第32回 第5問 論点:収益性分析(資本利益率:ROA・ROE・事業利益・経営資本)重要度 A配点 30点未着手

2期分の財務諸表による諸比率の算定(A〜J)と出資者の見地からみた収益性指標の分解(空欄補充)

これは建設業経理士1級 財務分析 第32回(2023年3月12日(日)実施) 第5問(配点 30点)の問題です。論点は「収益性分析(資本利益率:ROA・ROE・事業利益・経営資本)」(重要度A・解答の形は問1:別添資料から10比率(A〜J)を算定(2点×10)。問2:分析文の空欄10個を用語・数値群から選ぶ(1点×10))。採点すると、解き方 14 手順・引っかけの指摘が読めます。

A建設株式会社の第31期(決算日:20×5年3月31日)及び第32期(決算日:20×6年3月31日)の財務諸表並びにその関連データは<別添資料>のとおりであった。次の設問に解答しなさい。

問1 第32期について、次の諸比率(A〜J)を算定しなさい。期中平均値を使用することが望ましい数値については、そのような処置をすること。また、Fの完成工事高増減率がプラスの場合は「A」、マイナスの場合は「B」を解答用紙の所定の欄に記入しなさい。なお、解答に際しての端数処理については、解答用紙の指定のとおりとする。

A 経営資本営業利益率 B 立替工事高比率 C 運転資本保有月数 D 借入金依存度 E 棚卸資産滞留月数 F 完成工事高増減率 G 営業キャッシュ・フロー対流動負債比率 H 配当率 I 未成工事収支比率 J 労働装備率

問2 同社の財務諸表とその関連データを参照しながら、次に示す文中の【 】の中に入れるべき最も適当な用語・数値を下記の<用語・数値群>の中から選び、その記号(ア〜ヤ)で解答しなさい。期中平均値を使用することが望ましい数値については、そのような処置をし、小数点第3位を四捨五入している。

出資者の見地から投下資本の収益性を判断するための指標が、【1】である。証券市場では、この【1】をアルファベット表記では【2】と呼んでトップマネジメント評価の重要な指標として活用している。この指標の分子の利益としては、一般に【3】が用いられる。第32期における【1】は【4】%である。

この指標は【5】によって、まず3つの指標に分解することができ、これは、【6】を【7】で除する数値とも等しい。【6】は包括的な収益力を示し、さらに、利益率と【8】に分けられる。一方、【7】の逆数は【9】とも呼ばれる。第32期における【8】は【10】回である。

  • <用語・数値群>
  • ア 総資本利益率 イ クロス・セクション ウ 完成工事高利益率 エ 当期純利益 オ 財務レバレッジ カ 自己資本利益率 キ 総資本回転率 ク 事業利益
  • コ 経常利益 サ 経営資本利益率 シ 自己資本比率 ス 営業利益 セ CCC ソ ROE タ CVP チ デュポンシステム
  • ト 負債比率 ナ 自己資本回転率 ニ インタレスト・カバレッジ ネ 経営資本回転率 ノ 0.67 ハ 0.73 フ 0.74 ヘ 5.58
  • ホ 6.90 ム 6.97 モ 10.02 ヤ 14.29
<別添資料>貸借対照表(資産の部)(単位:千円)第31期 20×5年3月31日現在第32期 20×6年3月31日現在
Ⅰ 流動資産 現金預金216,130331,560
 受取手形32,60027,300
 完成工事未収入金1,401,7001,395,700
 有価証券1,240120
 未成工事支出金48,74026,100
 材料貯蔵品800920
 その他流動資産130,400119,380
 貸倒引当金△1,540△1,520
 [流動資産合計]1,830,0701,899,560
Ⅱ 固定資産 1.有形固定資産 建物155,300147,800
 構築物2,3003,600
 機械装置11,70012,300
 車両運搬具600610
 工具器具備品4,3004,100
 土地344,100346,700
 建設仮勘定159,700222,400
  有形固定資産合計678,000737,510
 2.無形固定資産 のれん4,4004,100
 その他無形資産7,3007,400
  無形固定資産合計11,70011,500
 3.投資その他の資産 投資有価証券673,400566,300
 関係会社株式8,5008,500
 長期貸付金1,3001,200
 長期前払費用9801,400
 退職給付に係る資産49,70050,800
 その他投資資産24,50059,600
 貸倒引当金△19,700△19,660
  投資その他の資産合計738,680668,140
 [固定資産合計]1,428,3801,417,150
資産合計3,258,4503,316,710
貸借対照表(負債・純資産の部)(単位:千円)第31期 20×5年3月31日現在第32期 20×6年3月31日現在
Ⅰ 流動負債 支払手形13,37016,900
 工事未払金448,000482,500
 短期借入金74,60094,800
 未払金23,80018,900
 未払法人税等45,23016,600
 未成工事受入金157,100115,400
 預り金245,600256,100
 完成工事補償引当金4,6205,400
 工事損失引当金8,6309,730
 その他流動負債40,10037,400
 [流動負債合計]1,061,0501,053,730
Ⅱ 固定負債 社債110,000120,000
 長期借入金233,400261,700
 退職給付引当金48,50051,000
 その他固定負債124,500118,300
 [固定負債合計]516,400551,000
 負債合計1,577,4501,604,730
Ⅰ 株主資本 1.資本金198,400198,400
 2.資本剰余金 資本準備金262,400262,400
  資本剰余金合計262,400262,400
 3.利益剰余金 利益準備金2,4002,400
 その他利益剰余金954,6001,082,680
  利益剰余金合計957,0001,085,080
 4.自己株式△46,400△80,600
 [株主資本合計]1,371,4001,465,280
Ⅱ 評価・換算差額等 その他有価証券評価差額金309,600246,700
 [評価・換算差額等合計]309,600246,700
 純資産合計1,681,0001,711,980
負債純資産合計3,258,4503,316,710
  • 〔貸借対照表の付記事項〕
  • 1.流動資産中の貸倒引当金は、受取手形と完成工事未収入金に対して設定されたものである。
  • 2.その他流動資産は営業活動に伴うものであるが、当座の支払能力を有するものではない。
  • 3.投資その他の資産は、すべて営業活動には直接関係していない資産である。
  • 4.引当金及び有利子負債に該当する項目は、貸借対照表に明記したもの以外にはない。
  • 5.第32期において繰越利益剰余金を原資として実施した配当の額は 42,600 千円である。
損益計算書(単位:千円)第31期 自20×4年4月1日 至20×5年3月31日第32期 自20×5年4月1日 至20×6年3月31日
Ⅰ 完成工事高2,207,1002,424,600
Ⅱ 完成工事原価1,892,3002,106,200
 完成工事総利益314,800318,400
Ⅲ 販売費及び一般管理費186,000191,900
 営業利益128,800126,500
Ⅳ 営業外収益 受取利息320430
 受取配当金11,80012,000
 その他営業外収益11,2005,700
 営業外収益合計23,32018,130
Ⅴ 営業外費用 支払利息3,6703,930
 社債利息2,2002,400
 為替差損130110
 その他営業外費用12090
 営業外費用合計6,1206,530
 経常利益146,000138,100
Ⅵ 特別利益4,30032,100
Ⅶ 特別損失3,100200
 税引前当期純利益147,200170,000
 法人税、住民税及び事業税58,10042,200
 法人税等調整額△5,5009,630
 法人税等合計52,60051,830
 当期純利益94,600118,170
  • 〔損益計算書の付記事項〕
  • 1.第32期における有形固定資産の減価償却費及び無形固定資産の償却費の合計額は 18,100 千円である。
  • 2.その他営業外費用には、他人資本に付される利息は含まれていない。
キャッシュ・フロー計算書(要約)(単位:千円)第31期 自20×4年4月1日 至20×5年3月31日第32期 自20×5年4月1日 至20×6年3月31日
Ⅰ 営業活動によるキャッシュ・フロー230182,900
Ⅱ 投資活動によるキャッシュ・フロー△89,600△27,500
Ⅲ 財務活動によるキャッシュ・フロー17,200△39,970
Ⅳ 現金及び現金同等物の増加・減少額△72,170115,430
Ⅴ 現金及び現金同等物の期首残高288,300216,130
Ⅵ 現金及び現金同等物の期末残高216,130331,560
完成工事原価報告書(単位:千円)第31期 自20×4年4月1日 至20×5年3月31日第32期 自20×5年4月1日 至20×6年3月31日
Ⅰ 材料費340,600400,200
Ⅱ 労務費18,90021,100
 (うち労務外注費)(18,900)(21,100)
Ⅲ 外注費1,173,2001,326,900
Ⅳ 経費359,600358,000
 完成工事原価1,892,3002,106,200
各期末時点の総職員数第31期第32期
総職員数26 人28 人

解答欄 主要比率表(算式)を別タブで開く

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小数点第3位を四捨五入し、第2位まで記入
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小数点第3位を四捨五入し、第2位まで記入
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小数点第3位を四捨五入し、第2位まで記入
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小数点第3位を四捨五入し、第2位まで記入
月
小数点第3位を四捨五入し、第2位まで記入
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小数点第3位を四捨五入し、第2位まで記入。符号は付けない
A=プラス、B=マイナス
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小数点第3位を四捨五入し、第2位まで記入
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小数点第3位を四捨五入し、第2位まで記入
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小数点第3位を四捨五入し、第2位まで記入
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正解

問1 A 経営資本営業利益率5.29 %
問1 B 立替工事高比率54.42 %
問1 C 運転資本保有月数4.19 月
問1 D 借入金依存度14.37 %
問1 E 棚卸資産滞留月数0.13 月
問1 F 完成工事高増減率9.85 %
問1 F 完成工事高増減率の記号A
問1 G 営業キャッシュ・フロー対流動負債比率17.30 %
問1 H 配当率21.47 %
問1 I 未成工事収支比率442.15 %
問1 J 労働装備率19,137 千円
問2 空欄1カ
問2 空欄2ソ
問2 空欄3エ
問2 空欄4ム
問2 空欄5チ
問2 空欄6ア
問2 空欄7シ
問2 空欄8キ
問2 空欄9オ
問2 空欄10フ

解き方

  1. 期中平均を使うのは、貸借対照表の残高(経営資本・流動負債・有形固定資産・総職員数)を損益計算書やキャッシュ・フロー計算書のフロー(営業利益・完成工事高・営業キャッシュ・フロー)と対比させる主要比率表で(※)の付いた比率。立替工事高比率・運転資本保有月数・借入金依存度・棚卸資産滞留月数・配当率・未成工事収支比率は(※)がないので第32期末残高で計算する。
  2. A 経営資本営業利益率=営業利益÷経営資本(※)×100。経営資本=総資本−(建設仮勘定+投資その他の資産)で、付記事項3のとおり投資その他の資産はすべて営業活動に直接関係しない資産。第31期末 3,258,450−159,700−738,680=2,360,070、第32期末 3,316,710−222,400−668,140=2,426,170、平均 2,393,120。126,500÷2,393,120×100=5.285… → 5.29%。
  3. B 立替工事高比率=(受取手形+完成工事未収入金+未成工事支出金−未成工事受入金)÷(完成工事高+未成工事支出金)×100=(27,300+1,395,700+26,100−115,400)÷(2,424,600+26,100)×100=1,333,700÷2,450,700×100=54.421… → 54.42%。
  4. C 運転資本保有月数=(流動資産−流動負債)÷(完成工事高÷12)=(1,899,560−1,053,730)÷(2,424,600÷12)=845,830÷202,050=4.186… → 4.19 月。
  5. D 借入金依存度=(短期借入金+長期借入金+社債)÷総資本×100=(94,800+261,700+120,000)÷3,316,710×100=476,500÷3,316,710×100=14.366… → 14.37%。
  6. E 棚卸資産滞留月数=棚卸資産÷(完成工事高÷12)。棚卸資産=未成工事支出金+材料貯蔵品=26,100+920=27,020(期末残高)。27,020÷202,050=0.133… → 0.13 月。
  7. F 完成工事高増減率=(当期完成工事高−前期完成工事高)÷前期完成工事高×100=(2,424,600−2,207,100)÷2,207,100×100=217,500÷2,207,100×100=9.854… → 9.85%、プラスなので記号はA。
  8. G 営業キャッシュ・フロー対流動負債比率=営業キャッシュ・フロー÷流動負債(※)×100。キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フロー 182,900 を使う。流動負債の平均=(1,061,050+1,053,730)÷2=1,057,390。182,900÷1,057,390×100=17.297… → 17.30%。
  9. H 配当率=配当金÷資本金×100=42,600÷198,400×100=21.471… → 21.47%(付記事項5の配当額を使う。資本金は両期とも 198,400)。
  10. I 未成工事収支比率=未成工事受入金÷未成工事支出金×100=115,400÷26,100×100=442.145… → 442.15%。
  11. J 労働装備率=(有形固定資産−建設仮勘定)(※)÷総職員数(※)。第31期末 678,000−159,700=518,300、第32期末 737,510−222,400=515,110、平均 516,705。総職員数の平均=(26+28)÷2=27 人。516,705÷27=19,137.2… → 19,137 千円(千円未満切り捨て)。
  12. 問2 出資者(株主)の見地から投下資本の収益性を判断する指標は自己資本利益率(カ)で、証券市場では ROE(ソ)と呼ばれる。分子の利益には一般に当期純利益(エ)を用いる。第32期の自己資本利益率=当期純利益÷自己資本(※)×100=118,170÷{(1,681,000+1,711,980)÷2}×100=118,170÷1,696,490×100=6.965… → 6.97%(ム)。
  13. 問2 自己資本利益率はデュポンシステム(チ)によって、完成工事高利益率×総資本回転率×財務レバレッジ の 3 つの指標に分解できる。財務レバレッジ=総資本÷自己資本 は自己資本比率の逆数なので、この分解は 総資本利益率(ア)÷自己資本比率(シ) とも等しい。総資本利益率は包括的な収益力を示し、利益率(完成工事高利益率)と総資本回転率(キ)に分けられる。自己資本比率の逆数は財務レバレッジ(オ)と呼ばれる。
  14. 問2 総資本回転率=完成工事高÷総資本(※)=2,424,600÷{(3,258,450+3,316,710)÷2}=2,424,600÷3,287,580=0.737… → 0.74 回(フ)。検算:総資本当期純利益率=118,170÷3,287,580×100=3.594%、自己資本比率(期中平均)=1,696,490÷3,287,580×100=51.60%、3.594÷0.5160=6.97% で自己資本利益率と一致する。
引っかけ:Aの経営資本は建設仮勘定だけでなく投資その他の資産合計(付記事項3)も控除する。無形固定資産(のれんなど)は控除しない。Eの棚卸資産滞留月数は主要比率表に(※)がないので期末残高で計算する(期中平均 38,280 で割ると 0.19 になって誤る)。Gはキャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローをそのまま使い、純キャッシュ・フローを計算しない。Hの配当率の分母は資本金であり、当期純利益で割る配当性向(36.05%)と混同しない。問2の「ホ 6.90」は期末自己資本で割った値、「ハ 0.73」は期末総資本で割った値、「モ 10.02」は税引前当期純利益で計算した値で、いずれもひっかけ。

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