第30回 第5問 論点:精算表(決算整理の総合問題)重要度 A配点 36点未着手

精算表(機械装置の減損、外貨建貸付金の換算、その他有価証券の償却原価法と税効果、工事進行基準の見積変更)

これは建設業経理士1級 財務諸表 第30回(2022年3月13日(日)実施) 第5問(配点 36点)の問題です。論点は「精算表(決算整理の総合問題)」(重要度A・解答の形は精算表(3 点×12 箇所))。採点すると、解き方 18 手順・引っかけの指摘・決算整理仕訳が読めます。

決算整理仕訳の入力欄(問題文の各項目の下):仕訳は本試験では採点されないので点数には入りません。合っているかの確認と弱点分析に使います。

次の<決算整理事項等>に基づき、解答用紙に示されている佐賀建設株式会社の当会計年度(20×7年4月1日〜20×8年3月31日)に係る精算表を完成しなさい。ただし、計算過程で端数が生じた場合は、千円未満の端数を切り捨てること。なお、整理の過程で新たに生じる勘定科目で、精算表上に指定されている科目は、そこに記入すること。

(1) 機械装置は、20×1年4月1日に取得し、同日より使用を開始したものであり、取得した時点での条件は次のとおりである。

 取得原価 46,000 千円 残存価額 ゼロ 耐用年数 10年 減価償却方法 定額法

 この資産について、期末に減損の兆候が見られたため、割引前のキャッシュ・フローの総額を見積もったところ、12,000 千円であった。また、割引後のキャッシュ・フローの総額は 11,314 千円と算定され、これは正味売却価額よりも大きかった。なお、減価償却費は未成工事支出金に計上し、減損損失は機械装置減損損失に計上すること。

仕訳 (1)①
借方貸方
仕訳 (1)②
借方貸方

(2) 貸付金 2,000 千円のうち 1,500 千円は、1ドル=100円の時に貸し付けたものである。期末時点の為替レートは、1ドル=110円である。

仕訳 (2)
借方貸方

(3) 有価証券はすべて当期首に@98.0円で購入したA社社債(額面総額 18,000 千円 年利 3.0% 利払日 毎年 9月と 3月の末日 償還期日 20×9年3月31日)である。この社債はその他有価証券に分類されており、期末の時価は 17,910 千円である。償却原価法(定額法)を適用するとともに評価替えを行う。また、実効税率を 30% として税効果会計を適用する。

仕訳 (3)①
借方貸方
仕訳 (3)②
借方貸方

(4) 退職給付引当金への当期繰入額は 3,820 千円であり、このうち 3,260 千円は工事原価、560 千円は販売費及び一般管理費である。なお、現場作業員の退職給付引当金については、月次原価計算で月額 260 千円の予定計算を実施しており、20×8年3月までの毎月の予定額は、未成工事支出金の借方と退職給付引当金の貸方にすでに計上されている。この予定計上額と実際発生額との差額は工事原価に加減する。

仕訳 (4)①
借方貸方
仕訳 (4)②
借方貸方

(5) 期末時点で施工中の工事は次の工事だけであり、収益認識には原価比例法による工事進行基準を適用している。

 工事期間は 4年(20×5年4月1日〜20×9年3月31日)、当初契約時の工事収益総額は 750,000 千円、工事原価総額の見積額は 600,000 千円で、前受金として着手前に 200,000 千円、第2期末に 150,000 千円をそれぞれ受領している。

 当期末までの工事原価発生額は、第1期が 125,000 千円、第2期が 135,000 千円、第3期が 240,000 千円であった。資材価格と人件費の高騰により、第3期首に工事原価総額の見積りを 650,000 千円に変更するとともに、交渉により、請負工事代金総額を 780,000 千円とすることが認められた。

仕訳 (5)①
借方貸方
仕訳 (5)②
借方貸方

(6) 受取手形と完成工事未収入金の期末残高に対して 2% の貸倒引当金を設定する(差額補充法)。このうち 1,300 千円については税務上損金算入が認められないため、実効税率を 30% として税効果会計を適用する。

仕訳 (6)①
借方貸方
仕訳 (6)②
借方貸方

(7) 当期の完成工事高に対して 0.5% の完成工事補償引当金を設定する(差額補充法)。

仕訳 (7)
借方貸方

(8) 法人税、住民税及び事業税と未払法人税等を計上する。なお、実効税率は 30% とする。

仕訳 (8)
借方貸方

(9) 税効果を考慮した上で、当期純損益を計上する。

解答欄

精算表(単位:千円)
勘定科目残高試算表整理記入損益計算書貸借対照表
借方貸方借方貸方借方貸方借方貸方
現金預金5,235
受取手形18,000
完成工事未収入金52,800
貸倒引当金525
貸付金2,000
未成工事支出金233,342
仮払法人税等10,300
機械装置46,000
機械装置減価償却累計額27,600
土地36,000
投資有価証券17,640
その他の諸資産19,396
工事未払金39,728
未成工事受入金25,000
完成工事補償引当金868
退職給付引当金45,632
その他の諸負債22,870
資本金200,000
資本準備金21,000
利益準備金15,000
繰越利益剰余金2,000
完成工事高282,300
雑収入1,243
有価証券利息540
完成工事原価223,600
販売費及び一般管理費17,358
その他の諸費用2,635
684,306684,306
機械装置減損損失
為替差損益
貸倒引当金繰入額
その他有価証券評価差額金
繰延税金資産
繰延税金負債
未払法人税等
法人税、住民税及び事業税
法人税等調整額
当期純利益

金額はカンマなしでも入力できます。表は横にスクロールできます。空欄のままにする欄には何も入力しないでください。同じ欄に複数の金額が入るとき(本試験では2段に書く)は合計を入力します。

正解

精算表(単位:千円)
勘定科目残高試算表整理記入損益計算書貸借対照表
借方貸方借方貸方借方貸方借方貸方
現金預金5,2355,235
受取手形18,00018,000
完成工事未収入金52,800250,000302,800
貸倒引当金5255,8916,416
貸付金2,0001502,150
未成工事支出金233,3426,658240,000
仮払法人税等10,30010,300
機械装置46,0002,48643,514
機械装置減価償却累計額27,6004,60032,200
土地36,00036,000
投資有価証券17,64027017,910
その他の諸資産19,39619,396
工事未払金39,72839,728
未成工事受入金25,00025,000
完成工事補償引当金8681,9182,786
退職給付引当金45,63270046,332
その他の諸負債22,87022,870
資本金200,000200,000
資本準備金21,00021,000
利益準備金15,00015,000
繰越利益剰余金2,0002,000
完成工事高282,300275,000557,300
雑収入1,2431,243
有価証券利息540180720
完成工事原価223,600240,000463,600
販売費及び一般管理費17,35856017,918
その他の諸費用2,6352,635
684,306684,306
機械装置減損損失2,4862,486
為替差損益150150
貸倒引当金繰入額5,8915,891
その他有価証券評価差額金6363
繰延税金資産390390
繰延税金負債2727
未払法人税等10,15410,154
法人税、住民税及び事業税20,45420,454
法人税等調整額390390
551,859551,859512,984559,803445,395398,576
当期純利益46,81946,819
559,803559,803445,395445,395

決算整理仕訳

借方貸方
(1)①
未成工事支出金4,600
機械装置減価償却累計額4,600
(1)②
機械装置減損損失2,486
機械装置2,486
(2)
貸付金150
為替差損益150
(3)①
投資有価証券180
有価証券利息180
(3)②
投資有価証券90
繰延税金負債27
その他有価証券評価差額金63
(4)①
未成工事支出金140
退職給付引当金140
(4)②
販売費及び一般管理費560
退職給付引当金560
(5)①
未成工事受入金25,000
完成工事未収入金250,000
完成工事高275,000
(5)②
完成工事原価240,000
未成工事支出金240,000
(6)①
貸倒引当金繰入額5,891
貸倒引当金5,891
(6)②
繰延税金資産390
法人税等調整額390
(7)
未成工事支出金1,918
完成工事補償引当金1,918
(8)
法人税、住民税及び事業税20,454
仮払法人税等10,300
未払法人税等10,154

解き方

  1. (1) は減価償却 → 減損の順に処理する。まず当期の減価償却 4,600 を未成工事支出金に計上し、償却後の帳簿価額 13,800 で減損の認識(割引前 CF 12,000 と比較)と測定(使用価値 11,314 まで減額)を行う。減損損失 2,486 は機械装置から直接減額するので、機械装置の貸借対照表価額 = 46,000 − 2,486 = 43,514、累計額 = 27,600 + 4,600 = 32,200。
  2. (3) のその他有価証券は、償却原価法を先に適用(17,640 → 17,820)してから時価 17,910 と比べる。評価益 90 なので税効果は繰延税金負債 27、評価差額金 63 は貸方(純資産)に計上する。(6) の税効果は繰延税金資産 390 と法人税等調整額(貸方)390 で、繰延税金資産と繰延税金負債は精算表上で相殺しない。
  3. (5) の工事進行基準は、当期首に見積変更があったので変更後の 780,000・650,000 で累計を計算し、前期までの計上額 325,000 を引く。前受金 350,000 − 325,000 = 25,000 が残高試算表の未成工事受入金と一致することを確かめてから、その全額を充当する。
  4. (8)(9) は税引前当期純利益 66,883 × 30% = 20,064 が税効果後の法人税等の負担額になるように、法人税、住民税及び事業税 = 20,064 + 法人税等調整額 390 = 20,454 とする。当期純利益 = 66,883 − 20,454 + 390 = 46,819。
  5. (1)① 当期の減価償却費 = 46,000 ÷ 10年 = 4,600。指示により未成工事支出金に計上する。残高試算表の累計額 27,600 は 6年分(20×1年4月〜20×7年3月)で、当期は 7年目になる。 〔借方〕未成工事支出金 4,600 /〔貸方〕機械装置減価償却累計額 4,600
  6. (1)② 減価償却後の帳簿価額 = 46,000 − (27,600 + 4,600) = 13,800。割引前キャッシュ・フロー 12,000 < 13,800 なので減損を認識する。回収可能価額は使用価値(割引後キャッシュ・フロー)11,314(正味売却価額より大きい方)。減損損失 = 13,800 − 11,314 = 2,486 を機械装置減損損失とし、機械装置から直接減額する。 〔借方〕機械装置減損損失 2,486 /〔貸方〕機械装置 2,486
  7. (2) 外貨額 = 1,500 ÷ 100円 = 15 千ドル。決算日換算額 = 15 千ドル × 110円 = 1,650。差額 1,650 − 1,500 = 150 は円安による為替差益(貸方)。円建ての 500 は換算しない。 〔借方〕貸付金 150 /〔貸方〕為替差損益 150
  8. (3)① 取得価額 = 18,000 × 98.0 ÷ 100 = 17,640(残高試算表と一致)。額面との差額 360 を償還までの 2年(20×7年4月〜20×9年3月)で配分する。当期分 = 360 ÷ 2年 = 180 を投資有価証券に加え、有価証券利息にする。償却原価 = 17,820。 〔借方〕投資有価証券 180 /〔貸方〕有価証券利息 180
  9. (3)② 評価差額 = 時価 17,910 − 償却原価 17,820 = 90(評価益)。繰延税金負債 = 90 × 30% = 27、その他有価証券評価差額金 = 90 − 27 = 63(貸方)。投資有価証券を 90 増やして時価 17,910 にする。 〔借方〕投資有価証券 90 /〔貸方〕繰延税金負債 27・その他有価証券評価差額金 63
  10. (4)① 現場作業員分の予定計上額 = 260 × 12か月 = 3,120。実際の工事原価分 3,260 との差額 140 は予定の方が少ないので、未成工事支出金と退職給付引当金を 140 増やす。 〔借方〕未成工事支出金 140 /〔貸方〕退職給付引当金 140
  11. (4)② 販売費及び一般管理費分 560 は未処理なので、そのまま繰り入れる。 〔借方〕販売費及び一般管理費 560 /〔貸方〕退職給付引当金 560
  12. (5)① 第3期首(当期首)の見積変更後の金額で累計を計算し直す。進捗率 = (125,000 + 135,000 + 240,000) ÷ 650,000 = 500,000 ÷ 650,000、累計工事収益 = 780,000 × 500,000 ÷ 650,000 = 600,000。前期までの計上額 = 第1期 750,000 × 125,000 ÷ 600,000 = 156,250、第2期 750,000 × 260,000 ÷ 600,000 − 156,250 = 168,750、計 325,000。当期の完成工事高 = 600,000 − 325,000 = 275,000。未成工事受入金の残高 25,000(前受金 350,000 − 325,000)を充当し、残り 250,000 を完成工事未収入金にする。 〔借方〕未成工事受入金 25,000・完成工事未収入金 250,000 /〔貸方〕完成工事高 275,000
  13. (5)② 当期の工事原価発生額 240,000 を未成工事支出金から完成工事原価に振り替える。(1)①・(4)①・(7) の整理を加えた未成工事支出金 233,342 + 4,600 + 140 + 1,918 = 240,000 がちょうど振り替えられ、次期繰越額は 0 になる。 〔借方〕完成工事原価 240,000 /〔貸方〕未成工事支出金 240,000
  14. (6)① 受取手形 18,000 + 完成工事未収入金 (52,800 + 250,000) = 320,800。320,800 × 2% = 6,416。設定額 6,416 − 残高 525 = 5,891 を繰り入れる。 〔借方〕貸倒引当金繰入額 5,891 /〔貸方〕貸倒引当金 5,891
  15. (6)② 損金不算入額 1,300 × 30% = 390 を繰延税金資産に計上し、法人税等調整額(貸方)で法人税等を減らす。 〔借方〕繰延税金資産 390 /〔貸方〕法人税等調整額 390
  16. (7) 当期の完成工事高 = 282,300 + 275,000 = 557,300。557,300 × 0.5% = 2,786.5 → 2,786(千円未満切捨て)。残高 868 との差額 1,918 を繰り入れ、工事原価なので未成工事支出金に計上する。 〔借方〕未成工事支出金 1,918 /〔貸方〕完成工事補償引当金 1,918
  17. (8) 税引前当期純利益 = 収益 559,413(557,300 + 1,243 + 720 + 150)− 費用 492,530(463,600 + 17,918 + 2,635 + 2,486 + 5,891)= 66,883。税効果を考慮した法人税等 = 66,883 × 30% = 20,064(千円未満切捨て)。法人税、住民税及び事業税はこれに法人税等調整額 390 を足し戻した 20,454。仮払法人税等 10,300 を充当し、残り 10,154 を未払法人税等にする。 〔借方〕法人税、住民税及び事業税 20,454 /〔貸方〕仮払法人税等 10,300・未払法人税等 10,154
  18. 損益計算書の貸方合計 559,803 − 借方合計 512,984 = 当期純利益 46,819。損益計算書の借方と貸借対照表の貸方に同じ金額を書き、4つの合計欄がそれぞれ貸借一致することを確認する。
引っかけ:換算替えするのは外貨建ての 1,500 千円だけで、貸付金の残り 500 千円は動かさない(貸借対照表は 2,000 + 150 = 2,150)。減損の認識は減価償却後の帳簿価額 13,800 で判定し、償却前の 18,400 で判定しない。(4) の退職給付は実際 3,260 が予定 3,120 より多いので未成工事支出金を増やす(第39回とは差額の向きが逆)。貸倒引当金の完成工事未収入金は (5) で増えた後の 302,800 で計算する。完成工事補償引当金 2,786.5 は千円未満を切り捨てる。法人税等を 66,883 × 30% = 20,064 のまま計上すると当期純利益が 47,209 になり、税効果を考慮した利益にならない。

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出典:一般財団法人 建設業振興基金が実施した建設業経理士1級 財務諸表 第30回(2022年3月13日(日)実施) 第5問。問題文は本試験の問題にもとづいています。解答・解説・論点の整理は資格試験対策.netの独自コンテンツです。最終更新 。この問題の誤りを報告する