品質管理(工事概要に示す事務所ビルの重点項目・組織的な品質管理活動)
これは1級建築施工管理技士 第二次検定 令和7年度(2025年10月19日(日)実施) 問題1の問題です。論点は「施工経験記述」(重要度A・解答の形は記述)。採点すると、解き方 4 手順・引っかけの指摘が読めます。
建築工事の施工者は,設計図書等により工事目的物に要求される品質を把握し,品質管理を的確に行うことが求められる。建築工事の現場を管理していくうえでのあなたの考えについて,今日までの経験を踏まえ,次の1.及び2.の問いに答えなさい。
なお,建築工事には,建築設備工事は含まれないものとする。
1. 右の工事概要に示す事務所ビル新築工事で行われる工種又は作業において,あなたが統括的な施工の技術上の管理を求められる立場として工事を担当するうえで,品質管理上特に重点を置くべきと考える項目を3つあげ,それぞれ次の①から③について具体的に記述しなさい。
ただし,3つの項目の②及び③はすべて異なる内容を記述するものとする。
なお,工事概要に示す工事において,各作業は一般的な手順に従って施工されるものとし,施工上必要としない工事及び作業に関する内容についての記述は不可とする。
① 工種名又は作業名等
② 特に重点を置くべきと考える品質管理項目及びその品質管理項目について重点を置くべきと考える理由
③ ②の品質管理項目を管理していくうえで実施すべき内容
2. 右に示す工事概要の建築工事に係わらず,現場で行う組織的な品質管理活動について,次の①及び②を具体的に記述しなさい。
ただし,1.の③と同じ内容の記述は不可とする。
① 品質管理活動の内容及びそれを協力会社等に伝達する手段又は方法
② ①の品質管理活動によってもたらされる良い影響
| 区分 | 項目 | 内容 |
|---|---|---|
| 概要 | 工事名 | 事務所ビル新築工事 |
| 概要 | 主要構造 | 鉄骨構造 地上7階建て 塔屋1階 |
| 概要 | 工期 | 2025年2月から2026年9月 |
| 概要 | 主要用途 | 事務所 |
| 概要 | 用途地域 | 商業地域 15m道路隣接 |
| 概要 | 面積 | 敷地面積 1,110.0m²,建築面積 800.0m²,延べ面積 5,720.0m² |
| 概要 | 屋上工作物 | 設備基礎:コンクリート立上り基礎,外周部:目隠しルーバー |
| 概要 | 最高高さ | 30.5m |
| 概要 | 階高 | 3.8m |
| 概要 | エレベーター | 乗用 11人乗り 2台 |
| 主な構造仕様 | 根切深さ | 設計GL-3.0m |
| 主な構造仕様 | 地下水位深さ | 設計GL-3.6m |
| 主な構造仕様 | 山留め | 鋼矢板(シートパイル)壁工法 |
| 主な構造仕様 | 基礎 | 既製コンクリート杭(PHC杭) |
| 主な構造仕様 | 構造部材 | 柱:角形鋼管,梁:H形鋼,床:合成デッキスラブ |
| 主な構造仕様 | 耐火被覆 | 耐火材巻付け工法 |
| 主な外部仕上げ | 屋上 陸屋根 | アスファルト保護断熱防水,アルミ製笠木,ステンレス製丸環 |
| 主な外部仕上げ | 外壁 主な外壁 | 押出成形セメント板+フッ素樹脂塗装 |
| 主な外部仕上げ | 外壁 目地 | 変成シリコーン系シーリング |
| 主な外部仕上げ | 外壁 断熱 | 内断熱工法現場発泡断熱材吹付け |
| 主な外部仕上げ | 建具 エントランス | ステンレス製自動扉,強化ガラス+飛散防止フィルム共 |
| 主な外部仕上げ | 建具 窓 | アルミ製サッシ,複層ガラス共,一部排煙窓 |
| 主な内部仕上げ(天井高さ2.9m,壁及び天井の下地はすべて軽量鉄骨とする。) | 床 事務室 | コンクリート直均し+セルフレベリング+防塵塗装+OAフロア+タイルカーペット |
| 主な内部仕上げ | 床 廊下 | モルタル下地+タイルカーペット |
| 主な内部仕上げ | 床 給湯室 | モルタル下地+長尺ビニル床シート |
| 主な内部仕上げ | 床 階段室 | モルタル下地+タイルカーペット,ステンレス製ノンスリップ |
| 主な内部仕上げ | 床 エントランスホール | モルタル下地+花崗岩ジェットバーナー仕上げ |
| 主な内部仕上げ | 壁 事務室 | せっこうボード+EP塗装 |
| 主な内部仕上げ | 壁 廊下 | けい酸カルシウム板+化粧シート |
| 主な内部仕上げ | 壁 給湯室・階段室 | せっこうボード+EP塗装 |
| 主な内部仕上げ | 壁 エントランスホール | けい酸カルシウム板+ボーダータイル |
| 主な内部仕上げ | 天井 事務室・廊下・給湯室 | せっこうボード+ロックウール化粧吸音板 |
| 主な内部仕上げ | 天井 階段室 | 鉄骨階段現し+SOP塗装 |
| 主な内部仕上げ | 天井 エントランスホール | アルミスパンドレル |
| 主な内部仕上げ | その他 事務室 | 一部可動間仕切りパネル |
| 主な内部仕上げ | その他 給湯室 | 流し台,吊戸棚 |
| 主な内部仕上げ | その他 化粧室 | トイレブース |
| 主な外構仕様 | 構内舗装 駐車場 | アスファルト舗装 普通車8台 |
| 主な外構仕様 | 構内舗装 アプローチ | インターロッキング舗装 |
| 主な外構仕様 | 囲障他 敷地境界 | アルミ製化粧フェンス,中木,低木混栽 |
解答欄
正解
鉄骨工事(高力ボルト接合)
13 字外壁工事(押出成形セメント板の取付け)
断熱工事(現場発泡断熱材吹付け)
トルシア形高力ボルトの締付け。梁継手等の締付け不足は架構の耐力と剛性の低下に直結し,耐火被覆や床の施工後は手直しが困難なため。
63 字Zクリップの取付け状態。かかり代の不足やロッキングできない取付けは,地震時の層間変位に追従できず,パネルの割れや脱落につながるため。
断熱材の吹付け厚さ。厚さの不足や欠損があると外壁の室内側に結露が生じ,仕上材のかびや汚損,断熱性能の低下を招くため。
一次締め後に全数マーキングし,本締め後にピンテールの破断,マークのずれによる共回り・軸回りの有無,余長がねじ1~6山の範囲であることを全数確認する。
74 字Zクリップは下地鋼材に所定のかかり代を確保し,パネル上下端でロッキングできるよう取り付け,取付けボルトの締付けと溶接部の防錆塗装を全数確認する。
壁面は5m²程度に1か所以上,柱・梁は1面に各1か所以上確認ピンを差して所定の厚さを確認し,ピンは存置する。不足部は補吹きする。
防水工事(アスファルト保護断熱防水)
18 字床工事(セルフレベリング材塗り)
内装工事(せっこうボード張り)
ルーフィング類の増張りと重ね幅。重ね不足や増張りの欠落は防水層の破断や漏水の原因となり,保護コンクリート打込み後は補修が困難なため。
66 字事務室の床の平たんさ。床に不陸があるとOAフロアの高さ調整が困難になり,タイルカーペットの浮きや目違いの原因となるため。
ボードの留付け状態。ねじの間隔や締付けが不適切だとボードの浮きや継目のひび割れが生じ,EP塗装の仕上りを損なうため。
出隅・入隅は幅300mm以上のストレッチルーフィングを先に増張りし,平場の継目は幅方向・長手方向とも100mm以上重ね,水下側を下にして張り重ねる。
74 字吸水調整材を2回塗って乾燥させた後に流し込み,硬化までは開口部をふさいで通風を避け,硬化後は打継ぎ部の突起をサンダーで削り,へこみは補修する。
壁は周辺部200mm程度,中間部300mm程度の間隔で,周辺部はボード端から10mm程度内側に,ねじ頭がボード面より少しへこむよう締め込む。
シーリング工事(外壁の押出成形セメント板の目地)
24 字耐火被覆工事(耐火材巻付け工法)
床工事(OAフロア上のタイルカーペット張り)
被着面の処理とシーリング材の接着。ECPの目地は動きが大きく,接着不良や三面接着はシーリング材の破断やはく離を生じ,漏水を招くため。
66 字耐火材の厚さと固定状態。厚さ不足や突付け部の隙間,固定ピンの不足は所定の耐火性能を損ない,火災時に鉄骨の耐力低下を招くため。
タイルカーペットの割付けと張付け。床パネルの目地とカーペットの目地が重なると,目地の段差や目開き,カーペットの浮きが生じるため。
被着面を清掃・乾燥させてプライマーを塗り残しなく塗布し,目地底にボンドブレーカーを用いて二面接着とし,プライマー塗布後は指定時間内に充填する。
71 字認定どおりの厚さの耐火材を突付け部に隙間なく巻き付け,固定ピンの間隔と本数を確認し,貫通孔回りやデッキとの取合いの欠損部は同材で補修する。
張付け前に床パネルの段違いと隙間を1mm以下に調整し,カーペットがパネルの目地にまたがるように割り付けて,接着剤の粘着性が出てから張り付ける。
所長・工事担当者・職長で週1回の品質パトロールを行い,指摘した不具合と是正方法を写真付きの是正記録にまとめ,工程会議で説明するとともに詰所に掲示して協力会社に周知する。
84 字工種ごとの着手前に元請と協力会社の職長で施工検討会を開き,品質管理項目と管理値を記載した品質チェックシートを作成して配付し,新規入場者教育でも説明する。
主要な仕上げ工事は先行して見本施工を行い,関係者で確認して承認した仕上りの見本を現場に展示するとともに,その写真を写真共有アプリで協力会社の作業員に配信する。
不具合の原因と是正方法が全作業員に共有されて同種の不具合の再発が防止され,職長の品質意識が高まり自主検査の精度も向上する。
61 字管理値と確認方法が作業前に統一されるため,協力会社ごとの品質のばらつきが小さくなり,手戻りや手直しが減少する。
目標とする仕上りが目で見て共有されるため,作業者による出来栄えの差がなくなり,手直しが減って工程も安定する。
模範解答・別解は当サイトが作成したものです(主催者は記述式の解答を公表していません)。
解き方
- 1.は示された工事概要(鉄骨構造7階建ての事務所ビル)の中から,品質に大きく影響し,後工程に隠れて手直しが難しい工種を選ぶ。例えば,高力ボルト接合(標仕 7.4.7・7.4.8),押出成形セメント板の取付け(標仕 8.5),アスファルト保護断熱防水(標仕 9.2.4),外壁目地のシーリング(標仕 9.7.4),耐火材巻付け(標仕 7.9.6),現場発泡断熱材(標仕 19.9.4),セルフレベリング材塗り(標仕 15.5),せっこうボード張り(標仕 19.7.3),フリーアクセスフロア上のタイルカーペット(標仕 19.3)などである。
- ②は「何を管理するか(品質管理項目)」と「それが不良だとどうなるか(理由)」を,③は「どう管理するか」を数値・手順・確認方法まで書く。トルシア形高力ボルトは,ピンテールの破断,共回り・軸回りの有無,ナット回転量,余長がねじ1山から6山までを確認する(標仕 7.4.8)。アスファルト防水の出隅・入隅は幅300mm以上のストレッチルーフィングを最下層に増張りし,継目は100mm以上重ねる(標仕 9.2.4)。シーリングは目地底にボンドブレーカーを用いて二面接着とし,プライマー塗布後は製造所の指定時間内に充填する(標仕 9.7.4)。
- 工事概要に無い工事(RC造の型枠・外壁タイル張りなど)や,施工上必要としない作業(建築設備工事を含む)の記述は不可である。3つの項目の②・③はすべて異なる内容にする。
- 2.は特定の工事に限らない,現場の組織として行う品質管理活動(品質パトロール,施工検討会と品質チェックシート,見本施工,不具合事例の水平展開など)を挙げ,協力会社への伝達手段(工程会議・朝礼・掲示・書面・写真共有アプリなど)と,その活動による効果(再発防止・品質のばらつきの減少・手直しの減少など)を因果関係が分かるように書く。1.の③と同じ内容は不可である。
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出典:一般財団法人 建設業振興基金が実施した1級建築施工管理技士 第二次検定 令和7年度(2025年10月19日(日)実施) 問題1。問題文は本試験の問題にもとづいています。解答・解説・論点の整理は資格試験対策.netの独自コンテンツです。最終更新 。この問題の誤りを報告する