貸借対照表・損益計算書の作り方(日商簿記3級)
貸借対照表は決算日の資産・負債・純資産を、損益計算書は会計期間(1年間)の収益・費用と当期純利益を示す表です。日商簿記3級では、決算整理後残高試算表、または決算整理前の残高試算表と決算整理事項から、勘定式の貸借対照表・損益計算書を作る問題が第3問で出ます。勘定科目と表示科目の違い、貸倒引当金・減価償却累計額の差し引き方、繰越利益剰余金に当期純利益を含めることが問われます。
要点
- 3級で作るのは勘定式(左の借方と右の貸方に分けて書く形)です。上から順に書く報告式や、流動資産・固定資産などに分ける区分表示は、出題区分表では2級の範囲です。
- 損益計算書:借方に費用、貸方に収益を書き、差額の当期純利益を借方に書きます。表の上には会計期間(X1年4月1日からX2年3月31日まで)を書きます。
- 貸借対照表:借方に資産、貸方に負債と純資産を書きます。表の上には決算日(X2年3月31日)を書きます。
- 損益計算書の当期純利益と、貸借対照表の資産合計から負債・純資産合計(繰越利益剰余金に当期純利益を足す前)を引いた額は、同じ金額になります。
作る手順
- 決算整理後の各勘定の残高を出す(決算整理前の残高試算表から作る問題では、決算整理仕訳を先に書いて集計する)
- 収益・費用を損益計算書に移し、収益 − 費用で当期純利益を出す
- 資産・負債・純資産を貸借対照表に移す。表示科目に直し、貸倒引当金と減価償却累計額は資産から差し引く
- 繰越利益剰余金に当期純利益を足して書き、借方と貸方の合計が一致するかを確かめる
表示の決まり
財務諸表では、勘定科目の名前のまま書かない科目があります。答案用紙に「( )費用」「( )消費税」のように一部だけ空欄になっている科目は、空欄に入る語(前払・未払など)も答えます。
| 勘定科目 | 表示科目 | 書く場所 |
|---|---|---|
| 繰越商品 | 商品 | 貸借対照表の借方 |
| 仕入(売上原価を計算した後) | 売上原価 | 損益計算書の借方 |
| 売上 | 売上高 | 損益計算書の貸方 |
| 前払保険料・前払家賃・前払利息など | 前払費用(まとめて1行) | 貸借対照表の借方 |
| 未収利息・未収家賃など | 未収収益(まとめて1行) | 貸借対照表の借方 |
| 未払利息・未払給料・未払家賃など | 未払費用(まとめて1行) | 貸借対照表の貸方 |
| 前受家賃・前受地代など | 前受収益(まとめて1行) | 貸借対照表の貸方 |
| 未払消費税 | 未払消費税 | 貸借対照表の貸方 |
| 未払法人税等 | 未払法人税等 | 貸借対照表の貸方 |
| 貸倒引当金 | 貸倒引当金(債権の下で差し引く) | 貸借対照表の借方 |
| 備品減価償却累計額など | 減価償却累計額(その資産の下で差し引く) | 貸借対照表の借方 |
| 繰越利益剰余金 | 繰越利益剰余金(当期純利益を足した額) | 貸借対照表の貸方 |
貸倒引当金・減価償却累計額の差し引き方
貸倒引当金は売掛金などの債権から、減価償却累計額は建物・備品などの資産から差し引く形で、貸借対照表の借方(資産の側)に書きます。差し引く前の金額を内側の欄に、差し引いた後の金額を外側の欄に書きます。
| 表示科目 | 内訳 | 金額 |
|---|---|---|
| 売掛金 | 500,000 | |
| 貸倒引当金 | △10,000 | 490,000 |
| 備品 | 400,000 | |
| 減価償却累計額 | △160,000 | 240,000 |
△は差し引くことを示す印です。答案用紙の欄の形に合わせて書きます。
売掛金と電子記録債権の両方に貸倒引当金を設定しているときは、債権ごとに分けて差し引きます。累計額は、勘定が「備品減価償却累計額」のように資産ごとでも、表では「減価償却累計額」と書き、その資産のすぐ下に置きます。
繰越利益剰余金と当期純利益
決算整理後残高試算表の繰越利益剰余金は、前期までに積み立てた利益で、当期純利益をまだ含みません。貸借対照表には、試算表の繰越利益剰余金に当期純利益を足した額を書きます。決算振替で、損益勘定から繰越利益剰余金勘定へ当期純利益を振り替えた後の残高です。当期純損失のときは差し引きます。
仕訳のパターン(決算振替)
| 場面 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 収益を損益勘定へ振り替える | 売上 ×× など | 損益 ×× |
| 費用を損益勘定へ振り替える | 損益 ×× | 仕入 ×× など |
| 当期純利益を繰越利益剰余金へ振り替える | 損益 ×× | 繰越利益剰余金 ×× |
| 当期純損失を繰越利益剰余金へ振り替える | 繰越利益剰余金 ×× | 損益 ×× |
決算整理仕訳の一覧は精算表の書き方の「仕訳のパターン(修正記入)」、振替の考え方は決算振替・帳簿の締切をご覧ください。
例題
どの例題も、会計期間はX1年4月1日からX2年3月31日までの1年です。売上原価は、三分法の仕入勘定で計算した後の金額が試算表に出ています。
| 勘定科目 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 繰越商品 | 180,000 | |
| 前払保険料 | 21,000 | |
| 前払家賃 | 40,000 | |
| 未収利息 | 4,000 | |
| 未払利息 | 6,000 | |
| 未払給料 | 95,000 | |
| 前受地代 | 30,000 | |
| 売上 | 2,950,000 | |
| 仕入 | 1,870,000 |
例題1
上の決算整理後残高試算表(一部)から貸借対照表と損益計算書を作るとき、表示科目・書く場所・金額を答えなさい。同じ表示科目になる勘定は1行にまとめる。
答えと解説
| 表示科目 | 書く場所 | 金額 |
|---|---|---|
| 商品 | 貸借対照表の借方(資産) | 180,000 |
| 前払費用 | 貸借対照表の借方(資産) | 61,000 |
| 未収収益 | 貸借対照表の借方(資産) | 4,000 |
| 未払費用 | 貸借対照表の貸方(負債) | 101,000 |
| 前受収益 | 貸借対照表の貸方(負債) | 30,000 |
| 売上高 | 損益計算書の貸方(収益) | 2,950,000 |
| 売上原価 | 損益計算書の借方(費用) | 1,870,000 |
- 繰越商品は「商品」として貸借対照表の借方に ¥180,000。
- 前払保険料 ¥21,000 と前払家賃 ¥40,000 は、まとめて「前払費用」¥61,000。未収利息は「未収収益」¥4,000。
- 未払利息 ¥6,000 と未払給料 ¥95,000 は、まとめて「未払費用」¥101,000。前受地代は「前受収益」¥30,000。
- 決算整理後の仕入は売上原価なので「売上原価」¥1,870,000、売上は「売上高」¥2,950,000 として損益計算書に書く。
ひっかけ:前払保険料と前払家賃を別々の行にしない。繰越商品・仕入・売上を勘定科目の名前のまま書かない。
| 勘定科目 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 売掛金 | 680,000 | |
| 電子記録債権 | 300,000 | |
| 建物 | 3,000,000 | |
| 備品 | 500,000 | |
| 貸倒引当金 | 19,600 | |
| 建物減価償却累計額 | 1,200,000 | |
| 備品減価償却累計額 | 300,000 |
例題2
上の決算整理後残高試算表(一部)の勘定を、貸借対照表の借方(資産の側)にどう書くかを答えなさい。貸倒引当金は、売掛金と電子記録債権の期末残高に対してそれぞれ 2% を設定したものである。
答えと解説
| 表示科目 | 内訳 | 金額 |
|---|---|---|
| 売掛金 | 680,000 | |
| 貸倒引当金 | △13,600 | 666,400 |
| 電子記録債権 | 300,000 | |
| 貸倒引当金 | △6,000 | 294,000 |
| 建物 | 3,000,000 | |
| 減価償却累計額 | △1,200,000 | 1,800,000 |
| 備品 | 500,000 | |
| 減価償却累計額 | △300,000 | 200,000 |
- 貸倒引当金 ¥19,600 を債権ごとに分ける。売掛金の分は ¥680,000 × 2% = ¥13,600、電子記録債権の分は ¥300,000 × 2% = ¥6,000。
- 売掛金は ¥680,000 − ¥13,600 = ¥666,400、電子記録債権は ¥300,000 − ¥6,000 = ¥294,000 を外側の欄に書く。
- 建物は ¥3,000,000 − ¥1,200,000 = ¥1,800,000、備品は ¥500,000 − ¥300,000 = ¥200,000。累計額は「減価償却累計額」と書き、それぞれの資産のすぐ下に置く。
ひっかけ:貸倒引当金・減価償却累計額を貸方(負債の側)に書かない。貸倒引当金を売掛金だけからまとめて差し引かない。
| 勘定科目 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 現金 | 64,000 | |
| 普通預金 | 1,285,000 | |
| 売掛金 | 750,000 | |
| 繰越商品 | 260,000 | |
| 前払保険料 | 18,000 | |
| 建物 | 2,400,000 | |
| 備品 | 600,000 | |
| 買掛金 | 412,000 | |
| 借入金 | 800,000 | |
| 未払消費税 | 126,000 | |
| 未払法人税等 | 83,000 | |
| 未払利息 | 4,000 | |
| 貸倒引当金 | 15,000 | |
| 建物減価償却累計額 | 880,000 | |
| 備品減価償却累計額 | 360,000 | |
| 資本金 | 2,000,000 | |
| 繰越利益剰余金 | 340,000 | |
| 売上 | 4,100,000 | |
| 受取手数料 | 60,000 | |
| 仕入 | 2,640,000 | |
| 給料 | 723,000 | |
| 保険料 | 54,000 | |
| 減価償却費 | 200,000 | |
| 貸倒引当金繰入 | 9,000 | |
| 支払利息 | 24,000 | |
| 法人税等 | 153,000 | |
| 合計 | 9,180,000 | 9,180,000 |
例題3
上の決算整理後残高試算表から、損益計算書(X1年4月1日からX2年3月31日まで)を作りなさい。借方(費用・当期純利益)と貸方(収益)に分けて、表示科目と金額を答える(【借方】【貸方】の見出しの行で区切り、それぞれの最後に合計の行)。
答えと解説
| 表示科目 | 金額 |
|---|---|
| 【借方:費用・当期純利益】 | |
| 売上原価 | 2,640,000 |
| 給料 | 723,000 |
| 保険料 | 54,000 |
| 減価償却費 | 200,000 |
| 貸倒引当金繰入 | 9,000 |
| 支払利息 | 24,000 |
| 法人税等 | 153,000 |
| 当期純利益 | 357,000 |
| 合計 | 4,160,000 |
| 【貸方:収益】 | |
| 売上高 | 4,100,000 |
| 受取手数料 | 60,000 |
| 合計 | 4,160,000 |
- 費用の勘定を借方に移す。仕入は「売上原価」と書く。法人税等も費用として借方に書く。
- 収益の勘定を貸方に移す。売上は「売上高」と書く。
- 収益 ¥4,160,000 − 費用 ¥3,803,000 = ¥357,000 が当期純利益。借方に書くと、借方・貸方の合計はどちらも ¥4,160,000 になる。
ひっかけ:法人税等を書き忘れて、法人税等を引く前の金額(¥510,000)を当期純利益にしない。
例題4
例題3と同じ決算整理後残高試算表から、貸借対照表(X2年3月31日)を作りなさい。借方(資産)と貸方(負債・純資産)に分けて、表示科目と金額を答える(【借方】【貸方】の見出しの行で区切り、それぞれの最後に合計の行)。貸倒引当金と減価償却累計額は、資産から差し引く形で書く。
答えと解説
| 表示科目 | 内訳 | 金額 |
|---|---|---|
| 【借方:資産】 | ||
| 現金 | 64,000 | |
| 普通預金 | 1,285,000 | |
| 売掛金 | 750,000 | |
| 貸倒引当金 | △15,000 | 735,000 |
| 商品 | 260,000 | |
| 前払費用 | 18,000 | |
| 建物 | 2,400,000 | |
| 減価償却累計額 | △880,000 | 1,520,000 |
| 備品 | 600,000 | |
| 減価償却累計額 | △360,000 | 240,000 |
| 合計 | 4,122,000 | |
| 【貸方:負債・純資産】 | ||
| 買掛金 | 412,000 | |
| 借入金 | 800,000 | |
| 未払消費税 | 126,000 | |
| 未払法人税等 | 83,000 | |
| 未払費用 | 4,000 | |
| 資本金 | 2,000,000 | |
| 繰越利益剰余金 | 697,000 | |
| 合計 | 4,122,000 |
- 繰越商品は「商品」、前払保険料は「前払費用」、未払利息は「未払費用」と書く。未払消費税・未払法人税等はそのままの名前で負債に書く。
- 売掛金から貸倒引当金 ¥15,000 を、建物から建物減価償却累計額 ¥880,000 を、備品から備品減価償却累計額 ¥360,000 を差し引く。
- 繰越利益剰余金は、試算表の ¥340,000 に例題3の当期純利益 ¥357,000 を足して ¥697,000。
- 資産合計と負債・純資産合計は、どちらも ¥4,122,000 で一致する。
ひっかけ:繰越利益剰余金を試算表の ¥340,000 のまま書かない。当期純利益を貸借対照表に別の行で書かない(繰越利益剰余金に含める)。
例題5
決算整理後残高試算表の収益の合計は ¥2,300,000、費用の合計は ¥2,380,000、繰越利益剰余金は貸方残高 ¥250,000 であった。損益計算書に書く当期純損益の名前・書く場所・金額と、貸借対照表に書く繰越利益剰余金の金額を答えなさい。
答えと解説
| 項目 | 書く場所 | 金額 |
|---|---|---|
| 当期純損失 | 損益計算書の貸方 | 80,000 |
| 繰越利益剰余金 | 貸借対照表の貸方(純資産) | 170,000 |
- 収益 ¥2,300,000 − 費用 ¥2,380,000 = △80,000。費用のほうが多いので当期純損失 ¥80,000。
- 当期純損失は、損益計算書の貸方に書くと借方・貸方の合計が一致する。
- 繰越利益剰余金は当期純損失の分だけ減るので、¥250,000 − ¥80,000 = ¥170,000。
ひっかけ:当期純損失を損益計算書の借方に書かない。繰越利益剰余金に純損失を足さない。
まちがえやすい点
- 繰越商品を「繰越商品」、決算整理後の仕入を「仕入」のまま書く。表示は商品・売上原価です
- 売上を「売上」と書く。損益計算書では売上高です
- 繰越利益剰余金を試算表の金額のまま書く。当期純利益を足し、純損失なら引きます
- 貸倒引当金・減価償却累計額を貸方(負債の側)に書く。資産から差し引く形で借方に書きます
- 前払保険料と前払家賃を別々の行に書く。表示科目が同じ前払費用なので1行にまとめます(未払費用・未収収益・前受収益も同じ)
- 未払消費税を、仮受消費税の金額のまま書く。仮払消費税を差し引いた残りが未払消費税です
- 仮払法人税等を資産に残す。法人税等を計上すると0になり、残りの納付額が未払法人税等です
- 法人税等を書き忘れて、税引前の利益を当期純利益にする
2027年度の改定との関係
2027年度の改定でも、勘定式の貸借対照表・損益計算書を作ることは変わりません。2027年4月から3級に入る、販売のつど売上原価勘定に振り替える方法では、決算整理後残高試算表の「売上原価」をそのまま損益計算書の売上原価に、「商品」を貸借対照表の商品に書きます。手形が出題区分表から外れるので、貸倒引当金を差し引く債権は売掛金・電子記録債権などになります。くわしくは2027年度の改定と販売のつど売上原価に振り替える方法をご覧ください。
財務諸表のもとになる表の作り方は決算整理後残高試算表、決算整理の全体は決算整理、決算整理から財務諸表までを1枚の表で行う方法は精算表の書き方、個々の決算整理は経過勘定・減価償却・貸倒れ・貸倒引当金・消費税・法人税等のページで説明しています。建設業経理士2級の同じ決算の流れは決算整理・経過勘定・帳簿の締切をご覧ください。
よくある質問
勘定式と報告式の違いは何ですか?
勘定式は借方と貸方を左右に分けて書く形、報告式は上から順に書く形です。日商簿記3級の出題区分表では、損益計算書と貸借対照表は勘定式で作り、報告式は2級の範囲です。
貸借対照表の繰越利益剰余金には、いくらを書きますか?
決算整理後残高試算表の繰越利益剰余金に、当期純利益を足した額を書きます。当期純損失のときは差し引きます。決算振替で当期純損益を繰越利益剰余金勘定に振り替えた後の残高だからです。
前払保険料を「前払費用」と書くのはなぜですか?
財務諸表では、前払保険料・前払家賃などの勘定をまとめて前払費用と表示するからです。同じように、未収利息などは未収収益、未払利息などは未払費用、前受家賃などは前受収益と表示します。
「仕入」と「売上原価」は何が違いますか?
仕入は勘定科目の名前で、三分法では決算整理後の仕入勘定の残高が売上原価を表します。損益計算書には「売上原価」と書きます。同じように、売上勘定は損益計算書では「売上高」と書きます。
出典:日本商工会議所 商工会議所簿記検定試験 出題区分表(2027年度 確定版)(2026-10-29 確認)
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