第39回 第5問 論点:精算表(決算整理の総合問題)重要度 A配点 36点未着手

精算表(機械装置の除却・減損、その他有価証券の税効果、外貨建貸付金の換算、工事進行基準の見積変更)

これは建設業経理士1級 財務諸表 第39回(2026年9月13日(日)実施) 第5問(配点 36点)の問題です。論点は「精算表(決算整理の総合問題)」(重要度A・解答の形は精算表(3 点×12 箇所))。採点すると、解き方 18 手順・引っかけの指摘・決算整理仕訳が読めます。

決算整理仕訳の入力欄(問題文の各項目の下):仕訳は本試験では採点されないので点数には入りません。合っているかの確認と弱点分析に使います。

次の<決算整理事項等>に基づき、解答用紙に示されているX建設株式会社の当会計年度(20×6年4月1日〜20×7年3月31日)に係る精算表を完成しなさい。ただし、計算過程で端数が生じた場合は、千円未満の端数を切り捨てること。なお、整理の過程で新たに生じる勘定科目で、精算表上に指定されている科目は、そこに記入すること。

(1) 機械装置(同一機種で 3台)は、20×3年4月1日に取得し、同日より使用を開始したものであり、取得した時点での条件は次のとおりである。

 取得原価 270,000 千円 耐用年数 10年 残存価額 ゼロ 減価償却方法 定額法

 しかし、これらの機械装置のうち 1台が決算日に水没し、今後使用できないことが判明したために廃棄処分する。さらに、残りの 2台の機械装置について期末に減損の兆候が見られたため、割引前のキャッシュ・フローの総額を見積もったところ 102,000 千円であった。また、割引後のキャッシュ・フローの総額は 92,100 千円と算定され、これは正味売却価額よりも大きかった。

 なお、減価償却費は未成工事支出金に、廃棄処分に伴い発生する損失は固定資産除却損に、減損による損失は減損損失にそれぞれ計上すること。

仕訳 (1)①
借方貸方
仕訳 (1)②
借方貸方
仕訳 (1)③
借方貸方

(2) 投資有価証券は当期首に額面 100円につき 98.5円で購入したB社社債(額面金額:80,000 千円、年利:3.0%、利払日:毎年 9月と 3月の末日、償還期日:20×9年3月31日)である。ただし、額面金額と取得価額との差額は金利の調整と認められる。この社債はその他有価証券に分類されており、期末の時価は 78,900 千円である。償却原価法(定額法)を適用するとともに評価替えを行う。また、その他有価証券評価差額金については、実効税率を 30% として税効果会計を適用する。

仕訳 (2)①
借方貸方
仕訳 (2)②
借方貸方

(3) 長期貸付金のうち 30,400 千円は、1ドル=152.00円の時に貸し付けたものである。期末時点の為替レートは、1ドル=158.30円である。

仕訳 (3)
借方貸方

(4) 退職給付引当金への当期繰入額は 12,678 千円であり、このうち 10,953 千円は工事原価、1,725 千円は販売費及び一般管理費である。なお、現場作業員の退職給付引当金については、月次原価計算で月額 920 千円の予定計算を実施しており、20×7年3月までの毎月の予定額は、未成工事支出金の借方と退職給付引当金の貸方にすでに計上されている。この予定計上額と実際発生額との差額は未成工事支出金に加減する。

仕訳 (4)①
借方貸方
仕訳 (4)②
借方貸方

(5) 期末時点で施工中の工事は次の工事だけであり、収益認識には原価比例法による工事進行基準を適用している。

 工事期間は 4年(20×4年4月1日〜20×8年3月31日)、当初契約時の工事収益総額は 840,000 千円、工事原価総額の見積額は 600,000 千円で、前受金として着手前に 250,000 千円、第2期末に 150,000 千円をそれぞれ受領している。

 当期末までの工事原価発生額は、第1期が 108,000 千円、第2期が 156,000 千円、第3期(当期)が 291,000 千円であった。資材価格と人件費の高騰により、第3期首(当期首)に工事原価総額の見積りを 750,000 千円に変更するとともに、交渉により、請負工事代金総額を 940,000 千円とすることが認められた。

仕訳 (5)①
借方貸方
仕訳 (5)②
借方貸方

(6) 電子記録債権の期末残高に対して 3.0%、完成工事未収入金の期末残高に対して 2.0% の貸倒引当金をそれぞれ設定する(差額補充法)。このうち 3,500 千円については税務上損金算入が認められないため、実効税率を 30% として税効果会計を適用する。

仕訳 (6)①
借方貸方
仕訳 (6)②
借方貸方

(7) 当期の完成工事高に対して 0.5% の完成工事補償引当金を設定する(差額補充法)。

仕訳 (7)
借方貸方

(8) 法人税、住民税及び事業税と未払法人税等を計上する。なお、実効税率は 30% とする。

仕訳 (8)
借方貸方

(9) 税効果を考慮した上で、当期純損益を計上する。

解答欄

精算表(単位:千円)
勘定科目残高試算表整理記入損益計算書貸借対照表
借方貸方借方貸方借方貸方借方貸方
現金預金2,895
電子記録債権52,600
完成工事未収入金164,600
貸倒引当金3,521
未成工事支出金261,540
仮払法人税等3,000
機械装置270,000
機械装置減価償却累計額81,000
土地130,000
投資有価証券78,800
長期貸付金80,000
その他の諸資産6,241
工事未払金286,300
未成工事受入金30,400
完成工事補償引当金1,264
退職給付引当金268,253
その他の諸負債11,950
資本金250,000
資本準備金33,000
利益準備金19,000
繰越利益剰余金10,300
完成工事高436,200
有価証券利息2,400
雑収入10,362
完成工事原価328,200
販売費及び一般管理費56,249
その他の諸費用9,825
1,443,9501,443,950
固定資産除却損
減損損失
貸倒引当金繰入額
その他有価証券評価差額金
為替差損益
繰延税金資産
未払法人税等
法人税、住民税及び事業税
法人税等調整額
当期純利益

金額はカンマなしでも入力できます。表は横にスクロールできます。空欄のままにする欄には何も入力しないでください。同じ欄に複数の金額が入るとき(本試験では2段に書く)は合計を入力します。

正解

精算表(単位:千円)
勘定科目残高試算表整理記入損益計算書貸借対照表
借方貸方借方貸方借方貸方借方貸方
現金預金2,8952,895
電子記録債権52,60052,600
完成工事未収入金164,600295,600460,200
貸倒引当金3,5217,26110,782
未成工事支出金261,54029,547291,087
仮払法人税等3,0003,000
機械装置270,000105,900164,100
機械装置減価償却累計額81,00036,00027,00072,000
土地130,000130,000
投資有価証券78,80040030078,900
長期貸付金80,0001,26081,260
その他の諸資産6,2416,241
工事未払金286,300286,300
未成工事受入金30,40030,400
完成工事補償引当金1,2642,5473,811
退職給付引当金268,253871,725269,891
その他の諸負債11,95011,950
資本金250,000250,000
資本準備金33,00033,000
利益準備金19,00019,000
繰越利益剰余金10,30010,300
完成工事高436,200326,000762,200
有価証券利息2,4004002,800
雑収入10,36210,362
完成工事原価328,200291,000619,200
販売費及び一般管理費56,2491,72557,974
その他の諸費用9,8259,825
1,443,9501,443,950
固定資産除却損54,00054,000
減損損失15,90015,900
貸倒引当金繰入額7,2617,261
その他有価証券評価差額金210210
為替差損益1,2601,260
繰延税金資産1,1401,140
未払法人税等1,7881,788
法人税、住民税及び事業税4,7884,788
法人税等調整額1,0501,050
769,318769,318768,948777,672977,546968,822
当期純利益8,7248,724
777,672777,672977,546977,546

決算整理仕訳

借方貸方
(1)①
未成工事支出金27,000
機械装置減価償却累計額27,000
(1)②
機械装置減価償却累計額36,000
固定資産除却損54,000
機械装置90,000
(1)③
減損損失15,900
機械装置15,900
(2)①
投資有価証券400
有価証券利息400
(2)②
繰延税金資産90
その他有価証券評価差額金210
投資有価証券300
(3)
長期貸付金1,260
為替差損益1,260
(4)①
退職給付引当金87
未成工事支出金87
(4)②
販売費及び一般管理費1,725
退職給付引当金1,725
(5)①
未成工事受入金30,400
完成工事未収入金295,600
完成工事高326,000
(5)②
完成工事原価291,000
未成工事支出金291,000
(6)①
貸倒引当金繰入額7,261
貸倒引当金7,261
(6)②
繰延税金資産1,050
法人税等調整額1,050
(7)
未成工事支出金2,547
完成工事補償引当金2,547
(8)
法人税、住民税及び事業税4,788
仮払法人税等3,000
未払法人税等1,788

解き方

  1. (1) は減価償却 → 除却 → 減損の順に処理する。まず 3台分の減価償却 27,000 を計上し、水没した 1台の取得原価 90,000 と累計額 36,000 を除いてから、残り 2台の帳簿価額 108,000 で減損の認識(割引前 CF 102,000 と比較)と測定(使用価値 92,100 まで減額)を行う。機械装置の貸借対照表価額 = 270,000 − 90,000 − 15,900 = 164,100、累計額 = 81,000 + 27,000 − 36,000 = 72,000。
  2. (5) の工事進行基準は、当期首に見積変更があったので変更後の 940,000・750,000 で累計を計算し、前期までの計上額 369,600 を引く。前受金 400,000 − 369,600 = 30,400 が残高試算表の未成工事受入金と一致することを確かめてから、その全額を充当する。
  3. (8)(9) は税引前当期純利益 12,462 × 30% = 3,738 が税効果後の法人税等の負担額になるように、法人税、住民税及び事業税 = 3,738 + 法人税等調整額 1,050 = 4,788 とする。当期純利益 = 12,462 − 4,788 + 1,050 = 8,724。
  4. (1)① 3台分の減価償却費 = 270,000 ÷ 10年 = 27,000(1台あたり 9,000)。指示により未成工事支出金に計上する。 〔借方〕未成工事支出金 27,000 /〔貸方〕機械装置減価償却累計額 27,000
  5. (1)② 水没した 1台の取得原価 = 270,000 ÷ 3台 = 90,000、減価償却累計額 = 9,000 × 4年(20×3年4月〜20×7年3月)= 36,000。帳簿価額 90,000 − 36,000 = 54,000 を固定資産除却損にし、取得原価と累計額の両方を減らす。 〔借方〕機械装置減価償却累計額 36,000・固定資産除却損 54,000 /〔貸方〕機械装置 90,000
  6. (1)③ 残り 2台の帳簿価額 = 180,000 − 36,000 × 2台 = 108,000。割引前キャッシュ・フロー 102,000 < 108,000 なので減損を認識する。回収可能価額は使用価値 92,100(正味売却価額より大きい方)。減損損失 = 108,000 − 92,100 = 15,900 を機械装置から直接減額する。 〔借方〕減損損失 15,900 /〔貸方〕機械装置 15,900
  7. (2)① 取得価額 = 80,000 × 98.5 ÷ 100 = 78,800(残高試算表と一致)。額面との差額 1,200 を償還までの 36か月で配分する。当期分 = 1,200 × 12/36 = 400 を投資有価証券に加え、有価証券利息にする。償却原価 = 79,200。 〔借方〕投資有価証券 400 /〔貸方〕有価証券利息 400
  8. (2)② 評価差額 = 時価 78,900 − 償却原価 79,200 = △300(評価損)。繰延税金資産 = 300 × 30% = 90、その他有価証券評価差額金 = 300 − 90 = 210(借方)。投資有価証券を 300 減らして時価 78,900 にする。 〔借方〕繰延税金資産 90・その他有価証券評価差額金 210 /〔貸方〕投資有価証券 300
  9. (3) 外貨額 = 30,400 ÷ 152.00円 = 200 千ドル。決算日換算額 = 200 千ドル × 158.30円 = 31,660。差額 31,660 − 30,400 = 1,260 は円安による為替差益(貸方)。円建ての部分は換算しない。 〔借方〕長期貸付金 1,260 /〔貸方〕為替差損益 1,260
  10. (4)① 現場作業員分の予定計上額 = 920 × 12か月 = 11,040。実際 10,953 との差額 87 は予定の方が多いので、未成工事支出金と退職給付引当金を 87 減らす。 〔借方〕退職給付引当金 87 /〔貸方〕未成工事支出金 87
  11. (4)② 販売費及び一般管理費分 1,725 は未処理なので、そのまま繰り入れる。 〔借方〕販売費及び一般管理費 1,725 /〔貸方〕退職給付引当金 1,725
  12. (5)① 当期首の見積変更後の金額で累計を計算し直す。進捗率 = (108,000 + 156,000 + 291,000) ÷ 750,000 = 74%、累計工事収益 = 940,000 × 74% = 695,600。前期までの計上額 = 第1期 840,000 × 108,000 ÷ 600,000 = 151,200、第2期 840,000 × 264,000 ÷ 600,000 − 151,200 = 218,400、計 369,600。当期の完成工事高 = 695,600 − 369,600 = 326,000。未成工事受入金の残高 30,400(前受金 400,000 − 369,600)を充当し、残り 295,600 を完成工事未収入金にする。 〔借方〕未成工事受入金 30,400・完成工事未収入金 295,600 /〔貸方〕完成工事高 326,000
  13. (5)② 当期の工事原価発生額 291,000 を未成工事支出金から完成工事原価に振り替える。(1)①・(4)①・(7) の整理を加えた未成工事支出金 261,540 + 27,000 − 87 + 2,547 = 291,000 がちょうど振り替えられ、次期繰越額は 0 になる。 〔借方〕完成工事原価 291,000 /〔貸方〕未成工事支出金 291,000
  14. (6)① 電子記録債権 52,600 × 3.0% = 1,578。完成工事未収入金 (164,600 + 295,600) × 2.0% = 9,204。設定額 10,782 − 残高 3,521 = 7,261 を繰り入れる。 〔借方〕貸倒引当金繰入額 7,261 /〔貸方〕貸倒引当金 7,261
  15. (6)② 損金不算入額 3,500 × 30% = 1,050 を繰延税金資産に計上し、法人税等調整額(貸方)で法人税等を減らす。 〔借方〕繰延税金資産 1,050 /〔貸方〕法人税等調整額 1,050
  16. (7) 当期の完成工事高 = 436,200 + 326,000 = 762,200。762,200 × 0.5% = 3,811。残高 1,264 との差額 2,547 を繰り入れ、工事原価なので未成工事支出金に計上する。 〔借方〕未成工事支出金 2,547 /〔貸方〕完成工事補償引当金 2,547
  17. (8) 税引前当期純利益 = 収益 776,622(762,200 + 2,800 + 10,362 + 1,260)− 費用 764,160(619,200 + 57,974 + 9,825 + 54,000 + 15,900 + 7,261)= 12,462。税効果を考慮した法人税等 = 12,462 × 30% = 3,738(千円未満切捨て)。法人税、住民税及び事業税はこれに法人税等調整額 1,050 を足し戻した 4,788。仮払法人税等 3,000 を充当し、残り 1,788 を未払法人税等にする。 〔借方〕法人税、住民税及び事業税 4,788 /〔貸方〕仮払法人税等 3,000・未払法人税等 1,788
  18. 損益計算書の貸方合計 777,672 − 借方合計 768,948 = 当期純利益 8,724。損益計算書の借方と貸借対照表の貸方に同じ金額を書き、4つの合計欄がそれぞれ貸借一致することを確認する。
引っかけ:換算替えするのは外貨建ての 30,400 千円だけで、長期貸付金の残り 49,600 千円は動かさない(貸借対照表は 80,000 + 1,260 = 81,260)。その他有価証券の評価差額は税効果後の純額 210 を貸借対照表の借方に書く。貸倒引当金の完成工事未収入金は (5) で増えた後の 460,200 で計算する。法人税等を 12,462 × 30% = 3,738 のまま計上すると当期純利益が 9,774 になり、税効果を考慮した利益にならない。

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出典:一般財団法人 建設業振興基金が実施した建設業経理士1級 財務諸表 第39回(2026年9月13日(日)実施) 第5問。問題文は本試験の問題にもとづいています。解答・解説・論点の整理は資格試験対策.netの独自コンテンツです。最終更新 。この問題の誤りを報告する