2期分の財務諸表による諸比率の算定(A〜J)と収益性分析(自己資本利益率のデュポン分解・経審の資本利益率)の空欄補充
これは建設業経理士1級 財務分析 第37回(2025年9月7日(日)実施) 第5問(配点 30点)の問題です。論点は「収益性分析(資本利益率:ROA・ROE・事業利益・経営資本)」(重要度A・解答の形は問1:別添資料から10比率(A〜J)を算定(2点×10)。問2:分析文の空欄10個を用語・数値群から選ぶ(1点×10))。採点すると、解き方 14 手順・引っかけの指摘が読めます。
A建設株式会社の第36期(決算日:20×5年3月31日)及び第37期(決算日:20×6年3月31日)の財務諸表並びにその関連データは<別添資料>のとおりであった。次の設問に解答しなさい。
問1 第37期について、次の諸比率(A〜J)を算定しなさい。期中平均値を使用することが望ましい数値については、そのような処置をすること。Hの付加価値増減率がプラスの場合は「A」を、マイナスの場合は「B」を解答用紙の所定の欄に記入し、数値欄に符号は付けないこと。Iの流動比率は、建設業独特の勘定科目に対して特別な配慮を必要とする方法により求めること。解答に際しての端数処理については、解答用紙の指定のとおりとする。
A 経営資本営業利益率 B 立替工事高比率 C 運転資本保有月数 D 未成工事収支比率 E 純支払利息比率 F 設備投資効率 G 完成工事高キャッシュ・フロー率 H 付加価値増減率 I 流動比率 J 配当率
問2 同社の財務諸表とその関連データを参照しながら、次に示す文章の【 】に入れるべき最も適当な用語・数値を下の<用語・数値群>の中から選び、その記号(ア〜モ)で解答しなさい。期中平均値を使用することが望ましい数値については、そのような処置をし、小数点第3位を四捨五入している。
資本利益率は、構成要素として様々なものがあるが、出資者の見地から投下資本の収益性を判断するための指標が【1】であり、通常、分子に用いられるものは【2】である。この【1】は、デュポンシステムと呼ばれる3つの指標に分解することができる。すなわち、損益計算書項目同士での指標である【3】、貸借対照表と損益計算書の項目の組合せである【4】、貸借対照表項目同士の【5】である。第37期における【4】は【6】(単位省略)であり、【5】は【7】(単位省略)である。
なお、経営事項審査の経営状況点数で用いられている資本利益率は、【8】に対する【9】の比率であり、第37期における同比率は【10】%である。
- <用語・数値群>
- ア 売上高利益率 イ 総資本利益率 ウ 税引前当期純利益 エ 営業利益 オ 売上高 カ 自己資本利益率 キ 財務レバレッジ ク 経営資本利益率
- コ 事業利益 サ 総資本 シ 総資本回転率 ス 当期純利益 セ 自己資本比率 ソ 経常利益 タ 自己資本 チ 売上総利益
- ト 0.72 ナ 0.73 ニ 1.01 ネ 1.37 ノ 2.01 ハ 2.02 フ 8.92 ヘ 9.20
- ホ 9.48 ム 49.41 モ 49.84
| <別添資料>貸借対照表(資産の部)(単位:千円) | 第36期 20×5年3月31日現在 | 第37期 20×6年3月31日現在 |
|---|---|---|
| Ⅰ 流動資産 現金預金 | 252,400 | 302,500 |
| 受取手形 | 212,300 | 326,200 |
| 完成工事未収入金 | 1,104,500 | 1,416,300 |
| 有価証券 | 100,000 | ― |
| 未成工事支出金 | 31,800 | 36,900 |
| 材料貯蔵品 | 7,500 | 5,800 |
| 立替金 | 12,400 | 13,800 |
| その他流動資産 | 321,010 | 104,600 |
| 貸倒引当金 | △1,500 | △1,900 |
| [流動資産合計] | 2,040,410 | 2,204,200 |
| Ⅱ 固定資産 1.有形固定資産 建物 | 228,400 | 222,800 |
| 構築物 | 35,700 | 38,400 |
| 機械装置 | 87,900 | 88,400 |
| 車両運搬具 | 2,800 | 3,600 |
| 工具器具備品 | 58,900 | 61,200 |
| 土地 | 346,700 | 351,500 |
| リース資産 | 60 | 180 |
| 建設仮勘定 | 500 | 8,000 |
| 有形固定資産合計 | 760,960 | 774,080 |
| 2.無形固定資産 のれん | 3,800 | 3,500 |
| その他無形資産 | 13,000 | 14,600 |
| 無形固定資産合計 | 16,800 | 18,100 |
| 3.投資その他の資産 投資有価証券 | 549,100 | 687,300 |
| 関係会社株式 | 4,500 | 4,500 |
| 繰延税金資産 | 30 | 20 |
| 長期前払費用 | 2,800 | 2,500 |
| 退職給付に係る資産 | 44,300 | 55,200 |
| その他投資資産 | 79,470 | 219,750 |
| 貸倒引当金 | △19,500 | △19,300 |
| 投資その他の資産合計 | 660,700 | 949,970 |
| [固定資産合計] | 1,438,460 | 1,742,150 |
| 資産合計 | 3,478,870 | 3,946,350 |
| 貸借対照表(負債・純資産の部)(単位:千円) | 第36期 20×5年3月31日現在 | 第37期 20×6年3月31日現在 |
|---|---|---|
| Ⅰ 流動負債 支払手形 | 98,500 | 87,500 |
| 工事未払金 | 404,200 | 433,200 |
| 短期借入金 | 107,100 | 167,000 |
| 未払金 | 34,500 | 26,400 |
| 未払法人税等 | 30,500 | 33,800 |
| 未成工事受入金 | 125,900 | 191,600 |
| 預り金 | 200,600 | 195,200 |
| 完成工事補償引当金 | 5,000 | 6,300 |
| 工事損失引当金 | 15,600 | 8,600 |
| その他流動負債 | 268,600 | 314,100 |
| [流動負債合計] | 1,290,500 | 1,463,700 |
| Ⅱ 固定負債 社債 | 10,000 | 10,000 |
| 長期借入金 | 291,100 | 274,400 |
| 繰延税金負債 | 119,900 | 187,400 |
| 退職給付引当金 | ― | 1,500 |
| その他固定負債 | 48,500 | 42,600 |
| [固定負債合計] | 469,500 | 515,900 |
| 負債合計 | 1,760,000 | 1,979,600 |
| Ⅰ 株主資本 1.資本金 | 198,400 | 198,400 |
| 2.資本剰余金 資本準備金 | 262,400 | 264,700 |
| 資本剰余金合計 | 262,400 | 264,700 |
| 3.利益剰余金 利益準備金 | 18,600 | 18,600 |
| その他利益剰余金 | 1,043,370 | 1,188,450 |
| 利益剰余金合計 | 1,061,970 | 1,207,050 |
| 4.自己株式 | △51,900 | △53,200 |
| [株主資本合計] | 1,470,870 | 1,616,950 |
| Ⅱ 評価・換算差額等 その他有価証券評価差額金 | 248,000 | 349,800 |
| [評価・換算差額等合計] | 248,000 | 349,800 |
| 純資産合計 | 1,718,870 | 1,966,750 |
| 負債純資産合計 | 3,478,870 | 3,946,350 |
- 〔貸借対照表の付記事項〕
- 1.流動資産中の貸倒引当金は、受取手形と完成工事未収入金に対して設定されたものである。
- 2.その他流動資産は営業活動に伴うものであるが、当座の支払能力を有するものではない。
- 3.投資その他の資産は、すべて営業活動には直接関係していない資産である。
- 4.引当金及び有利子負債に該当する項目は、貸借対照表に明記したもの以外にはない。
- 5.第37期において繰越利益剰余金を原資として実施した配当の額は 37,000 千円である。
| 損益計算書(単位:千円) | 第36期 自20×4年4月1日 至20×5年3月31日 | 第37期 自20×5年4月1日 至20×6年3月31日 |
|---|---|---|
| Ⅰ 完成工事高 | 2,494,400 | 2,881,500 |
| Ⅱ 完成工事原価 | 2,174,400 | 2,529,500 |
| 完成工事総利益 | 320,000 | 352,000 |
| Ⅲ 販売費及び一般管理費 | 201,500 | 214,800 |
| 営業利益 | 118,500 | 137,200 |
| Ⅳ 営業外収益 受取利息 | 280 | 730 |
| 受取配当金 | 1,600 | 2,300 |
| その他営業外収益 | 14,800 | 15,900 |
| 営業外収益合計 | 16,680 | 18,930 |
| Ⅴ 営業外費用 支払利息 | 5,500 | 6,100 |
| 社債利息 | 200 | 200 |
| 支払手数料 | 140 | 180 |
| その他営業外費用 | 600 | 1,200 |
| 営業外費用合計 | 6,440 | 7,680 |
| 経常利益 | 128,740 | 148,450 |
| Ⅵ 特別利益 | 30,800 | 39,100 |
| Ⅶ 特別損失 | 6,500 | 6,220 |
| 税引前当期純利益 | 153,040 | 181,330 |
| 法人税、住民税及び事業税 | 46,900 | 57,700 |
| 法人税等調整額 | 100 | 2,400 |
| 法人税等合計 | 47,000 | 60,100 |
| 当期純利益 | 106,040 | 121,230 |
- 〔損益計算書の付記事項〕
- 1.第37期における有形固定資産の減価償却費及び無形固定資産の償却費の合計額は 12,000 千円である。
- 2.その他営業外費用には、他人資本に付される利息は含まれていない。
| キャッシュ・フロー計算書(要約)(単位:千円) | 第36期 | 第37期 |
|---|---|---|
| Ⅰ 営業活動によるキャッシュ・フロー | 29,000 | 78,500 |
| Ⅱ 投資活動によるキャッシュ・フロー | 7,700 | 14,600 |
| Ⅲ 財務活動によるキャッシュ・フロー | △15,700 | △43,000 |
| Ⅳ 現金及び現金同等物の増加・減少額 | 21,000 | 50,100 |
| Ⅴ 現金及び現金同等物の期首残高 | 231,400 | 252,400 |
| Ⅵ 現金及び現金同等物の期末残高 | 252,400 | 302,500 |
| 完成工事原価報告書(単位:千円) | 第36期 | 第37期 |
|---|---|---|
| Ⅰ 材料費 | 434,800 | 556,490 |
| Ⅱ 労務費 | 64,300 | 51,810 |
| (うち労務外注費) | (64,300) | (51,810) |
| Ⅲ 外注費 | 1,283,900 | 1,516,400 |
| Ⅳ 経費 | 391,400 | 404,800 |
| 完成工事原価 | 2,174,400 | 2,529,500 |
| 各期末時点の総職員数 | 第36期 | 第37期 |
|---|---|---|
| 総職員数 | 84 人 | 86 人 |
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正解
| 問1 A 経営資本営業利益率 | 4.73 % |
|---|---|
| 問1 B 立替工事高比率 | 54.41 % |
| 問1 C 運転資本保有月数 | 3.08 月 |
| 問1 D 未成工事収支比率 | 519.24 % |
| 問1 E 純支払利息比率 | 0.11 % |
| 問1 F 設備投資効率 | 99.15 % |
| 問1 G 完成工事高キャッシュ・フロー率 | 3.28 % |
| 問1 H 付加価値増減率 | 6.38 % |
| 問1 H 付加価値増減率の記号 | A |
| 問1 I 流動比率 | 170.37 % |
| 問1 J 配当率 | 18.65 % |
| 問2 空欄1 | カ |
| 問2 空欄2 | ス |
| 問2 空欄3 | ア |
| 問2 空欄4 | シ |
| 問2 空欄5 | キ |
| 問2 空欄6 | ナ |
| 問2 空欄7 | ノ |
| 問2 空欄8 | サ |
| 問2 空欄9 | チ |
| 問2 空欄10 | ホ |
解き方
- 期中平均を使うのは、貸借対照表の残高(経営資本・有形固定資産・総資本・自己資本)を損益計算書のフロー(完成工事高・利益・付加価値)と対比させる比率。立替工事高比率・運転資本保有月数・未成工事収支比率・流動比率のように期末の状態を示す比率と、配当率(分母の資本金に※なし)は第37期末残高で計算する。
- A 経営資本営業利益率=営業利益÷経営資本(※)×100。経営資本=総資本−(建設仮勘定+投資その他の資産)(付記事項3より投資その他の資産はすべて営業活動に直接関係しない)。第36期末 3,478,870−500−660,700=2,817,670、第37期末 3,946,350−8,000−949,970=2,988,380、平均 2,903,025。137,200÷2,903,025×100=4.726… → 4.73%。
- B 立替工事高比率=(受取手形+完成工事未収入金+未成工事支出金−未成工事受入金)÷(完成工事高+未成工事支出金)×100=(326,200+1,416,300+36,900−191,600)÷(2,881,500+36,900)×100=1,587,800÷2,918,400×100=54.406… → 54.41%。
- C 運転資本保有月数=(流動資産−流動負債)÷(完成工事高÷12)=(2,204,200−1,463,700)÷(2,881,500÷12)=740,500÷240,125=3.083… → 3.08 月。
- D 未成工事収支比率=未成工事受入金÷未成工事支出金×100=191,600÷36,900×100=519.241… → 519.24%。
- E 純支払利息比率=(支払利息−受取利息及び配当金)÷完成工事高×100。支払利息=借入金利息 6,100+社債利息 200=6,300(付記事項2よりその他営業外費用に他人資本の利息は含まれない)。受取利息及び配当金=730+2,300=3,030。(6,300−3,030)÷2,881,500×100=3,270÷2,881,500×100=0.113… → 0.11%。
- F 設備投資効率=付加価値÷(有形固定資産−建設仮勘定)(※)×100。第37期の付加価値=完成工事高−(材料費+労務外注費+外注費)=2,881,500−(556,490+51,810+1,516,400)=756,800。有形固定資産−建設仮勘定は第36期末 760,960−500=760,460、第37期末 774,080−8,000=766,080、平均 763,270。756,800÷763,270×100=99.152… → 99.15%。
- G 完成工事高キャッシュ・フロー率=純キャッシュ・フロー÷完成工事高×100。純キャッシュ・フロー=当期純利益(税引後)±法人税等調整額+当期減価償却実施額+引当金増減額−剰余金の配当の額。引当金は貸倒引当金(流動・投資その他の資産)・完成工事補償引当金・工事損失引当金・退職給付引当金で、第36期末 1,500+19,500+5,000+15,600+0=41,600、第37期末 1,900+19,300+6,300+8,600+1,500=37,600、増減額=△4,000。純キャッシュ・フロー=121,230+2,400+12,000−4,000−37,000=94,630。94,630÷2,881,500×100=3.284… → 3.28%。
- H 付加価値増減率=(当期付加価値−前期付加価値)÷前期付加価値×100。第36期の付加価値=2,494,400−(434,800+64,300+1,283,900)=711,400。(756,800−711,400)÷711,400×100=45,400÷711,400×100=6.381… → 6.38%、プラスなので記号はA。
- I 流動比率(建設業特有の科目を控除する方法)=(流動資産−未成工事支出金)÷(流動負債−未成工事受入金)×100=(2,204,200−36,900)÷(1,463,700−191,600)×100=2,167,300÷1,272,100×100=170.371… → 170.37%。
- J 配当率=配当金÷資本金×100=37,000÷198,400×100=18.649… → 18.65%。
- 問2 出資者(株主)の見地から投下資本の収益性を判断する指標は自己資本利益率(カ)(ROE)で、分子には通常、当期純利益(ス)を用いる。デュポンシステムでは、自己資本利益率=売上高利益率(ア)(当期純利益÷売上高:損益計算書項目同士)×総資本回転率(シ)(売上高÷総資本:損益計算書と貸借対照表の組合せ)×財務レバレッジ(キ)(総資本÷自己資本:貸借対照表項目同士)に分解する。
- 問2 【6】総資本回転率=完成工事高÷総資本。第37期末の総資本 3,946,350 で割ると 2,881,500÷3,946,350=0.730… → 0.73(ナ)。問題文の指示どおり期中平均の総資本 3,712,610 で割ると 0.776… → 0.78 になるが、これは数値群にないので、数値群にある 0.73 を選ぶ。【7】財務レバレッジ=総資本÷自己資本={(3,478,870+3,946,350)÷2}÷{(1,718,870+1,966,750)÷2}=3,712,610÷1,842,810=2.014… → 2.01(ノ)(期末どうしでも 3,946,350÷1,966,750=2.006… → 2.01 で同じ)。
- 問2 経営事項審査の経営状況分析(Y点)で用いる資本利益率は総資本売上総利益率で、総資本(サ)に対する売上総利益(チ)の比率。総資本売上総利益率=売上総利益÷総資本(※)×100=352,000÷3,712,610×100=9.481… → 9.48%(ホ)。
同じ論点の過去問
第37回の前後の問題
出典:一般財団法人 建設業振興基金が実施した建設業経理士1級 財務分析 第37回(2025年9月7日(日)実施) 第5問。問題文は本試験の問題にもとづいています。解答・解説・論点の整理は資格試験対策.netの独自コンテンツです。最終更新 。この問題の誤りを報告する