第39回 第2問 論点:品質原価計算・ライフサイクルコスト・VE重要度 B配点 14点未着手

原価管理・品質原価・ライフサイクルコスト・VE の正誤

これは建設業経理士1級 原価計算 第39回(2026年9月13日(日)実施) 第2問(配点 14点)の問題です。論点は「品質原価計算・ライフサイクルコスト・VE」(重要度B・解答の形は記号(AまたはB/ア〜ナ等)5〜10か所)。採点すると、解き方 7 手順・引っかけの指摘が読めます。

原価管理に関する次の文章は正しいか否か。正しい場合は「A」、正しくない場合は「B」を解答用紙の所定の欄に記入しなさい。

1.わが国の『原価計算基準』では、原価管理とは、原価の標準を設定してこれを指示し、原価の実際の発生額を計算記録し、これを標準と比較して、その差異の原因を分析し、これに関する資料を経営管理者に報告し、原価能率を増進する措置を講ずることと定義されている。ここでの原価管理は、標準原価計算による原価統制(コスト・コントロール)を意味する。

2.ある原価が管理可能費となるか管理不能費となるかは、当該原価の属性だけでは決まらない。ある管理階層の管理者によって管理不能な原価が、異なる階層の管理者にとっては管理可能な場合がある。

3.品質原価計算における品質の概念には、通常、設計品質と適合品質がある。このうち前者は、建設業の施工品質に対応している。

4.TQC/TQM を前提とする長期的な視点に立った品質コスト・モデルでは、品質管理活動に対する学習効果が働くことで予防コストと評価コストの合計額が低減する一方で、品質不良の放置から生じる企業の信用失墜による売上減少などといった機会損失が甚大となる可能性があるため、無欠陥を目指すことが総品質コストの削減につながると想定している。

5.ライフサイクル・コスティング(life-cycle costing:LCC)には 2 つのタイプがある。1 つは、製品・サービスの供給者側からみた LCC であり、もう 1 つは、製品・サービスの需要者側からみた LCC である。供給者が考慮しなければならないのは、前者の意味での LCC のみである。

6.かなり長期間にわたって使用する建築物のライフサイクル・コストは、企画設計コスト、建設コスト、運用管理コスト、廃棄処分コストの 4 つの項目からなり、このうちライフサイクル・コストの大半を占める企画設計コストをいかに削減するかが、コスト管理の重要課題となっている。

7.価値工学(value engineering:VE)では、物の価値(value)を機能(function)とコスト(cost)の関係でとらえる。原価低減のツールとしての VE の果たす役割は、建設業界においても大きい。

解答欄

それぞれの空欄に当てはまるものを選んで「採点する」を押してください。

正解

1A
2A
3B
4A
5B
6B
7A

解き方

  1. 1(A):『原価計算基準』の原価管理の定義は、原価の標準を設定し、実際発生額と比較して差異を分析・報告するという標準原価計算による原価統制(コスト・コントロール)を指す。現代の原価管理(コスト・マネジメント)は原価企画・原価改善を加えた広い概念だが、文章は基準の定義について述べているので正しい。
  2. 2(A):原価が管理可能か管理不能かは、原価そのものの性質ではなく「誰にとって」管理可能かという管理者の階層との関係で決まる。現場の作業所長には管理不能な原価(本社が決める重機械のリース契約など)も、上位の管理者には管理可能になる。
  3. 3(B):設計品質は顧客の要求を製品の仕様(設計)にどれだけ反映できたかという品質、適合品質は設計どおりに製造(施工)できたかという品質である。建設業の施工品質に対応するのは設計品質ではなく適合品質になる。
  4. 4(A):伝統的な品質コスト・モデルでは、予防・評価コストと失敗コストのトレードオフからある程度の不良を許容する水準で総品質コストが最小になると考える。TQC/TQM を前提とする長期的視点のモデルでは、学習効果で予防・評価コストが逓減する一方、品質不良を放置した場合の機会損失(信用失墜による売上減少など)が甚大になるため、無欠陥(ゼロ・ディフェクト)を目指すことが総品質コストの最小化につながると考える。
  5. 5(B):LCC には供給者側からみた LCC(研究開発から製造・販売・アフターサービスまでの供給者の負担コスト)と、需要者側からみた LCC(取得原価に加えて運用・保全・廃棄までの需要者の負担コスト)がある。供給者は自らのコストだけでなく需要者側の LCC(ユーザーコスト)も考慮して製品・サービスを設計しなければ市場で競争力を保てないので、「前者のみ」は誤り。
  6. 6(B):建築物のライフサイクル・コストが企画設計・建設・運用管理・廃棄処分の 4 項目からなる点は正しいが、長期間使用する建築物では光熱費・保全費・修繕費などの「運用管理コスト」が LCC の大半を占める。企画設計コストは LCC 全体に占める割合は小さいものの、その後のコストの大部分を決定づけるため、企画設計段階でのコスト管理が重要になる。
  7. 7(A):VE では価値(V)=機能(F)÷コスト(C)としてとらえ、機能を維持・向上させつつコストを引き下げることで価値を高める。公共工事における VE 提案制度など、建設業界においても VE は原価低減の重要なツールとして活用されている。
引っかけ:3 は「設計品質=施工品質」と読み替えてしまいやすい。施工品質は設計どおりに造れたかを表す適合品質に当たる。6 は 4 項目の列挙が正しいので A にしがちだが、「大半を占める」のは企画設計コストではなく運用管理コストで、その運用管理コストを企画設計段階で決定づける点が重要課題になる。5 の「〜のみ」のような限定表現は誤りの合図になりやすい。

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出典:一般財団法人 建設業振興基金が実施した建設業経理士1級 原価計算 第39回(2026年9月13日(日)実施) 第2問。問題文は本試験の問題にもとづいています。解答・解説・論点の整理は資格試験対策.netの独自コンテンツです。最終更新 。この問題の誤りを報告する