第29回 第5問 論点:精算表(決算整理の総合問題)重要度 A配点 36点未着手

精算表(機械装置の除却、元利継続式定期預金の未収利息、その他有価証券の税効果、工事進行基準の見積変更)

これは建設業経理士1級 財務諸表 第29回(2021年9月12日(日)実施) 第5問(配点 36点)の問題です。論点は「精算表(決算整理の総合問題)」(重要度A・解答の形は精算表(3 点×12 箇所))。採点すると、解き方 18 手順・引っかけの指摘・決算整理仕訳が読めます。

決算整理仕訳の入力欄(問題文の各項目の下):仕訳は本試験では採点されないので点数には入りません。合っているかの確認と弱点分析に使います。

次の<決算整理事項等>に基づき、解答用紙に示されている島根建設株式会社の当会計年度(20×4年4月1日〜20×5年3月31日)に係る精算表を完成しなさい。ただし、計算過程で端数が生じた場合は、千円未満の端数を切り捨てること。なお、処理の過程で新たに生じる勘定科目で、精算表上に指定されている科目は、そこに記入すること。また、経過勘定項目はすべて期首に再振替されている。

(1) 機械装置(同一機種で 5台)は、20×1年4月1日に取得し、同日より使用を開始したものであり、取得した時点での条件は次のとおりである。

 取得原価:75,000 千円 残存価額:ゼロ 耐用年数:10年 減価償却方法:定額法

 しかし、これらの機械装置のうち 1台が決算日に水没し、今後使用できないことが判明したために廃棄処分する。なお、減価償却費は未成工事支出金に計上し、廃棄処分に伴い発生する損失は固定資産除却損に計上すること。

仕訳 (1)①
借方貸方
仕訳 (1)②
借方貸方

(2) 定期預金は、20×3年4月1日に、年利 3%、元利継続式(元利金を毎年継続して預入する方式)3年の契約で預け入れたものである。本年度末における未収利息を計上する。

仕訳 (2)①
借方貸方
仕訳 (2)②
借方貸方

(3) 有価証券はすべてその他有価証券であり、期末の時価は 19,200 千円である。実効税率を 30% として税効果会計を適用する。

仕訳 (3)
借方貸方

(4) 退職給付引当金への当期繰入額は 12,820 千円であり、このうち 11,530 千円は工事原価、1,290 千円は販売費及び一般管理費である。なお、現場作業員の退職給付引当金については、月次原価計算で月額 1,050 千円の予定計算を実施しており、20×5年3月までの毎月の予定額は、未成工事支出金の借方と退職給付引当金の貸方にすでに計上されている。この予定計上額と実際発生額との差額は工事原価に加減する。

仕訳 (4)①
借方貸方
仕訳 (4)②
借方貸方

(5) 期末時点で施工中の工事は次の工事だけであり、収益認識には原価比例法による工事進行基準を適用している。

 工事期間は 4年(20×2年4月1日〜20×6年3月31日)、当初契約時の工事収益総額は 780,000 千円、工事原価総額の見積額は 600,000 千円で、前受金として着手前に 150,000 千円、第2期末に 250,000 千円をそれぞれ受領している。

 当期末までの工事原価発生額は、第1期が 82,000 千円、第2期が 175,000 千円、第3期が 229,000 千円であった。資材価格と人件費の上昇により、第3期首(当期首)に工事原価総額の見積りを 675,000 千円に変更するとともに、交渉により、請負工事代金総額を 810,000 千円とすることが認められた。

仕訳 (5)①
借方貸方
仕訳 (5)②
借方貸方

(6) 受取手形と完成工事未収入金の期末残高に対して 2% の貸倒引当金を設定する(差額補充法)。このうち 1,800 千円については税務上損金算入が認められないため、実効税率を 30% として税効果会計を適用する。

仕訳 (6)①
借方貸方
仕訳 (6)②
借方貸方

(7) 当期の完成工事高に対して 0.5% の完成工事補償引当金を設定する(差額補充法)。

仕訳 (7)
借方貸方

(8) 法人税、住民税及び事業税と未払法人税等を計上する。なお、実効税率は 30% とする。

仕訳 (8)
借方貸方

(9) 税効果を考慮した上で、当期純損益を計上する。

解答欄

精算表(単位:千円)
勘定科目残高試算表整理記入損益計算書貸借対照表
借方貸方借方貸方借方貸方借方貸方
現金預金7,153
受取手形38,000
完成工事未収入金52,800
貸倒引当金2,430
未成工事支出金220,667
仮払法人税等9,500
機械装置75,000
機械装置減価償却累計額22,500
土地22,000
定期預金25,000
投資有価証券18,000
その他の諸資産21,582
工事未払金42,157
未成工事受入金65,900
完成工事補償引当金1,168
退職給付引当金95,715
その他の諸負債20,684
資本金160,000
資本準備金19,000
利益準備金7,000
繰越利益剰余金2,000
完成工事高365,200
完成工事原価292,160
受取利息750
雑収入2,152
販売費及び一般管理費20,594
その他の諸費用2,700
805,906805,906
固定資産除却損
未収利息
貸倒引当金繰入額
その他有価証券評価差額金
繰延税金資産
繰延税金負債
未払法人税等
法人税、住民税及び事業税
法人税等調整額
当期純利益

金額はカンマなしでも入力できます。表は横にスクロールできます。空欄のままにする欄には何も入力しないでください。同じ欄に複数の金額が入るとき(本試験では2段に書く)は合計を入力します。

正解

精算表(単位:千円)
勘定科目残高試算表整理記入損益計算書貸借対照表
借方貸方借方貸方借方貸方借方貸方
現金預金7,1537,153
受取手形38,00038,000
完成工事未収入金52,800183,200236,000
貸倒引当金2,4303,0505,480
未成工事支出金220,6679,403230,070
仮払法人税等9,5009,500
機械装置75,00015,00060,000
機械装置減価償却累計額22,5006,0007,50024,000
土地22,00022,000
定期預金25,00075025,750
投資有価証券18,0001,20019,200
その他の諸資産21,58221,582
工事未払金42,15742,157
未成工事受入金65,90065,900
完成工事補償引当金1,1681,9033,071
退職給付引当金95,7151,0701,29095,935
その他の諸負債20,68420,684
資本金160,000160,000
資本準備金19,00019,000
利益準備金7,0007,000
繰越利益剰余金2,0002,000
完成工事高365,200249,100614,300
完成工事原価292,160229,000521,160
受取利息7501,522772
雑収入2,1522,152
販売費及び一般管理費20,5941,29021,884
その他の諸費用2,7002,700
805,906805,906
固定資産除却損9,0009,000
未収利息772772
貸倒引当金繰入額3,0503,050
その他有価証券評価差額金840840
繰延税金資産540540
繰延税金負債360360
未払法人税等8,8698,869
法人税、住民税及び事業税18,36918,369
法人税等調整額540540
529,544529,544576,163617,764430,997389,396
当期純利益41,60141,601
617,764617,764430,997430,997

決算整理仕訳

借方貸方
(1)①
未成工事支出金7,500
機械装置減価償却累計額7,500
(1)②
機械装置減価償却累計額6,000
固定資産除却損9,000
機械装置15,000
(2)①
定期預金750
受取利息750
(2)②
未収利息772
受取利息772
(3)
投資有価証券1,200
繰延税金負債360
その他有価証券評価差額金840
(4)①
退職給付引当金1,070
未成工事支出金1,070
(4)②
販売費及び一般管理費1,290
退職給付引当金1,290
(5)①
未成工事受入金65,900
完成工事未収入金183,200
完成工事高249,100
(5)②
完成工事原価229,000
未成工事支出金229,000
(6)①
貸倒引当金繰入額3,050
貸倒引当金3,050
(6)②
繰延税金資産540
法人税等調整額540
(7)
未成工事支出金1,903
完成工事補償引当金1,903
(8)
法人税、住民税及び事業税18,369
仮払法人税等9,500
未払法人税等8,869

解き方

  1. (1) は減価償却 → 除却の順に処理する。まず 5台分の減価償却 7,500 を未成工事支出金に計上し、水没した 1台の取得原価 15,000 と累計額 6,000(1,500 × 4年)を除いて帳簿価額 9,000 を固定資産除却損にする。機械装置の貸借対照表価額 = 75,000 − 15,000 = 60,000、累計額 = 22,500 + 7,500 − 6,000 = 24,000。
  2. (2) の定期預金は元利継続式なので、前年度の利息 750 が当期首に元金に組み入れられている。残高試算表の受取利息が借方 750 なのは、前期末の未収利息 750 を期首に再振替したため。定期預金 25,750(貸借対照表)に対する当期の利息 772 を未収利息に計上し、受取利息の損益計算書の金額は 772 になる。
  3. (5) の工事進行基準は、当期首に見積変更があったので変更後の 810,000・675,000 で累計を計算し、前期までの計上額 334,100 を引く。前受金 400,000 − 334,100 = 65,900 が残高試算表の未成工事受入金と一致することを確かめてから、その全額を充当する。
  4. (8)(9) は税引前当期純利益 59,430 × 30% = 17,829 が税効果後の法人税等の負担額になるように、法人税、住民税及び事業税 = 17,829 + 法人税等調整額 540 = 18,369 とする。当期純利益 = 59,430 − 18,369 + 540 = 41,601。
  5. (1)① 5台分の減価償却費 = 75,000 ÷ 10年 = 7,500(1台あたり 1,500)。水没した 1台も決算日まで使用しているので当期分を償却し、指示により未成工事支出金に計上する。 〔借方〕未成工事支出金 7,500 /〔貸方〕機械装置減価償却累計額 7,500
  6. (1)② 水没した 1台の取得原価 = 75,000 ÷ 5台 = 15,000、減価償却累計額 = 1,500 × 4年(20×1年4月〜20×5年3月)= 6,000。帳簿価額 15,000 − 6,000 = 9,000 を固定資産除却損にし、取得原価と累計額の両方を減らす。 〔借方〕機械装置減価償却累計額 6,000・固定資産除却損 9,000 /〔貸方〕機械装置 15,000
  7. (2)① 前年度(20×3年4月〜20×4年3月)の利息 25,000 × 3% = 750 は、前期末に未収利息として計上され、当期首に再振替されている(受取利息の借方 750)。元利継続式なので、この 750 は 20×4年4月1日に元金に組み入れられた。定期預金を 750 増やし、受取利息に戻す。 〔借方〕定期預金 750 /〔貸方〕受取利息 750
  8. (2)② 当期の利息 = 元利継続後の元金 25,750 × 3% = 772.5 → 772(千円未満切捨て)を未収利息に計上する。当期の受取利息は 750 − 750 + 772 = 772 になる。 〔借方〕未収利息 772 /〔貸方〕受取利息 772
  9. (3) 評価差額 = 時価 19,200 − 帳簿価額 18,000 = 1,200(評価益)。繰延税金負債 = 1,200 × 30% = 360、その他有価証券評価差額金 = 1,200 − 360 = 840(貸方)。投資有価証券を 1,200 増やして時価にする。 〔借方〕投資有価証券 1,200 /〔貸方〕繰延税金負債 360・その他有価証券評価差額金 840
  10. (4)① 現場作業員分の予定計上額 = 1,050 × 12か月 = 12,600。実際 11,530 との差額 1,070 は予定の方が多いので、未成工事支出金と退職給付引当金を 1,070 減らす。 〔借方〕退職給付引当金 1,070 /〔貸方〕未成工事支出金 1,070
  11. (4)② 販売費及び一般管理費分 1,290 は未処理なので、そのまま繰り入れる。退職給付引当金は 95,715 − 1,070 + 1,290 = 95,935 になる。 〔借方〕販売費及び一般管理費 1,290 /〔貸方〕退職給付引当金 1,290
  12. (5)① 当期首の見積変更後の金額で累計を計算し直す。進捗率 = (82,000 + 175,000 + 229,000) ÷ 675,000 = 72%、累計工事収益 = 810,000 × 72% = 583,200。前期までの計上額 = 第1期 780,000 × 82,000 ÷ 600,000 = 106,600、第2期 780,000 × 257,000 ÷ 600,000 − 106,600 = 227,500、計 334,100。当期の完成工事高 = 583,200 − 334,100 = 249,100。未成工事受入金の残高 65,900(前受金 400,000 − 334,100)を充当し、残り 183,200 を完成工事未収入金にする。 〔借方〕未成工事受入金 65,900・完成工事未収入金 183,200 /〔貸方〕完成工事高 249,100
  13. (5)② 当期の工事原価発生額 229,000 を未成工事支出金から完成工事原価に振り替える。(1)①・(4)①・(7) の整理を加えた未成工事支出金 220,667 + 7,500 − 1,070 + 1,903 = 229,000 がちょうど振り替えられ、次期繰越額は 0 になる。 〔借方〕完成工事原価 229,000 /〔貸方〕未成工事支出金 229,000
  14. (6)① 受取手形 38,000 + 完成工事未収入金 (52,800 + 183,200) = 274,000。274,000 × 2% = 5,480。残高 2,430 との差額 3,050 を繰り入れる。 〔借方〕貸倒引当金繰入額 3,050 /〔貸方〕貸倒引当金 3,050
  15. (6)② 損金不算入額 1,800 × 30% = 540 を繰延税金資産に計上し、法人税等調整額(貸方)で法人税等を減らす。 〔借方〕繰延税金資産 540 /〔貸方〕法人税等調整額 540
  16. (7) 当期の完成工事高 = 365,200 + 249,100 = 614,300。614,300 × 0.5% = 3,071.5 → 3,071(千円未満切捨て)。残高 1,168 との差額 1,903 を繰り入れ、工事原価なので未成工事支出金に計上する。 〔借方〕未成工事支出金 1,903 /〔貸方〕完成工事補償引当金 1,903
  17. (8) 税引前当期純利益 = 収益 617,224(614,300 + 772 + 2,152)− 費用 557,794(521,160 + 21,884 + 2,700 + 9,000 + 3,050)= 59,430。税効果を考慮した法人税等 = 59,430 × 30% = 17,829。法人税、住民税及び事業税はこれに法人税等調整額 540 を足し戻した 18,369。仮払法人税等 9,500 を充当し、残り 8,869 を未払法人税等にする。 〔借方〕法人税、住民税及び事業税 18,369 /〔貸方〕仮払法人税等 9,500・未払法人税等 8,869
  18. 損益計算書の貸方合計 617,764 − 借方合計 576,163 = 当期純利益 41,601。損益計算書の借方と貸借対照表の貸方に同じ金額を書き、4つの合計欄がそれぞれ貸借一致することを確認する。
引っかけ:定期預金の利息は 25,000 × 3% = 750 ではなく、元利継続後の 25,750 × 3% = 772(切捨て)で計算する。受取利息の残高試算表の借方 750 を貸方と見誤らない。水没した 1台の累計額は取得からの 4年分 6,000(当期分を含む)。その他有価証券の評価差額は税効果後の純額 840 を貸借対照表の貸方に書き、繰延税金負債 360 と繰延税金資産 540 は相殺しない(精算表上は別の行)。貸倒引当金の完成工事未収入金は (5) で増えた後の 236,000 で計算する。法人税等を 59,430 × 30% = 17,829 のまま計上すると当期純利益が 42,141 になり、税効果を考慮した利益にならない。

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出典:一般財団法人 建設業振興基金が実施した建設業経理士1級 財務諸表 第29回(2021年9月12日(日)実施) 第5問。問題文は本試験の問題にもとづいています。解答・解説・論点の整理は資格試験対策.netの独自コンテンツです。最終更新 。この問題の誤りを報告する