会計処理の正誤(新株予約権・自己株式・会計上の変更・修繕費・引当金・株式交付費)
これは建設業経理士1級 財務諸表 第29回(2021年9月12日(日)実施) 第3問(配点 16点)の問題です。論点は「純資産・持分・株主資本等変動計算書」(重要度A・解答の形はA/B(第39 回から A/B+修正箇所+修正内容の記号))。採点すると、解き方 8 手順・引っかけの指摘が読めます。
財務会計に関するわが国の基本的な考え方に照らして、以下の会計処理のうち、認められるものには「A」、認められないものには「B」を解答用紙の所定の欄に記入しなさい。
1.かねて発行していた新株予約権について、権利が行使されずに権利行使期限が到来したので、純資産の部に計上されていた、新株予約権の発行に伴う払込金額を資本金に振り替えた。
2.決算において財務諸表を作成するにあたり、当期に取得した自己株式の取得原価を貸借対照表の純資産の部の株主資本から控除した。なお、自己株式の取得に要した付随費用は取得原価に含めず、損益計算書に計上した。
3.機械装置の減価償却方法を、正当な理由により、定額法から定率法に変更した。減価償却方法の変更は会計方針の変更に該当するので、過去の財務諸表に遡って定率法を適用した。
4.当期になって機械の耐用年数が当初の見積りよりも 3年短いことが判明したので、償却不足額を当期に一括して償却した。
5.当期に実施した構築物の修繕のための支出額について、「もし、この修繕が行われなかったら次期の操業は不可能であった」との理由で、その半額を次期の費用として処理するために繰り延べた。
6.係争中の訴訟事件について勝訴できる可能性が大きいが、保守主義の観点から引当金を計上し、その繰入額を当期の損益計算書に計上した。
7.当社は、取引先A社の借入金について、担保を設定した上で債務保証をしている。当期になってA社の経営状況が著しく悪化し、今後、経営破綻に陥る可能性が高いと判断されたので、債務保証の総額から担保処分による回収可能額を控除した金額について債務保証損失引当金を計上し、その繰入額を当期の損益計算書に計上した。
8.当期に発生した新株の発行に要した支出を株式交付費として貸借対照表に計上し、3年で償却することとした。
解答欄
正解
| 1 | B |
|---|---|
| 2 | A |
| 3 | B |
| 4 | B |
| 5 | B |
| 6 | B |
| 7 | A |
| 8 | A |
解き方
- 1.B。権利が行使されずに失効した新株予約権は、株主との資本取引ではなく、払込金額の返還義務が消滅したものなので、新株予約権戻入益として当期の利益(特別利益)に計上する。資本金に振り替えるのは誤り。
- 2.A。自己株式は取得原価で純資産の部の株主資本から控除する。取得に要した付随費用は取得原価に含めず、支出時の費用(営業外費用)として損益計算書に計上する(自己株式等会計基準)。記述のとおり。
- 3.B。減価償却方法の変更は会計方針の変更に当たるが、会計上の見積りの変更と区別することが困難なものとして、遡及適用はせず、変更後の方法を期首の帳簿価額から将来にわたって適用する(プロスペクティブ)。過去の財務諸表に遡って定率法を適用するのは誤り。
- 4.B。耐用年数の見積りの変更は会計上の見積りの変更なので、変更時点の帳簿価額(要償却額)を残存耐用年数にわたって配分する。過去分の償却不足額を当期に一括償却するのは誤り(当初の見積りが誤謬でないかぎり遡及もしない)。
- 5.B。修繕費は支出した期の費用(収益的支出)であり、次期の操業に役立つという理由で繰り延べることはできない。繰延資産は限定列挙(創立費・開業費・株式交付費・社債発行費等・開発費)であり、修繕費は含まれない。
- 6.B。引当金は将来の費用・損失の発生の可能性が高い場合に計上する。勝訴の可能性が大きく損失の発生可能性が低い場合は、保守主義を理由にしても引当金を計上できない(過度の保守主義は真実性の原則に反する)。
- 7.A。主債務者の財政状態が著しく悪化して保証債務の履行の可能性が高くなったときは、保証債務額から担保処分等による回収見込額を控除した額を債務保証損失引当金として計上し、繰入額を当期の費用にする。引当金の 4要件(将来の費用・損失、当期以前の事象に起因、発生の可能性が高い、金額を合理的に見積れる)を満たすので認められる。
- 8.A。新株の発行に要した費用は株式交付費であり、原則は支出時の費用だが、繰延資産に計上して 3年以内に定額法で償却することも認められる。記述のとおり。
同じ論点の過去問
第29回の前後の問題
出典:一般財団法人 建設業振興基金が実施した建設業経理士1級 財務諸表 第29回(2021年9月12日(日)実施) 第3問。問題文は本試験の問題にもとづいています。解答・解説・論点の整理は資格試験対策.netの独自コンテンツです。最終更新 。この問題の誤りを報告する