施工経験記述(現場作業の軽減・労働者の確保)
これは1級建築施工管理技士 第二次検定 令和4年度(2022年10月16日(日)実施) 問題1の問題です。論点は「施工経験記述」(重要度A・解答の形は記述)。採点すると、解き方 4 手順・引っかけの指摘が読めます。
建設業を取り巻く環境の変化は著しく,労働生産性の向上や担い手の確保に対する取組は,建設現場において日々直面する課題となり,重要度が一層増している。あなたが経験した建築工事のうち,要求された品質を確保したうえで行った施工の合理化の中から,労働生産性の向上に繋がる現場作業の軽減を図った工事を1つ選び,工事概要を具体的に記入したうえで,次の1.及び2.の問いに答えなさい。
なお,建築工事とは,建築基準法に定める建築物に係る工事とし,建築設備工事を除くものとする。
〔工事概要〕
イ.工事名
ロ.工事場所
ハ.工事の内容(新築等の場合:建物用途,構造,階数,延べ面積又は施工数量,主な外部仕上げ,主要室の内部仕上げ/改修等の場合:建物用途,建物規模,主な改修内容及び施工数量)
ニ.工期等(工期又は工事に従事した期間を年号又は西暦で年月まで記入)
ホ.あなたの立場
ヘ.あなたの業務内容
1. 工事概要であげた工事において,あなたが実施した現場作業の軽減の事例を3つあげ,次の①から③について具体的に記述しなさい。
ただし,3つの事例の②及び③はそれぞれ異なる内容を記述するものとする。
① 工種名等
② 現場作業の軽減のために実施した内容と軽減が必要となった具体的な理由
③ ②を実施した際に低下が懸念された品質と品質を確保するための施工上の留意事項
2. 工事概要であげた工事にかかわらず,あなたの今日までの建築工事の経験を踏まえて,建設現場での労働者の確保に関して,次の①及び②について具体的に記述しなさい。
ただし,労働者の給与や賃金に関する内容及び1.の②と同じ内容の記述は不可とする。
① 労働者の確保を困難にしている建設現場が直面している課題や問題点
② ①に効果があると考える建設現場での取組や工夫
解答欄
正解
(仮称)○○ビル新築工事
12 字○○市立△△小学校校舎増築工事
(仮称)○○マンション新築工事
○○県△△市□□町2丁目
12 字○○都△△区□□3丁目
○○県□□市△△町4丁目
事務所,鉄筋コンクリート造,地上6階,延べ面積4,280m²,外壁:二丁掛磁器質タイル張り,主要室:床タイルカーペット,壁せっこうボード下地ビニルクロス張り,天井システム天井ロックウール化粧吸音板
98 字校舎,鉄筋コンクリート造,地上3階,延べ面積2,150m²,外壁:複層仕上塗材吹付け,主要室:床ビニル床シート,壁せっこうボード張りの上塗装,天井ロックウール化粧吸音板張り
共同住宅(48戸),鉄筋コンクリート造,地上8階,延べ面積3,900m²,外壁:複層仕上塗材吹付け,主要室:床フローリング張り,壁・天井せっこうボード下地ビニルクロス張り
令和2年5月~令和3年8月
13 字2019年10月~2021年3月(うち従事した期間:2020年4月~2021年3月)
令和2年11月~令和4年1月
工事主任
4 字監理技術者
工事係(施工管理担当)
躯体工事及び仕上工事の施工管理(工程・品質・安全管理)
27 字工事全般の施工管理(施工計画の立案,協力会社との工程調整,品質の検査)
躯体工事と住戸の内装工事の施工管理(品質管理・協力会社との工程調整)
型枠工事(床スラブ)
10 字型枠工事(階段)
型枠工事(バルコニー・共用廊下の床)
床スラブの型枠を合板と支保工による在来工法からフラットデッキプレートに変えた。型枠大工の確保が難しく,基準階6日の工程で支保工の組立・解体と資材の搬出入を減らす必要があったため。
89 字階段を現場打ちからプレキャストコンクリート製の階段に変えた。斜めの型枠と配筋は手間が多く熟練工が必要で,躯体工程の遅れの原因になっていたため。
バルコニーと共用廊下の床をハーフプレキャスト床版とし,上部だけ現場でコンクリートを打つ方法とした。片持ちスラブの型枠・支保工の組立て解体と高所作業が多かったため。
デッキのたわみや端部からのノロ漏れによるスラブ厚さ不足と豆板が懸念された。梁へのかかり代を所定どおり確保して固定し,端部の隙間はふさぎ,打込み中はレベルでスラブ厚さを確認する。
88 字据付け誤差による段差寸法の不ぞろいと,躯体との接合部の強度不足が懸念された。据付け前に受け部の墨とレベルを確認し,接合金物の溶接とモルタル充填を確実に行い,蹴上げ寸法を全段で確認する。
打継ぎ面の一体性不足と床版間の目地のひび割れが懸念された。打継ぎ面は清掃して散水で湿潤にし,上端筋と継手筋の位置を確認したうえで,所定の厚さで隙間なくコンクリートを打ち込む。
鉄筋工事(柱・梁)
9 字鉄筋工事(床スラブ)
型枠工事(柱・梁)
柱と梁の鉄筋を地上の加工ヤードで先組みし,クレーンで吊り込んで据え付けた。鉄筋工が不足するなか,型枠上の狭い場所での組立て作業と高所作業を減らし,工程を短縮する必要があったため。
89 字床スラブの上端筋の一部を,工場で溶接した鉄筋格子に変えた。結束作業が多く鉄筋工の手間がかかり,躯体工程が遅れ気味であったため。
柱・梁の型枠を,各階で転用できる大型のシステム型枠とした。合板型枠の加工と組立て・解体の手間が多く,型枠大工の確保が難しかったため。
吊込み時の変形による鉄筋の位置ずれとかぶり厚さ不足が懸念された。専用の吊り治具で多点吊りとして変形を防ぎ,据付け後に主筋位置を確認し,スペーサーを所定の間隔に入れてかぶり厚さを確保する。
93 字重ね継手長さの不足と,上端筋の沈みによる有効せいの不足が懸念された。継手は所定の重ね長さを確保して結束し,バーサポートを所定の間隔で配置して上端筋の高さを保つ。
転用による型枠の変形と目違いで,部材寸法の精度が落ちることが懸念された。転用のたびにせき板と締付け金物を清掃・補修し,建込み後に下げ振りで倒れを確認して固定する。
内装工事(壁せっこうボード張り)
16 字内装工事(天井)
建具工事(内部建具)
せっこうボードを工場で所定の寸法に切断(プレカット)し,階・部屋ごとに梱包して搬入した。現場での切断・加工作業と端材の処理に手間がかかり,ボード工の作業時間を減らす必要があったため。
91 字普通教室と職員室の天井を,在来の軽量鉄骨天井下地とボード張りからグリッドタイプのシステム天井に変えた。上向きの作業が多く,作業員の確保と工程の短縮が課題であったため。
内部の木製建具を,枠と扉が一体で工場塗装されたドアセットとした。現場での枠の取付け・塗装と扉の吊込み調整に手間がかかり,内装の工程を圧迫していたため。
寸法の誤差による目地の隙間や,開口部回りの割れが懸念された。発注前に現場で実測した寸法で割付図を作成し,張付けは小ねじで周辺部200mm程度,中間部300mm程度の間隔で留め付ける。
91 字天井面の不陸とグリッドの目違い,地震時の天井材の脱落が懸念された。吊りボルトを所定の間隔で配置し,レベルを確認しながら高さを調整し,振れ止めと耐震補強材を設計どおりに取り付ける。
取付け精度の不足による扉の開閉不良や,枠と壁の隙間が懸念された。取付け前に開口寸法と床仕上げのレベルを確認し,枠の倒れ・対角寸法を確認して固定し,扉の開閉具合を全数確認する。
建設現場は休日が少なく長時間労働になりやすいうえ,屋外での暑さ寒さや危険を伴う作業が多いため,若年者の入職が少なく,技能労働者の高齢化と減少が進んでいる。
77 字工事ごとに現場が変わり繁閑の差が大きく,技能を身に付けても経験や能力が評価されにくいため,若い技能者が将来の見通しを持てず定着しにくい。
現場の休憩所や更衣室,トイレなどの設備が不十分で,女性や若年者が働きにくい環境の現場が多い。
着工時から4週8閉所を前提とした工程を組み,工程の遅れは作業手順や揚重計画の見直しで取り戻して,休日作業や長時間の残業を行わないようにする。
70 字建設キャリアアップシステムへの登録と就業履歴の蓄積を現場で徹底し,技能者の経験や資格が評価される仕組みを運用する。
空調付きの休憩所,男女別の更衣室や快適トイレを設置し,女性や若年者も働きやすい現場環境を整える。
タブレット端末で図面や指示を共有し,手待ちや移動の時間を減らして,所定の時間内で作業が終わるようにする。
記述例は当サイトが作成した架空の工事の例です。ご自身の工事にあてはめて書いてください。管理項目別の例文と書き方のポイント →
解き方
- 経験記述は,受検者自身が経験した工事について書く問題である。ここに示すのは当サイトが作った架空の工事の記述例で,工事概要と設問の内容が矛盾しないように組み立てている。模範例は鉄筋コンクリート造の事務所ビル,別解の1つ目は小学校の校舎の増築,2つ目は共同住宅で,各欄の別解は同じ順番で1つの工事としてつながるようにしてある。
- 1.は「要求された品質を確保したうえで行った施工の合理化」のうち,現場作業の軽減(デッキプレートやプレキャスト化,鉄筋の先組み,ボードのプレカット,システム天井など)を3つ選ぶ。②には実施した内容と,軽減が必要となった理由(人手不足・工程・高所作業など現場の具体的な事情)を書き,③には②によって低下が懸念された品質と,それを確保する施工上の留意事項を数値や方法まで書く。
- 3つの事例の②と③は,それぞれ内容が重ならないようにする(例では型枠・鉄筋・内装と工種を変え,品質もスラブ厚さ・かぶり厚さ・目地の精度と分けた)。
- 2.は担い手の確保の問題で,給与・賃金以外の観点(休日・労働時間,職場環境,技能の評価,ICTの活用など)から,①の課題と②の取組を対応させて書く。1.の②(現場作業の軽減の方法)と同じ内容は不可である。
同じ論点の過去問
令和4年度の前後の問題
出典:一般財団法人 建設業振興基金が実施した1級建築施工管理技士 第二次検定 令和4年度(2022年10月16日(日)実施) 問題1。問題文は本試験の問題にもとづいています。解答・解説・論点の整理は資格試験対策.netの独自コンテンツです。最終更新 。この問題の誤りを報告する