現場作業の軽減策とコスト削減の事例(工事概要を提示)
これは1級建築施工管理技士 第二次検定 令和8年度(2026年10月18日(日)実施) 問題1の問題です。論点は「施工経験記述」(重要度A・解答の形は記述)。採点すると、解き方 4 手順・引っかけの指摘が読めます。
持続可能な社会の実現のため,建設業には多様な視点からの生産性向上が求められているが,建築工事の現場を管理していくうえでのあなたの考えについて,次の1.及び2.の問いに答えなさい。
なお,建築工事には,建築設備工事を含まないものとする。
1. あなたが建設現場における統括的な施工の技術上の管理を求められる立場として,右に示す工事概要の建築工事について,機能,性能等の要求された品質を確保しながら適正,かつ,合理的に進めるうえで,有効と考える現場作業の軽減策を3つ提案し,それぞれ次の①から③について具体的に記述しなさい。
ただし,3つの提案の②及び③はすべて異なる内容を記述するものとする。
なお,次の記述は不可とする。
・工事概要に示す工事において施工上必要としない工事及び作業に関する内容
・建築確認の再申請が必要となるような変更に関する内容
・工期の遅延に繋がる内容
① 工種名又は作業名等
② あなたが考える有効な現場作業の軽減策とそれが現場作業の軽減に繋がる理由
③ ②の実施によって現場作業の軽減及び工期の短縮以外に得られる効果
2. 右に示す工事概要の建築工事にかかわらず,品質を確保しながらコスト削減に繋がる施工の合理化の事例を2つあげ,次の①及び②について具体的に記述しなさい。
ただし,②はすべて異なる内容の記述とし,1.の②と同一の内容の記述は不可とする。
なお,コスト削減には,コスト増加の防止を含む。
① 工種名又は作業名等
② コスト削減に繋がる施工の合理化の内容とそれがコスト削減に繋がる理由
〔工事概要〕(表中「〇+△+□」は,〇下地のうえ△面に□仕上げ等,下地と表面仕上げの関係を示す。)(EP:合成樹脂エマルションペイント)
工事名:事務所ビル新築工事
主要構造:鉄筋コンクリート構造,地上6階建て
用途地域:近隣商業地域 12m道路隣接
工期:11か月
面積:敷地面積 800.0m²,建築面積 480.0m²,延べ面積 2,780.0m²
最高高さ:24.5m 階高:3.8m エレベーター:乗用 11人乗り 2台
主な構造仕様:根切深さ 設計GL-3.0m,地下水位深さ 設計GL-6.5m,山留め 親杭横矢板工法,地業 現場造成杭 アースドリル工法,コンクリート 現場打ちコンクリート,型枠 コンクリート型枠用合板・パイプサポートを用いた在来工法,鉄筋 工場加工,現場組立て・柱,梁主筋:ガス圧接継手,屋上工作物 設備用架台
主な外部仕上げ:屋上(陸屋根)アスファルト保護防水,アルミニウム製笠木/外壁 主な外壁 50二丁タイル,断熱 内断熱工法 現場発泡断熱材吹付け/建具 エントランス ステンレス製自動扉,強化ガラス+飛散防止フィルム共,窓 アルミニウム製サッシ,複層ガラス,アルミパネル付き排煙窓
主な内部仕上げ(天井高さ2.9m 壁及び天井の下地はすべて軽量鉄骨とする。)
床:事務室 コンクリート直均し+防塵塗装+OAフロア+タイルカーペット,給湯室 コンクリート直均し+長尺ビニル床シート,階段室 モルタル下地+タイルカーペット,ステンレス製ノンスリップ,EVホール モルタル下地+タイルカーペット
壁:事務室 せっこうボード+EP塗装,給湯室 シージングせっこうボード+ビニルクロス,階段室 アクリル弾性吹付けタイル,EVホール せっこうボード+突板化粧板
天井:事務室 せっこうボード+ロックウール化粧吸音板,給湯室 シージングせっこうボード+ビニルクロス,階段室 モルタル下地+アクリルリシン吹付け,EVホール けい酸カルシウム板+EP塗装
その他:事務室 一部可動間仕切パネル,給湯室 流し台,吊戸棚,化粧室 トイレブース,洗面カウンター
主な外構仕様:アプローチ 御影石 ジェットバーナー仕上げ,敷地境界 アルミニウム製化粧フェンス,駐車場 アスファルト舗装,ライン引き区画,普通車7台 車いす用1台

解答欄
正解
型枠工事(床型枠)
9 字内装工事(せっこうボード張り)
型枠工事(柱・梁の側型枠)
床型枠を合板とパイプサポートによる在来工法から床型枠用鋼製デッキプレートに替える。支保工の組立て・解体と合板の加工・撤去の作業が不要になるため。
72 字壁・天井のせっこうボードを割付図に基づき工場でプレカットして搬入する。現場での採寸・切断・端部加工の作業が減るため。
基準階の柱・梁の側型枠をパネル化した大型型枠とし,上階へそのまま転用する。毎階の型枠の加工と細かな組立て・解体作業が減るため。
型枠合板の使用量が減り,解体材などの建設廃棄物を削減できる。
30 字現場で出る端材と切断時の粉じんが減り,廃棄物の分別・処分の負担が軽くなる。
同じパネルを繰り返し使うため,型枠の組立て精度が安定し,躯体の寸法精度が向上する。
鉄筋工事(柱・梁の配筋)
12 字外壁タイル工事
鉄筋工事(床スラブの配筋)
柱・梁の鉄筋を地上の作業ヤードで先組みしてユニット化し,クレーンで吊り込んで接合する。高所や型枠内での配筋・結束作業が地上の作業に置き換わるため。
73 字50二丁タイルを型枠に先付けし,コンクリートと一体に打ち込むタイル先付け工法とする。足場上での下地調整・張付けモルタル塗り・タイル張り作業が不要になるため。
床スラブの配筋に,設計どおりの径・間隔で工場で組み立てた鉄筋格子を用いる。現場での鉄筋の並べと交点の結束作業が大幅に減るため。
安定した姿勢で組み立てられるので,鉄筋の間隔やかぶり厚さの精度が上がり,品質が安定する。
44 字躯体とタイルが一体となり,張付けモルタルの接着不良によるタイルのはく落を防止できる。
現場で出る鉄筋の切れ端や結束線のごみが減り,作業場所の整理整頓がしやすくなる。
屋上設備用架台の基礎工事
12 字内装工事(天井の軽量鉄骨下地)
外構工事(敷地境界フェンス)
保護コンクリート上の設備用架台の基礎を,現場打ちからプレキャストコンクリート製の既製基礎に替える。基礎の型枠・配筋・コンクリート打設の作業が不要になるため。
78 字天井の軽量鉄骨下地を床上で一定の大きさに組み立ててユニット化し,リフトで持ち上げて吊りボルトに取り付ける。脚立上での上向きの組立て作業が減るため。
アルミニウム製化粧フェンスの基礎を,現場打ちの独立基礎からプレキャストコンクリート製の基礎ブロックに替える。基礎ごとの掘削後の型枠・打設作業が不要になるため。
アンカーなどで防水層を貫通・損傷させずに設置でき,屋上の漏水のおそれを減らせる。
40 字高所での上向き作業が減り,脚立からの転落などの災害の危険を減らせる。
工場製品のため基礎の寸法・強度がそろい,フェンスの通りや高さの精度が向上する。
土工事(根切り・埋戻し)
12 字型枠工事
仮設工事(仮設電気設備)
根切り土のうち良質な土を場内に仮置きし,地下外周部の埋戻しに流用する。残土の場外搬出・処分費と,埋戻し用の購入土の費用が減るため。
65 字基準階の柱・梁・壁の型枠寸法をそろえて計画し,各階への転用回数を増やす。型枠材の購入・損料と新たな加工の手間が減るため。
場内の仮設照明をLED器具とし,人感センサーやタイマーで消し忘れを防ぐ。仮設電力の使用量が減り,電気料金と基本料金が抑えられるため。
鉄筋工事(加工)
8 字コンクリート工事(打込み数量の管理)
揚重作業(移動式クレーン)
継手位置と定尺長さを考慮して加工帳を作成し,定尺材の組合せを工夫して切断ロスを減らす。材料の歩留りが上がり,鉄筋の購入量と端材の処分費が減るため。
73 字打込み範囲の数量を図面と出来形で確認し,打込み終盤に最終の発注量を調整して余剰を出さない。残コンクリートの購入費と処分費が減るため。
複数の工種の揚重作業を同じ日にまとめる計画とし,移動式クレーンの使用日数を減らす。クレーンの賃料と回送費が減るため。
模範解答・別解は当サイトが作成したものです(主催者は記述式の解答を公表していません)。
解き方
- 1.は示された工事概要(RC造地上6階の事務所ビル,親杭横矢板・アースドリル杭,合板とパイプサポートの在来型枠,工場加工・現場組立ての鉄筋とガス圧接,50二丁タイル,内断熱の現場発泡断熱材,アスファルト保護防水,屋上の設備用架台,軽量鉄骨下地の内装)から,実際にある工種を選んで提案する。工場加工・プレハブ化・ユニット化・地上での先組み・省力化工法への切替えが現場作業の軽減の定石である。
- 構造躯体の仕様を変える提案(構造種別の変更,部材断面の変更,耐力に関わる工法の変更など)は建築確認の再申請(計画変更)に繋がるおそれがあるので避け,施工方法の範囲で考える。床型枠の鋼製デッキプレート(床型枠用で構造に算入しないもの),鉄筋の先組み,プレカット,既製基礎などは施工方法の選択の範囲である。
- ②は3つとも別の内容にし,③は「作業の軽減」「工期短縮」以外の効果(品質・安全・環境・廃棄物)をそれぞれ別の観点で書く。別解は提案ごとの組合せで示しており,模範解答と組み合わせるときは②③が重ならないようにする。
- 2.は工事概要に限らないので,土工事の残土流用,鉄筋の切断ロス削減,型枠の転用,仮設電力の削減,生コンの発注管理,揚重計画の集約など,材料・仮設・機械・処分費の無駄を減らす合理化を挙げ,どの費用がなぜ減るかを書く。1.の②と同じ内容(例:1.でプレカットを挙げたら2.でプレカットは不可)にしない。
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出典:一般財団法人 建設業振興基金が実施した1級建築施工管理技士 第二次検定 令和8年度(2026年10月18日(日)実施) 問題1。問題文は本試験の問題にもとづいています。解答・解説・論点の整理は資格試験対策.netの独自コンテンツです。最終更新 。この問題の誤りを報告する