精算表(機械装置の減損、外貨建貸付金の換算、社債の買入償還の修正と減債積立金の取崩し、工事進行基準の見積変更)
これは建設業経理士1級 財務諸表 第31回(2022年9月11日(日)実施) 第5問(配点 36点)の問題です。論点は「精算表(決算整理の総合問題)」(重要度A・解答の形は精算表(3 点×12 箇所))。採点すると、解き方 19 手順・引っかけの指摘・決算整理仕訳が読めます。
次の<決算整理事項等>に基づき、解答用紙に示されているX建設株式会社の当会計年度(20×7年4月1日〜20×8年3月31日)に係る精算表を完成しなさい。ただし、計算過程で端数が生じた場合は、計算の最終段階で千円未満の端数を切り捨てること。なお、整理の過程で新たに生じる勘定科目で、精算表上に指定されている科目は、そこに記入すること。
(1) 機械装置は、20×1年4月1日に取得し、同日より使用を開始したものであり、取得した時点での条件は次のとおりである。
取得原価 30,000 千円 残存価額 ゼロ 耐用年数 10年 減価償却方法 定額法
この資産について、期末に減損の兆候が見られたため、割引前のキャッシュ・フローの総額を見積もったところ、8,100 千円であった。また、割引後のキャッシュ・フローの総額は 7,941 千円と算定され、これは正味売却価額よりも大きかった。なお、減価償却費のうち 70% は未成工事支出金に、30% は完成工事原価に計上する。
(2) 貸付金 1,300 千円のうち 920 千円は、1ドル=115.00円の時に貸し付けたものである。期末時点の為替レートは、1ドル=117.50円である。
(3) 社債(償還期間:5年、年利:2%、利払日:毎年 9月と 3月の末日、年 2回)はすべて 20×4年4月1日に額面総額 20,000 千円を @98.0円 で発行し、償却原価法(定額法)を適用してきた。この社債のうち、額面 10,000 千円分を当期首(20×7年4月1日)に @99.3円 で買入償還したが、その際に次のように処理していた。
(借)社債 9,930,000 /(貸)現金預金 9,930,000
上の処理を修正するとともに、残りの社債に対して償却原価法(定額法)を適用する。また同時に、減債積立金 10,000 千円を取り崩す。なお、当期の社債の利払いについては、適切に処理されている。
(4) 退職給付引当金への当期繰入額は 2,650 千円であり、このうち 2,150 千円は工事原価、500 千円は販売費及び一般管理費である。なお、現場作業員の退職給付引当金については、月次原価計算で月額 160 千円の予定計算を実施しており、20×8年3月までの毎月の予定額は、完成工事原価および未成工事支出金の借方と退職給付引当金の貸方にすでに計上されている。この予定計上額と実際発生額との差額は未成工事支出金に加減する。
(5) 期末時点で施工中の工事は次の工事だけであり、収益認識には原価比例法による工事進行基準を適用している。
工事期間は 4年(20×5年4月1日〜20×9年3月31日)、当初契約時の工事収益総額は 960,000 千円、工事原価総額の見積額は 700,000 千円で、前受金として着手前に 300,000 千円、第2期末に 200,000 千円をそれぞれ受領している。
当期末までの工事原価発生額は、第1期が 147,000 千円、第2期が 189,000 千円、第3期が 211,500 千円であった。資材価格と人件費の高騰により、第3期末に工事原価総額の見積りを 750,000 千円に変更するとともに、交渉により、請負工事代金総額を 1,000,000 千円とすることが認められた。
(6) 受取手形と完成工事未収入金の期末残高に対して 2% の貸倒引当金を設定する(差額補充法)。このうち 1,500 千円については税務上損金算入が認められないため、実効税率を 30% として税効果会計を適用する。
(7) 当期の完成工事高に対して 0.5% の完成工事補償引当金を設定する(差額補充法)。
(8) 法人税、住民税及び事業税と未払法人税等を計上する。なお、実効税率は 30% とする。
(9) 税効果を考慮した上で、当期純損益を計上する。
解答欄
正解
| 勘定科目 | 残高試算表 | 整理記入 | 損益計算書 | 貸借対照表 | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 借方 | 貸方 | 借方 | 貸方 | 借方 | 貸方 | 借方 | 貸方 | |
| 現金預金 | 7,689 | 7,689 | ||||||
| 受取手形 | 49,000 | 49,000 | ||||||
| 貸倒引当金 | 300 | 5,280 | 5,580 | |||||
| 貸付金 | 1,300 | 20 | 1,320 | |||||
| 未成工事支出金 | 208,219 | 3,281 | 211,500 | |||||
| 機械装置 | 30,000 | 1,059 | 28,941 | |||||
| 機械装置減価償却累計額 | 18,000 | 3,000 | 21,000 | |||||
| 土地 | 15,000 | 15,000 | ||||||
| 仮払法人税等 | 8,000 | 8,000 | ||||||
| その他の諸資産 | 32,777 | 32,777 | ||||||
| 工事未払金 | 12,300 | 12,300 | ||||||
| 未成工事受入金 | 39,200 | 39,200 | ||||||
| 完成工事補償引当金 | 1,025 | 951 | 1,976 | |||||
| 社債 | 9,910 | 50 | 9,960 | |||||
| 退職給付引当金 | 12,500 | 730 | 13,230 | |||||
| その他の諸負債 | 83,520 | 83,520 | ||||||
| 資本金 | 120,000 | 120,000 | ||||||
| 資本準備金 | 13,000 | 13,000 | ||||||
| 利益準備金 | 12,000 | 12,000 | ||||||
| 減債積立金 | 10,000 | 10,000 | ||||||
| 繰越利益剰余金 | 5,600 | 10,000 | 15,600 | |||||
| 完成工事高 | 126,000 | 269,200 | 395,200 | |||||
| 雑収入 | 3,180 | 3,180 | ||||||
| 完成工事原価 | 94,500 | 212,400 | 306,900 | |||||
| 販売費及び一般管理費 | 18,100 | 500 | 18,600 | |||||
| 社債利息 | 200 | 40 | 240 | |||||
| その他の諸費用 | 1,750 | 1,750 | ||||||
| 466,535 | 466,535 | |||||||
| 減損損失 | 1,059 | 1,059 | ||||||
| 貸倒引当金繰入額 | 5,280 | 5,280 | ||||||
| 繰延税金資産 | 450 | 450 | ||||||
| 為替差損益 | 20 | 20 | ||||||
| 社債償還損 | 10 | 10 | ||||||
| 完成工事未収入金 | 230,000 | 230,000 | ||||||
| 未払法人税等 | 11,818 | 11,818 | ||||||
| 法人税、住民税及び事業税 | 19,818 | 19,818 | ||||||
| 法人税等調整額 | 450 | 450 | ||||||
| 522,058 | 522,058 | 353,657 | 398,850 | 365,177 | 319,984 | |||
| 当期純利益 | 45,193 | 45,193 | ||||||
| 398,850 | 398,850 | 365,177 | 365,177 | |||||
決算整理仕訳
| 借方 | 貸方 | |
|---|---|---|
| (1)① | 未成工事支出金2,100 完成工事原価900 | 機械装置減価償却累計額3,000 |
| (1)② | 減損損失1,059 | 機械装置1,059 |
| (2) | 貸付金20 | 為替差損益20 |
| (3)① | 社債償還損10 | 社債10 |
| (3)② | 社債利息40 | 社債40 |
| (3)③ | 減債積立金10,000 | 繰越利益剰余金10,000 |
| (4)① | 未成工事支出金230 | 退職給付引当金230 |
| (4)② | 販売費及び一般管理費500 | 退職給付引当金500 |
| (5)① | 未成工事受入金39,200 完成工事未収入金230,000 | 完成工事高269,200 |
| (5)② | 完成工事原価211,500 | 未成工事支出金211,500 |
| (6)① | 貸倒引当金繰入額5,280 | 貸倒引当金5,280 |
| (6)② | 繰延税金資産450 | 法人税等調整額450 |
| (7) | 未成工事支出金951 | 完成工事補償引当金951 |
| (8) | 法人税、住民税及び事業税19,818 | 仮払法人税等8,000 未払法人税等11,818 |
解き方
- (1) は減価償却 → 減損の順に処理する。減価償却 3,000 を 70%・30% で未成工事支出金 2,100 と完成工事原価 900 に分け、償却後の帳簿価額 9,000(30,000 − 21,000)で減損の認識(割引前 CF 8,100 と比較)と測定(使用価値 7,941 まで減額)を行う。機械装置の貸借対照表価額 = 30,000 − 1,059 = 28,941、累計額 = 21,000。
- (3) の社債は、まず買入償還の誤処理を直す。償還分の帳簿価額は発行価額 9,800 に 3年分の償却 120 を加えた 9,920 で、支払額 9,930 との差額 10 が社債償還損になる(解答用紙の「社債( )」には「償還損」と書く)。次に残りの額面 10,000 について当期の償却 40 を社債利息に加え、減債積立金 10,000 を繰越利益剰余金に振り替える。期末の社債 9,960 = 額面 10,000 − 未償却の差額 40(残り 1年分)で検算できる。
- (5) の工事進行基準は、第3期末(当期末)に見積変更があったので変更後の 1,000,000・750,000 で累計を計算し、前期までの計上額 460,800 を引く。前受金 500,000 − 460,800 = 39,200 が残高試算表の未成工事受入金と一致することを確かめてから、その全額を充当する。
- (8)(9) は税引前当期純利益 64,561 × 30% = 19,368 が税効果後の法人税等の負担額になるように、法人税、住民税及び事業税 = 19,368 + 法人税等調整額 450 = 19,818 とする。当期純利益 = 64,561 − 19,818 + 450 = 45,193。
- (1)① 減価償却費 = 30,000 ÷ 10年 = 3,000。指示により 70% の 2,100 を未成工事支出金に、30% の 900 を完成工事原価に計上する。 〔借方〕未成工事支出金 2,100・完成工事原価 900 /〔貸方〕機械装置減価償却累計額 3,000
- (1)② 当期の減価償却後の帳簿価額 = 30,000 − (18,000 + 3,000) = 9,000(20×1年4月から 7年分償却済み)。割引前キャッシュ・フロー 8,100 < 9,000 なので減損を認識する。回収可能価額は使用価値 7,941(正味売却価額より大きい方)。減損損失 = 9,000 − 7,941 = 1,059 を機械装置から直接減額する。 〔借方〕減損損失 1,059 /〔貸方〕機械装置 1,059
- (2) 外貨額 = 920 ÷ 115.00円 = 8 千ドル。決算日換算額 = 8 千ドル × 117.50円 = 940。差額 940 − 920 = 20 は円安による為替差益(貸方)。円建ての 380 は換算しない。 〔借方〕貸付金 20 /〔貸方〕為替差損益 20
- (3)① 発行価額 = 20,000 × 98.0 ÷ 100 = 19,600。額面との差額 400 を 5年で償却(年 80、額面 10,000 あたり年 40)。買入償還した額面 10,000 の期首の帳簿価額(償却原価)= 9,800 + 40 × 3年 = 9,920。支払額 9,930 との差額 10 が社債償還損。社債を 9,930 減らしてしまっているので、10 だけ戻す。 〔借方〕社債償還損 10 /〔貸方〕社債 10
- (3)② 残りの額面 10,000 の社債(発行価額 9,800、差額 200 を 5年で配分)について、当期分の償却 40 を社債利息に加え、社債を増やす。期末の社債 = 9,910 + 10 + 40 = 9,960(= 額面 10,000 − 未償却の差額 40)。 〔借方〕社債利息 40 /〔貸方〕社債 40
- (3)③ 買入償還に伴い、減債積立金 10,000 を取り崩して繰越利益剰余金に戻す。 〔借方〕減債積立金 10,000 /〔貸方〕繰越利益剰余金 10,000
- (4)① 現場作業員分の予定計上額 = 160 × 12か月 = 1,920。実際 2,150 との差額 230 は実際の方が多いので、未成工事支出金と退職給付引当金を 230 増やす。 〔借方〕未成工事支出金 230 /〔貸方〕退職給付引当金 230
- (4)② 販売費及び一般管理費分 500 は未処理なので、そのまま繰り入れる。 〔借方〕販売費及び一般管理費 500 /〔貸方〕退職給付引当金 500
- (5)① 第3期末(当期末)の見積変更後の金額で累計を計算し直す。進捗率 = (147,000 + 189,000 + 211,500) ÷ 750,000 = 73%、累計工事収益 = 1,000,000 × 73% = 730,000。前期までの計上額 = 第1期 960,000 × 147,000 ÷ 700,000 = 201,600、第2期 960,000 × 336,000 ÷ 700,000 − 201,600 = 259,200、計 460,800。当期の完成工事高 = 730,000 − 460,800 = 269,200。未成工事受入金の残高 39,200(前受金 500,000 − 460,800)を充当し、残り 230,000 を完成工事未収入金にする。 〔借方〕未成工事受入金 39,200・完成工事未収入金 230,000 /〔貸方〕完成工事高 269,200
- (5)② 当期の工事原価発生額 211,500 を未成工事支出金から完成工事原価に振り替える。(1)①・(4)①・(7) の整理を加えた未成工事支出金 208,219 + 2,100 + 230 + 951 = 211,500 がちょうど振り替えられ、次期繰越額は 0 になる。 〔借方〕完成工事原価 211,500 /〔貸方〕未成工事支出金 211,500
- (6)① (受取手形 49,000 + 完成工事未収入金 230,000) × 2% = 279,000 × 2% = 5,580。残高 300 との差額 5,280 を繰り入れる。 〔借方〕貸倒引当金繰入額 5,280 /〔貸方〕貸倒引当金 5,280
- (6)② 損金不算入額 1,500 × 30% = 450 を繰延税金資産に計上し、法人税等調整額(貸方)で法人税等を減らす。 〔借方〕繰延税金資産 450 /〔貸方〕法人税等調整額 450
- (7) 当期の完成工事高 = 126,000 + 269,200 = 395,200。395,200 × 0.5% = 1,976。残高 1,025 との差額 951 を繰り入れ、工事原価なので未成工事支出金に計上する。 〔借方〕未成工事支出金 951 /〔貸方〕完成工事補償引当金 951
- (8) 税引前当期純利益 = 収益 398,400(395,200 + 3,180 + 20)− 費用 333,839(306,900 + 18,600 + 240 + 1,750 + 1,059 + 5,280 + 10)= 64,561。税効果を考慮した法人税等 = 64,561 × 30% = 19,368(千円未満切捨て)。法人税、住民税及び事業税はこれに法人税等調整額 450 を足し戻した 19,818。仮払法人税等 8,000 を充当し、残り 11,818 を未払法人税等にする。 〔借方〕法人税、住民税及び事業税 19,818 /〔貸方〕仮払法人税等 8,000・未払法人税等 11,818
- 損益計算書の貸方合計 398,850 − 借方合計 353,657 = 当期純利益 45,193。損益計算書の借方と貸借対照表の貸方に同じ金額を書き、4つの合計欄がそれぞれ貸借一致することを確認する。
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第31回の前後の問題
出典:一般財団法人 建設業振興基金が実施した建設業経理士1級 財務諸表 第31回(2022年9月11日(日)実施) 第5問。問題文は本試験の問題にもとづいています。解答・解説・論点の整理は資格試験対策.netの独自コンテンツです。最終更新 。この問題の誤りを報告する