第32回 第5問 論点:精算表(決算整理の総合問題)重要度 A配点 36点未着手

精算表(資産除去債務付き機械装置の撤去・売却、機械装置の除却、その他有価証券の税効果、工事進行基準の見積変更)

これは建設業経理士1級 財務諸表 第32回(2023年3月12日(日)実施) 第5問(配点 36点)の問題です。論点は「精算表(決算整理の総合問題)」(重要度A・解答の形は精算表(3 点×12 箇所))。採点すると、解き方 21 手順・引っかけの指摘・決算整理仕訳が読めます。

決算整理仕訳の入力欄(問題文の各項目の下):仕訳は本試験では採点されないので点数には入りません。合っているかの確認と弱点分析に使います。

次の<決算整理事項等>に基づき、解答用紙に示されているY建設株式会社の当会計年度(20×7年4月1日〜20×8年3月31日)に係る精算表を完成しなさい。ただし、計算過程で端数が生じた場合は、計算の最終段階で千円未満の端数を切り捨てること。なお、整理の過程で新たに生じる勘定科目で、精算表上に指定されている科目は、そこに記入し、( )については各自で考えること。

(1) 機械装置のうち 1台は、20×3年4月1日に取得し、同日より使用を開始したものであり、取得した時点での条件は次のとおりである。

 取得原価 20,000 千円 残存価額 2,000 千円 耐用年数 5年 減価償却方法 定額法

 使用終了時に当該機械装置を撤去する契約上の義務があり、撤去に要する支出額は 1,000 千円と見積られた。当該義務について資産除去債務を計上し(割引率 3%)、処理を行ってきた。

 当該機械装置の使用が 20×8年3月31日に終了したので撤去すると共に売却した。撤去に要した実際の支出額は 1,050 千円、売却額は 2,120 千円であった。必要な決算処理を行うと同時に、当該撤去・売却取引を次のように処理していたので修正する。なお、減価償却費は完成工事原価に計上する。

 (借)仮払金 1,050,000 /(貸)現金預金 1,050,000

 (借)現金預金 2,120,000 /(貸)仮受金 2,120,000

仕訳 (1)①
借方貸方
仕訳 (1)②
借方貸方
仕訳 (1)③
借方貸方
仕訳 (1)④
借方貸方

(2) (1)で処理した機械装置以外の機械装置(同一機種で 5台)は、20×1年4月1日に取得し、同日より使用を開始したものであり、取得した時点での条件は次のとおりである。

 取得原価:60,000 千円 残存価額:ゼロ 耐用年数:10年 減価償却方法:定額法

 しかし、これらの機械装置のうち 1台が決算日に水没し、今後使用できないことが判明したために廃棄処分する。なお、減価償却費は全額未成工事支出金に計上し、廃棄処分に伴い発生する損失は固定資産除却損に計上すること。

仕訳 (2)①
借方貸方
仕訳 (2)②
借方貸方

(3) 有価証券はすべて 20×6年4月1日に@97.0円で購入したA社社債(額面総額:20,000 千円、年利:2.0%、利払日:毎年 9月と 3月の末日、償還期日:20×9年3月31日)である。この社債はその他有価証券に分類されており、期末の時価は 19,950 千円である。償却原価法(定額法)を適用すると共に評価替えを行う。また、実効税率を 30% として税効果会計を適用する。

仕訳 (3)①
借方貸方
仕訳 (3)②
借方貸方

(4) 退職給付引当金への当期繰入額は 3,050 千円であり、このうち 2,520 千円は工事原価、530 千円は販売費及び一般管理費である。なお、現場作業員の退職給付引当金については、月次原価計算で月額 225 千円の予定計算を実施しており、20×8年3月までの毎月の予定額は、未成工事支出金の借方と退職給付引当金の貸方にすでに計上されている。この予定計上額と実際発生額との差額は、未成工事支出金および退職給付引当金に加減する。

仕訳 (4)①
借方貸方
仕訳 (4)②
借方貸方

(5) 期末時点で施工中の工事は次の工事だけであり、収益認識には原価比例法による工事進行基準を適用している。

 工事期間は 4年(20×5年4月1日〜20×9年3月31日)、当初契約時の工事収益総額は 750,000 千円、工事原価総額の見積額は 630,000 千円で、前受金として着手前に 200,000 千円、第2期末に 150,000 千円をそれぞれ受領している。

 当期末までの工事原価発生額は、第1期が 107,100 千円、第2期が 132,300 千円、第3期が 202,600 千円であった。資材価格と人件費の高騰により、第3期首(当期首)に工事原価総額の見積りを 680,000 千円に変更するとともに、交渉により、請負工事代金総額を 780,000 千円とすることが認められた。

仕訳 (5)①
借方貸方
仕訳 (5)②
借方貸方

(6) 受取手形と完成工事未収入金の期末残高に対して 2% の貸倒引当金を設定する(差額補充法)。このうち 1,300 千円については税務上損金算入が認められないため、実効税率を 30% として税効果会計を適用する。

仕訳 (6)①
借方貸方
仕訳 (6)②
借方貸方

(7) 当期の完成工事高に対して 0.5% の完成工事補償引当金を設定する(差額補充法)。

仕訳 (7)
借方貸方

(8) 法人税、住民税及び事業税と未払法人税等を計上する。なお、実効税率は 30% とする。

仕訳 (8)
借方貸方

(9) 税効果を考慮した上で、当期純損益を計上する。

解答欄

精算表(単位:千円)
勘定科目残高試算表整理記入損益計算書貸借対照表
借方貸方借方貸方借方貸方借方貸方
現金預金6,923
受取手形28,000
完成工事未収入金58,200
貸倒引当金1,032
未成工事支出金195,068
仮払法人税等5,600
仮払金1,050
機械装置80,863
機械装置減価償却累計額51,092
資産除去債務971
土地20,000
投資有価証券19,600
その他の諸資産33,563
仮受金2,120
工事未払金41,688
未成工事受入金65,000
完成工事補償引当金823
退職給付引当金106,124
その他の諸負債38,865
資本金100,000
資本準備金15,000
利益準備金3,000
繰越利益剰余金2,000
完成工事高285,000
完成工事原価228,240
有価証券利息400
雑収入1,088
販売費及び一般管理費30,496
その他の諸費用6,600
714,203714,203
利息費用
履行差額
固定資産売却益
固定資産除却損
貸倒引当金繰入額
その他有価証券評価差額金
繰延税金資産
繰延税金負債
未払法人税等
法人税、住民税及び事業税
法人税等調整額
当期純利益

金額はカンマなしでも入力できます。表は横にスクロールできます。空欄のままにする欄には何も入力しないでください。同じ欄に複数の金額が入るとき(本試験では2段に書く)は合計を入力します。

正解

精算表(単位:千円)
勘定科目残高試算表整理記入損益計算書貸借対照表
借方貸方借方貸方借方貸方借方貸方
現金預金6,9236,923
受取手形28,00028,000
完成工事未収入金58,200157,000215,200
貸倒引当金1,0323,8324,864
未成工事支出金195,0687,712202,780
仮払法人税等5,6005,600
仮払金1,0501,050
機械装置80,86332,86348,000
機械装置減価償却累計額51,09227,2639,77133,600
資産除去債務9711,00029
土地20,00020,000
投資有価証券19,60035019,950
その他の諸資産33,56333,563
仮受金2,1202,120
工事未払金41,68841,688
未成工事受入金65,00065,000
完成工事補償引当金8231,7122,535
退職給付引当金106,124180530106,474
その他の諸負債38,86538,865
資本金100,000100,000
資本準備金15,00015,000
利益準備金3,0003,000
繰越利益剰余金2,0002,000
完成工事高285,000222,000507,000
完成工事原価228,240206,371434,611
有価証券利息400200600
雑収入1,0881,088
販売費及び一般管理費30,49653031,026
その他の諸費用6,6006,600
714,203714,203
利息費用2929
履行差額5050
固定資産売却益120120
固定資産除却損3,6003,600
貸倒引当金繰入額3,8323,832
その他有価証券評価差額金105105
繰延税金資産390390
繰延税金負債4545
未払法人税等3,5083,508
法人税、住民税及び事業税9,1089,108
法人税等調整額390390
484,535484,535488,856509,198372,026351,684
当期純利益20,34220,342
509,198509,198372,026372,026

決算整理仕訳

借方貸方
(1)①
完成工事原価3,771
機械装置減価償却累計額3,771
(1)②
利息費用29
資産除去債務29
(1)③
資産除去債務1,000
履行差額50
仮払金1,050
(1)④
機械装置減価償却累計額18,863
仮受金2,120
機械装置20,863
固定資産売却益120
(2)①
未成工事支出金6,000
機械装置減価償却累計額6,000
(2)②
機械装置減価償却累計額8,400
固定資産除却損3,600
機械装置12,000
(3)①
投資有価証券200
有価証券利息200
(3)②
投資有価証券150
繰延税金負債45
その他有価証券評価差額金105
(4)①
退職給付引当金180
未成工事支出金180
(4)②
販売費及び一般管理費530
退職給付引当金530
(5)①
未成工事受入金65,000
完成工事未収入金157,000
完成工事高222,000
(5)②
完成工事原価202,600
未成工事支出金202,600
(6)①
貸倒引当金繰入額3,832
貸倒引当金3,832
(6)②
繰延税金資産390
法人税等調整額390
(7)
未成工事支出金1,712
完成工事補償引当金1,712
(8)
法人税、住民税及び事業税9,108
仮払法人税等5,600
未払法人税等3,508

解き方

  1. (1) は減価償却 → 利息費用 → 撤去(履行差額)→ 売却の順に処理する。残高試算表の機械装置 80,863 のうち 863 が取得時に計上した資産除去債務(1,000 ÷ 1.03^5)、資産除去債務 971 が期首残高(1,000 ÷ 1.03)であることを読み取る。当期の減価償却費 3,771 は要償却額 18,863 から前期までの累計額 15,092 を引いた額で、18,863 ÷ 5年 = 3,772 とは 1 千円ずれる。売却時の帳簿価額は残存価額 2,000 と一致し、売却額 2,120 との差額 120 が固定資産売却(益)になる。
  2. (2) の残り 4台と合わせた機械装置の貸借対照表価額 = 80,863 − 20,863 − 12,000 = 48,000、減価償却累計額 = 51,092 + 3,771 + 6,000 − 18,863 − 8,400 = 33,600。仮払金 1,050 と仮受金 2,120 は (1) の整理で全額消え、貸借対照表には残らない。
  3. (5) の工事進行基準は、当期首に見積変更があったので変更後の 780,000・680,000 で累計 507,000 を計算し、前期までの計上額 285,000 を引く。前受金 350,000 − 285,000 = 65,000 が残高試算表の未成工事受入金と一致することを確かめてから、その全額を充当する。
  4. (8)(9) は税引前当期純利益 29,060 × 30% = 8,718 が税効果後の法人税等の負担額になるように、法人税、住民税及び事業税 = 8,718 + 法人税等調整額 390 = 9,108 とする。当期純利益 = 29,060 − 9,108 + 390 = 20,342。
  5. (1)① 取得時に資産除去債務として機械装置に加えた額 = 撤去費用 1,000 ÷ 1.03^5 = 863(残高試算表の機械装置 80,863 − 60,000 − 20,000 で確かめられる)。この機械装置の要償却額 = 取得原価 20,863 − 残存価額 2,000 = 18,863。前期までの減価償却累計額 = 51,092 − (2) の 5台分 60,000 × 6年 ÷ 10年 = 15,092(毎期 3,773 × 4年)なので、最終年度の減価償却費 = 18,863 − 15,092 = 3,771。指示により完成工事原価に計上する。 〔借方〕完成工事原価 3,771 /〔貸方〕機械装置減価償却累計額 3,771
  6. (1)② 期首の資産除去債務 971(= 1,000 ÷ 1.03)に割引率 3% を掛けた 29(千円未満切捨て)を利息費用として計上し、資産除去債務を撤去費用の見積額 1,000 まで増やす。 〔借方〕利息費用 29 /〔貸方〕資産除去債務 29
  7. (1)③ 撤去の支出 1,050 は仮払金で処理されている。資産除去債務 1,000 を取り崩し、見積額との差額 50 を履行差額(費用)にして仮払金を消す。 〔借方〕資産除去債務 1,000・履行差額 50 /〔貸方〕仮払金 1,050
  8. (1)④ 売却時の帳簿価額 = 取得原価 20,863 − 減価償却累計額 18,863(15,092 + 3,771)= 2,000(残存価額)。売却額 2,120 は仮受金で処理されているので、仮受金を消し、帳簿価額との差額 120 を固定資産売却益にする。取得原価と累計額の両方を減らす。 〔借方〕機械装置減価償却累計額 18,863・仮受金 2,120 /〔貸方〕機械装置 20,863・固定資産売却益 120
  9. (2)① 5台分の減価償却費 = 60,000 ÷ 10年 = 6,000(1台あたり 1,200)。指示により未成工事支出金に計上する。 〔借方〕未成工事支出金 6,000 /〔貸方〕機械装置減価償却累計額 6,000
  10. (2)② 水没した 1台の取得原価 = 60,000 ÷ 5台 = 12,000、減価償却累計額 = 1,200 × 7年(20×1年4月〜20×8年3月)= 8,400。帳簿価額 12,000 − 8,400 = 3,600 を固定資産除却損にし、取得原価と累計額の両方を減らす。 〔借方〕機械装置減価償却累計額 8,400・固定資産除却損 3,600 /〔貸方〕機械装置 12,000
  11. (3)① 取得価額 = 20,000 × 97.0 ÷ 100 = 19,400。額面との差額 600 を償還までの 3年で配分し、毎期 200 を投資有価証券に加えて有価証券利息にする(残高試算表の 19,600 は前期分 200 を加えた後の償却原価)。当期末の償却原価 = 19,800。 〔借方〕投資有価証券 200 /〔貸方〕有価証券利息 200
  12. (3)② 評価差額 = 時価 19,950 − 償却原価 19,800 = 150(評価益)。繰延税金負債 = 150 × 30% = 45、その他有価証券評価差額金 = 150 − 45 = 105(貸方)。投資有価証券を 150 増やして時価 19,950 にする。 〔借方〕投資有価証券 150 /〔貸方〕繰延税金負債 45・その他有価証券評価差額金 105
  13. (4)① 現場作業員分の予定計上額 = 225 × 12か月 = 2,700。実際 2,520 との差額 180 は予定の方が多いので、未成工事支出金と退職給付引当金を 180 減らす。 〔借方〕退職給付引当金 180 /〔貸方〕未成工事支出金 180
  14. (4)② 販売費及び一般管理費分 530 は未処理なので、そのまま繰り入れる。 〔借方〕販売費及び一般管理費 530 /〔貸方〕退職給付引当金 530
  15. (5)① 当期首の見積変更後の金額で累計を計算し直す。進捗率 = (107,100 + 132,300 + 202,600) ÷ 680,000 = 65%、累計工事収益 = 780,000 × 65% = 507,000。前期までの計上額 = 第1期 750,000 × 107,100 ÷ 630,000 = 127,500、第2期 750,000 × 239,400 ÷ 630,000 − 127,500 = 157,500、計 285,000。当期の完成工事高 = 507,000 − 285,000 = 222,000。未成工事受入金の残高 65,000(前受金 350,000 − 285,000)を充当し、残り 157,000 を完成工事未収入金にする。 〔借方〕未成工事受入金 65,000・完成工事未収入金 157,000 /〔貸方〕完成工事高 222,000
  16. (5)② 当期の工事原価発生額 202,600 を未成工事支出金から完成工事原価に振り替える。(2)①・(4)①・(7) の整理を加えた未成工事支出金 195,068 + 6,000 − 180 + 1,712 = 202,600 がちょうど振り替えられ、次期繰越額は 0 になる。 〔借方〕完成工事原価 202,600 /〔貸方〕未成工事支出金 202,600
  17. (6)① (受取手形 28,000 + 完成工事未収入金 58,200 + 157,000) × 2% = 4,864。残高 1,032 との差額 3,832 を繰り入れる。 〔借方〕貸倒引当金繰入額 3,832 /〔貸方〕貸倒引当金 3,832
  18. (6)② 損金不算入額 1,300 × 30% = 390 を繰延税金資産に計上し、法人税等調整額(貸方)で法人税等を減らす。 〔借方〕繰延税金資産 390 /〔貸方〕法人税等調整額 390
  19. (7) 当期の完成工事高 = 285,000 + 222,000 = 507,000。507,000 × 0.5% = 2,535。残高 823 との差額 1,712 を繰り入れ、工事原価なので未成工事支出金に計上する。 〔借方〕未成工事支出金 1,712 /〔貸方〕完成工事補償引当金 1,712
  20. (8) 税引前当期純利益 = 収益 508,808(507,000 + 600 + 1,088 + 120)− 費用 479,748(434,611 + 31,026 + 6,600 + 29 + 50 + 3,600 + 3,832)= 29,060。税効果を考慮した法人税等 = 29,060 × 30% = 8,718。法人税、住民税及び事業税はこれに法人税等調整額 390 を足し戻した 9,108。仮払法人税等 5,600 を充当し、残り 3,508 を未払法人税等にする。 〔借方〕法人税、住民税及び事業税 9,108 /〔貸方〕仮払法人税等 5,600・未払法人税等 3,508
  21. 損益計算書の貸方合計 509,198 − 借方合計 488,856 = 当期純利益 20,342。損益計算書の借方と貸借対照表の貸方に同じ金額を書き、4つの合計欄がそれぞれ貸借一致することを確認する。
引っかけ:(1) の減価償却費を 20,000 だけで計算(3,600)したり、資産除去債務分を含めて 18,863 ÷ 5 = 3,772 としたりしない。前期までの累計額 15,092 との差額 3,771 が正解になる。有価証券の償却原価法は残高試算表の 19,600 にさらに 200 を加える(取得価額 19,400 から 2 年分 400 を加えるのと同じ)。その他有価証券の評価差額は税効果後の純額 105 を貸借対照表の貸方に書く。貸倒引当金の完成工事未収入金は (5) で増えた後の 215,200 で計算する。法人税等を 29,060 × 30% = 8,718 のまま計上すると当期純利益が 20,732 になり、税効果を考慮した利益にならない。

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出典:一般財団法人 建設業振興基金が実施した建設業経理士1級 財務諸表 第32回(2023年3月12日(日)実施) 第5問。問題文は本試験の問題にもとづいています。解答・解説・論点の整理は資格試験対策.netの独自コンテンツです。最終更新 。この問題の誤りを報告する