試算表の作り方(日商簿記3級)
試算表は、総勘定元帳のすべての勘定の金額を1つの表に集めたもので、仕訳と転記に誤りがないかを確かめるために作ります。3級では、合計試算表・残高試算表・合計残高試算表の3つの形があり、前月末の試算表に当月の取引を加えて当月末の試算表を作る問題が出ます。勘定への転記や、貸借が合わないときの誤りの見つけ方も問われます。
要点
- 仕訳はどれも借方と貸方が同じ金額です。正しく転記していれば、すべての勘定の借方の合計と貸方の合計は一致します。これを貸借平均の原理といい、試算表はこの原理で誤りを確かめます。
- 合計試算表には、勘定ごとの借方の合計と貸方の合計を書きます。
- 残高試算表には、勘定ごとの残高(借方の合計と貸方の合計の差額)を、金額の多い側に書きます。
- 合計残高試算表は、合計と残高を1つの表にまとめたものです。
- 勘定は、資産・負債・純資産・収益・費用の順に並べます。
| 試算表 | 書く金額 | 合計の金額 |
|---|---|---|
| 合計試算表 | 勘定ごとの借方合計・貸方合計 | 仕訳帳の合計(その期間のすべての仕訳の金額)と同じ |
| 残高試算表 | 勘定ごとの残高(多い側だけ) | 借方残高の合計=貸方残高の合計 |
| 合計残高試算表 | 合計と残高の両方 | 合計の欄と残高の欄で、それぞれ貸借が一致 |
勘定の残高が出る側
| 要素 | 増えたとき(発生) | 残高の側 | 主な勘定 |
|---|---|---|---|
| 資産 | 借方 | 借方 | 現金・普通預金・売掛金・繰越商品・備品 |
| 負債 | 貸方 | 貸方 | 買掛金・借入金・未払金 |
| 純資産 | 貸方 | 貸方 | 資本金・繰越利益剰余金 |
| 収益 | 貸方 | 貸方 | 売上・受取手数料 |
| 費用 | 借方 | 借方 | 仕入・給料・支払家賃 |
月中の取引から試算表を作る手順
- 当月の取引を仕訳します(下書きは科目と金額だけで十分です)。
- 仕訳を勘定科目ごとに集計します。
- 合計試算表なら前月末の合計に当月の集計を足し、残高試算表なら前月末の残高に当月の増減を足し引きします。
- 残高を出し、貸借の合計の一致を確かめます。合計の欄は「前月末の合計+当月の仕訳の金額の合計」になります。
転記と勘定の記入
- 転記は、仕訳帳の仕訳を総勘定元帳の勘定に書き移すことです。仕訳の借方の科目はその勘定の借方に、貸方の科目は貸方に書きます。
- 勘定には日付・摘要・金額を書きます。摘要は相手の勘定科目で、相手が2つ以上なら「諸口」と書きます。
- 勘定の締切は決算で行います。資産・負債・純資産の勘定は「次期繰越」で締め切り、収益・費用の勘定は損益勘定へ振り替えて締め切ります(決算振替・帳簿の締切)。
貸借が合わないときの見つけ方
- まず試算表の足し算を計算し直し、借方と貸方の差額を出します。
- 差額と同じ金額の取引があれば、片方だけの転記漏れや二重の転記を疑います。
- 差額がある金額のちょうど2倍なら、借方に書く金額を貸方に書いた(反対側に転記した)可能性があります。
- 差額が9で割り切れるなら、数字の入れ違い(145,000 を 154,000 と書いたなど)や、けたの誤りの可能性があります。
一方で、仕訳の漏れ、借方・貸方とも二重の転記、勘定科目の誤り、貸借の両方で同じ金額の誤りは、貸借が一致したままなので試算表では見つかりません。
例題
| 勘定科目 | 借方合計 | 貸方合計 |
|---|---|---|
| 現金 | 860,000 | 615,000 |
| 普通預金 | 2,340,000 | 1,580,000 |
| 売掛金 | 1,450,000 | 970,000 |
| 買掛金 | 830,000 | 1,210,000 |
| 資本金 | 1,000,000 | |
| 売上 | 30,000 | 1,880,000 |
| 仕入 | 1,290,000 | 40,000 |
| 給料 | 495,000 | |
| 合計 | 7,295,000 | 7,295,000 |
例題1
上の資料をもとに、X1年4月30日の残高試算表を作成しなさい。
答えと解説
| 借方残高 | 勘定科目 | 貸方残高 |
|---|---|---|
| 245,000 | 現金 | |
| 760,000 | 普通預金 | |
| 480,000 | 売掛金 | |
| 買掛金 | 380,000 | |
| 資本金 | 1,000,000 | |
| 売上 | 1,850,000 | |
| 1,250,000 | 仕入 | |
| 495,000 | 給料 | |
| 3,230,000 | 合計 | 3,230,000 |
- 勘定ごとに「借方合計 − 貸方合計」を計算し、多い側に残高を書く。現金は ¥860,000 − ¥615,000 = ¥245,000(借方)。
- 負債・純資産・収益は貸方に残高が出る。買掛金は ¥1,210,000 − ¥830,000 = ¥380,000、売上は ¥1,880,000 − ¥30,000 = ¥1,850,000(貸方)。
- 仕入は返品の分を引いて ¥1,290,000 − ¥40,000 = ¥1,250,000(借方)。
- 借方残高の合計 ¥245,000 + ¥760,000 + ¥480,000 + ¥1,250,000 + ¥495,000 = ¥3,230,000、貸方残高の合計 ¥380,000 + ¥1,000,000 + ¥1,850,000 = ¥3,230,000 で一致する。
ひっかけ:売上の借方(返品)、仕入の貸方(返品)を見落とさない。合計をそのまま残高にしない。
| 借方合計 | 勘定科目 | 貸方合計 |
|---|---|---|
| 1,240,000 | 現金 | 1,050,000 |
| 3,680,000 | 普通預金 | 2,410,000 |
| 2,150,000 | 売掛金 | 1,520,000 |
| 260,000 | 繰越商品 | |
| 1,310,000 | 買掛金 | 1,890,000 |
| 資本金 | 1,500,000 | |
| 40,000 | 売上 | 2,450,000 |
| 1,630,000 | 仕入 | 30,000 |
| 540,000 | 給料 | |
| 10,850,000 | 合計 | 10,850,000 |
| 番号 | 取引 |
|---|---|
| (1) | 商品 ¥320,000 を掛けで仕入れた。 |
| (2) | 商品 ¥450,000 を掛けで売り上げた。 |
| (3) | 商品 ¥90,000 を売り上げ、代金は現金で受け取った。 |
| (4) | 売掛金 ¥380,000 が普通預金口座に振り込まれた。 |
| (5) | 買掛金 ¥270,000 を普通預金口座から振り込んで支払った。 |
| (6) | 給料 ¥160,000 を普通預金口座から支払った。 |
| (7) | (1)で仕入れた商品のうち ¥20,000 を品違いのため返品し、買掛金と相殺した。 |
| (8) | 現金 ¥50,000 を普通預金口座に預け入れた。 |
例題2
上の資料1と資料2をもとに、6月30日の合計残高試算表を作成しなさい。なお、商品売買は三分法で記帳している。
答えと解説
| 借方残高 | 借方合計 | 勘定科目 | 貸方合計 | 貸方残高 |
|---|---|---|---|---|
| 230,000 | 1,330,000 | 現金 | 1,100,000 | |
| 1,270,000 | 4,110,000 | 普通預金 | 2,840,000 | |
| 700,000 | 2,600,000 | 売掛金 | 1,900,000 | |
| 260,000 | 260,000 | 繰越商品 | ||
| 1,600,000 | 買掛金 | 2,210,000 | 610,000 | |
| 資本金 | 1,500,000 | 1,500,000 | ||
| 40,000 | 売上 | 2,990,000 | 2,950,000 | |
| 1,900,000 | 1,950,000 | 仕入 | 50,000 | |
| 700,000 | 700,000 | 給料 | ||
| 5,060,000 | 12,590,000 | 合計 | 12,590,000 | 5,060,000 |
- 6月中の取引を仕訳する。(1) 仕入/買掛金 ¥320,000、(2) 売掛金/売上 ¥450,000、(3) 現金/売上 ¥90,000、(4) 普通預金/売掛金 ¥380,000、(5) 買掛金/普通預金 ¥270,000、(6) 給料/普通預金 ¥160,000、(7) 買掛金/仕入 ¥20,000、(8) 普通預金/現金 ¥50,000。
- 5月31日の合計に6月の金額を足す。普通預金の借方合計は ¥3,680,000 + ¥380,000 + ¥50,000 = ¥4,110,000、貸方合計は ¥2,410,000 + ¥270,000 + ¥160,000 = ¥2,840,000。
- 買掛金の借方合計は ¥1,310,000 + ¥270,000 + ¥20,000 = ¥1,600,000、貸方合計は ¥1,890,000 + ¥320,000 = ¥2,210,000、残高は貸方 ¥610,000。
- 6月の仕訳の金額の合計は ¥1,740,000。合計の欄は ¥10,850,000 + ¥1,740,000 = ¥12,590,000 で貸借が一致する。残高の欄も借方・貸方とも ¥5,060,000 で一致する。
- 記入がない繰越商品も、5月31日の金額のまま載せる。
ひっかけ:(7)の返品は仕入勘定の貸方と買掛金勘定の借方。仕入の借方から直接引かずに、貸方合計に足す。
| 日付 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 7月3日 | 普通預金 250,000 | 売掛金 250,000 |
| 7月9日 | 買掛金 180,000・支払手数料 550 | 普通預金 180,550 |
| 7月15日 | 普通預金 120,000・売掛金 80,000 | 売上 200,000 |
| 7月25日 | 給料 150,000 | 普通預金 150,000 |
例題3
上の仕訳を総勘定元帳の普通預金勘定に転記する。普通預金勘定に記入する日付、借方・貸方のどちらか、摘要、金額を答えなさい。また、7月1日の普通預金勘定の残高は借方 ¥640,000 で、7月の普通預金の取引は上の仕訳だけである。7月31日の普通預金勘定の残高を、借方・貸方のどちらの残高かとあわせて答えなさい。なお、相手の勘定科目が 2 つ以上ある仕訳の摘要は「諸口」とする。
答えと解説
| 日付 | 借方・貸方 | 摘要 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 7月3日 | 借方 | 売掛金 | 250,000 |
| 7月9日 | 貸方 | 諸口 | 180,550 |
| 7月15日 | 借方 | 売上 | 120,000 |
| 7月25日 | 貸方 | 給料 | 150,000 |
| 7月31日 | 残高(借方) | 679,450 |
- 普通預金が借方にある仕訳は普通預金勘定の借方へ、貸方にある仕訳は貸方へ書く。
- 摘要には相手の勘定科目を書く。7月3日は売掛金、7月15日は売上、7月25日は給料。
- 7月9日は相手の科目が買掛金と支払手数料の2つなので、摘要は「諸口」とする。
- 7月31日の残高は ¥640,000 + ¥250,000 + ¥120,000 − ¥180,550 − ¥150,000 = ¥679,450(借方)。
ひっかけ:7月15日の売掛金 ¥80,000 は普通預金勘定に書かない。摘要に自分の勘定(普通預金)を書かない。
| 記号 | 誤り |
|---|---|
| ア | 給料 ¥145,000 を普通預金口座から支払った取引で、給料勘定の借方に ¥154,000 と転記した(普通預金勘定への転記は正しい)。 |
| イ | 売掛金 ¥63,000 が普通預金口座に振り込まれた取引を、普通預金勘定と売掛金勘定の両方に二重に転記した。 |
| ウ | 商品 ¥82,000 を掛けで仕入れた取引で、買掛金勘定への転記を忘れた(仕入勘定への転記は正しい)。 |
| エ | 事務所で使う備品 ¥70,000 を購入した取引を、消耗品費として仕訳し、そのまま転記した。 |
例題4
9月30日の残高試算表を作成したところ、合計が借方 ¥3,159,000、貸方 ¥3,068,000 で一致しなかった。調べたところ、上のア〜エの誤りが見つかった。誤りはこの4つだけである。ア〜エのそれぞれについて、その誤りだけで残高試算表の貸借が一致しなくなるか(「一致しない」)、一致したままか(「一致する」)を答えなさい。また、誤りを直した後の残高試算表の合計を答えなさい。一致したままの誤りは、合計への影響を「合計は変わらない」とし、どの勘定の残高がずれるかを書く。
答えと解説
| 記号 | 貸借 | 合計への影響 |
|---|---|---|
| ア | 一致しない | 借方が ¥9,000 多くなる |
| イ | 一致する | 合計は変わらない(普通預金が多く、売掛金が少なくなる) |
| ウ | 一致しない | 貸方が ¥82,000 少なくなる |
| エ | 一致する | 合計は変わらない(備品が少なく、消耗品費が多くなる) |
| 直した後の合計 | 借方・貸方とも ¥3,150,000 |
- ア:給料の借方だけ ¥154,000 − ¥145,000 = ¥9,000 多い。差額 ¥9,000 は9で割り切れ、数字の並びの入れ違いでよく出る形。
- イ:普通預金(借方残高)が ¥63,000 多く、売掛金(借方残高)が ¥63,000 少ない。どちらも借方の中なので、合計は変わらない。
- ウ:買掛金の貸方の記入がないので、貸方残高が ¥82,000 少ない。
- エ:備品と消耗品費はどちらも借方に残高が出る勘定なので、合計は変わらない。
- 直した後の合計は、借方 ¥3,159,000 − ¥9,000 = ¥3,150,000、貸方 ¥3,068,000 + ¥82,000 = ¥3,150,000 で一致する。
ひっかけ:イ・エは試算表の貸借が一致したままなので、試算表では見つからない誤り。差額 ¥91,000 だけを探しても、イ・エは見つからない。
まちがえやすい点
- 残高試算表で、合計の金額をそのまま書く(残高は借方合計と貸方合計の差額です)
- 仕入勘定の貸方(返品)、売上勘定の借方(返品)を落とす
- 前月末の残高試算表に当月の取引を足すとき、負債・収益の勘定で増減の向きを逆にする(貸方への記入で増えます)
- 当月に取引がない勘定(繰越商品など)を書き落とす。前月末の金額のまま試算表に載せます
- 摘要に自分の勘定科目を書く(摘要は相手の勘定科目、相手が2つ以上なら「諸口」)
- 試算表の貸借が一致すれば誤りはないと考える(科目の誤りや仕訳の漏れは見つかりません)
試算表の作成は、2027年度の出題区分表でも3級の「決算」の最初の項目で、改定による変更はありません。決算で行う勘定の締切は決算振替・帳簿の締切、誤りを見つけた後の直し方は訂正仕訳をご覧ください。
よくある質問
合計試算表と残高試算表の違いは何ですか?
合計試算表は勘定ごとの借方合計と貸方合計を、残高試算表はその差額(残高)を多い側に書きます。合計試算表の合計は仕訳の金額の合計と一致し、残高試算表からは財政状態と経営成績の大まかな姿が分かります。
試算表の貸借が一致すれば、帳簿に誤りはありませんか?
そうとはかぎりません。仕訳そのものの漏れ、勘定科目の誤り、借方・貸方の両方に同じ誤りがある場合などは、貸借が一致したままなので試算表では見つかりません。
試算表はいつ作りますか?
決算のはじめに、決算整理の前の試算表(決算整理前残高試算表)を作ります。月末ごとに作って、その月の記帳を確かめることもあります。
出典:日本商工会議所「商工会議所簿記検定試験出題区分表」(2027年度 確定版)(2026-10-29 確認)
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