日商簿記3級と建設業経理士の違い
日商簿記は日本商工会議所・各地商工会議所が実施する業種を問わない簿記の検定で、3級はネット試験で随時受けられます。建設業経理士は一般財団法人 建設業振興基金が年2回(3月・9月)実施する、建設業の会計に特化した検定です。仕訳や決算の考え方は共通ですが、建設業経理士では売掛金が完成工事未収入金、売上が完成工事高のように勘定科目が変わり、2級から工事の原価計算が加わります。建設業の会社で経営事項審査に評価される資格が目的なら建設業経理士、業種を問わない簿記の基礎なら日商簿記3級が向いています。
ひと目で分かる違い
日商簿記3級と建設業経理士2級を並べました。建設業経理士の数値は、当サイトの建設業経理士2級の試験情報(建設業振興基金の公表資料、2026年10月確認)によります。
| 項目 | 日商簿記3級 | 建設業経理士2級 |
|---|---|---|
| 主催 | 日本商工会議所・各地商工会議所 | 一般財団法人 建設業振興基金 |
| 試験の方式 | ネット試験(随時)、統一試験(年3回)、団体試験 | 年2回(3月・9月) |
| 試験時間 | 60分 | 2時間 |
| 出題 | 3題以内(第1問〜第3問) | 第1問〜第5問 |
| 合格基準 | 70%以上(合計100点で70点以上) | 100点満点中70点以上 |
| 受験料(税込) | 3,300円 | 7,120円(第40回の案内の金額) |
| 受験資格 | なし(学歴・年齢などを問わない) | 制限なし(学歴・年齢・実務経験不問) |
| 合否が分かる時期 | ネット試験は試験の終了後すぐ。統一試験は後日 | 試験日の約2か月後にウェブで発表 |
| 出題の範囲 | 商業簿記 | 建設業の簿記・原価計算と会社会計 |
受験料は改定されることがあるので、申し込む前に主催者の最新の案内で確かめてください。日商簿記3級をネット試験のインターネット申込方式で申し込むと、受験料とは別に事務手数料550円(税込)がかかります。建設業経理士2級の7,120円には、ネット申込の手数料320円が含まれています。
合格率(主催者の公表値)
| 試験 | 期間・回 | 合格率 |
|---|---|---|
| 日商簿記3級 ネット試験 | 2025年4月〜2026年3月 | 40.8% |
| 日商簿記3級 統一試験 | 第173回(2026年6月14日) | 33.8% |
| 建設業経理士2級 | 第38回(2026年3月8日) | 47.5% |
| 建設業経理士2級 | 第37回(2025年9月7日) | 32.2% |
受験する人の層も試験の形も違うので、合格率だけで難しさは比べられません。くわしくは日商簿記3級の試験情報と建設業経理士2級の試験情報をご覧ください。
主催と資格の役割の違い
日商簿記:業種を問わない簿記の基礎
日商簿記は、商工会議所法にもとづいて全国で統一の基準で行われる検定です。3級の試験科目は商業簿記で、商品の売買を中心に、取引の仕訳・帳簿・決算・貸借対照表と損益計算書の作成までを問います。業種を問わず、経理・事務の基礎の証明として使われます。
建設業経理士:建設業の会計と経営事項審査
建設業経理士は、建設業に特有の会計(工事の収益の計上・工事原価の計算・完成工事原価報告書など)を問う検定です。公共工事の入札に参加する建設会社が受ける経営事項審査(経審)の「公認会計士等の数」で、1級合格者は1人あたり1.0、2級合格者は0.4として評価されます。評価は合格した年度の翌年度から5年間で、それ以降は登録経理講習の受講が必要です。建設会社が社員に取得を求める大きな理由の一つです。
試験の方式の違い
| 日商簿記3級(ネット試験) | 建設業経理士2級 | |
|---|---|---|
| 受験日 | 各ネット試験会場が設定する日(随時)。統一試験の前後と年度はじめに休止期間がある | 年2回、3月と9月の日曜日。次回は第40回(2027年3月14日) |
| 申込 | インターネット申込方式は受験日の3日前まで。会場問い合わせ方式は会場ごと | インターネット申込のみ。3月の回は11月上旬〜12月上旬、9月の回は5月上旬〜6月上旬の約1か月(第40回は2026年11月10日〜12月10日) |
| 答え方 | パソコンで入力。仕訳の勘定科目はプルダウンで選ぶ | 紙の解答用紙に記入する |
| 計算器具 | 四則演算だけの電卓(そろばんは不可) | そろばん、または四則演算だけの電卓 |
| 合否 | 試験終了後すぐ。スコアレポートとデジタル合格証 | 試験日の約2か月後の金曜日(第40回は2027年5月14日) |
日商簿記3級は、勉強が仕上がった時期に合わせて受験日を選べます。建設業経理士は申込期間が決まっているので、その期間(3月の回なら前年の11月上旬〜12月上旬)までに受ける級を決めて申し込む必要があります。申込の流れは建設業経理士の申込手順にまとめています。
範囲と勘定科目の違い
どちらも複式簿記なので、仕訳のきまり(借方・貸方)、決算整理(貸倒引当金・減価償却・経過勘定)、精算表の作り方は同じ考え方です。違うのは、建設業では工事が完成するまでに長い期間がかかり、工事ごとに原価を集めるため、使う勘定科目と、原価計算の有無です。
勘定科目の対応
| 日商簿記(商業簿記) | 建設業経理士 | 意味 |
|---|---|---|
| 売上 | 完成工事高 | 完成して引き渡した工事の収益 |
| 売上原価 | 完成工事原価 | 完成した工事にかかった原価 |
| 売掛金 | 完成工事未収入金 | 完成した工事の代金のうち、まだ受け取っていない分 |
| 買掛金 | 工事未払金 | 材料費・外注費など、工事のための代金の未払い |
| 前受金(商品の手付金) | 未成工事受入金 | 工事の完成前に発注者から受け取った代金 |
| 仕掛品(日商簿記2級の工業簿記) | 未成工事支出金 | 完成していない工事にかかった原価 |
日商簿記3級で覚えた「商品の代金の未払いは買掛金、商品以外の代金の未払いは未払金」という区別は、建設業経理士でも「工事の代金の未払いは工事未払金、本社の建物など工事以外の代金の未払いは未払金」という形で使います。考え方は同じで、科目の名前が建設業向けに変わります。科目の使い分けは建設業特有の科目と処理にまとめています。
建設業経理士2級で加わるもの
- 工事収益の計上:工事の進み具合に応じて完成工事高を計上する工事進行基準の計算。
- 工事原価の計算:材料費・労務費・外注費・経費の集計、部門費の配賦、工事間接費の予定配賦と配賦差異、完成工事原価報告書。日商簿記3級には原価計算はありません(日商簿記では2級の工業簿記で扱います)。
- 精算表:2級の第5問は精算表(30点)です。決算整理の考え方は日商簿記3級の第3問と同じですが、建設業の勘定科目で行います(精算表)。
手形の扱い
日商簿記3級は、2027年4月1日以降の受験から出題区分表で手形の規定がすべて削除されました(2027年度の改定)。建設業経理士2級では、当サイトの論点に手形取引(裏書・割引・不渡り・営業外手形)があります。日商簿記3級を2027年4月以降に受けてから建設業経理士2級に進む人は、手形を建設業経理士の勉強で新しく学ぶことになります。
どちらから受けるか
建設業経理士2級に受験資格の制限はないので、日商簿記3級に合格していなくても受けられます。どちらから受けるかは、目的と簿記の経験で決めます。
| あなたの状況 | 当サイトのおすすめ |
|---|---|
| 建設会社で経審のために資格を求められている。簿記は初めて | 日商簿記3級の範囲(仕訳・決算・精算表)で簿記の基礎を作ってから、建設業経理士2級へ。3級の受験は省いて、直接2級を目指してもよい |
| 建設会社で経審のために資格を求められている。簿記の経験がある | 建設業経理士2級から。建設業の勘定科目と原価計算に時間を使う |
| 業種を問わず、経理・事務の基礎を証明したい | 日商簿記3級から。ネット試験なら受験日を自分で選べる |
| 日商簿記3級に合格した。建設業の会社に勤めている(勤める予定がある) | 建設業経理士2級へ。仕訳・決算の知識はそのまま使える |
日程の組み方の例(2027年3月の第40回を目指す場合)
- 建設業経理士2級の申込期間は2026年11月10日(火)〜12月10日(木)です。受けると決めたら、この期間に申し込みます。
- 簿記が初めてなら、まず日商簿記3級の範囲を学びます。腕試しに日商簿記3級のネット試験を受けるなら、ネット試験の休止期間(2026年11月9日〜18日、2027年2月22日〜3月3日)を避けて日を選びます。
- 日商簿記3級の範囲を終えたら、建設業の勘定科目と原価計算に進み、建設業経理士2級の過去の試験問題で第1問〜第5問の形に慣れます。
- 2027年3月14日(日)が建設業経理士2級の試験日です。
2027年3月31日までに日商簿記3級を受けるなら2026年度の範囲(手形を含む)、4月1日以降なら2027年度の範囲です。日商簿記3級の勉強の中心は重要論点 第1問と重要論点 第2問・第3問にまとめています。
当サイトで練習できること
- 日商簿記3級:論点別の解説と例題、毎回数字が変わる仕訳ドリル、ネット試験と同じ答え方の模擬試験。3級は回ごとの試験問題(過去問)が公開されていないため、問題はすべて当サイトのオリジナルです。
- 建設業経理士2級:建設業振興基金が公開している過去の試験問題を、解説つきで解けます(建設業経理士2級)。資格の全体像は建設業経理士とはにあります。
よくある質問
日商簿記3級と建設業経理士2級は、どちらが難しいですか?
建設業経理士2級は、日商簿記3級の商業簿記に加えて、工事原価の計算と建設業の勘定科目が出題され、試験時間も2時間と長くなります。範囲は建設業経理士2級のほうが広いといえます。合格率は受験者の層が違うため、単純には比べられません。
日商簿記3級に合格していないと建設業経理士2級は受けられませんか?
受けられます。建設業経理士2級の受験資格に制限はなく、学歴・年齢・実務経験も問われません。
建設会社で経営事項審査(経審)のための資格を求められたら、どちらを受けますか?
建設業経理士です。経審の「公認会計士等の数」で、建設業経理士1級の合格者は1人あたり1.0、2級の合格者は0.4として評価されます。評価は合格した年度の翌年度から5年間です。簿記が初めてなら、日商簿記3級の範囲で基礎を作ってから2級に進む方法もあります。
売掛金と完成工事未収入金は何が違いますか?
どちらも代金を後で受け取る権利(資産)です。商品を掛けで売ったときが売掛金、建設業で完成した工事の代金をまだ受け取っていないときが完成工事未収入金です。
あわせて読む
出典・参考:3級 試験科目・注意事項(日本商工会議所)(2026-10-30 確認)、2級 試験科目(日本商工会議所)(2026-10-30 確認)、ネット試験について(日本商工会議所)(2026-10-30 確認)、受験者データ(日本商工会議所)(2026-10-29 確認)、検定試験Q&A(日本商工会議所)(2026-10-30 確認)、R8下期 建設業経理検定試験(建設業振興基金)(2026-10-13 確認)、建設業経理士2級の試験情報(当サイト)
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