第29回 第5問 論点:収益性分析(資本利益率:ROA・ROE・事業利益・経営資本)重要度 A配点 30点未着手

2期分の財務諸表による諸比率の算定(A〜J)と資本利益率の分母・分子・分解に関する空欄補充

これは建設業経理士1級 財務分析 第29回(2021年9月12日(日)実施) 第5問(配点 30点)の問題です。論点は「収益性分析(資本利益率:ROA・ROE・事業利益・経営資本)」(重要度A・解答の形は問1:別添資料から10比率(A〜J)を算定(2点×10)。問2:分析文の空欄10個を用語・数値群から選ぶ(1点×10))。採点すると、解き方 14 手順・引っかけの指摘が読めます。

新潟建設株式会社の第28期(決算日:20×5年3月31日)及び第29期(決算日:20×6年3月31日)の財務諸表並びにその関連データは<別添資料>のとおりであった。次の設問に解答しなさい。

問1 第29期について、次の諸比率(A〜J)を算定しなさい。期中平均値を使用することが望ましい数値については、そのような処置をすること。ただし、Bの流動比率は、建設業特有の勘定科目の金額を控除する方法により算定すること。また、Fの営業利益増減率がプラスの場合は「A」、マイナスの場合は「B」を解答用紙の所定の欄に記入しなさい。なお、解答に際しての端数処理については、解答用紙の指定のとおりとする。

A 完成工事高キャッシュ・フロー率 B 流動比率 C 有利子負債月商倍率 D 配当性向 E 固定資産回転率 F 営業利益増減率 G 労働装備率 H 必要運転資金月商倍率 I 負債比率 J 付加価値対固定資産比率

問2 同社の財務諸表とその関連データを参照しながら、次に示す文中の【 】に入れるべき最も適当な用語・数値を下記の<用語・数値群>から選び、記号(ア〜ヨ)で解答しなさい。期中平均値を使用することが望ましい数値については、そのような処置をし、小数点第3位を四捨五入している。

資本利益率は、構成要素として様々なものがある。分母において、本来の経営活動に使用されている資本を【1】といい、ここには本来の営業活動に投下されていない建設仮勘定、【2】などの固定資産は除外される。なお、この資本と比較されるべき分子としては【3】が用いられるべきである。これから求められる利益率は収益性分析の中心といえる指標であり、第29期においては【4】%である。また、経営事項審査の経営状況で用いられている資本利益率は、【5】に対する【6】の比率であり、第29期においてこの比率は【7】%である。なお、資本利益率は売上高利益率と【8】分析である資本回転率の2つに分解することができる。資本利益率【4】%の数値は、売上高利益率【9】%と資本回転率【10】回の積で求められる。

  • <用語・数値群>
  • ア 完成工事総利益 イ 自己資本 ウ 生産性 エ 備品 オ 安全性 カ 経常利益 キ 事業利益 ク 材料貯蔵品
  • コ 株主資本 サ 子会社株式 シ 税引前当期純利益 ス 総資本 セ 税引後当期純利益 ソ 活動性 タ 経営資本 チ 営業利益
  • ト 1.52 ナ 1.59 ニ 1.65 ネ 3.77 ノ 5.35 ハ 5.78 フ 8.14 ヘ 8.54
  • ホ 8.86 ム 9.18 モ 9.54 ヤ 13.19 ヨ 13.72
<別添資料>貸借対照表(資産の部)(単位:千円)第28期 20×5年3月31日現在第29期 20×6年3月31日現在
Ⅰ 流動資産 現金預金362,400436,200
 受取手形223,000243,000
 完成工事未収入金1,705,0002,015,000
 有価証券600750
 未成工事支出金137,200129,400
 材料貯蔵品38,50028,900
 短期貸付金800900
 その他流動資産132,00017,900
 貸倒引当金△7,100△7,000
 [流動資産合計]2,592,4002,865,050
Ⅱ 固定資産 1.有形固定資産 建物295,000298,000
 構築物86,00084,300
 機械装置15,50015,800
 車両運搬具4,8005,000
 工具器具備品1,4001,200
 土地337,100336,400
 建設仮勘定12,00038,700
  有形固定資産合計751,800779,400
 2.無形固定資産 ソフトウェア800900
 その他無形固定資産4,8006,700
  無形固定資産合計5,6007,600
 3.投資その他の資産 投資有価証券200,200171,500
 関係会社株式1,5001,500
 長期貸付金14,80013,600
 破産更生債権等7,9007,400
 繰延税金資産29,10061,500
 その他投資資産61,10057,100
 貸倒引当金△33,000△30,600
  投資その他の資産合計281,600282,000
 [固定資産合計]1,039,0001,069,000
資産合計3,631,4003,934,050
貸借対照表(負債・純資産の部)(単位:千円)第28期 20×5年3月31日現在第29期 20×6年3月31日現在
Ⅰ 流動負債 支払手形125,000116,000
 工事未払金1,234,0001,346,000
 短期借入金286,000246,700
 一年内償還の社債―100,000
 未払金49,60046,200
 未払法人税等48,90073,500
 未成工事受入金226,100209,300
 完成工事補償引当金13,30020,200
 工事損失引当金16,20019,300
 その他流動負債95,300142,700
 [流動負債合計]2,094,4002,319,900
Ⅱ 固定負債 社債200,000100,000
 長期借入金109,600148,600
 退職給付引当金6,40012,500
 その他固定負債45,30052,300
 [固定負債合計]361,300313,400
 負債合計2,455,7002,633,300
Ⅰ 株主資本 1.資本金304,500304,500
 2.資本剰余金 資本準備金183,900183,900
  資本剰余金合計183,900183,900
 3.利益剰余金 利益準備金14,00014,000
 その他利益剰余金628,400775,350
  利益剰余金合計642,400789,350
 4.自己株式△3,800△3,700
 [株主資本合計]1,127,0001,274,050
Ⅱ 評価・換算差額等 その他有価証券評価差額金48,70026,700
 [評価・換算差額等合計]48,70026,700
 純資産合計1,175,7001,300,750
負債純資産合計3,631,4003,934,050
  • 〔貸借対照表の付記事項〕
  • 1.流動資産中の貸倒引当金は、受取手形と完成工事未収入金に対して設定されたものである。
  • 2.その他流動資産は営業活動に伴うものであるが、当座の支払能力を有するものではない。
  • 3.投資その他の資産は、すべて営業活動には直接関係していない資産である。
  • 4.引当金及び有利子負債に該当する項目は、貸借対照表に明記したもの以外にはない。
  • 5.第29期において繰越利益剰余金を原資として実施した配当の額は 62,000 千円である。
損益計算書(単位:千円)第28期 自20×4年4月1日 至20×5年3月31日第29期 自20×5年4月1日 至20×6年3月31日
Ⅰ 完成工事高5,419,5005,738,400
Ⅱ 完成工事原価4,952,0005,219,400
 完成工事総利益467,500519,000
Ⅲ 販売費及び一般管理費175,200187,300
 営業利益292,300331,700
Ⅳ 営業外収益 受取利息1,6401,610
 受取配当金4,9703,800
 その他営業外収益5,2305,790
 営業外収益合計11,84011,200
Ⅴ 営業外費用 支払利息8,4509,240
 社債利息6,0006,000
 為替差損6,9507,370
 その他営業外費用16,80012,300
 営業外費用合計38,20034,910
 経常利益265,940307,990
Ⅵ 特別利益9202,840
Ⅶ 特別損失1,0103,740
 税引前当期純利益265,850307,090
 法人税、住民税及び事業税81,100109,200
 法人税等調整額△4,500△18,200
 法人税等合計76,60091,000
 当期純利益189,250216,090
  • 〔損益計算書の付記事項〕
  • 1.第29期における有形固定資産の減価償却費及び無形固定資産の償却費の合計額は 23,000 千円である。
  • 2.その他営業外費用には、他人資本に付される利息は含まれていない。
キャッシュ・フロー計算書(要約)(単位:千円)第28期第29期
Ⅰ 営業活動によるキャッシュ・フロー65,60045,400
Ⅱ 投資活動によるキャッシュ・フロー△112,300△90,800
Ⅲ 財務活動によるキャッシュ・フロー△124,600119,200
Ⅳ 現金及び現金同等物の増加・減少額△171,30073,800
Ⅴ 現金及び現金同等物の期首残高533,700362,400
Ⅵ 現金及び現金同等物の期末残高362,400436,200
完成工事原価報告書(単位:千円)第28期第29期
Ⅰ 材料費891,400939,500
Ⅱ 労務費56,20062,600
 (うち労務外注費)(56,200)(62,600)
Ⅲ 外注費2,971,2003,236,000
Ⅳ 経費1,033,200981,300
 完成工事原価4,952,0005,219,400
各期末時点の総職員数第28期第29期
総職員数34 人36 人

解答欄 主要比率表(算式)を別タブで開く

%
小数点第3位を四捨五入し、第2位まで記入
%
小数点第3位を四捨五入し、第2位まで記入。建設業特有の勘定科目の金額を控除する方法
月
小数点第3位を四捨五入し、第2位まで記入
%
小数点第3位を四捨五入し、第2位まで記入
回
小数点第3位を四捨五入し、第2位まで記入
%
小数点第3位を四捨五入し、第2位まで記入。符号は付けない
A=プラス、B=マイナス
千円
千円未満を切り捨て
月
小数点第3位を四捨五入し、第2位まで記入
%
小数点第3位を四捨五入し、第2位まで記入
%
小数点第3位を四捨五入し、第2位まで記入

金額はカンマなしでも入力できます。

正解

問1 A 完成工事高キャッシュ・フロー率3.01 %
問1 B 流動比率129.61 %
問1 C 有利子負債月商倍率1.24 月
問1 D 配当性向28.69 %
問1 E 固定資産回転率5.44 回
問1 F 営業利益増減率13.48 %
問1 F 営業利益増減率の記号A
問1 G 労働装備率21,150 千円
問1 H 必要運転資金月商倍率1.50 月
問1 I 負債比率202.44 %
問1 J 付加価値対固定資産比率142.34 %
問2 空欄1タ
問2 空欄2サ
問2 空欄3チ
問2 空欄4モ
問2 空欄5ス
問2 空欄6ア
問2 空欄7ヨ
問2 空欄8ソ
問2 空欄9ハ
問2 空欄10ニ

解き方

  1. 期中平均を使うのは、貸借対照表の残高(固定資産・有形固定資産・総職員数・経営資本・総資本)を損益計算書のフロー(完成工事高・利益)と対比させる比率(E・G・J・問2の利益率と回転率)。流動比率・有利子負債月商倍率・必要運転資金月商倍率・負債比率のように期末の状態を示す比率は第29期末残高で計算する。
  2. A 完成工事高キャッシュ・フロー率=純キャッシュ・フロー÷完成工事高×100。純キャッシュ・フロー=当期純利益(税引後)±法人税等調整額+当期減価償却実施額+引当金増減額−剰余金の配当の額。法人税等調整額 △18,200 は貸方(法人税等の減額)なので差し引く。引当金は流動の貸倒引当金・完成工事補償引当金・工事損失引当金・退職給付引当金・投資その他の資産の貸倒引当金で、第28期末 7,100+13,300+16,200+6,400+33,000=76,000、第29期末 7,000+20,200+19,300+12,500+30,600=89,600、増減額=+13,600。純キャッシュ・フロー=216,090−18,200+23,000+13,600−62,000=172,490。172,490÷5,738,400×100=3.005… → 3.01%。
  3. B 流動比率(建設業特有の科目を控除する方法)=(流動資産−未成工事支出金)÷(流動負債−未成工事受入金)×100=(2,865,050−129,400)÷(2,319,900−209,300)×100=2,735,650÷2,110,600×100=129.614… → 129.61%。
  4. C 有利子負債月商倍率=有利子負債÷(完成工事高÷12)。有利子負債=短期借入金 246,700+一年内償還の社債 100,000+社債 100,000+長期借入金 148,600=595,300(付記事項4により他にはない)。月商=5,738,400÷12=478,200。595,300÷478,200=1.244… → 1.24 月。
  5. D 配当性向=配当金÷当期純利益×100=62,000÷216,090×100=28.691… → 28.69%。
  6. E 固定資産回転率=完成工事高÷固定資産(※)=5,738,400÷{(1,039,000+1,069,000)÷2}=5,738,400÷1,054,000=5.444… → 5.44 回。
  7. F 営業利益増減率=(当期営業利益−前期営業利益)÷前期営業利益×100=(331,700−292,300)÷292,300×100=39,400÷292,300×100=13.479… → 13.48%、プラスなので記号はA。
  8. G 労働装備率=(有形固定資産−建設仮勘定)(※)÷総職員数(※)。第28期末 751,800−12,000=739,800、第29期末 779,400−38,700=740,700、平均 740,250。総職員数の平均=(34+36)÷2=35 人。740,250÷35=21,150 千円。
  9. H 必要運転資金月商倍率=必要運転資金÷(完成工事高÷12)。必要運転資金=受取手形+完成工事未収入金+未成工事支出金−支払手形−工事未払金−未成工事受入金=243,000+2,015,000+129,400−116,000−1,346,000−209,300=716,100。716,100÷478,200=1.497… → 1.50 月。
  10. I 負債比率=(流動負債+固定負債)÷自己資本×100=2,633,300÷1,300,750×100=202.444… → 202.44%。自己資本は純資産合計(評価・換算差額等を含む)。
  11. J 付加価値対固定資産比率=付加価値÷固定資産(※)×100。付加価値=完成工事高−(材料費+労務外注費+外注費)=5,738,400−(939,500+62,600+3,236,000)=1,500,300。1,500,300÷1,054,000×100=142.343… → 142.34%。
  12. 問2 本来の経営活動に使用されている資本が経営資本(タ)=総資本−(建設仮勘定+投資資産+その他営業活動に直接参加していない資産)。除外される固定資産の例は建設仮勘定と、投資資産である子会社株式(サ)。経営資本に対応する分子は本業の利益である営業利益(チ)。経営資本は付記事項3により投資その他の資産を全額控除して、第28期末 3,631,400−12,000−281,600=3,337,800、第29期末 3,934,050−38,700−282,000=3,613,350、平均 3,475,575。経営資本営業利益率=331,700÷3,475,575×100=9.543… → 9.54%(モ)。
  13. 問2 経営事項審査の経営状況分析(Y点)で用いる資本利益率は総資本売上総利益率で、総資本(ス)に対する完成工事総利益(ア)の比率。519,000÷{(3,631,400+3,934,050)÷2}×100=519,000÷3,782,725×100=13.720… → 13.72%(ヨ)。
  14. 問2 資本利益率=売上高利益率(利益÷完成工事高)×資本回転率(完成工事高÷資本)で、資本回転率は活動性(ソ)分析の指標。完成工事高営業利益率=331,700÷5,738,400×100=5.780… → 5.78%(ハ)、経営資本回転率=5,738,400÷3,475,575=1.651… → 1.65 回(ニ)。5.78%×1.65 回≒9.54% で経営資本営業利益率と一致する。
引っかけ:Aは法人税等調整額 △18,200 の符号(貸方なので減算)と、投資その他の資産の貸倒引当金 33,000/30,600 を落としやすい。キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フロー 45,400 は純キャッシュ・フローではない。Cの有利子負債には流動負債の「一年内償還の社債」100,000 を含める。Jの分母は固定資産全体(無形固定資産・投資その他の資産を含む)であり、労働装備率のように建設仮勘定を除いた有形固定資産ではない。問2の数値群は、ヤ 13.19(期末総資本で割った値)、ム 9.18(期末経営資本で割った値)、ホ 8.86(経営資本経常利益率)、フ 8.14(総資本経常利益率)、ヘ 8.54(総資本事業利益率)、ト 1.52(総資本回転率)、ナ 1.59(期末経営資本の回転率)などがひっかけ。

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出典:一般財団法人 建設業振興基金が実施した建設業経理士1級 財務分析 第29回(2021年9月12日(日)実施) 第5問。問題文は本試験の問題にもとづいています。解答・解説・論点の整理は資格試験対策.netの独自コンテンツです。最終更新 。この問題の誤りを報告する