第30回 第3問 論点:純資産・持分・株主資本等変動計算書重要度 A配点 16点未着手

会計処理の正誤(ソフトウェア・真実性の原則・支払利息の取得原価算入・リースの分類・繰延資産の一括償却・株主資本の区分・自己株式処分差額・為替換算調整勘定)

これは建設業経理士1級 財務諸表 第30回(2022年3月13日(日)実施) 第3問(配点 16点)の問題です。論点は「純資産・持分・株主資本等変動計算書」(重要度A・解答の形はA/B(第39 回から A/B+修正箇所+修正内容の記号))。採点すると、解き方 8 手順・引っかけの指摘が読めます。

財務会計に関するわが国の基本的な考え方に照らして、以下の会計処理のうち、認められるものには「A」、認められないものには「B」を解答用紙の所定の欄に記入しなさい。

1.期首に、得意先への証票発行事務の時間的ならびに経済的負担軽減を目的として専用のソフトウェアを購入した。その目的は十分に達成されていると判断できたので、当該ソフトウェアの購入費を無形固定資産として貸借対照表に計上した。

2.企業会計原則における真実性の原則は、企業の公開する財務諸表の内容に虚偽があってはならないことを要請するものであるので、会計ルールの選択の仕方や会計担当者の判断の仕方によって表現する数値が異なることは認められない。

3.工事用の機械を購入するにあたり銀行から資金を借り入れた。借入に対する支払利息を、付随費用として、当該機械の取得原価に含めることとした。

4.当社は営業用の車両をすべてリース契約により取得している。当該リース契約は中途解約不能であるが、定期的な車両メンテナンスおよび自動車検査登録制度(車検)に係る費用はすべてリース会社が負担することとなっているため、当該リース契約をオペレーティング・リースとして処理している。

5.市場開拓のための支出を繰延経理してきたが、経営方針を変更し、来期首より当該市場から撤退することになったので、当年度決算において未償却残高を一括償却することにした。

6.企業会計原則は、株主資本を資本金と剰余金に区別するとともに、剰余金を資本剰余金と利益剰余金の 2つに分けている。会社計算規則などの現行会計制度ではさらに細かく、資本剰余金を資本準備金とその他資本剰余金に、利益剰余金を利益準備金とその他利益剰余金に区分している。

7.自己株式を割り当てることによって増資をしたが、その際に発生した自己株式の帳簿価額と払込金額との差額については、当期の損益として損益計算書に計上した。

8.連結対象である在外子会社の財務諸表の換算に際して換算差額が生じたので、為替換算調整勘定として、連結貸借対照表のその他の包括利益累計額の部に計上した。

解答欄

それぞれの空欄に当てはまるものを選んで「採点する」を押してください。

正解

1A
2B
3B
4A
5A
6A
7B
8A

解き方

  1. 1.A。自社利用のソフトウェアは、その利用により将来の収益獲得又は費用削減が確実と認められる場合、取得に要した費用を無形固定資産(ソフトウェア)として計上する(研究開発費等に係る会計基準)。事務負担の軽減という費用削減効果が達成されているので資産計上が正しい。
  2. 2.B。真実性の原則がいう真実は絶対的真実ではなく相対的真実である。会計処理には複数の認められた方法があり、会計方針の選択や見積り・判断の仕方によって財務諸表の数値が異なることは容認される。「認められない」とする文は誤り。
  3. 3.B。固定資産の取得原価は購入代価に付随費用を加えた額だが、購入資金の借入れに係る支払利息は財務活動に伴う費用(営業外費用)であり、取得原価に含めない。取得原価への算入が認められるのは、自家建設で建設に充当した借入資本の利子(稼働前の期間に属するもの)に限られる(連続意見書第三)。
  4. 4.A。ファイナンス・リースは、解約不能(ノンキャンセラブル)と、借手がリース物件の経済的利益を実質的に享受し、かつ使用に伴うコストを実質的に負担する(フルペイアウト)の 2つの要件を満たすもの。メンテナンス費用や車検費用をリース会社が負担する契約は、借手がコストを実質的に負担していないのでフルペイアウトの要件を満たさず、オペレーティング・リースとして処理する。
  5. 5.A。市場開拓のための支出は開発費として繰延資産に計上できるが、繰延資産は支出の効果が将来に及ぶことを根拠に資産計上されるもの。市場からの撤退で効果が失われることが明らかになった場合、未償却残高を一括償却する処理が認められる。
  6. 6.A。企業会計原則は株主資本(資本)を資本金と剰余金に区別し、剰余金を資本剰余金と利益剰余金に分ける。会社計算規則では資本剰余金を資本準備金とその他資本剰余金、利益剰余金を利益準備金とその他利益剰余金に区分する。記述はすべて正しい。
  7. 7.B。自己株式の処分(割当てによる増資を含む)で生じる払込金額と帳簿価額との差額(自己株式処分差額)は、株主との資本取引から生じるものなので損益に計上せず、その他資本剰余金の増減として処理する(自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準)。
  8. 8.A。在外子会社の財務諸表の換算で生じる換算差額(資産・負債は決算日レート、純資産は取得時・発生時レート、損益は期中平均レートで換算した差額)は為替換算調整勘定とし、連結貸借対照表の純資産の部のその他の包括利益累計額に計上する。
引っかけ:2 は「虚偽があってはならない」という前半は正しいが、後半の「数値が異なることは認められない」が相対的真実の考え方に反する。3 は「付随費用」という言葉に引きずられない(支払利息は付随費用ではない)。4 は「中途解約不能」だけでファイナンス・リースと決めつけず、フルペイアウトの要件を確かめる。7 は自己株式の処分差額を損益にしないという基本を思い出す。

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出典:一般財団法人 建設業振興基金が実施した建設業経理士1級 財務諸表 第30回(2022年3月13日(日)実施) 第3問。問題文は本試験の問題にもとづいています。解答・解説・論点の整理は資格試験対策.netの独自コンテンツです。最終更新 。この問題の誤りを報告する