会計処理の正誤(退職給付・引当金の要件・CF計算書の区分・自己株式の付随費用・創立費・積立金・ソフトウェア)
これは建設業経理士1級 財務諸表 第36回(2025年3月9日(日)実施) 第3問(配点 16点)の問題です。論点は「純資産・持分・株主資本等変動計算書」(重要度A・解答の形はA/B(第39 回から A/B+修正箇所+修正内容の記号))。採点すると、解き方 8 手順・引っかけの指摘が読めます。
財務会計に関するわが国の基本的な考え方に照らして、以下の各文章(1〜8)のうち、全体が正しいと認められるものには「A」、認められないものには「B」を解答用紙の所定の欄に記入しなさい。
1.当社は、従業員の退職給付について、確定給付型退職給付制度を採用し、外部の信託銀行に退職給付基金を積み立てている。当期末、退職した従業員に対して当該基金から退職金が支払われ、退職給付債務が減少したので退職給付引当金を減額した。
2.期末に保有する工事用原材料の将来の価格下落による損失に備えるため、その残高に対して 3% の引当金を設定した。
3.当期の工事で使用していた機械が故障したが、今後の工事に支障がないために修理は次期に行うこととした。これに伴い発生する修繕費については、その金額が少額であると見込まれるため、当期においては修繕引当金を計上しないこととした。
4.建設現場で使用する機械を購入したが、当社の資金繰りの関係上、販売会社に代金は 5回の分割払いとすることを申し入れ承諾された。当期のキャッシュ・フロー計算書では、当該分割払いが当社にとっては資金調達に該当するため、決算時に支払済みとなっていた 3回分の分割代金は財務活動によるキャッシュ・フローの区分に計上した。
5.決算において財務諸表を作成するにあたり、当期に取得した自己株式の取得原価を貸借対照表の純資産の部の株主資本から控除した。なお、自己株式の取得原価は、取得に要した付随費用も含めて算定した。
6.株式会社は、その設立時に、定款に定められた発行可能株式総数の 4分の1 以上の株式を発行しなければならないが、株式募集のための広告費等、この発行に要した諸経費は株式交付費として処理する。株式交付費は支出時に費用として処理することを原則とするが、これを繰延資産として 3年内に償却することが実務上認められている。
7.積立金は、その取崩が会社の純資産の額の減少を前提にするか否かを基準に、積極性積立金と消極性積立金の 2つに分類される。これらのうち、その取崩が純資産の額の減少を前提とするものを消極性積立金といい、前提としないものを積極性積立金という。
8.期首に、得意先への証票発行事務の時間的ならびに経済的負担軽減を目的として専用のソフトウェアを購入した。その目的は十分に達成されていると判断できたので、「研究開発費等に係る会計基準」に従い、当該ソフトウェアの購入費を無形固定資産として貸借対照表に計上した。
解答欄
正解
| 1 | B |
|---|---|
| 2 | B |
| 3 | A |
| 4 | A |
| 5 | B |
| 6 | B |
| 7 | A |
| 8 | A |
解き方
- 1.B。退職給付引当金は、退職給付債務から年金資産を差し引いた純額で計上する。年金基金(年金資産)から退職金が支払われると、退職給付債務と年金資産が同額ずつ減るので、差額である退職給付引当金は変わらない。引当金を減額するのは誤り。
- 2.B。引当金は「将来の特定の費用又は損失で、発生が当期以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、金額を合理的に見積ることができる」場合に設定する(企業会計原則注解18)。原材料の将来の価格下落は当期以前の事象に起因せず、発生の可能性が高いともいえないので、引当金の要件を満たさない。価格下落は期末に時価が帳簿価額を下回ったときに評価損として処理する。
- 3.A。当期の使用による故障で次期に修理するので修繕引当金の要件は満たすが、注解1(重要性の原則)により、引当金のうち重要性の乏しいものは計上しないことができる。少額の修繕費について計上しない処理は認められる。
- 4.A。固定資産の分割払い(割賦購入)は、販売会社から購入代金相当の信用供与を受けた資金調達と考え、その分割代金の支払はファイナンス・リース債務の返済と同様に財務活動によるキャッシュ・フローに区分する。
- 5.B。自己株式の取得原価を純資産の部の株主資本から控除する形式で表示するのは正しいが、取得に要した付随費用(手数料など)は取得原価に含めず、支払時の営業外費用として処理する(自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準 14)。付随費用を含めて算定するのは誤り。
- 6.B。会社の設立時に発行する株式の募集広告費などの発行費用は創立費に含めて処理する。株式交付費は会社成立後の新株発行や自己株式の処分に係る費用なので、科目が誤り。株式交付費を繰延資産に計上した場合に 3年以内に定額法で償却するという記述自体は正しい。
- 7.A。積立金は、取崩しが純資産の額の減少を前提としない積極性積立金(新築積立金・減債積立金など、取崩後も金額が資本に残る)と、取崩しが純資産の額の減少を前提とする消極性積立金(配当平均積立金・欠損填補積立金など、配当や損失の填補に充てる)に分類される。定義の対応は正しい。
- 8.A。自社利用のソフトウェアは、その利用により将来の収益獲得又は費用削減が確実と認められる場合、取得に要した費用を無形固定資産(ソフトウェア)に計上する(研究開発費等に係る会計基準)。事務の負担軽減という効果が達成されているので資産計上が正しい。
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出典:一般財団法人 建設業振興基金が実施した建設業経理士1級 財務諸表 第36回(2025年3月9日(日)実施) 第3問。問題文は本試験の問題にもとづいています。解答・解説・論点の整理は資格試験対策.netの独自コンテンツです。最終更新 。この問題の誤りを報告する