設備投資の経済性計算(税引後キャッシュ・フロー・正味現在価値・採算個数・2 設備の優劣分岐点)
これは建設業経理士1級 原価計算 第31回(2022年9月11日(日)実施) 第4問(配点 20点)の問題です。論点は「設備投資の経済性計算(税引後CF・正味現在価値・回収期間・取替投資)」(重要度A・解答の形は金額+記号(X/Y、A/B)、個数、記号選択)。採点すると、解き方 8 手順・引っかけの指摘が読めます。
Z製品を製造販売している当社では、従来使用してきた設備の一部が古くなったので、その代替として設備Aと設備Bのどちらを 20×2 年度期首から導入すべきかを検討している。次の<資料>に基づいて、下記の設問に答えなさい。なお、計算の過程で端数が生じた場合は、最終数値の段階で、製品の個数については 1 個未満の端数を切り上げ、金額については円未満を四捨五入しなさい。また、問2 以降の設問では、税金の影響を考慮して解答すること。
問1 設備AでZ製品を製造販売する場合の次の金額を計算しなさい。 (1) 製品 1 個当たり限界利益(貢献利益) (2) 企業会計において費用に計上される年間個別固定費総額
問2 設備Aを使用してZ製品 2,000 個を毎年製造販売するものと仮定した場合の次の金額を計算しなさい。 (1) Z製品製造販売に関わる 1 年間のネット・キャッシュ・インフロー (2) Z製品製造販売に関わる 3 年間のネット・キャッシュ・インフローの現在価値合計 (3) 正味現在価値
問3 設備Aを使用してZ製品を製造販売するものと仮定する。 (1) 1 年間のZ製品の製造販売個数をXとすると、1 年間のネット・キャッシュ・インフローはいくらになるか。その計算式を示しなさい。 (2) Z製品製造販売に関わる 3 年間のネット・キャッシュ・インフローの現在価値合計はいくらになるか。その計算式を示しなさい。 (3) 正味現在価値が正(プラス)となる(設備投資の採算がとれるようになる)のは 1 年間何個以上のZ製品を製造販売したときからかを計算しなさい。 なお、(1) と (2) の計算式については、最も簡単にした式を示すこと。
問4 設備Bを使用してZ製品を製造販売する場合、設備Bへの投資の正味現在価値が正(プラス)となる(設備投資の採算がとれるようになる)のは 1 年間何個以上のZ製品を製造販売したときからかを計算しなさい。
問5 (1) 設備A、設備Bへの投資の経済性の優劣が逆転するのは、1 年間の製造販売量が何個以上のときからかを計算しなさい。 (2) 製造販売量が (1) の個数以上になるとどちらへの投資が有利になるかを示しなさい。
- 1.設備Aの購入原価は 30,000,000 円、設備Bの購入原価は 24,000,000 円であり、20×1 年度期末に現金で支払われる。いずれの設備も、耐用年数 3 年、残存価額ゼロの定額法で減価償却を 20×2 年度期末から行う。
- 2.設備A、設備Bを使用して製造販売されるZ製品の販売価格は単価 20,000 円、Z製品の製造販売個数は毎年同じであり、すべて現金売上である。
- 3.設備A、設備Bの使用に伴って発生する関連原価(Z製品 1 個当たり変動費、年間発生固定費)は次のように見積もられている。
| 設備A 変動費 | 設備A 年間固定費 | 設備B 変動費 | 設備B 年間固定費 | |
|---|---|---|---|---|
| 材料費 | 8,000 円 | ― | 9,500 円 | ― |
| 経費 | 2,000 円 | 3,000,000 円 | 2,500 円 | 2,000,000 円 |
| 合計 | 10,000 円 | 3,000,000 円 | 12,000 円 | 2,000,000 円 |
- 上記の費用はすべて現金支出費用であり、固定費の中に減価償却費は含まれていない。
- 4.当社は今後 3 年間にわたり黒字が継続すると見込まれる。実効税率は 40% である。
- 5.税引後資本コストは 6% であり、割引計算に際しては次の年金現価係数を使用すること。 3 年・6%:2.673
- 6.各年度におけるキャッシュ・フローは、各年度末にまとめて発生するものと仮定する。
解答欄
正解
| 問1 (1) 製品 1 個当たり限界利益(貢献利益) | 10,000 円 |
|---|---|
| 問1 (2) 企業会計において費用に計上される年間個別固定費総額 | 13,000,000 円 |
| 問2 (1) 1 年間のネット・キャッシュ・インフロー | 14,200,000 円 |
| 問2 (2) 3 年間のネット・キャッシュ・インフローの現在価値合計 | 37,956,600 円 |
| 問2 (3) 正味現在価値 | 7,956,600 円 |
| 問3 (1) 1 年間のネット・キャッシュ・インフローの計算式 Xの係数 | 6,000 X + |
| 問3 (1) 1 年間のネット・キャッシュ・インフローの計算式 定数 | 2,200,000 円 |
| 問3 (2) 3 年間のネット・キャッシュ・インフローの現在価値合計の計算式 Xの係数 | 16,038 X + |
| 問3 (2) 3 年間のネット・キャッシュ・インフローの現在価値合計の計算式 定数 | 5,880,600 円 |
| 問3 (3) 設備Aの正味現在価値が正となる年間製造販売個数 | 1,504 個以上 |
| 問4 設備Bの正味現在価値が正となる年間製造販売個数 | 1,454 個以上 |
| 問5 (1) 設備A・設備Bの優劣が逆転する年間製造販売量 | 1,704 個以上 |
| 問5 (2) (1) の個数以上で有利になる設備 | A |
解き方
- 問1 (1):製品 1 個当たり限界利益 = 販売価格 20,000 - 変動費 (8,000 + 2,000) = 10,000。(2):企業会計上の費用には現金支出を伴わない減価償却費も含まれる。減価償却費 = 30,000,000 ÷ 3 年 = 10,000,000。年間個別固定費総額 = 現金支出固定費 3,000,000 + 10,000,000 = 13,000,000。
- 問2 (1):税引後のネット・キャッシュ・インフロー = (現金収入 - 現金支出) × (1 - 税率) + 減価償却費 × 税率。設備Aで 2,000 個なら (10,000 × 2,000 - 3,000,000) × 0.6 + 10,000,000 × 0.4 = 10,200,000 + 4,000,000 = 14,200,000。損益計算からも確かめられる:税引前利益 20,000,000 - 3,000,000 - 10,000,000 = 7,000,000、法人税 2,800,000、キャッシュ・フロー = 17,000,000 - 2,800,000 = 14,200,000。
- 問2 (2):毎年同額なので年金現価係数を掛ける。14,200,000 × 2.673 = 37,956,600。(3):正味現在価値 = 37,956,600 - 投資額 30,000,000 = 7,956,600(プラスなので採算がとれる)。
- 問3 (1):個数をXとして (1) と同じ式を立てる。(10,000X - 3,000,000) × 0.6 + 10,000,000 × 0.4 = 6,000X - 1,800,000 + 4,000,000 = 6,000X + 2,200,000。(2):年金現価係数を掛けて (6,000X + 2,200,000) × 2.673 = 16,038X + 5,880,600。
- 問3 (3):正味現在価値 = 16,038X + 5,880,600 - 30,000,000 > 0 → 16,038X > 24,119,400 → X > 1,503.9…。1 個未満を切り上げて 1,504 個以上。(検算:X = 2,000 なら 16,038 × 2,000 + 5,880,600 = 37,956,600 で問2 (2) と一致する。)
- 問4:設備Bについて同じ式を立てる。限界利益 = 20,000 - 12,000 = 8,000、減価償却費 = 24,000,000 ÷ 3 = 8,000,000。年間ネット・キャッシュ・インフロー = (8,000X - 2,000,000) × 0.6 + 8,000,000 × 0.4 = 4,800X + 2,000,000。現在価値合計 = (4,800X + 2,000,000) × 2.673 = 12,830.4X + 5,346,000。正味現在価値 > 0 → 12,830.4X > 24,000,000 - 5,346,000 = 18,654,000 → X > 1,453.9… → 1,454 個以上。
- 問5 (1):両設備の正味現在価値が等しくなる個数を求める。設備A:16,038X - 24,119,400、設備B:12,830.4X - 18,654,000。16,038X - 24,119,400 = 12,830.4X - 18,654,000 → 3,207.6X = 5,465,400 → X = 1,703.9…。切り上げて 1,704 個以上で優劣が逆転する。
- 問5 (2):設備Aは投資額が大きい代わりに 1 個当たりのキャッシュ・フロー(6,000 × 2.673 = 16,038)が設備B(12,830.4)より大きいので、販売量が少ないうちは設備Bが有利、1,704 個以上になると設備Aが有利になる → A。(検算:1,704 個で設備A 3,209,352 > 設備B 3,209,001.6、1,703 個で設備A 3,193,314 < 設備B 3,196,171.2。)
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出典:一般財団法人 建設業振興基金が実施した建設業経理士1級 原価計算 第31回(2022年9月11日(日)実施) 第4問。問題文は本試験の問題にもとづいています。解答・解説・論点の整理は資格試験対策.netの独自コンテンツです。最終更新 。この問題の誤りを報告する