第38回 第5問 論点:精算表(決算整理の総合問題)重要度 A配点 36点未着手

精算表(機械装置の除却・減損、その他有価証券と金利スワップの税効果、工事進行基準の見積変更)

これは建設業経理士1級 財務諸表 第38回(2026年3月8日(日)実施) 第5問(配点 36点)の問題です。論点は「精算表(決算整理の総合問題)」(重要度A・解答の形は精算表(3 点×12 箇所))。採点すると、解き方 19 手順・引っかけの指摘・決算整理仕訳が読めます。

決算整理仕訳の入力欄(問題文の各項目の下):仕訳は本試験では採点されないので点数には入りません。合っているかの確認と弱点分析に使います。

次の<決算整理事項等>に基づき、解答用紙に示されているY建設株式会社の当会計年度(20×5年4月1日〜20×6年3月31日)に係る精算表を完成しなさい。ただし、計算過程で端数が生じた場合は、千円未満の端数を切り捨てること。なお、整理の過程で新たに生じる勘定科目で、精算表上に指定されている科目は、そこに記入すること。

(1) 機械装置(同一機種で 3台)は、20×4年4月1日に取得し、同日より使用を開始したものであり、取得した時点での条件は次のとおりである。

 取得原価 120,000 千円 耐用年数 5年 残存価額 ゼロ 減価償却方法 定額法

 しかし、これらの機械装置のうち 1台が決算日に水没し、今後使用できないことが判明したために廃棄処分する。さらに、残りの 2台の機械装置について期末に減損の兆候が見られたため、割引前のキャッシュ・フローの総額を見積もったところ 45,000 千円であった。また、割引後のキャッシュ・フローの総額は 44,115 千円と算定され、これは正味売却価額よりも大きかった。

 なお、減価償却費は未成工事支出金に、廃棄処分に伴い発生する損失は固定資産除却損に、減損損失は減損損失にそれぞれ計上すること。

仕訳 (1)①
借方貸方
仕訳 (1)②
借方貸方
仕訳 (1)③
借方貸方

(2) 投資有価証券は当期首に額面 100円につき 99.0円で購入したB社社債(額面金額:50,000 千円、年利:2.5%、利払日:毎年 9月と 3月の末日、償還期日:20×9年3月31日)である。ただし、額面金額と取得価額との差額は金利の調整と認められる。この社債はその他有価証券に分類されており、期末の時価は 49,500 千円である。償却原価法(定額法)を適用するとともに評価替えを行う。また、その他有価証券評価差額金については、実効税率を 30% として税効果会計を適用する。

仕訳 (2)①
借方貸方
仕訳 (2)②
借方貸方

(3) 金利スワップは、上記 (2) の有価証券の金利変動による価格変動リスクをヘッジするために、20×5年6月1日に、固定金利支払・変動金利受取のスワップを 30 千円で購入していたものであるが、当該スワップの期末時価が 70 千円となった。当該取引はヘッジ会計の要件を充たしているので、繰延ヘッジにより会計処理する。なお、上記 (2) の有価証券の価格変動は市場金利の変動のみを要因とするものであり、また、実効税率を 30% として税効果会計を適用する。

仕訳 (3)
借方貸方

(4) 退職給付引当金への当期繰入額は 9,232 千円であり、このうち 7,989 千円は工事原価、1,243 千円は販売費及び一般管理費である。なお、現場作業員の退職給付引当金については、月次原価計算で月額 715 千円の予定計算を実施しており、20×6年3月までの毎月の予定額は、未成工事支出金の借方と退職給付引当金の貸方にすでに計上されている。この予定計上額と実際発生額との差額は未成工事支出金に加減する。

仕訳 (4)①
借方貸方
仕訳 (4)②
借方貸方

(5) 期末時点で施工中の工事は次の工事だけであり、収益認識には原価比例法による工事進行基準を適用している。

 工事期間は 4年(20×3年4月1日〜20×7年3月31日)、当初契約時の工事収益総額は 780,000 千円、工事原価総額の見積額は 546,000 千円で、前受金として着手前に 200,000 千円、第2期末に 150,000 千円をそれぞれ受領している。

 当期末までの工事原価発生額は、第1期が 108,000 千円、第2期が 110,400 千円、第3期(当期)が 218,400 千円であった。資材価格と人件費の高騰により、第3期首(当期首)に工事原価総額の見積りを 624,000 千円に変更するとともに、交渉により、請負工事代金総額を 832,000 千円とすることが認められた。

仕訳 (5)①
借方貸方
仕訳 (5)②
借方貸方

(6) 電子記録債権の期末残高に対して 3.0%、完成工事未収入金の期末残高に対して 2.0% の貸倒引当金をそれぞれ設定する(差額補充法)。このうち 2,300 千円については税務上損金算入が認められないため、実効税率を 30% として税効果会計を適用する。

仕訳 (6)①
借方貸方
仕訳 (6)②
借方貸方

(7) 当期の完成工事高に対して 0.5% の完成工事補償引当金を設定する(差額補充法)。

仕訳 (7)
借方貸方

(8) 法人税、住民税及び事業税と未払法人税等を計上する。なお、実効税率は 30% とする。

仕訳 (8)
借方貸方

(9) 税効果を考慮した上で、当期純損益を計上する。

解答欄

精算表(単位:千円)
勘定科目残高試算表整理記入損益計算書貸借対照表
借方貸方借方貸方借方貸方借方貸方
現金預金4,658
電子記録債権68,200
完成工事未収入金138,600
貸倒引当金1,120
未成工事支出金192,649
仮払法人税等11,000
機械装置120,000
機械装置減価償却累計額24,000
土地130,000
投資有価証券49,500
金利スワップ30
その他の諸資産16,403
工事未払金156,300
未成工事受入金38,000
完成工事補償引当金1,136
退職給付引当金136,985
その他の諸負債11,263
資本金250,000
資本準備金23,000
利益準備金18,000
繰越利益剰余金8,600
完成工事高425,300
有価証券利息1,250
雑収入893
完成工事原価298,500
販売費及び一般管理費56,249
その他の諸費用10,058
1,095,8471,095,847
固定資産除却損
減損損失
貸倒引当金繰入額
その他有価証券評価差額金
繰延ヘッジ損益
繰延税金資産
繰延税金負債
未払法人税等
法人税、住民税及び事業税
法人税等調整額
当期純利益

金額はカンマなしでも入力できます。表は横にスクロールできます。空欄のままにする欄には何も入力しないでください。同じ欄に複数の金額が入るとき(本試験では2段に書く)は合計を入力します。

正解

精算表(単位:千円)
勘定科目残高試算表整理記入損益計算書貸借対照表
借方貸方借方貸方借方貸方借方貸方
現金預金4,6584,658
電子記録債権68,20068,200
完成工事未収入金138,600232,400371,000
貸倒引当金1,1208,3469,466
未成工事支出金192,64926,342218,991
仮払法人税等11,00011,000
機械装置120,00043,88576,115
機械装置減価償却累計額24,00016,00024,00032,000
土地130,000130,000
投資有価証券49,50012512549,500
金利スワップ304070
その他の諸資産16,40316,403
工事未払金156,300156,300
未成工事受入金38,00038,000
完成工事補償引当金1,1362,3423,478
退職給付引当金136,9855911,243137,637
その他の諸負債11,26311,263
資本金250,000250,000
資本準備金23,00023,000
利益準備金18,00018,000
繰越利益剰余金8,6008,600
完成工事高425,300270,400695,700
有価証券利息1,2501251,375
雑収入893893
完成工事原価298,500218,400516,900
販売費及び一般管理費56,2491,24357,492
その他の諸費用10,05810,058
1,095,8471,095,847
固定資産除却損24,00024,000
減損損失3,8853,885
貸倒引当金繰入額8,3468,346
その他有価証券評価差額金8888
繰延ヘッジ損益2828
繰延税金資産727727
繰延税金負債1212
未払法人税等12,87612,876
法人税、住民税及び事業税23,87623,876
法人税等調整額690690
594,063594,063644,557698,658716,761662,660
当期純利益54,10154,101
698,658698,658716,761716,761

決算整理仕訳

借方貸方
(1)①
未成工事支出金24,000
機械装置減価償却累計額24,000
(1)②
機械装置減価償却累計額16,000
固定資産除却損24,000
機械装置40,000
(1)③
減損損失3,885
機械装置3,885
(2)①
投資有価証券125
有価証券利息125
(2)②
繰延税金資産37
その他有価証券評価差額金88
投資有価証券125
(3)
金利スワップ40
繰延税金負債12
繰延ヘッジ損益28
(4)①
退職給付引当金591
未成工事支出金591
(4)②
販売費及び一般管理費1,243
退職給付引当金1,243
(5)①
未成工事受入金38,000
完成工事未収入金232,400
完成工事高270,400
(5)②
完成工事原価218,400
未成工事支出金218,400
(6)①
貸倒引当金繰入額8,346
貸倒引当金8,346
(6)②
繰延税金資産690
法人税等調整額690
(7)
未成工事支出金2,342
完成工事補償引当金2,342
(8)
法人税、住民税及び事業税23,876
仮払法人税等11,000
未払法人税等12,876

解き方

  1. (1) は減価償却 → 除却 → 減損の順に処理する。まず 3台分の減価償却 24,000 を計上し、水没した 1台の取得原価 40,000 と累計額 16,000 を除いてから、残り 2台の帳簿価額 48,000 で減損の認識(割引前 CF 45,000 と比較)と測定(使用価値 44,115 まで減額)を行う。機械装置の貸借対照表価額 = 120,000 − 40,000 − 3,885 = 76,115、累計額 = 24,000 + 24,000 − 16,000 = 32,000。
  2. (2)(3) は有価証券とスワップを別々に処理する。社債は償却原価 49,625 と時価 49,500 の差 125 を、税効果後の純額 88 でその他有価証券評価差額金(借方)にする。金利スワップの評価益 40 は繰延ヘッジなので損益にせず、繰延税金負債 12 と繰延ヘッジ損益 28(貸方)にする。繰延税金資産は (2)② の 37 と (6)② の 690 を合わせた 727。
  3. (5) の工事進行基準は、当期首に見積変更があったので変更後の 832,000・624,000 で累計を計算し、前期までの計上額 312,000 を引く。前受金 350,000 − 312,000 = 38,000 が残高試算表の未成工事受入金と一致することを確かめてから、その全額を充当する。
  4. (8)(9) は税引前当期純利益 77,287 × 30% = 23,186 が税効果後の法人税等の負担額になるように、法人税、住民税及び事業税 = 23,186 + 法人税等調整額 690 = 23,876 とする。当期純利益 = 77,287 − 23,876 + 690 = 54,101。
  5. (1)① 3台分の減価償却費 = 120,000 ÷ 5年 = 24,000(1台あたり 8,000)。指示により未成工事支出金に計上する。 〔借方〕未成工事支出金 24,000 /〔貸方〕機械装置減価償却累計額 24,000
  6. (1)② 水没した 1台の取得原価 = 120,000 ÷ 3台 = 40,000、減価償却累計額 = 8,000 × 2年(20×4年4月〜20×6年3月)= 16,000。帳簿価額 40,000 − 16,000 = 24,000 を固定資産除却損にし、取得原価と累計額の両方を減らす。 〔借方〕機械装置減価償却累計額 16,000・固定資産除却損 24,000 /〔貸方〕機械装置 40,000
  7. (1)③ 残り 2台の帳簿価額 = 80,000 − 16,000 × 2台 = 48,000。割引前キャッシュ・フロー 45,000 < 48,000 なので減損を認識する。回収可能価額は使用価値 44,115(正味売却価額より大きい方)。減損損失 = 48,000 − 44,115 = 3,885 を機械装置から直接減額する。 〔借方〕減損損失 3,885 /〔貸方〕機械装置 3,885
  8. (2)① 取得価額 = 50,000 × 99.0 ÷ 100 = 49,500(残高試算表と一致)。額面との差額 500 を償還までの 48か月(20×5年4月〜20×9年3月)で配分する。当期分 = 500 × 12/48 = 125 を投資有価証券に加え、有価証券利息にする。償却原価 = 49,625。 〔借方〕投資有価証券 125 /〔貸方〕有価証券利息 125
  9. (2)② 評価差額 = 時価 49,500 − 償却原価 49,625 = △125(評価損)。繰延税金資産 = 125 × 30% = 37.5 → 37(千円未満切捨て)、その他有価証券評価差額金 = 125 − 37 = 88(借方)。投資有価証券を 125 減らして時価 49,500 にする。 〔借方〕繰延税金資産 37・その他有価証券評価差額金 88 /〔貸方〕投資有価証券 125
  10. (3) 金利スワップの時価 70 − 帳簿価額 30 = 40 の評価益。繰延ヘッジなので損益にせず、繰延税金負債 = 40 × 30% = 12 を差し引いた 28 を繰延ヘッジ損益(純資産)として貸方に繰り延べる。 〔借方〕金利スワップ 40 /〔貸方〕繰延税金負債 12・繰延ヘッジ損益 28
  11. (4)① 現場作業員分の予定計上額 = 715 × 12か月 = 8,580。実際 7,989 との差額 591 は予定の方が多いので、未成工事支出金と退職給付引当金を 591 減らす。 〔借方〕退職給付引当金 591 /〔貸方〕未成工事支出金 591
  12. (4)② 販売費及び一般管理費分 1,243 は未処理なので、そのまま繰り入れる。 〔借方〕販売費及び一般管理費 1,243 /〔貸方〕退職給付引当金 1,243
  13. (5)① 当期首の見積変更後の金額で累計を計算し直す。進捗率 = (108,000 + 110,400 + 218,400) ÷ 624,000 = 70%、累計工事収益 = 832,000 × 70% = 582,400。前期までの計上額 = 第1期 780,000 × 108,000 ÷ 546,000 = 154,285(千円未満切捨て)、第2期 780,000 × 218,400 ÷ 546,000 − 154,285 = 312,000 − 154,285 = 157,715、計 312,000。当期の完成工事高 = 582,400 − 312,000 = 270,400。未成工事受入金の残高 38,000(前受金 350,000 − 312,000)を充当し、残り 232,400 を完成工事未収入金にする。 〔借方〕未成工事受入金 38,000・完成工事未収入金 232,400 /〔貸方〕完成工事高 270,400
  14. (5)② 当期の工事原価発生額 218,400 を未成工事支出金から完成工事原価に振り替える。(1)①・(4)①・(7) の整理を加えた未成工事支出金 192,649 + 24,000 − 591 + 2,342 = 218,400 がちょうど振り替えられ、次期繰越額は 0 になる。 〔借方〕完成工事原価 218,400 /〔貸方〕未成工事支出金 218,400
  15. (6)① 電子記録債権 68,200 × 3.0% = 2,046。完成工事未収入金 (138,600 + 232,400) × 2.0% = 7,420。設定額 9,466 − 残高 1,120 = 8,346 を繰り入れる。 〔借方〕貸倒引当金繰入額 8,346 /〔貸方〕貸倒引当金 8,346
  16. (6)② 損金不算入額 2,300 × 30% = 690 を繰延税金資産に計上し、法人税等調整額(貸方)で法人税等を減らす。 〔借方〕繰延税金資産 690 /〔貸方〕法人税等調整額 690
  17. (7) 当期の完成工事高 = 425,300 + 270,400 = 695,700。695,700 × 0.5% = 3,478.5 → 3,478(千円未満切捨て)。残高 1,136 との差額 2,342 を繰り入れ、工事原価なので未成工事支出金に計上する。 〔借方〕未成工事支出金 2,342 /〔貸方〕完成工事補償引当金 2,342
  18. (8) 税引前当期純利益 = 収益 697,968(695,700 + 1,375 + 893)− 費用 620,681(516,900 + 57,492 + 10,058 + 24,000 + 3,885 + 8,346)= 77,287。税効果を考慮した法人税等 = 77,287 × 30% = 23,186(千円未満切捨て)。法人税、住民税及び事業税はこれに法人税等調整額 690 を足し戻した 23,876。仮払法人税等 11,000 を充当し、残り 12,876 を未払法人税等にする。 〔借方〕法人税、住民税及び事業税 23,876 /〔貸方〕仮払法人税等 11,000・未払法人税等 12,876
  19. 損益計算書の貸方合計 698,658 − 借方合計 644,557 = 当期純利益 54,101。損益計算書の借方と貸借対照表の貸方に同じ金額を書き、4つの合計欄がそれぞれ貸借一致することを確認する。
引っかけ:第1期の工事収益 780,000 × 108,000 ÷ 546,000 = 154,285.7… は千円未満を切り捨てるが、第2期末の累計 312,000 は割り切れるので前期までの合計は 312,000 になる。金利スワップの評価益を有価証券の評価損と相殺したり、損益(為替差損益など)にしたりしない。貸倒引当金の完成工事未収入金は (5) で増えた後の 371,000 で計算する。法人税等を 77,287 × 30% = 23,186 のまま計上すると当期純利益が 54,791 になり、税効果を考慮した利益にならない。

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