第33回 第5問 論点:精算表(決算整理の総合問題)重要度 A配点 36点未着手

精算表(機械装置の減損、外貨建貸付金の換算、その他有価証券の税効果、工事進行基準の見積変更)

これは建設業経理士1級 財務諸表 第33回(2023年9月10日(日)実施) 第5問(配点 36点)の問題です。論点は「精算表(決算整理の総合問題)」(重要度A・解答の形は精算表(3 点×12 箇所))。採点すると、解き方 17 手順・引っかけの指摘・決算整理仕訳が読めます。

決算整理仕訳の入力欄(問題文の各項目の下):仕訳は本試験では採点されないので点数には入りません。合っているかの確認と弱点分析に使います。

次の<決算整理事項等>に基づき、解答用紙に示されているX建設株式会社の当会計年度(20×5年4月1日〜20×6年3月31日)に係る精算表を完成しなさい。ただし、計算過程で端数が生じた場合は、千円未満の端数を切り捨てること。なお、整理の過程で新たに生じる勘定科目で、精算表上に指定されている科目は、そこに記入すること。

(1) 機械装置は、20×1年4月1日に取得し、同日より使用を開始したものであり、取得した時点での条件は次のとおりである。

 取得原価 34,000 千円 残存価額 ゼロ 耐用年数 10年 減価償却方法 定額法

 この資産について、期末に減損の兆候が見られたため、割引前のキャッシュ・フローの総額を見積もったところ、16,500 千円であった。また、割引後のキャッシュ・フローの総額は 16,015 千円と算定され、これは正味売却価額よりも大きかった。なお、減価償却費は未成工事支出金に計上し、減損損失は機械装置減損損失に計上すること。

仕訳 (1)①
借方貸方
仕訳 (1)②
借方貸方

(2) 貸付金 5,000 千円のうち 2,700 千円は、1ドル=135円の時に貸し付けたものである。期末時点の為替レートは、1ドル=128円である。

仕訳 (2)
借方貸方

(3) 有価証券はすべて当期首に@98.5円で購入したA社社債(額面総額:15,000 千円、年利:1.0%、利払日:毎年 9月と 3月の末日、償還期日:20×8年3月31日)である。この社債はその他有価証券に分類されており、期末の時価は 14,550 千円である。償却原価法(定額法)を適用するとともに評価替えを行う。また、実効税率を 30% として税効果会計を適用する。

仕訳 (3)①
借方貸方
仕訳 (3)②
借方貸方

(4) 退職給付引当金への当期繰入額は 3,120 千円であり、このうち 2,870 千円は工事原価、250 千円は販売費及び一般管理費である。なお、現場作業員の退職給付引当金については、月次原価計算で月額 250 千円の予定計算を実施しており、20×6年3月までの毎月の予定額は、未成工事支出金の借方と退職給付引当金の貸方にすでに計上されている。この予定計上額と実際発生額との差額は工事原価に加減する。

仕訳 (4)①
借方貸方
仕訳 (4)②
借方貸方

(5) 期末時点で施工中の工事は次の工事だけであり、収益認識には原価比例法による工事進行基準を適用している。

 工事期間は 4年(20×3年4月1日〜20×7年3月31日)、当初契約時の工事収益総額は 840,000 千円、工事原価総額の見積額は 600,000 千円で、前受金として着手前に 200,000 千円、第2期末に 180,000 千円をそれぞれ受領している。

 当期末までの工事原価発生額は、第1期が 135,000 千円、第2期が 115,000 千円、第3期が 236,500 千円であった。資材価格と人件費の高騰により、第3期首に工事原価総額の見積りを 700,000 千円に変更するとともに、交渉により、請負工事代金総額を 900,000 千円とすることが認められた。

仕訳 (5)①
借方貸方
仕訳 (5)②
借方貸方

(6) 受取手形と完成工事未収入金の期末残高に対して 2% の貸倒引当金を設定する(差額補充法)。このうち 1,100 千円については税務上損金算入が認められないため、実効税率を 30% として税効果会計を適用する。

仕訳 (6)①
借方貸方
仕訳 (6)②
借方貸方

(7) 当期の完成工事高に対して 0.5% の完成工事補償引当金を設定する(差額補充法)。

仕訳 (7)
借方貸方

(8) 法人税、住民税及び事業税と未払法人税等を計上する。なお、実効税率は 30% とする。

仕訳 (8)
借方貸方

(9) 税効果を考慮した上で、当期純損益を計上する。

解答欄

精算表(単位:千円)
勘定科目残高試算表整理記入損益計算書貸借対照表
借方貸方借方貸方借方貸方借方貸方
現金預金7,296
受取手形12,000
完成工事未収入金26,300
貸倒引当金216
貸付金5,000
未成工事支出金231,237
仮払法人税等9,800
機械装置34,000
機械装置減価償却累計額13,600
土地24,000
投資有価証券14,775
その他の諸資産10,095
工事未払金33,661
未成工事受入金30,000
完成工事補償引当金467
退職給付引当金26,652
その他の諸負債21,897
資本金180,000
資本準備金18,000
利益準備金16,000
繰越利益剰余金3,200
完成工事高216,530
雑収入1,157
有価証券利息150
完成工事原価165,859
販売費及び一般管理費18,632
その他の諸費用2,536
561,530561,530
機械装置減損損失
為替差損益
貸倒引当金繰入額
その他有価証券評価差額金
繰延税金資産
未払法人税等
法人税、住民税及び事業税
法人税等調整額
当期純利益

金額はカンマなしでも入力できます。表は横にスクロールできます。空欄のままにする欄には何も入力しないでください。同じ欄に複数の金額が入るとき(本試験では2段に書く)は合計を入力します。

正解

精算表(単位:千円)
勘定科目残高試算表整理記入損益計算書貸借対照表
借方貸方借方貸方借方貸方借方貸方
現金預金7,2967,296
受取手形12,00012,000
完成工事未収入金26,300245,500271,800
貸倒引当金2165,4605,676
貸付金5,0001404,860
未成工事支出金231,2375,393236,630
仮払法人税等9,8009,800
機械装置34,00098533,015
機械装置減価償却累計額13,6003,40017,000
土地24,00024,000
投資有価証券14,7757530014,550
その他の諸資産10,09510,095
工事未払金33,66133,661
未成工事受入金30,00030,000
完成工事補償引当金4671,9932,460
退職給付引当金26,65213025026,772
その他の諸負債21,89721,897
資本金180,000180,000
資本準備金18,00018,000
利益準備金16,00016,000
繰越利益剰余金3,2003,200
完成工事高216,530275,500492,030
雑収入1,1571,157
有価証券利息15075225
完成工事原価165,859236,500402,359
販売費及び一般管理費18,63225018,882
その他の諸費用2,5362,536
561,530561,530
機械装置減損損失985985
為替差損益140140
貸倒引当金繰入額5,4605,460
その他有価証券評価差額金210210
繰延税金資産420420
未払法人税等9,4459,445
法人税、住民税及び事業税19,24519,245
法人税等調整額330330
544,308544,308449,607493,742378,246334,111
当期純利益44,13544,135
493,742493,742378,246378,246

決算整理仕訳

借方貸方
(1)①
未成工事支出金3,400
機械装置減価償却累計額3,400
(1)②
機械装置減損損失985
機械装置985
(2)
為替差損益140
貸付金140
(3)①
投資有価証券75
有価証券利息75
(3)②
繰延税金資産90
その他有価証券評価差額金210
投資有価証券300
(4)①
退職給付引当金130
未成工事支出金130
(4)②
販売費及び一般管理費250
退職給付引当金250
(5)①
未成工事受入金30,000
完成工事未収入金245,500
完成工事高275,500
(5)②
完成工事原価236,500
未成工事支出金236,500
(6)①
貸倒引当金繰入額5,460
貸倒引当金5,460
(6)②
繰延税金資産330
法人税等調整額330
(7)
未成工事支出金1,993
完成工事補償引当金1,993
(8)
法人税、住民税及び事業税19,245
仮払法人税等9,800
未払法人税等9,445

解き方

  1. (1) は減価償却 → 減損の順に処理する。まず当期の減価償却 3,400 を計上して累計額を 17,000 にし、帳簿価額 17,000 と割引前キャッシュ・フロー 16,500 を比べて減損を認識する。測定は回収可能価額(使用価値 16,015)まで減額し、985 を機械装置減損損失にする。機械装置の貸借対照表価額 = 34,000 − 985 = 33,015。
  2. (5) の工事進行基準は、第3期首に見積変更があったので変更後の 900,000・700,000 で累計を計算し、前期までの計上額 350,000 を引く。前受金 380,000 − 350,000 = 30,000 が残高試算表の未成工事受入金と一致することを確かめてから、その全額を充当する。当期の完成工事高 275,500 を加えた 492,030 が (7) の完成工事補償引当金の基礎になる。
  3. (8)(9) は税引前当期純利益 63,050 × 30% = 18,915 が税効果後の法人税等の負担額になるように、法人税、住民税及び事業税 = 18,915 + 法人税等調整額 330 = 19,245 とする。当期純利益 = 63,050 − 19,245 + 330 = 44,135。
  4. (1)① 減価償却費 = 34,000 ÷ 10年 = 3,400。指示により未成工事支出金に計上する。累計額は 13,600 + 3,400 = 17,000(20×1年4月〜20×6年3月の 5年分)になる。 〔借方〕未成工事支出金 3,400 /〔貸方〕機械装置減価償却累計額 3,400
  5. (1)② 減価償却後の帳簿価額 = 34,000 − 17,000 = 17,000。割引前キャッシュ・フロー 16,500 < 17,000 なので減損を認識する。回収可能価額は使用価値 16,015(正味売却価額より大きい方)。減損損失 = 17,000 − 16,015 = 985 を機械装置から直接減額する。 〔借方〕機械装置減損損失 985 /〔貸方〕機械装置 985
  6. (2) 外貨額 = 2,700 ÷ 135円 = 20 千ドル。決算日換算額 = 20 千ドル × 128円 = 2,560。差額 2,700 − 2,560 = 140 は円高による為替差損(借方)。円建ての 2,300 は換算しない。貸付金 = 5,000 − 140 = 4,860。 〔借方〕為替差損益 140 /〔貸方〕貸付金 140
  7. (3)① 取得価額 = 15,000 × 98.5 ÷ 100 = 14,775(残高試算表と一致)。額面との差額 225 を償還までの 36か月(20×5年4月〜20×8年3月)で配分する。当期分 = 225 × 12/36 = 75 を投資有価証券に加え、有価証券利息にする。償却原価 = 14,850。 〔借方〕投資有価証券 75 /〔貸方〕有価証券利息 75
  8. (3)② 評価差額 = 時価 14,550 − 償却原価 14,850 = △300(評価損)。繰延税金資産 = 300 × 30% = 90、その他有価証券評価差額金 = 300 − 90 = 210(借方)。投資有価証券を 300 減らして時価 14,550 にする。 〔借方〕繰延税金資産 90・その他有価証券評価差額金 210 /〔貸方〕投資有価証券 300
  9. (4)① 現場作業員分の予定計上額 = 250 × 12か月 = 3,000。実際の工事原価分 2,870 との差額 130 は予定の方が多いので、未成工事支出金と退職給付引当金を 130 減らす。 〔借方〕退職給付引当金 130 /〔貸方〕未成工事支出金 130
  10. (4)② 販売費及び一般管理費分 250 は未処理なので、そのまま繰り入れる。退職給付引当金 = 26,652 − 130 + 250 = 26,772。 〔借方〕販売費及び一般管理費 250 /〔貸方〕退職給付引当金 250
  11. (5)① 第3期首の見積変更後の金額で累計を計算し直す。進捗率 = (135,000 + 115,000 + 236,500) ÷ 700,000 = 69.5%、累計工事収益 = 900,000 × 69.5% = 625,500。前期までの計上額 = 第1期 840,000 × 135,000 ÷ 600,000 = 189,000、第2期 840,000 × 250,000 ÷ 600,000 − 189,000 = 161,000、計 350,000。当期の完成工事高 = 625,500 − 350,000 = 275,500。未成工事受入金の残高 30,000(前受金 380,000 − 350,000)を充当し、残り 245,500 を完成工事未収入金にする。 〔借方〕未成工事受入金 30,000・完成工事未収入金 245,500 /〔貸方〕完成工事高 275,500
  12. (5)② 当期の工事原価発生額 236,500 を未成工事支出金から完成工事原価に振り替える。(1)①・(4)①・(7) の整理を加えた未成工事支出金 231,237 + 3,400 − 130 + 1,993 = 236,500 がちょうど振り替えられ、次期繰越額は 0 になる。 〔借方〕完成工事原価 236,500 /〔貸方〕未成工事支出金 236,500
  13. (6)① (受取手形 12,000 + 完成工事未収入金 26,300 + 245,500) × 2% = 283,800 × 2% = 5,676。残高 216 との差額 5,460 を繰り入れる。 〔借方〕貸倒引当金繰入額 5,460 /〔貸方〕貸倒引当金 5,460
  14. (6)② 損金不算入額 1,100 × 30% = 330 を繰延税金資産に計上し、法人税等調整額(貸方)で法人税等を減らす。繰延税金資産 = 90 + 330 = 420。 〔借方〕繰延税金資産 330 /〔貸方〕法人税等調整額 330
  15. (7) 当期の完成工事高 = 216,530 + 275,500 = 492,030。492,030 × 0.5% = 2,460.15 → 2,460(千円未満切捨て)。残高 467 との差額 1,993 を繰り入れ、工事原価なので未成工事支出金に計上する。 〔借方〕未成工事支出金 1,993 /〔貸方〕完成工事補償引当金 1,993
  16. (8) 税引前当期純利益 = 収益 493,412(492,030 + 1,157 + 225)− 費用 430,362(402,359 + 18,882 + 2,536 + 985 + 140 + 5,460)= 63,050。税効果を考慮した法人税等 = 63,050 × 30% = 18,915。法人税、住民税及び事業税はこれに法人税等調整額 330 を足し戻した 19,245。仮払法人税等 9,800 を充当し、残り 9,445 を未払法人税等にする。 〔借方〕法人税、住民税及び事業税 19,245 /〔貸方〕仮払法人税等 9,800・未払法人税等 9,445
  17. 損益計算書の貸方合計 493,742 − 借方合計 449,607 = 当期純利益 44,135。損益計算書の借方と貸借対照表の貸方に同じ金額を書き、4つの合計欄がそれぞれ貸借一致することを確認する。
引っかけ:換算替えするのは外貨建ての 2,700 千円だけで、貸付金の残り 2,300 千円は動かさない(貸借対照表は 4,860)。円高(135円 → 128円)なので為替差損(借方)になる。その他有価証券の評価差額は税効果後の純額 210 を貸借対照表の借方に書き、繰延税金資産は (3)② の 90 と (6)② の 330 を合計した 420 にする。貸倒引当金の完成工事未収入金は (5) で増えた後の 271,800 で計算する。法人税等を 63,050 × 30% = 18,915 のまま計上すると当期純利益が 44,465 になり、税効果を考慮した利益にならない。

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