株式の発行・剰余金の配当の仕訳(日商簿記3級)
株式会社は、株式を発行して株主から元手を集め、利益の一部を配当として株主に分けます。日商簿記3級では、設立・増資で払い込まれた全額を資本金にする仕訳と、繰越利益剰余金を財源とする配当・利益準備金の積立て、配当金の支払いの仕訳が問われます。
要点
- 株式の発行(設立・増資):払い込まれた金額を資本金(純資産)にします。3級では全額を資本金とします。一部を資本準備金にする処理は2級の範囲です。
- 繰越利益剰余金(純資産)は、会社がためてきた利益です。決算で当期純利益が加わり、配当などで減ります。
- 配当の決議:株主総会で決まった配当金は、支払うまで未払配当金(負債)にします。あわせて利益準備金(純資産)を積み立てます。
- 利益準備金の額は、3級では問題文で示されます(積立額の計算は2級の範囲)。会社法では、配当額の10分の1を、資本準備金と合わせて資本金の4分の1に達するまで積み立てると定めています。
- 配当金の支払い:未払配当金を減らします。
| 勘定科目 | 区分 | 使う場面 |
|---|---|---|
| 資本金 | 純資産 | 株式の発行で払い込まれた元手 |
| 利益準備金 | 純資産 | 配当にあわせて積み立てる |
| 繰越利益剰余金 | 純資産 | 配当の財源。当期純利益が加わる |
| 未払配当金 | 負債 | 決議した配当金をまだ支払っていない |
仕訳のパターン
| 場面 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 設立・増資で株式を発行した | 普通預金 ×× | 資本金 ×× |
| 配当と利益準備金の積立てを決議した | 繰越利益剰余金 ××(合計) | 未払配当金 ××・利益準備金 ×× |
| 配当金を支払った | 未払配当金 ×× | 普通預金 ×× |
| 決算で当期純利益を振り替えた | 損益 ×× | 繰越利益剰余金 ×× |
例題
例題1
株式会社の設立にあたり、株式 200 株を 1 株あたり ¥50,000 で発行し、全額の払込みを受けて普通預金口座に預け入れた。なお、払込金額の全額を資本金とする。
答えと解説
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 10,000,000 | 資本金 | 10,000,000 |
- 払込金額は ¥50,000 × 200 株 = ¥10,000,000。
- 全額を資本金(純資産)とし、普通預金(資産)の増加を借方に記入する。
ひっかけ:株主からの払込みは返す義務が無いので、借入金(負債)にしない。
例題2
増資のため、新たに株式 100 株を 1 株あたり ¥60,000 で発行し、払込金が普通預金口座に振り込まれた。なお、払込金額の全額を資本金とする。
答えと解説
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 6,000,000 | 資本金 | 6,000,000 |
- 払込金額は ¥60,000 × 100 株 = ¥6,000,000。
- 増資でも設立と同じく、全額を資本金とする。
ひっかけ:利益準備金・繰越利益剰余金は利益から生じる純資産で、株式の発行では使わない。
例題3
株主総会で、繰越利益剰余金 ¥1,500,000 の一部について、株主配当金 ¥400,000、利益準備金の積立て ¥40,000 とすることが決議された。
答えと解説
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 繰越利益剰余金 | 440,000 | 未払配当金 | 400,000 |
| 利益準備金 | 40,000 |
- 減らす繰越利益剰余金は ¥400,000 + ¥40,000 = ¥440,000。
- 配当金はまだ支払っていないので未払配当金(負債)、積立額は利益準備金(純資産)。
ひっかけ:繰越利益剰余金の残高 ¥1,500,000 を全額減らさない。決議の時点では普通預金は減らさない。
例題4
株主総会で決議された株主配当金 ¥400,000 を、普通預金口座から株主に支払った。
答えと解説
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 未払配当金 | 400,000 | 普通預金 | 400,000 |
- 決議のときに計上した未払配当金(負債)を借方で減らす。
- 普通預金から支払ったので、貸方は普通預金。
ひっかけ:支払いのときに繰越利益剰余金をもう一度減らさない。未払金ではなく未払配当金。
この論点をランダム仕訳で練習(問題の型 2 種類。数字と取引先が毎回変わります)
まちがえやすい点
- 株式の払込みの一部を資本準備金にする(3級では問題文の指示どおり全額を資本金にします)
- 配当の決議で、繰越利益剰余金を配当金の額だけ減らす(利益準備金の積立額も合わせて減らします)
- 配当の決議のときに普通預金を減らす(支払うまでは未払配当金です)
- 未払配当金を未払金にする(配当金には未払配当金を使います)
- 当期純利益を資本金や利益準備金に振り替える(振り替える先は繰越利益剰余金です)
2027年度の改定でも、株式の発行・剰余金の配当の範囲は変わりません。当期純利益を繰越利益剰余金に振り替える仕訳は決算振替・帳簿の締切、建設業経理士2級の同じ論点は株式・配当・純資産をご覧ください。
よくある質問
株式を発行したとき、資本金はいくらになりますか?
3級では、払い込まれた金額の全額を資本金にします。1株あたりの払込金額に株数を掛けた額です。
利益準備金はいくら積み立てますか?
3級では積み立てる額が問題文に書かれているので、その額を利益準備金にします。会社法では、配当額の10分の1を、資本準備金と合わせて資本金の4分の1に達するまで積み立てると定めています。
配当を決めたときに普通預金を減らしますか?
減らしません。株主総会で決議した時点では未払配当金(負債)を計上し、実際に支払ったときに未払配当金と普通預金を減らします。
出典:日本商工会議所「商工会議所簿記検定試験出題区分表」(2027年度適用・確定版)(2026-10-29 確認)、日本商工会議所「商業簿記標準・許容勘定科目表」(2027年度適用・確定版)(2026-10-29 確認)
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