用語・簿記の基本(日商簿記3級)
簿記の用語の問題は、文の空欄に当てはまる語を語群から選ぶ形で、3級の第2問に出ます。問われるのは、簿記の5要素と財務諸表、取引の8要素、勘定の記入のきまり、主要簿と補助簿、決算の手続きなど、簿記の土台になる言葉の意味です。用語を1つずつ覚えるより、取引が「何に・どの順で」記録されるかの流れで覚えると解けます。
簿記の5要素と財務諸表
| 要素 | 意味 | 主な勘定 | 増えたとき |
|---|---|---|---|
| 資産 | 会社が持っている財産や、お金を受け取る権利 | 現金・普通預金・売掛金・備品 | 借方 |
| 負債 | 将来お金を支払う義務 | 買掛金・借入金・未払金 | 貸方 |
| 純資産 | 資産から負債を引いた額。株主が出した元手と、ためた利益 | 資本金・繰越利益剰余金 | 貸方 |
| 収益 | 純資産が増える原因になる稼ぎ | 売上・受取手数料・受取利息 | 貸方(発生) |
| 費用 | 収益を得るために使った額 | 仕入・給料・支払家賃 | 借方(発生) |
- 貸借対照表は、決算日など一定時点の財政状態(資産・負債・純資産の残高)を表します。資産=負債+純資産です。
- 損益計算書は、会計期間という一定期間の経営成績を表します。収益−費用=当期純利益(マイナスなら当期純損失)です。
- 会計期間(ふつう1年)の始まりを期首、終わりを期末(決算日)といいます。
簿記上の取引と取引の8要素
簿記上の取引は、資産・負債・純資産が増えたり減ったり、収益・費用が発生したりするできごとです。ふだんの言葉の「取引」とは範囲が少し違います。
| できごと | ふだんの言葉で | 簿記上の取引か |
|---|---|---|
| 商品を掛けで仕入れた | 取引 | 取引になる |
| 火災や盗難で資産を失った | 取引と呼ばない | 取引になる(資産が減る) |
| 店舗を借りる契約を結んだ(お金の受け払いはまだ) | 取引 | 取引にならない |
| 商品の注文を受けた・注文した | 取引 | 取引にならない |
取引は、次の借方の要素と貸方の要素の組み合わせで表します。仕訳では借方と貸方の金額が必ず等しくなるので、すべての勘定の借方合計と貸方合計も一致します(貸借平均の原理)。
| 借方の要素 | 貸方の要素 |
|---|---|
| 資産の増加 | 資産の減少 |
| 負債の減少 | 負債の増加 |
| 純資産の減少 | 純資産の増加 |
| 費用の発生 | 収益の発生 |
帳簿の種類と記録の流れ
- 取引は、証ひょう(請求書・領収書など)や伝票(入金・出金・振替伝票)をもとに仕訳します。
- 主要簿は、すべての取引を記録する仕訳帳(発生順)と総勘定元帳(勘定科目ごと)の2つです。仕訳帳から総勘定元帳へ書き移すことを転記といいます。
- 補助簿は、主要簿の記録を補う明細の帳簿です。取引の明細を記録する補助記入帳(現金出納帳・当座預金出納帳・小口現金出納帳・仕入帳・売上帳)と、勘定の明細を相手先や品目ごとに記録する補助元帳(商品有高帳・売掛金元帳・買掛金元帳・固定資産台帳)があります。
受取手形記入帳・支払手形記入帳は、手形が3級の範囲から外れるため、2027年4月1日以降の試験では出ません。
決算の手続き
- 決算整理前残高試算表を作り、期中の記入を確かめる
- 決算整理(売上原価の算定・減価償却・貸倒引当金の設定・経過勘定など)の仕訳をして転記する
- 決算整理後残高試算表を作る
- 収益・費用の勘定の残高を損益勘定に振り替え、当期純損益を繰越利益剰余金勘定に振り替える
- 帳簿を締め切る(英米式決算法。資産・負債・純資産の勘定は残高を「次期繰越」として締め切り、翌期の最初に「前期繰越」と記入する)
- 損益計算書と貸借対照表を作る
精算表は、試算表から決算整理を経て損益計算書・貸借対照表を作るまでを1つの表にまとめたものです(3級は8桁精算表)。
2027年度に3級に入る用語
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 販売のつど売上原価勘定に振り替える方法 | 仕入れた商品を商品勘定(資産)に記入し、売り上げるたびに原価を売上原価勘定(費用)に振り替える方法 |
| 除却・廃棄 | 使わなくなった固定資産を帳簿から取り除くこと。帳簿価額との差は固定資産除却損 |
| 定率法 | 帳簿価額(取得原価−減価償却累計額)に償却率を掛けて減価償却費を求める方法。償却率は問題で与えられる |
| クレジット売掛金(キャッシュレス決済を含む) | クレジットカードやQRコード決済などで売り上げた代金を、後日、決済会社から受け取る権利 |
複数の預金口座の管理も出題区分表に明記されました。改定の全体は2027年度の改定をご覧ください。
語群選択の解き方
- 文全体を読んで何の手続きの話かをつかみ、空欄の前後(「〜という」「〜勘定に振り替える」など)から、入る語の種類を絞ります。
- 確かな空欄から埋め、使った語を語群から消します。同じ語を2回使えるかは問題の指示に従います。
- 似た語(試算表と精算表、次期繰越と前期繰越、定額法と定率法など)は、違いを一言で言えるようにしておきます。
例題
例題1
次の文の空欄(ア)〜(エ)に当てはまる語を、下の語群から選びなさい。「会社の一定時点の財政状態を表す表を(ア)という。(ア)では、資産の合計が、負債と(イ)の合計に等しくなる。一方、一定期間の経営成績を表す表を(ウ)といい、収益から(エ)を差し引いて当期純利益を示す。」〔語群〕損益計算書・貸借対照表・試算表・純資産・費用・収益・売上原価
答えと解説
| 空欄 | 語句 |
|---|---|
| ア | 貸借対照表 |
| イ | 純資産 |
| ウ | 損益計算書 |
| エ | 費用 |
- 「一定時点の財政状態」を表すのは貸借対照表、「一定期間の経営成績」を表すのは損益計算書。
- 貸借対照表では、資産=負債+純資産。
- 当期純利益は収益から費用を引いた額。売上原価だけを引いた額は売上総利益で、当期純利益ではない。
ひっかけ:時点と期間を取り違えない。試算表は帳簿の記入を確かめる表で、財務諸表ではない。
例題2
次の文の空欄(ア)〜(エ)に当てはまる語を、下の語群から選びなさい。「簿記でいう取引は、資産・負債・純資産を増減させたり、収益・費用を発生させたりするできごとである。倉庫の商品が(ア)にあったときは、ふだんは取引と呼ばないが、資産が減るので簿記上の取引になる。反対に、店舗を借りる(イ)を結んだだけでは、まだ何も増減していないので簿記上の取引にならない。取引は借方の要素と貸方の要素の組み合わせで表され、収益の発生は(ウ)の要素である。どの取引も借方と貸方の金額が等しいので、すべての勘定の借方の合計と貸方の合計は必ず一致する。これを(エ)という。」〔語群〕盗難・注文・契約・借方・貸方・貸借平均の原理・試算表・転記
答えと解説
| 空欄 | 語句 |
|---|---|
| ア | 盗難 |
| イ | 契約 |
| ウ | 貸方 |
| エ | 貸借平均の原理 |
- 盗難や火災で資産が減るのは、ふだんの言葉では取引と呼ばないが、簿記上の取引になる。
- 契約を結んだだけ、注文を受けただけでは資産・負債などが増減しないので、簿記上の取引にならない。店舗を借りる「契約を結ぶ」が文に合う。
- 収益の発生は貸方の要素。費用の発生が借方の要素。
- 借方合計と貸方合計が一致することを貸借平均の原理という。試算表は、この原理を使って誤りを確かめる表の名前。
ひっかけ:(エ)に試算表を選ばない。「これを〜という」は原理の名前を問うている。
例題3
次の文の空欄(ア)〜(カ)に当てはまる語を、下の語群から選びなさい。「取引を発生した順に仕訳して記入する帳簿を(ア)といい、仕訳を勘定科目ごとに書き移して記録する帳簿を(イ)という。仕訳を(イ)に書き移すことを(ウ)という。この2つの帳簿は、すべての取引を記録するので(エ)と呼ばれる。これに対して、特定の取引や勘定の明細を記録する帳簿を補助簿といい、商品の種類ごとに受入れ・払出し・残高を数量・単価・金額で記録する(オ)や、得意先ごとに売掛金の増減を記録する(カ)がある。」〔語群〕仕訳帳・総勘定元帳・主要簿・転記・締切・商品有高帳・仕入帳・売上帳・売掛金元帳
答えと解説
| 空欄 | 語句 |
|---|---|
| ア | 仕訳帳 |
| イ | 総勘定元帳 |
| ウ | 転記 |
| エ | 主要簿 |
| オ | 商品有高帳 |
| カ | 売掛金元帳 |
- 取引を発生順に記録するのは仕訳帳、勘定科目ごとに記録するのは総勘定元帳。この2つが主要簿。
- 仕訳帳から総勘定元帳へ書き移すことは転記。締切は、期末に勘定を締めくくる手続き。
- 商品の種類ごとに数量・単価・金額で受入れ・払出し・残高を記録するのは商品有高帳。仕入帳・売上帳は仕入・売上の取引の明細を記録する帳簿で、残高は記録しない。
- 得意先ごとの売掛金の明細は売掛金元帳(得意先元帳)。
ひっかけ:商品有高帳と仕入帳を取り違えない。商品有高帳は原価で記録し、払出し(売り上げた分)も原価で書く。
例題4
次の文の空欄(ア)〜(オ)に当てはまる語を、下の語群から選びなさい。「決算では、はじめに総勘定元帳の各勘定の残高を集めた(ア)を作り、期中の記入に誤りがないかを確かめる。次に、減価償却費の計上や貸倒引当金の設定など、期末の状況に合わせて勘定の残高を直す(イ)を行う。そのうえで、収益と費用の勘定の残高を(ウ)勘定に振り替えて当期純利益を求め、当期純利益を(エ)勘定に振り替える。資産・負債・純資産の勘定は、残高を(オ)として記入して締め切る(英米式決算法)。」〔語群〕決算整理前残高試算表・精算表・決算整理・再振替・損益・繰越利益剰余金・資本金・次期繰越・前期繰越
答えと解説
| 空欄 | 語句 |
|---|---|
| ア | 決算整理前残高試算表 |
| イ | 決算整理 |
| ウ | 損益 |
| エ | 繰越利益剰余金 |
| オ | 次期繰越 |
- 決算のはじめに、期中の記入を確かめるために作るのは決算整理前残高試算表。精算表は、試算表から財務諸表までを1つにまとめた表。
- 期末の状況に合わせて残高を直す手続きは決算整理。再振替は、翌期の最初に経過勘定などを元の勘定に戻す仕訳。
- 収益・費用の残高は損益勘定に集め、その差額の当期純利益は繰越利益剰余金勘定に振り替える。資本金には振り替えない。
- 資産・負債・純資産の勘定は、残高を次期繰越として締め切る。前期繰越は翌期の最初に書く。
ひっかけ:次期繰越(締め切るとき)と前期繰越(翌期の最初)を取り違えない。
例題52027年4月から
次の文は、2027年4月1日以降の試験で3級の範囲に入る処理についての文である。空欄(ア)〜(オ)に当てはまる語を、下の語群から選びなさい。「商品を売り上げるたびに、その商品の原価を(ア)勘定に振り替える方法では、商品を仕入れたときに(イ)勘定の借方に記入する。また、使わなくなった備品などを帳簿から取り除くことを(ウ)といい、帳簿価額(未償却残高)に一定の償却率を掛けて減価償却費を求める方法を(エ)という。QRコード決済などのキャッシュレス決済で商品を売り上げ、代金を後日、決済会社から受け取る権利は(オ)勘定で処理する。」〔語群〕売上原価・仕入・商品・繰越商品・除却・売却・定額法・定率法・クレジット売掛金・電子記録債権
答えと解説
| 空欄 | 語句 |
|---|---|
| ア | 売上原価 |
| イ | 商品 |
| ウ | 除却 |
| エ | 定率法 |
| オ | クレジット売掛金 |
- 販売のつど売上原価勘定に振り替える方法では、仕入れた商品を商品勘定(資産)の借方に記入し、売り上げたときに原価を商品勘定から売上原価勘定(費用)へ振り替える。三分法の仕入勘定・繰越商品勘定は使わない。
- 使わなくなった固定資産を帳簿から取り除くのは除却。売却は代金を受け取って手放すこと。
- 帳簿価額に償却率を掛けるのは定率法。定額法は、取得原価を耐用年数で割って毎期同じ額にする方法。
- キャッシュレス決済で後日受け取る代金は、クレジット売掛金に含める(出題区分表の「クレジット売掛金(キャッシュレス決済を含む)」)。
ひっかけ:(イ)に仕入を選ばない。仕入勘定を使うのは三分法。
まちがえやすい点
- 貸借対照表(一定時点)と損益計算書(一定期間)を取り違える
- 火災・盗難による損失を取引ではないと考える(資産が減るので簿記上の取引です)。契約・注文だけでは取引になりません
- 主要簿を「仕訳帳と補助簿」とする(主要簿は仕訳帳と総勘定元帳です)
- 商品有高帳を売価で記録する(受入れ・払出し・残高とも原価で記録します)
- 試算表と精算表を取り違える(精算表は財務諸表を作るまでを1つにまとめた表です)
- 当期純利益を資本金勘定に振り替える(3級の株式会社では繰越利益剰余金勘定です)
関連する論点は、証ひょうからの仕訳、試算表、決算振替・帳簿の締切、固定資産台帳、販売のつど売上原価に振り替える方法、除却・廃棄、売掛金・買掛金・クレジット売掛金、減価償却のページで確かめてください。
よくある質問
主要簿と補助簿の違いは何ですか?
主要簿はすべての取引を記録する仕訳帳と総勘定元帳の2つです。補助簿は、現金出納帳・売掛金元帳・商品有高帳など、特定の取引や勘定の明細を記録して主要簿を補う帳簿です。
簿記上の取引にならないものは何ですか?
資産・負債・純資産が増減せず、収益・費用も発生しないできごとです。契約を結んだだけ、注文を受けただけ、といった場合は簿記上の取引になりません。
取引の8要素とは何ですか?
借方の要素(資産の増加・負債の減少・純資産の減少・費用の発生)と、貸方の要素(資産の減少・負債の増加・純資産の増加・収益の発生)の8つです。どの取引も、借方の要素と貸方の要素の組み合わせで表せます。
出典:日本商工会議所「商工会議所簿記検定試験出題区分表」(2027年度 確定版)(2026-10-29 確認)
当サイトは日本商工会議所・各地の商工会議所とは関係ありません。問題はすべて当サイトのオリジナルです。執筆・編集:試験対策プロジェクトチーム(スタジオインサイト)。このページの最終更新 。