第34回 第3問 論点:純資産・持分・株主資本等変動計算書重要度 A配点 16点未着手

会計処理の正誤(一般原則・取得原価・キャッシュ・フロー・ヘッジ・ソフトウェア・株式交付費・株主資本)

これは建設業経理士1級 財務諸表 第34回(2024年3月10日(日)実施) 第3問(配点 16点)の問題です。論点は「純資産・持分・株主資本等変動計算書」(重要度A・解答の形はA/B(第39 回から A/B+修正箇所+修正内容の記号))。採点すると、解き方 8 手順・引っかけの指摘が読めます。

財務会計に関するわが国の基本的な考え方に照らして、以下の各記述(1〜8)のうち、全体が正しいと認められるものには「A」、認められないものには「B」を解答用紙の所定の欄に記入しなさい。

1.正規の簿記の原則は、帳簿記録の網羅性、検証可能性および秩序性を要請すると同時に、財務諸表がかかる会計記録に基づいて作成されるべきことを求めたものである。しかし、ここにいう記録の網羅性とは、すべての取引項目を完全に記録することを必ずしも要求していない。

2.明瞭性の原則は、財務諸表の利用者が広く社会の各階層に及んでいる事実認識を前提に、財務諸表の形式に関し、目的適合性、概観性と詳細性の調和、表示形式の統一性と継続性など、一定の要件を満たすことを要請する規範理念である。

3.工事用の機械を購入するにあたり銀行から資金を借り入れた。借入れに対する支払利息を、付随費用として当該機械の取得原価に含めることとした。

4.当期に行った新株の発行による収入、自己株式の取得による支出、配当金の支払いによる支出、社債の発行による収入を、キャッシュ・フロー計算書の財務活動によるキャッシュ・フローの区分に計上した。

5.保有している満期保有目的の債券についてデリバティブ取引によりヘッジを行ってきたが、ヘッジ手段の時価の下落が極めて大幅になったため、当該ヘッジ手段はヘッジの要件を充たさなくなったと判断し、ヘッジ会計を中止した。繰り延べてきたヘッジ手段に係る損失については、ヘッジ対象に係る損益が認識されるまで引き続き繰り延べることとした。

6.期首に、従業員の給与計算事務の時間的ならびに経済的負担軽減を目的として専用のソフトウェアを購入し、その目的は十分に達成されている。当該ソフトウェアの購入費を当期の費用として損益計算書に計上した。

7.株式会社の設立に際して株式を発行するために要した証券会社の事務手数料等の諸経費は、株式交付費として処理する。株式交付費は支出時に費用として処理することを原則とするが、これを繰延資産として 3 年内に償却することが実務上認められている。

8.企業会計原則では、株主資本を資本金と剰余金に区別するとともに、剰余金を資本剰余金と利益剰余金の 2 つに分けている。会社計算規則などの現行会計制度は、資本剰余金は資本準備金とその他資本剰余金に、利益剰余金は利益準備金とその他利益剰余金に、さらに細かく区分している。

解答欄

それぞれの空欄に当てはまるものを選んで「採点する」を押してください。

正解

1A
2A
3B
4A
5A
6B
7B
8A

解き方

  1. 1.A。正規の簿記の原則は帳簿記録の網羅性・検証可能性・秩序性と、財務諸表をその記録にもとづいて作ること(誘導法)を求める。網羅性は「すべての取引の完全な記録」までは要求せず、重要性の原則により簡便な処理や簿外資産・簿外負債が認められる。全体が正しい。
  2. 2.A。明瞭性の原則は、財務諸表の利用者が社会の各階層に広がっている事実を前提に、財務諸表の形式について目的適合性、概観性と詳細性の調和、表示形式の統一性と継続性を要請する規範理念であり、記述のとおり。
  3. 3.B。機械購入のための借入金の支払利息は財務費用であり、原則として取得原価に含めず期間費用(営業外費用)にする。取得原価に含める付随費用は引取運賃・据付費・試運転費などで、借入利息は付随費用ではない(自家建設で稼働前の期間に係る利息を原価に算入できる例外はあるが、購入の場合は該当しない)。
  4. 4.A。新株発行による収入、自己株式の取得による支出、配当金の支払い、社債の発行による収入は、いずれも資金の調達・返済に係る取引なので財務活動によるキャッシュ・フローの区分に計上する。
  5. 5.A。ヘッジ会計の要件を満たさなくなってヘッジ会計を中止した場合、それまで繰り延べていたヘッジ手段の損益は、ヘッジ対象に係る損益が認識されるまで引き続き繰り延べる(金融商品会計基準 33 項)。中止後に生じるヘッジ手段の損益は当期の損益にするが、記述は中止前に繰り延べた損失についてなので正しい。
  6. 6.B。自社利用のソフトウェアは、その利用により将来の収益獲得または費用削減が確実と認められる場合に無形固定資産(ソフトウェア)に計上する。給与計算事務の負担軽減という目的が達成されているので、購入費は資産計上して利用可能期間で償却すべきであり、当期の費用にするのは誤り。
  7. 7.B。会社の設立に際して株式を発行するための費用は「創立費」であり、株式交付費は会社成立後の新株発行や自己株式の処分に係る費用。後段の「原則費用処理、繰延資産とした場合は 3 年内に償却」は株式交付費の説明としては正しいが、設立時の費用を株式交付費とした前段が誤り。
  8. 8.A。企業会計原則は資本を資本金と剰余金に区別し、剰余金を資本剰余金と利益剰余金に分ける。会社計算規則では資本剰余金を資本準備金とその他資本剰余金に、利益剰余金を利益準備金とその他利益剰余金に区分する。記述のとおり。
引っかけ:3 は「付随費用」の語につられない。借入利息は取得原価に含めないのが原則。5 は「ヘッジ会計の中止」(繰延継続)と「ヘッジ対象の消滅」(繰延損益を当期の損益に計上)を区別する。7 は 3 年内償却の可否ではなく、設立時の費用の科目名(創立費)が論点。

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出典:一般財団法人 建設業振興基金が実施した建設業経理士1級 財務諸表 第34回(2024年3月10日(日)実施) 第3問。問題文は本試験の問題にもとづいています。解答・解説・論点の整理は資格試験対策.netの独自コンテンツです。最終更新 。この問題の誤りを報告する