第35回 第5問 論点:精算表(決算整理の総合問題)重要度 A配点 36点未着手

精算表(機械装置の減損、その他有価証券と金利スワップの繰延ヘッジ・税効果、工事進行基準の見積変更)

これは建設業経理士1級 財務諸表 第35回(2024年9月8日(日)実施) 第5問(配点 36点)の問題です。論点は「精算表(決算整理の総合問題)」(重要度A・解答の形は精算表(3 点×12 箇所))。採点すると、解き方 18 手順・引っかけの指摘・決算整理仕訳が読めます。

決算整理仕訳の入力欄(問題文の各項目の下):仕訳は本試験では採点されないので点数には入りません。合っているかの確認と弱点分析に使います。

次の<決算整理事項等>に基づき、解答用紙に示されているX建設株式会社の当会計年度(20×5年4月1日〜20×6年3月31日)に係る精算表を完成しなさい。ただし、計算過程で端数が生じた場合は、千円未満の端数を切り捨てること。なお、整理の過程で新たに生じる勘定科目で、精算表上に指定されている科目は、そこに記入すること。

(1) 機械装置は、20×1年4月1日に取得し、同日より使用を開始したものであり、取得した時点での条件は次のとおりである。

 取得原価:346,000 千円 耐用年数:10年 残存価額:ゼロ 減価償却方法:定額法

 この資産について、期末に減損の兆候が見られたため、割引前のキャッシュ・フローの総額を見積もったところ、169,500 千円であった。また、割引後のキャッシュ・フローの総額は 159,786 千円と算定され、これは正味売却価額よりも大きかった。なお、減価償却費は未成工事支出金に計上し、減損損失は機械装置減損損失に計上すること。

仕訳 (1)①
借方貸方
仕訳 (1)②
借方貸方

(2) 有価証券はすべて当期首に @98.2円 で購入したA社社債(額面金額:30,000 千円 年利:1.0% 利払日:毎年 9月と 3月の末日 償還期日:20×8年3月31日)である。ただし、額面金額と取得価額との差額は金利の調整と認められる。この社債はその他有価証券に分類されており、期末の時価は 29,600 千円である。償却原価法(定額法)を適用するとともに評価替えを行う。また、実効税率を 30% として税効果会計を適用する。

仕訳 (2)①
借方貸方
仕訳 (2)②
借方貸方

(3) 金利スワップは、上記 2 の有価証券の金利変動による価格変動リスクをヘッジするために、20×5年5月1日に、固定金利支払・変動金利受取のスワップを 50 千円で購入していたものであるが、当該スワップの期末時価が 100 千円となった。当該取引はヘッジ会計の要件を充たしているので、繰延ヘッジにより会計処理する。なお、上記 2 の有価証券の価格変動は市場金利の変動のみを要因とするものであり、また、実効税率を 30% として税効果会計を適用する。

仕訳 (3)
借方貸方

(4) 退職給付引当金への当期繰入額は 5,743 千円であり、このうち 4,991 千円は工事原価、752 千円は販売費及び一般管理費である。なお、現場作業員の退職給付引当金については、月次原価計算で月額 400 千円の予定計算を実施しており、20×6年3月までの毎月の予定額は、未成工事支出金の借方と退職給付引当金の貸方にすでに計上されている。この予定計上額と実際発生額との差額は未成工事支出金に加減する。

仕訳 (4)①
借方貸方
仕訳 (4)②
借方貸方

(5) 期末時点で施工中の工事は次の工事だけであり、収益認識には原価比例法による工事進行基準を適用している。

 工事期間は 4年(20×3年4月1日〜20×7年3月31日)、当初契約時の工事収益総額は 565,000 千円、工事原価総額の見積額は 452,000 千円で、前受金として着手前に 180,000 千円、第2期末に 160,000 千円をそれぞれ受領している。

 当期末までの工事原価発生額は、第1期が 116,400 千円、第2期が 132,200 千円、第3期が 184,000 千円であった。資材価格と人件費の高騰により、第3期首に工事原価総額の見積りを 600,000 千円に変更するとともに、交渉により、請負工事代金総額を 700,000 千円とすることが認められた。

仕訳 (5)①
借方貸方
仕訳 (5)②
借方貸方

(6) 受取手形と完成工事未収入金の期末残高に対して 2.0% の貸倒引当金を設定する(差額補充法)。このうち 2,300 千円については税務上損金算入が認められないため、実効税率を 30% として税効果会計を適用する。

仕訳 (6)①
借方貸方
仕訳 (6)②
借方貸方

(7) 当期の完成工事高に対して 0.5% の完成工事補償引当金を設定する(差額補充法)。

仕訳 (7)
借方貸方

(8) 法人税、住民税及び事業税と未払法人税等を計上する。なお、実効税率は 30% とする。

仕訳 (8)
借方貸方

(9) 税効果を考慮した上で、当期純損益を計上する。

解答欄

精算表(単位:千円)
勘定科目残高試算表整理記入損益計算書貸借対照表
借方貸方借方貸方借方貸方借方貸方
現金預金2,471
受取手形96,300
完成工事未収入金85,000
貸倒引当金520
未成工事支出金147,105
仮払法人税等17,000
機械装置346,000
機械装置減価償却累計額138,400
土地16,000
投資有価証券29,460
金利スワップ50
その他の諸資産18,830
工事未払金168,952
未成工事受入金29,250
完成工事補償引当金1,682
借入金5,000
退職給付引当金32,681
その他の諸負債11,970
資本金200,000
資本準備金16,000
利益準備金14,000
繰越利益剰余金4,800
完成工事高563,280
有価証券利息300
雑収入4,620
完成工事原価394,296
販売費及び一般管理費36,259
その他の諸費用2,684
1,191,4551,191,455
機械装置減損損失
貸倒引当金繰入額
その他有価証券評価差額金
繰延ヘッジ損益
繰延税金資産
繰延税金負債
未払法人税等
法人税、住民税及び事業税
法人税等調整額
当期純利益

金額はカンマなしでも入力できます。表は横にスクロールできます。空欄のままにする欄には何も入力しないでください。同じ欄に複数の金額が入るとき(本試験では2段に書く)は合計を入力します。

正解

精算表(単位:千円)
勘定科目残高試算表整理記入損益計算書貸借対照表
借方貸方借方貸方借方貸方借方貸方
現金預金2,4712,471
受取手形96,30096,300
完成工事未収入金85,000164,700249,700
貸倒引当金5206,4006,920
未成工事支出金147,10536,895184,000
仮払法人税等17,00017,000
機械装置346,00013,214332,786
機械装置減価償却累計額138,40034,600173,000
土地16,00016,000
投資有価証券29,4601804029,600
金利スワップ5050100
その他の諸資産18,83018,830
工事未払金168,952168,952
未成工事受入金29,25029,250
完成工事補償引当金1,6822,1043,786
借入金5,0005,000
退職給付引当金32,68194333,624
その他の諸負債11,97011,970
資本金200,000200,000
資本準備金16,00016,000
利益準備金14,00014,000
繰越利益剰余金4,8004,800
完成工事高563,280193,950757,230
有価証券利息300180480
雑収入4,6204,620
完成工事原価394,296184,000578,296
販売費及び一般管理費36,25975237,011
その他の諸費用2,6842,684
1,191,4551,191,455
機械装置減損損失13,21413,214
貸倒引当金繰入額6,4006,400
その他有価証券評価差額金2828
繰延ヘッジ損益3535
繰延税金資産702702
繰延税金負債1515
未払法人税等21,10721,107
法人税、住民税及び事業税38,10738,107
法人税等調整額690690
474,278474,278675,712763,020746,517659,209
当期純利益87,30887,308
763,020763,020746,517746,517

決算整理仕訳

借方貸方
(1)①
未成工事支出金34,600
機械装置減価償却累計額34,600
(1)②
機械装置減損損失13,214
機械装置13,214
(2)①
投資有価証券180
有価証券利息180
(2)②
繰延税金資産12
その他有価証券評価差額金28
投資有価証券40
(3)
金利スワップ50
繰延税金負債15
繰延ヘッジ損益35
(4)①
未成工事支出金191
退職給付引当金191
(4)②
販売費及び一般管理費752
退職給付引当金752
(5)①
未成工事受入金29,250
完成工事未収入金164,700
完成工事高193,950
(5)②
完成工事原価184,000
未成工事支出金184,000
(6)①
貸倒引当金繰入額6,400
貸倒引当金6,400
(6)②
繰延税金資産690
法人税等調整額690
(7)
未成工事支出金2,104
完成工事補償引当金2,104
(8)
法人税、住民税及び事業税38,107
仮払法人税等17,000
未払法人税等21,107

解き方

  1. (1) は減価償却 → 減損の順に処理する。まず当期の減価償却 34,600 を計上して累計額を 173,000 にし、帳簿価額 173,000 と割引前キャッシュ・フロー 169,500 を比べて減損を認識、使用価値 159,786 まで減額する。機械装置の貸借対照表価額 = 346,000 − 13,214 = 332,786。
  2. (2)(3) はヘッジ対象(その他有価証券)とヘッジ手段(金利スワップ)を別々に処理する。社債は償却原価法で 180 を利息に加えてから時価と比べ、評価損 40 は税効果後の 28 をその他有価証券評価差額金(借方)にする。金利スワップの評価益 50 は繰延ヘッジなので損益にせず、税効果後の 35 を繰延ヘッジ損益(貸方)にする。
  3. (5) の工事進行基準は、当期首に見積変更があったので変更後の 700,000・600,000 で累計を計算し、前期までの計上額 310,750 を引く。前受金 340,000 − 310,750 = 29,250 が残高試算表の未成工事受入金と一致することを確かめてから、その全額を充当する。
  4. (8)(9) は税引前当期純利益 124,725 × 30% = 37,417 が税効果後の法人税等の負担額になるように、法人税、住民税及び事業税 = 37,417 + 法人税等調整額 690 = 38,107 とする。当期純利益 = 124,725 − 38,107 + 690 = 87,308。
  5. (1)① 当期の減価償却費 = 346,000 ÷ 10年 = 34,600。指示により未成工事支出金に計上する。累計額は 138,400(20×1年4月〜20×5年3月の 4年分)+ 34,600 = 173,000 になる。 〔借方〕未成工事支出金 34,600 /〔貸方〕機械装置減価償却累計額 34,600
  6. (1)② 減価償却後の帳簿価額 = 346,000 − 173,000 = 173,000。割引前キャッシュ・フロー 169,500 < 173,000 なので減損を認識する。回収可能価額は使用価値 159,786(正味売却価額より大きい方)。減損損失 = 173,000 − 159,786 = 13,214 を機械装置減損損失とし、機械装置から直接減額する。 〔借方〕機械装置減損損失 13,214 /〔貸方〕機械装置 13,214
  7. (2)① 取得価額 = 30,000 × 98.2 ÷ 100 = 29,460(残高試算表と一致)。額面との差額 540 を償還までの 3年(20×5年4月〜20×8年3月)で配分する。当期分 = 540 ÷ 3 = 180 を投資有価証券に加え、有価証券利息にする。償却原価 = 29,640。 〔借方〕投資有価証券 180 /〔貸方〕有価証券利息 180
  8. (2)② 評価差額 = 時価 29,600 − 償却原価 29,640 = △40(評価損)。繰延税金資産 = 40 × 30% = 12、その他有価証券評価差額金 = 40 − 12 = 28(借方)。投資有価証券を 40 減らして時価 29,600 にする。 〔借方〕繰延税金資産 12・その他有価証券評価差額金 28 /〔貸方〕投資有価証券 40
  9. (3) 金利スワップの評価差額 = 時価 100 − 帳簿価額 50 = 50(評価益)。繰延ヘッジなので当期の損益にせず、税効果 50 × 30% = 15 を繰延税金負債に、残り 35 を繰延ヘッジ損益(純資産・貸方)に計上する。金利スワップは 100 になる。 〔借方〕金利スワップ 50 /〔貸方〕繰延税金負債 15・繰延ヘッジ損益 35
  10. (4)① 現場作業員分の予定計上額 = 400 × 12か月 = 4,800。実際 4,991 との差額 191 は実際の方が多いので、未成工事支出金と退職給付引当金を 191 増やす。 〔借方〕未成工事支出金 191 /〔貸方〕退職給付引当金 191
  11. (4)② 販売費及び一般管理費分 752 は未処理なので、そのまま繰り入れる。退職給付引当金 = 32,681 + 191 + 752 = 33,624。 〔借方〕販売費及び一般管理費 752 /〔貸方〕退職給付引当金 752
  12. (5)① 第3期首(当期首)の見積変更後の金額で累計を計算し直す。進捗率 = (116,400 + 132,200 + 184,000) ÷ 600,000 = 72.1%、累計工事収益 = 700,000 × 72.1% = 504,700。前期までの計上額 = 第1期 565,000 × 116,400 ÷ 452,000 = 145,500、第2期 565,000 × 248,600 ÷ 452,000 − 145,500 = 165,250、計 310,750。当期の完成工事高 = 504,700 − 310,750 = 193,950。未成工事受入金の残高 29,250(前受金 340,000 − 310,750)を充当し、残り 164,700 を完成工事未収入金にする。 〔借方〕未成工事受入金 29,250・完成工事未収入金 164,700 /〔貸方〕完成工事高 193,950
  13. (5)② 当期の工事原価発生額 184,000 を未成工事支出金から完成工事原価に振り替える。(1)①・(4)①・(7) の整理を加えた未成工事支出金 147,105 + 34,600 + 191 + 2,104 = 184,000 がちょうど振り替えられ、次期繰越額は 0 になる。 〔借方〕完成工事原価 184,000 /〔貸方〕未成工事支出金 184,000
  14. (6)① 受取手形 96,300 + 完成工事未収入金 (85,000 + 164,700) = 346,000。346,000 × 2.0% = 6,920。残高 520 との差額 6,400 を繰り入れる。 〔借方〕貸倒引当金繰入額 6,400 /〔貸方〕貸倒引当金 6,400
  15. (6)② 損金不算入額 2,300 × 30% = 690 を繰延税金資産に計上し、法人税等調整額(貸方)で法人税等を減らす。繰延税金資産 = 12 + 690 = 702。 〔借方〕繰延税金資産 690 /〔貸方〕法人税等調整額 690
  16. (7) 当期の完成工事高 = 563,280 + 193,950 = 757,230。757,230 × 0.5% = 3,786(千円未満切捨て)。残高 1,682 との差額 2,104 を繰り入れ、工事原価なので未成工事支出金に計上する。 〔借方〕未成工事支出金 2,104 /〔貸方〕完成工事補償引当金 2,104
  17. (8) 税引前当期純利益 = 収益 762,330(757,230 + 480 + 4,620)− 費用 637,605(578,296 + 37,011 + 2,684 + 13,214 + 6,400)= 124,725。税効果を考慮した法人税等 = 124,725 × 30% = 37,417(千円未満切捨て)。法人税、住民税及び事業税はこれに法人税等調整額 690 を足し戻した 38,107。仮払法人税等 17,000 を充当し、残り 21,107 を未払法人税等にする。 〔借方〕法人税、住民税及び事業税 38,107 /〔貸方〕仮払法人税等 17,000・未払法人税等 21,107
  18. 損益計算書の貸方合計 763,020 − 借方合計 675,712 = 当期純利益 87,308。損益計算書の借方と貸借対照表の貸方に同じ金額を書き、4つの合計欄がそれぞれ貸借一致することを確認する。
引っかけ:減損の判定は減価償却後の帳簿価額 173,000 で行う(償却前の 207,600 と比べない)。その他有価証券の評価差額金は借方 28、繰延ヘッジ損益は貸方 35 で、どちらも税効果を控除した純額を貸借対照表に書く。繰延税金資産は (2) の 12 と (6) の 690 を合計して 702、繰延税金負債は (3) の 15 で、相殺しない。貸倒引当金の完成工事未収入金は (5) で増えた後の 249,700 で計算する。

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出典:一般財団法人 建設業振興基金が実施した建設業経理士1級 財務諸表 第35回(2024年9月8日(日)実施) 第5問。問題文は本試験の問題にもとづいています。解答・解説・論点の整理は資格試験対策.netの独自コンテンツです。最終更新 。この問題の誤りを報告する