基準操業度の選択(実現可能最大操業度・長期正常操業度・次期予定操業度)による予定配賦額と配賦差異
これは建設業経理士1級 原価計算 第38回(2026年3月8日(日)実施) 第3問(配点 18点)の問題です。論点は「工事間接費の予定配賦と配賦差異(予算差異・操業度差異・基準操業度)」(重要度A・解答の形は金額(+記号A/B)、第30回のみ配賦表)。採点すると、解き方 7 手順・引っかけの指摘が読めます。
S建材株式会社で保有するE機械は、民間工事の各現場で共通に使用されている。その発生原価と生産能力に関する次の<資料>に基づいて、下の設問に答えなさい。なお、計算の過程で端数が生じる場合、計算途中では四捨五入せず、最終数値の円未満を四捨五入すること。
問1 基準操業度として実現可能最大操業度を採用していた場合、当期の予定配賦額、予算差異および操業度差異を計算しなさい。なお、差異については、有利差異の場合は「A」、不利差異の場合は「B」を解答用紙の所定の欄に記入すること。(差異の記入については、以下の問も同様とする)
問2 基準操業度として長期正常操業度(5 年間)を採用していた場合、当期の予定配賦額および操業度差異を計算しなさい。
問3 基準操業度として次期予定操業度を採用していた場合、当期の予定配賦額および操業度差異を計算しなさい。
- 1.機械運転時間基準の予定配賦率を用いてE機械関係コストを配賦している。
- 2.E機械を 20 台保有している。
- 3.1 年間の作業可能日数は 275 日であり、1 日の 1 台当たりの機械運転時間は 8 時間であるが、1 台当たり年間 100 時間の機械整備等の不可避的な機械休止時間が生じる。
- 4.当社では公式法変動予算を採用している。実現可能最大操業度(実際的生産能力)におけるE機械関係コストの年間の変動費予算は 14,700,000 円、固定費予算は 21,000,000 円である。
- 5.各年度のE機械予定運転時間は次のとおりであった。なお、E機械の運転は、第 1 年度初頭から開始されており、当期は第 5 年度である。
| 第 1 年度 | 第 2 年度 | 第 3 年度 | 第 4 年度 | 第 5 年度 |
|---|---|---|---|---|
| 41,000 時間 | 41,500 時間 | 41,500 時間 | 38,500 時間 | 37,500 時間 |
- 6.当期のE機械実際運転時間は 40,500 時間、E機械関係コストの実際発生額は 35,335,000 円であった。なお、固定費から予算差異は生じなかった。
解答欄
正解
| 問1 予定配賦額 | 34,425,000 円 |
|---|---|
| 問1 予算差異 | 160,000 円 |
| 問1 予算差異の記号 | B |
| 問1 操業度差異 | 750,000 円 |
| 問1 操業度差異の記号 | B |
| 問2 予定配賦額 | 35,437,500 円 |
| 問2 操業度差異 | 262,500 円 |
| 問2 操業度差異の記号 | A |
| 問3 予定配賦額 | 36,855,000 円 |
| 問3 操業度差異 | 1,680,000 円 |
| 問3 操業度差異の記号 | A |
解き方
- 実現可能最大操業度(実際的生産能力)= 20 台 × (275 日 × 8 時間 - 100 時間) = 20 × 2,100 = 42,000 時間。公式法変動予算なので、変動費率 = 14,700,000 ÷ 42,000 = 350 円/時は基準操業度をどれにしても変わらない。変わるのは固定費率(21,000,000 ÷ 基準操業度)と、それに伴う操業度差異である。
- 問1(実現可能最大操業度 42,000 時間):固定費率 = 21,000,000 ÷ 42,000 = 500 円/時。予定配賦率 = 350 + 500 = 850 円/時。予定配賦額 = 850 × 40,500 = 34,425,000。
- 予算差異 = 実際操業度における予算許容額 - 実際発生額 = (350 × 40,500 + 21,000,000) - 35,335,000 = 35,175,000 - 35,335,000 = -160,000 → 160,000 の不利差異(B)。固定費から予算差異は生じていないので、すべて変動費の予算差異になる。
- 操業度差異 = 固定費率 × (実際操業度 - 基準操業度) = 500 × (40,500 - 42,000) = -750,000 → 750,000 の不利差異(B)。検算:予定配賦額 34,425,000 - 実際発生額 35,335,000 = -910,000 = -160,000 - 750,000。
- 問2(長期正常操業度):5 年間の予定運転時間の平均 = (41,000 + 41,500 + 41,500 + 38,500 + 37,500) ÷ 5 = 200,000 ÷ 5 = 40,000 時間。固定費率 = 21,000,000 ÷ 40,000 = 525 円/時。予定配賦率 = 350 + 525 = 875 円/時。予定配賦額 = 875 × 40,500 = 35,437,500。操業度差異 = 525 × (40,500 - 40,000) = 262,500 の有利差異(A)。
- 問3(次期予定操業度):当期は第 5 年度なので、当期の予定運転時間 37,500 時間が基準操業度になる。固定費率 = 21,000,000 ÷ 37,500 = 560 円/時。予定配賦率 = 350 + 560 = 910 円/時。予定配賦額 = 910 × 40,500 = 36,855,000。操業度差異 = 560 × (40,500 - 37,500) = 1,680,000 の有利差異(A)。
- 予算差異は問2・問3 でも 160,000 の不利差異で変わらない(予算許容額は基準操業度に依存しない)。基準操業度が小さいほど固定費率が高くなり、実際操業度がそれを上回れば操業度差異は有利になる。
引っかけ:実現可能最大操業度は 20 台 × 275 日 × 8 時間 = 44,000 時間から不可避的な休止時間 20 台 × 100 時間 = 2,000 時間を引く(理論的生産能力と混同しない)。変動費率 350 円/時は固定費予算とは別に求め、基準操業度を変えても変えない。次期予定操業度は「次期」という語につられて第 6 年度を探さず、当期(第 5 年度)の予定運転時間 37,500 時間を使う。操業度差異の符号は「実際 - 基準」で、実際操業度が基準を下回れば不利になる。
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→第38回の前後の問題
出典:一般財団法人 建設業振興基金が実施した建設業経理士1級 原価計算 第38回(2026年3月8日(日)実施) 第3問。問題文は本試験の問題にもとづいています。解答・解説・論点の整理は資格試験対策.netの独自コンテンツです。最終更新 。この問題の誤りを報告する