現場作業の軽減策と時間外労働(工事概要を提示)
これは1級建築施工管理技士 第二次検定 令和6年度(2024年10月20日(日)実施) 問題1の問題です。論点は「施工経験記述」(重要度A・解答の形は記述)。採点すると、解き方 4 手順・引っかけの指摘が読めます。
持続可能な建設業を目指して,働き方改革を推進すべく様々な取組が官民一体となって続けられている昨今,建築工事の現場を管理していく上でのあなたの考えについて,次の1.及び2.の問いに答えなさい。
1. 右に示す工事概要の建築工事において,あなたが建設現場における統括的な施工の技術上の管理を求められる立場として,機能,性能等の要求された品質を確保しながら適正,かつ,合理的に進める上で,有効と考える現場作業の軽減策を3つ提案し,それぞれ次の①から③について具体的に記述しなさい。
ただし,3つの提案の②及び③はすべて異なる内容を記述するものとする。
なお,次の記述は不可とする。
・工事概要に示す工事において施工上必要としない工事及び作業に関する内容
・計画変更確認申請が必要となる内容
・竣工引渡し時期の遅れに繋がる内容
・工程の短縮は図れるが現場作業の軽減には繋がらない内容
・建築設備工事に関する内容
① 工種名又は作業名等
② あなたが考える有効な現場作業の軽減策とそれが現場作業の軽減に繋がる理由
③ ②の実施に当たって確保すべき品質とそのための軽減策における施工上の留意事項
2. 建設業における働き方改革の課題の1つとして,建設現場における時間外労働が挙げられる。
右に示す工事概要の建築工事に係わらず,あなたの今日までの経験を踏まえて,建築工事の施工に従事する者の時間外労働の現状に関して,次の①及び②について具体的に記述しなさい。
ただし,1.の②と同じ内容の記述は不可とする。
① これまでの建設現場における施工や工程,管理等の業務において,施工に従事する者の時間外労働を増長させていた要因とそれが時間外労働の増長に繋がっていた理由
② ①の対策として,あなたが有効と考える建設現場における組織としての取組や工夫
工事概要(表中「○+△+□」は○下地の上△面に□仕上げ等,下地と表面仕上げの関係を示す。)は下の表のとおり。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 工事名 | 共同住宅新築工事 |
| 主要用途 | 共同住宅 52戸 |
| 工期 | 2024年1月~2025年6月 |
| 用途地域 | 住居地域 6m道路隣接 |
| 主要構造 | 鉄筋コンクリート構造 地上7階建て |
| 面積 | 敷地面積2,350.00m²,建築面積758.85m²,延床面積4,950.60m² |
| 最高高さ | 23.25m |
| 階高 | 1~4階 3.3m,5~7階 3.0m |
| エレベーター | 乗用 8人乗り 1台 |
| 主な構造仕様:根切深さ | 2.5m |
| 主な構造仕様:山留め | 親杭横矢板工法 |
| 主な構造仕様:地業 | 現場造成杭(アースドリル工法) |
| 主な構造仕様:コンクリート | 普通コンクリート |
| 主な構造仕様:型枠 | コンクリート型枠用合板,支保工:パイプサポート |
| 主な構造仕様:鉄筋 | 工場加工,現場組立て,柱,梁主筋:ガス圧接継手 |
| 主な外部仕上げ:屋根(陸屋根) | アスファルト露出断熱防水,アルミ製笠木 |
| 主な外部仕上げ:外壁(主な外壁) | コンクリート打放し+防水形複層塗材 |
| 主な外部仕上げ:外壁(断熱) | 内断熱工法,現場発泡断熱材吹付け |
| 主な外部仕上げ:手すり壁(バルコニー) | アルミ製既製品 H=1.2m |
| 主な外部仕上げ:手すり壁(外部廊下) | コンクリート打放し+防水形複層塗材 |
| 主な外部仕上げ:手すり壁(外部階段) | コンクリート打放し+防水形複層塗材,ステンレス製壁付手すり |
| 主な外部仕上げ:床(バルコニー) | モルタル下地+ウレタン系塗膜防水 |
| 主な外部仕上げ:床(外部廊下) | コンクリート直均し+ビニル床シート |
| 主な外部仕上げ:床(外部階段) | モルタル下地+ビニル床シート |
| 主な外部仕上げ:建具(風除室) | ステンレス製オートロック式自動扉 強化ガラス共 |
| 主な外部仕上げ:建具(玄関) | 化粧シート張り鋼製扉 |
| 主な外部仕上げ:建具(窓) | アルミ製サッシ 1~2階 網入りガラス共,3~7階 フロートガラス共 |
| 主な内部仕上げ:天井高さ | 居室,水廻り:天井高さ2.4m,風除室:天井高さ2.5m |
| 主な内部仕上げ:床(居室) | コンクリート直均し+乾式二重床+フローリングボード |
| 主な内部仕上げ:床(水廻り) | コンクリート直均し+乾式二重床+耐水合板+ビニル床シート |
| 主な内部仕上げ:床(風除室) | モルタル下地+ノンスリップタイル |
| 主な内部仕上げ:壁(居室) | 軽量鉄骨下地+せっこうボード+ビニルクロス |
| 主な内部仕上げ:壁(水廻り) | 軽量鉄骨下地+シージングせっこうボード+ビニルクロス |
| 主な内部仕上げ:壁(風除室) | モルタル下地+有機系接着剤による小口タイル |
| 主な内部仕上げ:天井(居室,水廻り) | 軽量鉄骨下地+せっこうボード+ビニルクロス |
| 主な内部仕上げ:天井(風除室) | 軽量鉄骨下地+アルミスパンドレル |
| 主な内部仕上げ:建具他(居室) | 化粧シート張り木製扉 枠共 |
| 主な内部仕上げ:建具他(水廻り) | ユニットバス,洗面化粧台,システムキッチン |
| 主な内部仕上げ:建具他(風除室) | 集合郵便受け,インターホンパネル |
| 主な外構仕様:構内舗装 | 駐車場:アスファルト舗装,駐輪場:コンクリート舗装,アプローチ:インターロッキング舗装 |
| 主な外構仕様:囲障 | 化粧フェンス,駐車場入口:レール式門扉 |
| 主な外構仕様:植栽 | 敷地境界:中木,低木混栽 |
解答欄
正解
鉄筋工事(柱・梁鉄筋の先組み)
15 字型枠工事(外周壁型枠の大型パネル化)
建具工事(サッシの工場ガラス入れ)
柱・梁の鉄筋を地上の作業ヤードで先組みし,クレーンで吊り込んで据え付ける。高所での配筋・結束作業の多くが地上での作業に置き換わり,型枠上での作業量と作業時間が減るため。
84 字基準階で形状が同じ外周壁・外部廊下の手すり壁の型枠を大型パネルとし,地上で組んでクレーンで大組み・大ばらしして転用する。せき板の組立て・解体の手間が減るため。
アルミ製サッシのガラスを工場ではめ込み,シーリングまで済ませて搬入する。現場でのガラスの小運搬,はめ込み,シーリング作業が不要になり,作業量が減るため。
確保すべき品質は鉄筋の位置とかぶり厚さ。吊り込み時は吊り治具と補強筋で先組み筋の変形を防ぎ,据付け後はスペーサーを所定の間隔で配置して最小かぶり厚さ以上を確保し,主筋の位置を確認する。
92 字確保すべき品質は打放し面の平滑さと躯体寸法。パネルの継目はテープ等でふさいでノロ漏れを防ぎ,転用ごとにせき板を補修して剥離剤を塗り,建込み後に通りと寸法を確認する。
確保すべき品質はサッシ回りの水密性。ガラスの重量で枠がゆがまないよう吊り治具で取り付け,枠回りのモルタル充填と外部シーリングを連続させ,散水試験等で漏水のないことを確認する。
型枠工事(床型枠のフラットデッキ化)
18 字墨出し作業(レーザー墨出し器の使用)
型枠工事(外周壁型枠の大型パネル化)
床型枠を合板とパイプサポートから床型枠用鋼製デッキプレート(フラットデッキ)に替える。梁の間に架け渡すので,スラブ下の支保工と合板の組立て・解体作業が不要になり,作業量が減るため。
90 字各階の仕上げ墨出しに鉛直・水平のレーザー墨出し器を用い,基準墨から一度に複数の墨を出す。下げ振りや水糸による測り直しが減り,少人数で短時間に墨出しできるため。
基準階で形状が同じ外周壁の型枠を大型パネル化し,大組み・大ばらしで上階へ転用する。型枠の加工と組立て・解体の手間が減るため。
確保すべき品質はスラブ厚さとかぶり厚さ。デッキは梁側型枠に所定のかかり代を確保して受け材に固定し,端部や梁との取合いの隙間をふさいでノロ漏れを防ぎ,スラブ筋はスペーサーで支持してかぶり厚さを確保する。
100 字確保すべき品質は墨の位置精度。レーザー墨出し器は使用前に精度を点検し,基準墨は2方向の逃げ墨から出して各階で照合し,誤差を確認してから仕上げ墨を出す。
確保すべき品質は躯体寸法と打放し面の仕上り。パネルの建込み後に通り・建入れを確認し,継目のノロ漏れ防止と転用ごとのせき板の補修を行う。
内装工事(せっこうボードのプレカット)
19 字建具工事(サッシの工場ガラス入れ)
墨出し作業(レーザー墨出し器の使用)
住戸タイプごとの割付図により天井・壁のせっこうボードを工場で所定寸法に切断し,住戸別に梱包して搬入する。現場での採寸・切断と端材の処理,各住戸への小運搬が減るため。
82 字サッシにガラスを工場ではめ込んで搬入し,現場でのガラス工事をなくす。小運搬とはめ込み・シーリング作業が減るため。
レーザー墨出し器で基準墨から複数の墨を一度に出し,少人数で墨出しを行う。測り直しの手間が減るため。
確保すべき品質は継目に目違いのない平滑な仕上げ面。下地組立て後の実測寸法を割付図に反映して発注し,張付けは留付け間隔を天井の周辺部150mm程度・中間部200mm程度として目地通りよく張る。
95 字確保すべき品質はサッシ回りの水密性。枠のゆがみを防いで取り付け,外部シーリングを連続させて散水試験で確認する。
確保すべき品質は内装下地の位置精度。器械の精度を使用前に点検し,基準墨との誤差を確認してから墨を出す。
工程の遅れを週休日の作業や終業後の残業で取り戻す慣行があり,工期末に作業が集中していた。また技術者は日中に現場の立会い・巡回に追われ,書類作成が終業後に回っていたため,作業員と技術者の双方で時間外労働が増えていた。
107 字発注者や設計者との打合せ・承認が遅れて施工図の確定が後ろ倒しになり,手待ちが生じていた。承認後は短い期間で施工図を修正し作業を進める必要があり,残業や休日作業で遅れを取り戻していたため。
施工図・施工計画書・工事写真などの書類が多く,紙での作成と社内の確認が重複していた。現場の立会いや巡回が日中に集中するため,書類作業が終業後に持ち越され,時間外労働が常態化していたため。
着工時に4週8閉所を前提とした工程表を作成し,工程会議で遅れを日中の作業班の増員や作業手順の見直しで調整する。書類作成は本支店の支援部署と分担し,現場は定時退場日を設けて所長が全員の退場時刻を管理する。
101 字設計図書の不明点を着工前に質疑で整理し,承認が必要な事項の期限を発注者・設計者と合意した工程表に組み込む。承認の遅れは週1回の定例会議で確認し,手待ちと後工程へのしわ寄せを防ぐ。
工事写真や検査記録をタブレットとクラウドで共有し,現場で入力した情報をそのまま書類に使えるようにする。社内の確認を電子決裁にまとめて二重作業をなくし,事務作業を日中に終えられるようにする。
模範解答・別解は当サイトが作成したものです(主催者は記述式の解答を公表していません)。
解き方
- 1.は示された共同住宅(RC造7階,52戸)の工事に即して,現場で行う作業そのものを減らす方法(地上での先組み,工場加工・プレカット,型枠の省略や転用など)を提案する。工程が短くなるだけで現場の作業量が減らないもの,設備工事,計画変更確認申請が要る構造・仕様の変更(PCa化など)は不可とされている。
- ②には軽減策と「なぜ現場作業が減るか」を,③には「確保すべき品質」とその品質を守るための施工上の留意事項を書く。留意事項は標仕の規定(例:かぶり厚さは標仕5.3.5,ボードの留付け間隔は標仕表19.7.2の天井の周辺部150mm程度・中間部200mm程度)など,具体的な数値・方法まで書く。3つの提案の②・③はすべて異なる内容にする。
- 別解は,1番目どうし(型枠の大型パネル化・レーザー墨出し器の使用・サッシの工場ガラス入れ)と2番目どうし(サッシの工場ガラス入れ・型枠の大型パネル化・レーザー墨出し器の使用)が,それぞれ3つの提案の組になる。同じ提案の①・②・③は同じ番号の別解である。
- 2.は工事概要に関係なく,時間外労働を増やしていた要因と理由(①),組織としての対策(②)を書く。建設業には2024年4月から時間外労働の上限規制(原則月45時間・年360時間,特別条項でも年720時間など)が適用されており,4週8閉所の工程や書類業務の削減・分担などの組織的な取組が求められる。1.の②と同じ内容(現場作業の軽減策)は不可。
同じ論点の過去問
令和6年度の前後の問題
出典:一般財団法人 建設業振興基金が実施した1級建築施工管理技士 第二次検定 令和6年度(2024年10月20日(日)実施) 問題1。問題文は本試験の問題にもとづいています。解答・解説・論点の整理は資格試験対策.netの独自コンテンツです。最終更新 。この問題の誤りを報告する