第32回 第3問 論点:純資産・持分・株主資本等変動計算書重要度 A配点 16点未着手

会計処理の正誤(自己新株予約権・キャッシュ・フロー計算書の区分・簿外資産・修繕引当金・ソフトウェア・償却方法の変更・債務保証)

これは建設業経理士1級 財務諸表 第32回(2023年3月12日(日)実施) 第3問(配点 16点)の問題です。論点は「純資産・持分・株主資本等変動計算書」(重要度A・解答の形はA/B(第39 回から A/B+修正箇所+修正内容の記号))。採点すると、解き方 8 手順・引っかけの指摘が読めます。

財務会計に関するわが国の基本的な考え方に照らして、以下の会計処理のうち、認められるものには「A」、認められないものには「B」を解答用紙の所定の欄に記入しなさい。

1.かねて発行していた新株予約権(自己新株予約権)を取得した。なお、自己新株予約権の代価と取得に要した付随費用とを合算して自己新株予約権の取得原価とした。

2.建設業を事業目的としている当社は、短期売買(トレーディング)目的で甲社株式を購入した。なお、キャッシュ・フロー計算書において、当該売買にかかるキャッシュ・フローは、その保有目的に合わせて営業活動によるキャッシュ・フローの区分に計上した。

3.耐用年数が到来したが、なお使用中の機械について、その金額が少額であったために、未償却残高(残存価額)を簿外資産として処理した。

4.使用中の機械が故障したが、工事に支障がないために修理は次期に行うこととした。これに伴い発生する修繕費についても、その金額が少額であったために、当期においては修繕引当金を計上しないこととした。

5.得意先への証票発行事務の時間的および経済的負担軽減を目的として専用のソフトウェアを購入した。その目的は十分に達成されていると判断できたが、当該ソフトウェアの購入費については、「研究開発費等に係る会計基準」に従い、当期の費用として処理した。

6.建設現場で使用する機械を購入したが、当社の資金繰りの関係上、販売会社に代金は 5回の分割払いとすることを申し入れ承諾された。当期のキャッシュ・フロー計算書では、当該分割払いが当社にとっては資金調達に該当するため、決算時に支払済みとなっていた 3回分の分割代金は財務活動によるキャッシュ・フローの区分に計上した。

7.機械装置の減価償却方法を、正当な理由により、定額法から定率法に変更した。減価償却方法の変更は会計方針の変更に該当するが、「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」に従い遡及適用は行わなかった。

8.当社は、取引先乙社の借入金について債務保証をしている。乙社の財政状況は良好で、当面、当該借入金が返済不能になる危険は見込まれないが、保守主義の観点から、当該借入金全額について債務保証損失引当金を計上し、その繰入額を当期の損益計算書に計上した。

解答欄

それぞれの空欄に当てはまるものを選んで「採点する」を押してください。

正解

1A
2B
3B
4A
5B
6A
7A
8B

解き方

  1. 1.A。自己新株予約権を取得したときは、取得の対価に取得に要した付随費用を加えた額を取得原価とし、新株予約権から控除する形式で純資産の部に表示する(払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品に関する会計処理(企業会計基準適用指針第 17 号))。付随費用を営業外費用にする自己株式の取得と扱いが異なる点に注意する。
  2. 2.B。キャッシュ・フロー計算書では、現金同等物を除く有価証券の取得による支出・売却による収入は投資活動によるキャッシュ・フローの区分に記載する。有価証券の売買を営業活動として営む証券会社などと異なり、建設業を事業目的とする当社では、短期売買目的の株式の売買も投資活動になる。
  3. 3.B。重要性の原則により簿外資産が認められるのは、消耗品・消耗工具器具備品その他の貯蔵品など重要性の乏しい項目に限られる(企業会計原則注解 1)。耐用年数が到来してもなお使用中の機械は、残存価額(または備忘価額)で貸借対照表に計上し続けなければならず、簿外資産にすることは正規の簿記の原則に反する。
  4. 4.A。修繕引当金は引当金の要件を満たせば計上するが、重要性の原則により、引当金のうち重要性の乏しいものは計上しないことができる(注解 1)。少額の修繕費について当期に引当金を計上しない処理は認められる。
  5. 5.B。自社利用のソフトウェアは、その利用により将来の収益獲得または費用削減が確実と認められる場合、取得に要した費用を無形固定資産(ソフトウェア)に計上し、利用可能期間(原則 5年以内)で償却する。事務の負担軽減という効果が達成されているのに費用処理するのは誤り。研究開発費として費用処理するのは研究開発目的のソフトウェアの場合。
  6. 6.A。固定資産の分割払い(割賦購入)は、販売会社から購入代金相当の信用供与を受けた資金調達と考え、その分割代金の支払はファイナンス・リース債務の返済と同様に財務活動によるキャッシュ・フローに区分する。
  7. 7.A。減価償却方法の変更は会計方針の変更に該当するが、「会計上の見積りの変更」と同様に扱い、遡及適用はしない。変更後の方法を変更した期の期首帳簿価額から将来にわたって適用する。
  8. 8.B。引当金は、発生の可能性が高く金額を合理的に見積れる場合に計上する(注解 18)。乙社の財政状況が良好で返済不能の危険が見込まれない債務保証は偶発債務として注記するにとどめ、引当金は計上しない。保守主義の原則も過度に保守的な会計処理を認めるものではなく(注解 4)、発生の可能性の低い損失を全額引き当てるのは誤り。
引っかけ:1 は自己株式(付随費用は取得原価に含めず費用処理)との違い。2 は「保有目的に合わせて」という理由付けに惑わされず、有価証券の売買は投資活動と押さえる。3 と 4 はどちらも「少額」だが、重要性の原則で認められる簡便処理は消耗品・経過勘定・引当金など限られた項目で、使用中の固定資産は含まれない。8 は「保守主義」を理由にしても、引当金の要件(発生の可能性が高い)を満たさなければ計上できない。

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出典:一般財団法人 建設業振興基金が実施した建設業経理士1級 財務諸表 第32回(2023年3月12日(日)実施) 第3問。問題文は本試験の問題にもとづいています。解答・解説・論点の整理は資格試験対策.netの独自コンテンツです。最終更新 。この問題の誤りを報告する