第39回 第4問 論点:業務的意思決定(差額原価・機会原価・自製か購入か)重要度 B配点 18点未着手

部品の自製か購入かの意思決定(数量割引・分岐点・遊休能力の機会原価)

これは建設業経理士1級 原価計算 第39回(2026年9月13日(日)実施) 第4問(配点 18点)の問題です。論点は「業務的意思決定(差額原価・機会原価・自製か購入か)」(重要度B・解答の形は金額+記号(X/Y、A/B)、個数、記号選択)。採点すると、解き方 9 手順・引っかけの指摘が読めます。

大手ハウスメーカーのS工場の切削部門では、次期(1 年間)の生産計画策定にあたり、設備稼働能力に 2,000 時間の余裕が見込まれた。この遊休能力を利用して従来購入していた部品Pを当部門で自製(内製)するか、あるいはこの遊休能力はそのままとし部品Pを外部から購入するかを検討している。次の<資料>に基づいて、下の設問に答えなさい。計算の過程で端数が生じる場合、計算途中では四捨五入せず、最終数値の円未満を四捨五入すること。

問1 本設例に関連する原価計算の目的として最も適切なものを次の中から選び、その記号(ア〜カ)を解答用紙の所定の欄に記入しなさい。 ア 財務諸表作成目的 イ 価格計算目的 ウ 構造的意思決定目的 エ 業務的意思決定目的 オ 原価管理目的 カ 予算統制目的

問2 部品Pの年間必要量が 4,000 個の場合、切削部門で部品Pを自製(内製)する案をA案、2,000 時間の遊休時間はそのままとし外部からこれを購入する案をB案とする。A案のほうが、B案よりも原価がいくら有利または不利になるか。有利の場合は「X」、不利の場合は「Y」を解答用紙の所定の欄に記入し、金額欄には符号を付けないこと。

問3 問2 では、部品Pの年間必要量を 4,000 個としたが、4,000 個以下に減少する可能性も考えられる。そこで部品Pの年間必要量 4,000 個の条件を一応度外視し、問2 のA、B両案を比較して、部品Pの年間必要量が何個以上であればA案のほうが原価で有利になるかを解答用紙の所定の欄に記入しなさい。

問4 部品P 4,000 個を外部から購入し、しかも 2,000 時間の遊休時間を 2,000 個の部品Qの自製(内製)に利用する案をC案とする。問2 のA案(部品P 4,000 個を自製(内製)し、部品Q 2,000 個を購入する案)とC案とを比較して、A案のほうが、C案よりも原価がいくら有利または不利になるか。有利の場合は「X」、不利の場合は「Y」を解答用紙の所定の欄に記入し、金額欄には符号を付けないこと。なお、部品Qの市場における購入価格と販売価格とは等しいものとする。

  • 1.部品Pに関する資料
  • (1) 部品Pの年間必要量は 4,000 個である。これを外部から購入する場合、1 個当たり 6,600 円で入手できる。
  • (2) 部品Pを製造する場合、その主材料は DM-P で、部品Pの 1 個の製造に DM-P を 1 kg 必要とする。主材料の年間購入契約量が 3,000 kg を超える場合は、購入契約量のうち、3,000 kg までは 1 kg 当たり 3,000 円で購入するが、3,001 kg 以上は、前記購入単価の 5% 引きで購入できる。
  • (3) 部品Pの 1 個当たりの加工時間は 0.5 時間であり、賃率 1 時間当たり 3,900 円の直接工を投入する必要がある。なお、直接労務費は変動費として計算する。また直接作業時間と機械稼働時間とは等しいものとする。
  • (4) 当部門では製造間接費は標準配賦が行われており、製造間接費の変動費率は 1,700 円/時、固定費率は 1,400 円/時である。なお、部品Pを製造しても、固定費の発生額に影響はない。
  • (5) 部品Pを製造する場合、新たに特殊設備が必要であり、その年間リース料は、生産量とは関係なく、2,000,000 円と見積もられた。
  • 2.部品Qに関する資料 部品Pを外部から購入する場合、2,000 時間の遊休能力をそのまま遊休にせず、この時間を従来購入していた部品Qの自製(内製)に利用する案も考えられる。部品Qの資料は次のとおりである。
  • (1) 部品Qの購入価格は、1 個当たり 10,000 円である。
  • (2) 部品Qの年間必要量は、2,000 個である。なおこの部品を製造する場合、1 個当たりの加工時間は 1 時間である。
  • (3) 部品Qの主材料は DM-Q で、部品Qの 1 個の製造に DM-Q を 1 kg 必要とする。その購入価格は 4,000 円/kg で、数量による割引はない。
  • (4) 直接工の賃率および製造間接費に関する条件は上記と同様である。また、部品Qの製造には、特殊設備は使用しないため、リース料は発生しない。

解答欄

ア 財務諸表作成目的 イ 価格計算目的 ウ 構造的意思決定目的 エ 業務的意思決定目的 オ 原価管理目的 カ 予算統制目的
円
X=A案が有利、Y=A案が不利
個以上
円
X=A案が有利、Y=A案が不利

金額はカンマなしでも入力できます。

正解

問1 原価計算の目的(記号)エ
問2 A案とB案の原価の差額1,350,000 円
問2 記号X
問3 A案が有利になる部品Pの年間必要量2,501 個以上
問4 A案とC案の原価の差額550,000 円
問4 記号X

解き方

  1. 問1:部品を自製するか購入するかの選択は、現在の設備・生産能力を前提として日常の業務活動の中で行われる短期の意思決定なので「業務的意思決定目的」(エ)になる。設備投資のように経営構造を変えるものではないため、構造的意思決定目的(ウ)ではない。
  2. 問2:差額原価収益分析により、両案で金額が異なる原価(差額原価)だけを比較する。製造間接費の固定費は自製しても発生額が変わらないので埋没原価、特殊設備のリース料は自製した場合にのみ発生するので差額原価に含める。
  3. A案(部品P 4,000 個を自製)の差額原価:主材料費 3,000 kg × 3,000 + 1,000 kg × 3,000 × (1 - 5%) = 9,000,000 + 2,850,000 = 11,850,000。直接労務費 4,000 個 × 0.5 時間 × 3,900 = 7,800,000。変動製造間接費 4,000 個 × 0.5 時間 × 1,700 = 3,400,000。特殊設備リース料 2,000,000。合計 25,050,000。
  4. B案(購入):4,000 個 × 6,600 = 26,400,000。差額 26,400,000 - 25,050,000 = 1,350,000 → A案のほうが 1,350,000 有利(X)。
  5. 問3:必要量を x 個として、A案とB案の原価が等しくなる数量(分岐点)を求める。必要量が 3,000 個以下の範囲では主材料に数量割引が適用されないので、1 個当たりの変動費は 3,000 + 1,950 + 850 = 5,800。A案 5,800x + 2,000,000 = B案 6,600x → 800x = 2,000,000 → x = 2,500 個。
  6. 2,500 個ではA案とB案の原価が等しく、2,500 個を超えると 1 個につき 800 ずつA案が有利になる。したがって年間必要量が 2,501 個以上であればA案(自製)のほうが有利になる。
  7. 問4:C案は部品Pを購入し、遊休の 2,000 時間を部品Q 2,000 個(2,000 個 × 1 時間)の自製に利用する案。部品Qの自製原価 = 主材料費 2,000 kg × 4,000 = 8,000,000 + 直接労務費 2,000 時間 × 3,900 = 7,800,000 + 変動製造間接費 2,000 時間 × 1,700 = 3,400,000 = 19,200,000(リース料は発生しない)。
  8. A案 = 部品P自製 25,050,000 + 部品Q購入 2,000 個 × 10,000 = 20,000,000 → 45,050,000。C案 = 部品P購入 26,400,000 + 部品Q自製 19,200,000 → 45,600,000。差額 45,600,000 - 45,050,000 = 550,000 → A案のほうが 550,000 有利(X)。
  9. 別解:遊休能力 2,000 時間を「部品Pの自製」に使うと 1,350,000 の節約(問2)、「部品Qの自製」に使うと 20,000,000 - 19,200,000 = 800,000 の節約になるので、その差 550,000 だけA案が有利と考えてもよい。
引っかけ:製造間接費の固定費率 1,400 円/時は発生額が変わらない埋没原価なので、自製原価に含めない。主材料の数量割引は 3,000 kg を超えた分(1,000 kg)だけに適用され、全量に適用されるわけではない。問3 は分岐点の 2,500 個ではなく「有利になる」数量 2,501 個以上と答える。問4 では部品Qの購入原価 20,000,000 をA案側に忘れずに加える。

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出典:一般財団法人 建設業振興基金が実施した建設業経理士1級 原価計算 第39回(2026年9月13日(日)実施) 第4問。問題文は本試験の問題にもとづいています。解答・解説・論点の整理は資格試験対策.netの独自コンテンツです。最終更新 。この問題の誤りを報告する