書いて取り消す。
- 帳簿価額は ¥560,000 − ¥420,000 = ¥140,000。このうち見積処分価額 ¥30,000 は貯蔵品(資産)として残す。
- 残りの ¥140,000 − ¥30,000 = ¥110,000 が固定資産除却損(費用)。
ひっかけ:売っていないので、固定資産売却損・未収入金にしない。見積処分価額は貯蔵品。
例題2
期首に、備品(取得原価 ¥300,000、減価償却累計額 ¥240,000、間接法(備品減価償却累計額勘定)で記帳)を廃棄した。この備品に処分価値はない。
答えと解説
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 備品減価償却累計額 | 240,000 | 備品 | 300,000 |
| 固定資産除却損 | 60,000 |
- 取得原価 ¥300,000 と減価償却累計額 ¥240,000 を取り消す。
- 処分価値が無いので、帳簿価額 ¥300,000 − ¥240,000 = ¥60,000 の全額を固定資産除却損とする。
ひっかけ:処分価値が無いときに貯蔵品を計上しない。
例題3
X1年12月31日に、備品(取得原価 ¥960,000、期首の減価償却累計額 ¥480,000、間接法(備品減価償却累計額勘定)で記帳)を除却した。見積処分価額は ¥50,000 である。なお、会計期間は X1年4月1日から X2年3月31日までの1年であり、当期分の減価償却費は定額法(残存価額ゼロ、耐用年数 8 年)により月割で計上する。
答えと解説
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 備品減価償却累計額 | 480,000 | 備品 | 960,000 |
| 減価償却費 | 90,000 | ||
| 貯蔵品 | 50,000 | ||
| 固定資産除却損 | 340,000 |
- 当期首(4月1日)から除却日(12月31日)までは9か月。減価償却費は ¥960,000 ÷ 8 年 × 9 か月 ÷ 12 か月 = ¥90,000。
- 除却時の帳簿価額は ¥960,000 − ¥480,000 − ¥90,000 = ¥390,000。
- 見積処分価額 ¥50,000 を貯蔵品とし、残りの ¥390,000 − ¥50,000 = ¥340,000 が固定資産除却損。
ひっかけ:期中の除却で当期分の減価償却費を忘れない。忘れると除却損が ¥430,000 になってしまう。
例題4
期首に、車両運搬具(取得原価 ¥1,800,000、減価償却累計額 ¥1,620,000、間接法(車両運搬具減価償却累計額勘定)で記帳)を廃棄し、廃棄のための費用 ¥20,000 を現金で支払った。この車両に処分価値はない。
答えと解説
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 車両運搬具減価償却累計額 | 1,620,000 | 車両運搬具 | 1,800,000 |
| 固定資産除却損 | 200,000 | 現金 | 20,000 |
- 取得原価 ¥1,800,000 と車両運搬具減価償却累計額 ¥1,620,000 を取り消す。帳簿価額は ¥180,000。
- 廃棄のための費用 ¥20,000 も損失に加える。固定資産除却損は ¥180,000 + ¥20,000 = ¥200,000。
- 費用は現金で支払ったので、貸方に現金 ¥20,000。
ひっかけ:廃棄の費用を支払手数料などの別の費用にしない。固定資産除却損に含める。
例題5
X3年4月1日(期首)に、X1年4月1日に取得した備品(取得原価 ¥800,000)を除却した。この備品は定率法(償却率 25%)で毎期償却し、間接法(備品減価償却累計額勘定)で記帳している。見積処分価額は ¥40,000 であり、決算日は毎年3月31日である。
答えと解説
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 備品減価償却累計額 | 350,000 | 備品 | 800,000 |
| 貯蔵品 | 40,000 | ||
| 固定資産除却損 | 410,000 |
- 前期末までの減価償却累計額を求める。1年目は ¥800,000 × 25% = ¥200,000、2年目は(¥800,000 − ¥200,000)× 25% = ¥150,000。合計 ¥350,000。
- 帳簿価額は ¥800,000 − ¥350,000 = ¥450,000。見積処分価額 ¥40,000 を貯蔵品にする。
- 残りの ¥450,000 − ¥40,000 = ¥410,000 が固定資産除却損。期首の除却なので当期の減価償却費は無い。
ひっかけ:定率法の累計額を、取得原価 × 25% × 2年 = ¥400,000 としない。2年目は帳簿価額に掛ける。
この論点をランダム仕訳で練習(問題の型 2 種類。数字と取引先が毎回変わります)
まちがえやすい点
- 除却・廃棄は売却ではありません。固定資産売却損・未収入金にしません。
- 見積処分価額は貯蔵品(資産)です。処分価値が無ければ貯蔵品は出てきません。
- 期中の除却では、期首から除却した日までの減価償却費を月割で先に計上します。
- 廃棄のための費用は固定資産除却損に含めます。
除却・廃棄は2027年4月1日以降の試験から3級の範囲です。2027年3月31日までの試験(2026年度の範囲)では出題されません(2027年度の改定)。売る場合は有形固定資産の売却、減価償却費の計算は減価償却のページを見てください。
よくある質問
除却と廃棄の違いは何ですか?
除却は使うのをやめて帳簿から外すことで、資産は手元に残ります。廃棄は資産そのものを捨てることです。どちらも損失は固定資産除却損で処理します。
見積処分価額は何の勘定にしますか?
貯蔵品(資産)にします。まだ売れる見込みのある額なので、売れるまで資産として残します。
除却は2026年度の日商簿記3級で出ますか?
出ません。2027年3月31日までの試験では2級の論点で、2027年4月1日以降の3級の試験から出題範囲に入ります。
出典:日本商工会議所「商工会議所簿記検定試験出題区分表」(2027年度 確定版)(2026-10-29 確認)、日本商工会議所「商業簿記標準・許容勘定科目表」(2027年度 確定版)(2026-10-29 確認)
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