設備の取替投資の意思決定(減価償却による法人税節約額・差額キャッシュ・フロー・正味現在価値)

これは建設業経理士1級 原価計算 第37回(2025年9月7日(日)実施) 第4問(配点 20点)の問題です。論点は「設備投資の経済性計算(税引後CF・正味現在価値・回収期間・取替投資)」(重要度A・解答の形は金額+記号(X/Y、A/B)、個数、記号選択)。採点すると、解き方 7 手順・引っかけの指摘が読めます。

SG社では建設資材のC製品を製造・販売している。これまでM1 型の設備を用いて生産を行ってきたが、当期末にM1 型より高性能で費用を低く抑えられる最新式のM2 型に設備を切り替えて導入するかどうかを検討しているところである。次の<資料>に基づいて、下記の設問に答えなさい。なお、計算の過程で端数が生じた場合は、計算途中では四捨五入せず、最終数値の円未満を四捨五入すること。

問1 M1 型設備およびM2 型設備の減価償却によって各期間に発生する法人税節約額(1 年分)を求めなさい。

問2 M1 型設備を当期末で売却する際に生じる法人税節約額を求めなさい。

問3 M2 型設備の導入時(当期末)および次期以降の各年度における差額キャッシュ・フローを計算しなさい。ここでいう差額キャッシュ・フローとは、M1 型設備をそのまま用いる案を基準とした場合のM2 型設備を導入する案の差額キャッシュ・フローである。金額がプラスの場合は「A」、マイナスの場合は「B」を解答用紙の所定の欄に記入し、金額欄に符号は付けないこと。

問4 M2 型設備を導入する場合にいくら有利または不利になるかについて、当期末を計算開始時点とした正味現在価値法によって判定しなさい。有利の場合は「A」、不利の場合は「B」を解答用紙の所定の欄に記入すること。ただし、各年度のキャッシュ・フローは年度末にまとめて生じるものとする。また、税引後資本コスト率を 8% とし、計算にあたっては次の複利現価係数を用いること。

  • 1.設備に関する資料
M1 型M2 型
取得価額100,000,000 円80,000,000 円
耐用年数10 年5 年
残存価額取得価額の 10%取得価額の 10%
  • (1) M1 型設備は取得してから当期末で 5 年経過する。この設備を当期末に売却すると、その売却価額は 45,000,000 円になる。
  • (2) 両設備の耐用年数経過時における売却価額は残存価額と同額とする。
  • (3) 当社における設備の減価償却方法は定額法を採用している。
  • 2.M2 型設備を導入すると、主要材料Pの購入・消費量を 10% 削減できる。M2 型設備を導入しない場合、次期における主要材料Pの年間予定購入・消費量は 10,000 トンである。また、次期における主要材料Pの予定購入価格は 1 トン当たり 4,000 円であり、その後毎年 500 円ずつ上昇していくと予想される。
  • 3.M2 型設備の各年度の維持費はM1 型設備と比較して 6,000,000 円減少すると見込まれる。
  • 4.M2 型設備を導入した場合、保険料および固定資産税の年額合計は、M1 型設備と比較して 1,200,000 円増加すると見込まれる。
  • 5.実効税率は 30% である。なお、当社は今後 5 年間にわたり黒字企業であると見込まれる。
  • 複利現価係数(8%)
1 年2 年3 年4 年5 年
8%0.92590.85730.79380.73500.6806

解答欄

円
円
円
金額円記号
A=プラス、B=マイナス
金額円記号
金額円記号
金額円記号
金額円記号
金額円記号
金額円記号
A=有利、B=不利

金額はカンマなしでも入力できます。

正解

問1 M1 型設備の減価償却による法人税節約額(1 年分)2,700,000 円
問1 M2 型設備の減価償却による法人税節約額(1 年分)4,320,000 円
問2 M1 型設備を当期末に売却する際の法人税節約額3,000,000 円
問3 導入時 金額32,000,000 円
問3 導入時 記号B
問3 1 年度 金額7,780,000 円
問3 1 年度 記号A
問3 2 年度 金額8,130,000 円
問3 2 年度 記号A
問3 3 年度 金額8,480,000 円
問3 3 年度 記号A
問3 4 年度 金額8,830,000 円
問3 4 年度 記号A
問3 5 年度 金額7,180,000 円
問3 5 年度 記号A
問4 正味現在価値 金額281,533 円
問4 正味現在価値 記号A

解き方

  1. 問1:減価償却費は現金支出を伴わないが、損金になるので「減価償却費 × 税率」だけ法人税を節約する(タックス・シールド)。M1 型:(100,000,000 - 10,000,000) ÷ 10 年 = 9,000,000 → 9,000,000 × 30% = 2,700,000。M2 型:(80,000,000 - 8,000,000) ÷ 5 年 = 14,400,000 → 14,400,000 × 30% = 4,320,000。
  2. 問2:M1 型の当期末の帳簿価額 = 100,000,000 - 9,000,000 × 5 年 = 55,000,000。売却価額 45,000,000 との差 10,000,000 が売却損(損金)になり、法人税節約額 = 10,000,000 × 30% = 3,000,000。
  3. 問3 導入時(当期末):M2 型の取得支出 -80,000,000、M1 型の売却収入 +45,000,000、売却損による法人税節約 +3,000,000。合計 -32,000,000(B)。
  4. 各年度の営業キャッシュ・フローの差額 =(材料費の節約 + 維持費の減少 - 保険料等の増加)× (1 - 30%) + 減価償却による法人税節約額の差額(4,320,000 - 2,700,000 = 1,620,000)。材料費の節約は 10,000 トン × 10% = 1,000 トン × 各年度の単価で、単価は 4,000 から毎年 500 ずつ上がる。
  5. 1 年度:(1,000 × 4,000 + 6,000,000 - 1,200,000) × 0.7 = 8,800,000 × 0.7 = 6,160,000 + 1,620,000 = 7,780,000(A)。2 年度:(4,500,000 + 4,800,000) × 0.7 = 6,510,000 + 1,620,000 = 8,130,000(A)。3 年度:(5,000,000 + 4,800,000) × 0.7 = 6,860,000 + 1,620,000 = 8,480,000(A)。4 年度:(5,500,000 + 4,800,000) × 0.7 = 7,210,000 + 1,620,000 = 8,830,000(A)。
  6. 5 年度:(6,000,000 + 4,800,000) × 0.7 = 7,560,000 + 1,620,000 = 9,180,000。さらに耐用年数経過時の売却収入の差額を加える。M2 型は残存価額 8,000,000 で売却、M1 型をそのまま使う案でも 5 年後(取得後 10 年)に残存価額 10,000,000 で売却できるので、差額 = 8,000,000 - 10,000,000 = -2,000,000(売却価額 = 帳簿価額なので売却損益はなく、税効果はない)。9,180,000 - 2,000,000 = 7,180,000(A)。
  7. 問4 正味現在価値 = 7,780,000 × 0.9259 + 8,130,000 × 0.8573 + 8,480,000 × 0.7938 + 8,830,000 × 0.7350 + 7,180,000 × 0.6806 - 32,000,000 = 7,203,502 + 6,969,849 + 6,731,424 + 6,490,050 + 4,886,708 - 32,000,000 = 32,281,533 - 32,000,000 = +281,533。プラスなのでM2 型の導入は 281,533 円有利(A)。
引っかけ:導入時のキャッシュ・フローにはM1 型の売却収入 45,000,000 だけでなく、売却損 10,000,000 × 30% = 3,000,000 の法人税節約額も加える。各年度は材料単価の上昇(4,000 → 4,500 → …)を反映させ、税引後にしてから減価償却の法人税節約額の「差額」1,620,000 を足す(M2 型の 4,320,000 をそのまま足さない)。5 年度末にはM1 型を使い続けた場合の残存価額 10,000,000 の売却収入を失う点を忘れず、M2 型の 8,000,000 との差額 -2,000,000 を計上する。

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出典:一般財団法人 建設業振興基金が実施した建設業経理士1級 原価計算 第37回(2025年9月7日(日)実施) 第4問。問題文は本試験の問題にもとづいています。解答・解説・論点の整理は資格試験対策.netの独自コンテンツです。最終更新 。この問題の誤りを報告する