会計処理の正誤(前受利息・正規の簿記・明瞭性・自己株式・社債発行費・新株予約権付社債・CF計算書・償却方法の変更)
これは建設業経理士1級 財務諸表 第37回(2025年9月7日(日)実施) 第3問(配点 16点)の問題です。論点は「純資産・持分・株主資本等変動計算書」(重要度A・解答の形はA/B(第39 回から A/B+修正箇所+修正内容の記号))。採点すると、解き方 8 手順・引っかけの指摘が読めます。
財務会計に関するわが国の基本的な考え方に照らして、以下の各文章(1〜8)のうち、全体が正しいと認められるものには「A」、認められないものには「B」を解答用紙の所定の欄に記入しなさい。
1.受取利息を入金時に認識してきたため、期末に期間未経過のもの(前受分)が含まれていたが、その金額が相対的に小さいために期末整理を行わず、その全額を当期の損益計算に収益として計上した。
2.正規の簿記の原則は、帳簿記録の網羅性、検証可能性および秩序性を要請すると同時に、財務諸表がかかる会計記録に基づいて作成されるべきことを求めたものである。ここにいう記録の網羅性とは、どんな取引項目も完全に記録することを求めている。
3.明瞭性の原則は、財務諸表の利用者が広く社会の各階層に及んでいる事実認識を前提に、財務諸表の形式に関し、目的適合性、概観性と詳細性の調和、表示形式の個別性など、一定の要件を満たすことを要請する規範理念である。
4.保有していた自己株式を売却したが、その際に処分差損が発生した。当該差損を資本剰余金から減額したが、減額しきれなかったので、不足分を利益剰余金(繰越利益剰余金)から減額した。
5.当期(決算日:3月31日)の 10月1日に社債(償還期間 3年)を発行し、その際に募集広告費等に ¥300,000 支出した。これを社債発行費として繰延処理し、定額法で償却することとした。これにより、当期の決算時に償却費 ¥100,000 を計上した。
6.新株予約権付社債を発行し、その払込金額(社債と新株予約権の合計額)をもって新株予約権付社債として会計処理した。
7.建設業を事業目的としている当社は、短期売買(トレーディング)目的で甲社株式を購入した。なお、キャッシュ・フロー計算書において、当該売買にかかるキャッシュ・フローは、その保有目的に合わせて営業活動によるキャッシュ・フローの区分に計上した。
8.機械装置の減価償却方法を、正当な理由により、定額法から定率法に変更した。減価償却方法の変更は会計方針の変更に該当するので、「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」に従い遡及処理を適用した。
解答欄
正解
| 1 | A |
|---|---|
| 2 | B |
| 3 | B |
| 4 | B |
| 5 | B |
| 6 | B |
| 7 | B |
| 8 | B |
解き方
- 1.A。前受収益などの経過勘定項目のうち重要性の乏しいものは、重要性の原則により経過勘定として処理しないことができる(企業会計原則注解 1)。金額が相対的に小さい前受利息を期末整理せず当期の収益に含めても、正規の簿記の原則に反しない。
- 2.B。正規の簿記の原則が求める網羅性は、すべての取引項目を完全に記録することを必ずしも要求しない。重要性の乏しいものは簡便な処理が認められ、その結果生じる簿外資産・簿外負債も正規の簿記の原則に反しない。
- 3.B。明瞭性の原則が財務諸表の形式に求める要件は、目的適合性、概観性と詳細性の調和、表示形式の「統一性と継続性」。「表示形式の個別性」ではない。
- 4.B。自己株式処分差損は「その他資本剰余金」から減額し、その他資本剰余金の残高を超えて減額しきれない額を、会計期間末にその他利益剰余金(繰越利益剰余金)から減額する。資本準備金を含む「資本剰余金」全体から減額するのではない(自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準)。
- 5.B。社債発行費を繰延資産に計上した場合は、社債の償還期間(3年=36か月)にわたって償却する。当期は発行日 10月1日から決算日 3月31日までの 6か月分なので、償却額 = 300,000 × 6/36 = 50,000。年額 300,000 ÷ 3年 = 100,000 をそのまま計上するのは誤り。
- 6.B。新株予約権付社債は、転換社債型以外のものは区分法により、払込金額を社債の対価と新株予約権の対価に区分して処理しなければならない。払込金額の全体を一括して処理する一括法が認められるのは転換社債型新株予約権付社債だけで、その場合も社債(または転換社債型新株予約権付社債)として負債に計上する。
- 7.B。キャッシュ・フロー計算書では、現金同等物を除く有価証券の取得による支出・売却による収入は、投資活動によるキャッシュ・フローの区分に記載する。有価証券の売買を営業活動として営む証券会社などと異なり、建設業を事業目的とする当社では、短期売買目的の株式の売買も投資活動になる。
- 8.B。減価償却方法の変更は会計方針の変更に該当するが、「会計上の見積りの変更」と同様に扱い、遡及適用はしない。変更後の方法を変更した期の期首帳簿価額から将来にわたって適用する。
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第37回の前後の問題
出典:一般財団法人 建設業振興基金が実施した建設業経理士1級 財務諸表 第37回(2025年9月7日(日)実施) 第3問。問題文は本試験の問題にもとづいています。解答・解説・論点の整理は資格試験対策.netの独自コンテンツです。最終更新 。この問題の誤りを報告する