会計処理の正誤(引当金・キャッシュ・フロー計算書の区分・繰延資産・ヘッジ会計の中止・新株予約権・ソフトウェア)
これは建設業経理士1級 財務諸表 第38回(2026年3月8日(日)実施) 第3問(配点 16点)の問題です。論点は「純資産・持分・株主資本等変動計算書」(重要度A・解答の形はA/B(第39 回から A/B+修正箇所+修正内容の記号))。採点すると、解き方 8 手順・引っかけの指摘が読めます。
財務会計に関するわが国の基本的な考え方に照らして、次の各文章(1〜8)のうち、全体が正しいと認められるものには「A」、認められないものには「B」を解答用紙の所定の欄に記入しなさい。
1.期末に保有する工事用原材料の将来の価格下落による損失に備えるため、その残高に対して 3% の引当金を設定した。
2.当期の工事で使用していた機械が故障したが、今後の工事に支障がないために修理は次期に行うこととした。これに伴い発生する修繕費についても、その金額が少額であったために、当期においては修繕引当金を計上しないこととした。
3.当期に行った新株式の発行による収入、自己株式の取得による支出、有価証券の取得による支出、社債の発行による収入を、キャッシュ・フロー計算書の財務活動によるキャッシュ・フローの区分に計上した。
4.当期に建設現場で使用する機械を購入したが、当社の資金繰りの関係上、販売会社に代金は 5回の分割払いとすることを申し入れ承諾された。当期のキャッシュ・フロー計算書では、当該分割払いが当社にとっては資金調達に該当するため、決算時に支払済みとなっていた 3回分の分割代金は財務活動によるキャッシュ・フローの区分に計上した。
5.第 1期首に行った市場開拓のための支出を、支出後 5期にわたり繰延経理することとしていたが、支出後 3期目の初めに当該市場から撤退することになった。しかし当該繰延経理については、当初の予定を変更せず、継続することとした。
6.保有している売買目的の債券についてデリバティブ取引によりヘッジを行ってきたが、ヘッジ手段の時価の下落が極めて大きくなったため、当該ヘッジ手段はヘッジの要件を充たさなくなったと判断し、ヘッジ会計を中止した。繰り延べてきたヘッジ手段に係る損失は、ヘッジ対象の含み益を大幅に上回っているが、これをヘッジ対象に係る損益が認識されるまで引き続き繰り延べることとした。
7.かねて発行していた新株予約権について、権利が行使されずに権利行使期限が到来したので、純資産の部に計上されていた新株予約権を利益として処理した。
8.得意先への証票発行事務の時間的および経済的負担軽減を目的として専用のソフトウェアを購入した。その目的は十分に達成されていると判断できたが、当該ソフトウェアの購入費については、「研究開発費等に係る会計基準」に従い、当期の費用として処理した。
解答欄
正解
| 1 | B |
|---|---|
| 2 | A |
| 3 | B |
| 4 | A |
| 5 | B |
| 6 | B |
| 7 | A |
| 8 | B |
解き方
- 1.B。引当金は「将来の特定の費用又は損失で、発生が当期以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、金額を合理的に見積ることができる」場合に設定する(企業会計原則注解18)。原材料の将来の価格下落は当期以前の事象に起因せず、発生の可能性が高いともいえないので、引当金の要件を満たさない。価格下落は期末に時価が帳簿価額を下回ったときに評価損として処理する。
- 2.A。修繕引当金は要件を満たせば計上するが、注解1(重要性の原則)により、引当金のうち重要性の乏しいものは計上しないことができる。少額の修繕費について計上しない処理は認められる。
- 3.B。新株式の発行による収入・自己株式の取得による支出・社債の発行による収入は財務活動によるキャッシュ・フローだが、有価証券の取得による支出は投資活動によるキャッシュ・フローに区分する。
- 4.A。固定資産の分割払い(割賦購入)は、販売会社から購入代金相当の信用供与を受けた資金調達と考え、その分割代金の支払はファイナンス・リース債務の返済と同様に財務活動によるキャッシュ・フローに区分する。
- 5.B。市場開拓のための支出は開発費(繰延資産)として 5年以内に償却できるが、市場からの撤退によりその支出の効果が期待されなくなったときは、未償却残高を一時に償却(費用処理)しなければならない。当初の予定どおり繰延べを継続するのは誤り。
- 6.B。ヘッジ会計の要件を満たさなくなってヘッジ会計を中止した場合、それまで繰り延べていたヘッジ手段の損益は、ヘッジ対象に係る損益が認識されるまで引き続き繰り延べる。ただし、繰り延べた損失がヘッジ対象の含み益を上回るときは、その上回る部分を当期の損失として処理する(金融商品会計基準 34)。全額を繰り延べ続けるのは誤り。
- 7.A。新株予約権が行使されずに権利行使期限が到来したときは、純資産の部に計上していた新株予約権を利益(原則として特別利益)として処理する。株主との資本取引ではないので、資本剰余金にはしない。
- 8.B。自社利用のソフトウェアは、その利用により将来の収益獲得又は費用削減が確実と認められる場合、取得に要した費用を無形固定資産(ソフトウェア)に計上し、利用可能期間(原則 5年以内)で償却する。事務の負担軽減という効果が達成されているのに費用処理するのは誤り。研究開発費として費用処理するのは研究開発目的のソフトウェアの場合。
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第38回の前後の問題
出典:一般財団法人 建設業振興基金が実施した建設業経理士1級 財務諸表 第38回(2026年3月8日(日)実施) 第3問。問題文は本試験の問題にもとづいています。解答・解説・論点の整理は資格試験対策.netの独自コンテンツです。最終更新 。この問題の誤りを報告する