会計処理の正誤(自己株式の付随費用・連結決算日の差異・年金基金からの退職金・利息費用の表示区分・CF計算書の区分・株式交付費・ヘッジ会計の中止・積立金の分類)
これは建設業経理士1級 財務諸表 第31回(2022年9月11日(日)実施) 第3問(配点 16点)の問題です。論点は「純資産・持分・株主資本等変動計算書」(重要度A・解答の形はA/B(第39 回から A/B+修正箇所+修正内容の記号))。採点すると、解き方 8 手順・引っかけの指摘が読めます。
財務会計に関するわが国の基本的な考え方に照らして、以下の各記述(1〜8)のうち、全体が正しいと認められるものには「A」、認められないものには「B」を解答用紙の所定の欄に記入しなさい。
1.決算において財務諸表を作成するにあたり、当期に取得した自己株式の取得原価を貸借対照表の純資産の部の株主資本から控除した。なお、自己株式の取得原価は、取得に要した付随費用も含めて算定した。
2.親会社P社の決算日は毎年 3月31日、子会社S社の決算日は毎年 1月31日であり、連結決算日は、親会社の決算日に基づき毎年 3月31日としている。連結決算にあたっては、P社およびS社の正規の決算を基礎として行っているが、差異期間中の親子会社間の取引に係る会計記録の重要な不一致については必要な整理を行っている。
3.当社は、従業員の退職給付について、確定給付型退職給付制度を採用し、外部の信託銀行に退職給付基金を積み立てている。当期末に退職した従業員に対する退職金はすべて当該基金から支払われたので、当該支払いに関する会計処理は行わなかった。
4.退職給付引当金(退職給付に係る負債)や資産除去債務について発生する利息費用は、財務費用なので、損益計算書において営業外費用の部に計上した。
5.当期に行った新株の発行による収入、自己株式の取得による支出、配当金の支払いによる支出を、キャッシュ・フロー計算書の投資活動によるキャッシュ・フローの区分に計上した。
6.株式会社は、その設立時に定款に定められた発行可能株式総数の 4分の1 以上の株式を発行しなければならないが、証券会社の事務手数料等の発行に要した諸経費は、株式交付費として処理する。株式交付費は支出時に費用として処理することを原則とするが、これを繰延資産として 3年以内の期間で償却することが実務上認められている。
7.保有している満期保有目的の債券についてデリバティブ取引によりヘッジを行ってきたが、ヘッジ対象の時価の上昇が極めて大幅になったため、当該ヘッジ手段はヘッジの要件を充たさなくなったと判断した。このため、当期よりヘッジ会計の適用を中止したが、前期まで繰り延べてきたヘッジ手段に係る損失は、ヘッジ対象に係る損益が認識されるまで引き続き繰り延べることとした。なお、ヘッジ対象の含み益が満期までにヘッジ手段に係る繰延損失を下回ることは予想されない。
8.積立金は、その取崩が会社の純資産の額の減少を前提にするか否かを基準に、積極性積立金と消極性積立金の 2つに分類される。これらのうち、その目的取崩が純資産の額の減少を前提とするものを積極性積立金といい、前提としないものを消極性積立金という。
解答欄
正解
| 1 | B |
|---|---|
| 2 | A |
| 3 | A |
| 4 | B |
| 5 | B |
| 6 | B |
| 7 | A |
| 8 | B |
解き方
- 1.B。自己株式の取得原価を純資産の部の株主資本から控除する形式で表示するのは正しいが、取得に要した付随費用(手数料など)は取得原価に含めず、支払時の営業外費用として処理する(自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準 14)。付随費用を含めて算定するのは誤り。
- 2.A。子会社の決算日と連結決算日の差異が 3か月を超えない場合は、子会社の正規の決算を基礎として連結決算を行うことができる(連結財務諸表に関する会計基準 16)。S社の決算日 1月31日と連結決算日 3月31日の差異は 2か月なので要件を満たす。この場合、決算日が異なることから生じる連結会社間の取引に係る会計記録の重要な不一致について必要な整理を行う、という処理も正しい。
- 3.A。退職給付引当金は、退職給付債務から年金資産を差し引いた純額で計上する。年金基金(年金資産)から退職金が支払われると、退職給付債務と年金資産が同額ずつ減るので、差額である退職給付引当金は変わらない。したがって会社側で仕訳を行わないのは正しい。
- 4.B。退職給付債務に係る利息費用は退職給付費用の一部として、勤務費用などとともに工事原価や販売費及び一般管理費に計上する。資産除去債務の時の経過による調整額(利息費用)も、関連する有形固定資産の減価償却費と同じ区分に含めて計上する(資産除去債務に関する会計基準 14)。いずれも営業外費用ではない。
- 5.B。新株の発行による収入、自己株式の取得による支出、配当金の支払いによる支出は、いずれも資金の調達・返済に係る取引なので、財務活動によるキャッシュ・フローの区分に計上する。投資活動ではない。
- 6.B。会社の設立時に発行する株式の証券会社の事務手数料などの発行費用は創立費に含めて処理する。株式交付費は会社成立後の新株発行や自己株式の処分に係る費用なので、科目が誤り。「4分の1 以上」の発行義務、支出時費用処理の原則、繰延資産に計上した場合は 3年以内に償却するという記述自体は正しい。
- 7.A。ヘッジ会計の要件を満たさなくなったときは、要件を満たしていた間のヘッジ手段に係る損益・評価差額は、ヘッジ対象に係る損益が認識されるまで引き続き繰り延べる(金融商品に関する会計基準 33)。ただし、繰り延べられたヘッジ手段の損失について、ヘッジ対象の含み益が減少してその損失を下回るときは、その部分を当期の損失として処理するが、本文ではそのような状況は予想されないとしているので、繰延処理は正しい。
- 8.B。積立金は、取崩しが純資産の額の減少を前提としない積極性積立金(新築積立金・減債積立金など、目的達成後も金額が資本に残る)と、取崩しが純資産の額の減少を前提とする消極性積立金(配当平均積立金・欠損填補積立金など、配当や損失の填補に充てる)に分類される。本文は定義が入れ替わっているので誤り。
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第31回の前後の問題
出典:一般財団法人 建設業振興基金が実施した建設業経理士1級 財務諸表 第31回(2022年9月11日(日)実施) 第3問。問題文は本試験の問題にもとづいています。解答・解説・論点の整理は資格試験対策.netの独自コンテンツです。最終更新 。この問題の誤りを報告する