第33回 第3問 論点:純資産・持分・株主資本等変動計算書重要度 A配点 16点未着手

会計処理の正誤(新株予約権の失効・退職給付・自己株式処分差損・減資差益・引当金・重要性の原則・社債発行費)

これは建設業経理士1級 財務諸表 第33回(2023年9月10日(日)実施) 第3問(配点 16点)の問題です。論点は「純資産・持分・株主資本等変動計算書」(重要度A・解答の形はA/B(第39 回から A/B+修正箇所+修正内容の記号))。採点すると、解き方 8 手順・引っかけの指摘が読めます。

財務会計に関するわが国の基本的な考え方に照らして、以下の会計処理のうち、認められるものには「A」、認められないものには「B」を解答用紙の所定の欄に記入しなさい。

1.かねて発行していた新株予約権について、権利が行使されずに権利行使期限が到来したので、純資産の部に計上されていた新株予約権の発行に伴う払込金額を資本金に振り替えた。

2.当社は、従業員の退職給付について、確定給付型退職給付制度を採用し、外部の信託銀行に退職給付基金を積み立てている。当期末、退職した従業員に対して当該基金から退職金が支払われ、退職給付債務が減少したので退職給付引当金を減額した。

3.保有していた自己株式を売却したが、その際に処分差損が発生した。当該差損をその他資本剰余金から減額したが、減額しきれなかったので、不足分をその他利益剰余金(繰越利益剰余金)から減額した。

4.事業規模を縮小するに伴い資本金を減少させた。その際に発生した差益は、当期の損益として損益計算書に計上した。

5.期末に保有する工事用原材料の将来の価格下落による損失に備えるため、その残高に対して 3% の引当金を設定した。

6.受取利息を入金時に認識してきたため、受取利息勘定の期末残高に期間未経過のものが含まれていたが、未経過の金額が相対的に小さいために期末整理を行わず、受取利息勘定の期末残高を当期の損益計算書に収益として計上した。

7.小口の買掛金の残高を、その金額が小さいとの理由で簿外負債として処理した。

8.当期(決算日は毎年 3月31日)の 10月1日に社債(償還期間 5年)を発行し、その際に募集広告費等に ¥500,000 支出した。これを社債発行費として繰延処理し、定額法で償却することとした。これにより、決算時に償却費 ¥50,000 を計上した。

解答欄

それぞれの空欄に当てはまるものを選んで「採点する」を押してください。

正解

1B
2B
3A
4B
5B
6A
7B
8A

解き方

  1. 1.B。新株予約権が行使されずに失効したときは、払込金額を新株予約権戻入益として当期の利益(特別利益)に振り替える。株式は発行されないので資本金にはならない。
  2. 2.B。年金基金(年金資産)から退職金が支払われると、退職給付債務と年金資産が同額減少し、その差額である退職給付引当金は変わらない。引当金を減額するのは会社が直接退職金を支払ったときになる。
  3. 3.A。自己株式処分差損はその他資本剰余金から減額し、その他資本剰余金が負の残高になる場合は、会計期間末にその負の残高をその他利益剰余金(繰越利益剰余金)から減額する。
  4. 4.B。減資差益は株主との資本取引から生じるので損益にせず、その他資本剰余金として純資産の部に計上する。
  5. 5.B。引当金は、将来の費用・損失の発生原因が当期以前の事象にある場合に設定する。将来の価格下落は当期以前の事象に起因せず、棚卸資産の価格下落は期末の評価(正味売却価額への切下げ)で処理するので、引当金の要件を満たさない。
  6. 6.A。前受収益のうち重要性の乏しいものは、経過勘定項目として処理しないことができる(企業会計原則注解 1)。金額が相対的に小さい未経過分をそのまま当期の収益にすることは、重要性の原則により認められる。
  7. 7.B。重要性の原則により簿外負債が認められるのは経過勘定項目や引当金など見積り・期間配分に関するものに限られ、取引によって確定した買掛金を金額が小さいという理由で帳簿から外すことは、正規の簿記の原則(網羅性)に反する。
  8. 8.A。社債発行費は繰延資産に計上した場合、社債の償還期間にわたり利息法(継続適用を条件に定額法も可)で償却する。償却額 = 500,000 × 6か月(10月1日〜3月31日)÷ 60か月 = 50,000 で金額も正しい。
引っかけ:2 は「退職給付債務が減少した」に引きずられて A にしやすい。年金資産も同額減るので引当金は動かない。6 と 7 はどちらも重要性の原則の話だが、認められるのは経過勘定の省略(6)だけで、確定債務の簿外処理(7)は認められない。8 は 500,000 ÷ 5年 = 100,000 と早合点せず、発行日からの月割(6か月分)で確かめる。

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出典:一般財団法人 建設業振興基金が実施した建設業経理士1級 財務諸表 第33回(2023年9月10日(日)実施) 第3問。問題文は本試験の問題にもとづいています。解答・解説・論点の整理は資格試験対策.netの独自コンテンツです。最終更新 。この問題の誤りを報告する