新製品投資案の経済性計算(税引後差額キャッシュ・フロー・回収期間・単純投資利益率・正味現在価値・割引回収期間)

これは建設業経理士1級 原価計算 第32回(2023年3月12日(日)実施) 第4問(配点 20点)の問題です。論点は「設備投資の経済性計算(税引後CF・正味現在価値・回収期間・取替投資)」(重要度A・解答の形は金額+記号(X/Y、A/B)、個数、記号選択)。採点すると、解き方 7 手順・引っかけの指摘が読めます。

当社では、新製品である製品Nを新たに生産・販売する案(N投資案)を検討している。製品Nの製品寿命は 5 年であり、各年度の生産量と販売量は等しいとする。次の<資料>に基づいて、下の設問に答えなさい。なお、すべての設問について税金の影響を考慮すること。また、製品Nの各年度にかかわるキャッシュ・フローは、特に指示がなければ各年度末にまとめて発生するものとする。

問1 N投資案の 1 年間の差額キャッシュ・フローを計算しなさい。ただし、貨幣の時間価値を考慮する必要はない。

問2 貨幣の時間価値を考慮しない回収期間法によって、N投資案の回収期間を計算しなさい。ただし、各年度の経済的効果が年間を通じて平均的に発生すると仮定すること。

問3 平均投資額を分母とする単純投資利益率法(会計的利益率法)によって、N投資案の投資利益率を計算しなさい。

問4 正味現在価値法によって、N投資案の正味現在価値を計算しなさい。

問5 問2 において、貨幣の時間価値を考慮する場合、N投資案の割引回収期間を計算しなさい。

  • 1.製品Nに関する各年度の損益計算(単位:千円)
製品N
売上高4,000,000
変動売上原価1,800,000
変動販売費275,000
貢献利益1,925,000
固定製造原価1,250,000
固定販売費及び一般管理費150,000
営業利益525,000
  • 2.設備投資に関する資料 製品Nを生産する場合は設備Nを購入し使用する。設備Nの購入原価は 5,000,000 千円である。設備Nの減価償却費の計算は、耐用年数 5 年、5 年後の残存価額ゼロの定額法で行われる。設備Nの耐用年数経過後の見積処分価額はゼロである。なお、法人税の計算では、減価償却費はすべて各年度の損金に算入される。
  • 3.その他の計算条件
  • (1) 設備投資により、現金売上、現金支出費用、減価償却費が発生する。
  • (2) 今後 5 年間にわたり黒字が継続すると見込まれる。実効税率は 30% である。
  • (3) 加重平均資本コスト率は 10% である。計算に際しては、次の現価係数を使用すること。
1 年2 年3 年4 年5 年合計
0.90910.82640.75130.68300.62093.7907
  • (4) 解答に際して端数が生じるときは、最終の解答数値の段階で、金額については千円未満を切り捨て、年数については年表示で小数点第 2 位を四捨五入し、比率(%)については%表示で小数点第 1 位を四捨五入すること。

解答欄

千円
年
小数点第 2 位を四捨五入
%
小数点第 1 位を四捨五入
千円
千円未満を切り捨て
年
小数点第 2 位を四捨五入

金額はカンマなしでも入力できます。

正解

問1 1 年間の差額キャッシュ・フロー1,367,500 千円
問2 回収期間3.7 年
問3 単純投資利益率(平均投資額基準)15 %
問4 正味現在価値183,782 千円
問5 割引回収期間4.8 年

解き方

  1. 設備Nの減価償却費 = 5,000,000 ÷ 5 年 = 1,000,000(千円)。固定製造原価 1,250,000 の中に含まれている非現金支出費用なので、現金支出費用 = 1,800,000 + 275,000 + 1,250,000 + 150,000 - 1,000,000 = 2,475,000 になる。
  2. 問1:税引後の年間差額キャッシュ・フロー = (現金売上 4,000,000 - 現金支出費用 2,475,000) × (1 - 0.3) + 減価償却費 1,000,000 × 0.3 = 1,067,500 + 300,000 = 1,367,500。営業利益から求めると 525,000 × (1 - 0.3) + 1,000,000 = 367,500 + 1,000,000 = 1,367,500 で同じになる。
  3. 問2:回収期間 = 投資額 ÷ 年間キャッシュ・フロー = 5,000,000 ÷ 1,367,500 = 3.656… → 3.7 年。
  4. 問3:平均投資額 = (投資額 5,000,000 + 残存価額 0) ÷ 2 = 2,500,000。年間の税引後利益 = 営業利益 525,000 × (1 - 0.3) = 367,500(減価償却費を差し引いた会計上の利益を使う)。投資利益率 = 367,500 ÷ 2,500,000 = 14.7% → 15%。
  5. 問4:正味現在価値 = 1,367,500 × 年金現価係数 3.7907 - 5,000,000 = 5,183,782.25 - 5,000,000 = 183,782.25 → 183,782 千円(プラスなので投資は有利)。
  6. 問5:各年のキャッシュ・フローの現在価値を累計する。1 年目 1,367,500 × 0.9091 = 1,243,194.25、2 年目 × 0.8264 = 1,130,102(累計 2,373,296.25)、3 年目 × 0.7513 = 1,027,402.75(累計 3,400,699)、4 年目 × 0.6830 = 934,002.5(累計 4,334,701.5)、5 年目 × 0.6209 = 849,080.75(累計 5,183,782.25)。
  7. 4 年目末の未回収額 = 5,000,000 - 4,334,701.5 = 665,298.5。これを 5 年目の現在価値 849,080.75 で回収するので 665,298.5 ÷ 849,080.75 = 0.783… 年。割引回収期間 = 4 + 0.78 = 4.78 → 4.8 年。
引っかけ:問1 は営業利益 525,000 をそのままキャッシュ・フローにしない。減価償却費は現金支出を伴わないので足し戻し、法人税の節約額(タックス・シールド)1,000,000 × 30% を含める。問3 の会計的利益率は税引後キャッシュ・フローではなく税引後利益 367,500 を分子にし、分母は投資額 5,000,000 ではなく平均投資額 2,500,000 にする。問5 は各年の現価係数で割り引いた累計で回収年を判定し、5 年目は割り引いた 849,080.75 で按分する(割り引かない 1,367,500 で按分すると 4.5 年になり誤り)。

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出典:一般財団法人 建設業振興基金が実施した建設業経理士1級 原価計算 第32回(2023年3月12日(日)実施) 第4問。問題文は本試験の問題にもとづいています。解答・解説・論点の整理は資格試験対策.netの独自コンテンツです。最終更新 。この問題の誤りを報告する