第35回 第3問 論点:純資産・持分・株主資本等変動計算書重要度 A配点 16点未着手

会計処理の正誤(簿外負債・前受利息・CF計算書の区分・繰延資産・株式交付費・自己株式・新株予約権・債務保証損失引当金)

これは建設業経理士1級 財務諸表 第35回(2024年9月8日(日)実施) 第3問(配点 16点)の問題です。論点は「純資産・持分・株主資本等変動計算書」(重要度A・解答の形はA/B(第39 回から A/B+修正箇所+修正内容の記号))。採点すると、解き方 8 手順・引っかけの指摘が読めます。

財務会計に関するわが国の基本的な考え方に照らして、以下の各文章(1〜8)のうち、正しいと認められるものには「A」、認められないものには「B」を解答用紙の所定の欄に記入しなさい。

1.小口の工事未払金の残高を、その金額が小さいとの理由で、簿外負債として処理した。

2.受取利息を入金時に認識してきたため、期末に期間未経過のもの(前受)が受取利息勘定に含まれていたが、その未経過の金額が相対的に小さいために期末整理を行わず、同勘定の全額を当期の損益計算に収益として計上した。

3.当期に行った新株の発行による収入、自己株式の取得による支出、有価証券の取得による支出、社債の発行による収入を、キャッシュ・フロー計算書の財務活動によるキャッシュ・フローの区分に計上した。

4.第1期首に行った市場開拓のための支出を、支出後 5期にわたり繰延経理することとしていたが、支出後 3期目の初めに当該市場から撤退することになった。しかし当該繰延経理については、当初の予定を変更せず、継続することとした。

5.株式会社の設立時に株式を発行するために要した支出は株式交付費として処理する。株式交付費は支出時に費用として処理することを原則とするが、これを繰延資産として計上し、3年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定率法により償却することが実務上認められている。

6.保有していた自己株式を売却したが、その際に発生した自己株式の帳簿価額と払込額との差額については、当期の損益として損益計算書に計上した。

7.かねて発行していた新株予約権について、権利が行使されずに権利行使期限が到来したので、純資産の部に計上されていた新株予約権の発行に伴う払込金額を利益として処理した。

8.当社は、取引先A社の借入金について、担保を設定した上で債務保証をしている。当期になってA社の経営状況が著しく悪化し、今後、経営破たんに陥る可能性が高いと判断されたので、債務保証の総額から担保の処分によって回収可能な金額を控除した金額について債務保証損失引当金を計上し、その繰入額を当期の損益計算書に計上した。

解答欄

それぞれの空欄に当てはまるものを選んで「採点する」を押してください。

正解

1B
2A
3B
4B
5B
6B
7A
8A

解き方

  1. 1.B。重要性の原則(企業会計原則注解 1)により簿外資産・簿外負債が認められるのは、消耗品、経過勘定項目、引当金、棚卸資産の付随費用など列挙された重要性の乏しい項目に限られる。工事未払金は仕入取引から生じた確定債務であり、金額が小さいことを理由に簿外負債にすることは正規の簿記の原則に反する。
  2. 2.A。前受収益などの経過勘定項目のうち重要性の乏しいものは、重要性の原則により経過勘定として処理しないことができる(注解 1 (2))。金額が相対的に小さい前受利息を期末整理せず、受取利息の全額を当期の収益にしても認められる。
  3. 3.B。新株発行による収入、自己株式の取得による支出、社債の発行による収入は財務活動によるキャッシュ・フローだが、有価証券(現金同等物を除く)の取得による支出は投資活動によるキャッシュ・フローに区分する。4 つをすべて財務活動に計上するのは誤り。
  4. 4.B。繰延資産は支出の効果が将来にわたって発現すると期待されるから資産計上が認められる。市場から撤退してその効果が失われた場合は、未償却残高を一時に償却(費用処理)しなければならず、当初の償却計画をそのまま継続することは認められない。
  5. 5.B。会社設立時の株式発行費用は株式交付費ではなく創立費として処理する。株式交付費は会社成立後の新株発行・自己株式の処分に係る費用である。また、繰延資産に計上した株式交付費は 3年以内の効果の及ぶ期間にわたり定額法で償却する(定率法ではない)。
  6. 6.B。自己株式の処分差額(払込額と帳簿価額の差額)は株主との資本取引から生じるので、損益計算書に計上せず、処分差益はその他資本剰余金に計上し、処分差損はその他資本剰余金から減額する(自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準)。
  7. 7.A。新株予約権が行使されずに権利行使期限が到来したときは、失効した新株予約権に対応する払込金額を利益(原則として特別利益)として処理する。純資産の部に計上した新株予約権は、権利行使されれば資本金等に、失効すれば利益になる。
  8. 8.A。債務保証は本来偶発債務として注記するが、主債務者の財政状態が著しく悪化し保証債務の履行の可能性が高くなったときは、損失見込額を債務保証損失引当金として計上する。損失見込額は、保証総額から担保の処分や求償権の行使により回収が見込まれる額を控除して求めるので、処理は正しい。
引っかけ:1 と 2 はどちらも「金額が小さい」が、重要性の原則で簡便処理が認められるのは経過勘定・消耗品・引当金など限られた項目で、工事未払金のような確定債務は含まれない。5 は「創立費」と「定額法」の 2 か所が誤り。3 は有価証券の取得だけが投資活動である点に気づくかどうか。

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出典:一般財団法人 建設業振興基金が実施した建設業経理士1級 財務諸表 第35回(2024年9月8日(日)実施) 第3問。問題文は本試験の問題にもとづいています。解答・解説・論点の整理は資格試験対策.netの独自コンテンツです。最終更新 。この問題の誤りを報告する