第38回 第5問 論点:完成工事原価報告書・工事原価計算表と未成工事支出金重要度 A配点 34点未着手

完成工事原価報告書の作成(先入先出法・すくい出し法・月給制オペレーター・役員報酬の等価係数配賦・重機械部門費の固定予算)

これは建設業経理士1級 原価計算 第38回(2026年3月8日(日)実施) 第5問(配点 34点)の問題です。論点は「完成工事原価報告書・工事原価計算表と未成工事支出金」(重要度A・解答の形は表+金額+差異(金額+記号A/B))。採点すると、解き方 14 手順・引っかけの指摘が読めます。

下の<資料>は、X建設工業株式会社(当会計期間:20×0 年 4 月 1 日〜20×1 年 3 月 31 日)における 20×0 年 7 月の工事原価計算関係資料である。次の設問に解答しなさい。月次で発生する原価差異は、そのまま翌月に繰り越す処理をしている。なお、計算の過程で端数が生じた場合は、計算途中では四捨五入せず、最終数値の円未満を四捨五入すること。

問1 当月の完成工事原価報告書を作成しなさい。ただし、収益の認識は工事完成基準を採用すること。

問2 当月末における未成工事支出金の勘定残高を計算しなさい。

問3 次の配賦差異について当月末の勘定残高を計算しなさい。なお、それらの差異については、借方残高の場合は「A」、貸方残高の場合は「B」を解答用紙の所定の欄に記入すること。 ① 重機械部門費予算差異 ② 重機械部門費操業度差異

  • 1.当月の工事の状況
工事番号着工竣工
501前月以前当月
602前月以前当月
701当月当月
702当月月末現在未成
  • 2.月初における前月繰越金額
  • (1) 月初未成工事原価の内訳(単位:円) (注)( )の数値は、当該費目の内書の金額である。
工事番号材料費労務費外注費(労務外注費)経費(人件費)合計
501121,50088,800134,000(97,500)89,400(63,400)433,700
60265,40070,20079,500(49,500)32,400(29,600)247,500
  • (2) 配賦差異の残高 重機械部門費予算差異 1,200 円(借方残高) 重機械部門費操業度差異 4,500 円(貸方残高)
  • 3.当月の材料費に関する資料
  • (1) 甲材料は常備材料で、材料元帳を作成して実際消費額を計算している。消費単価の計算について先入先出法を採用している。当月の受払いに関する資料は次のとおりである。
日付摘要数量(単位)単価(円)
7 月 1 日前月繰越3010,000
4 日購入7011,000
7 日602 工事で消費60
10 日購入6012,000
12 日701 工事で消費80
18 日戻り10
21 日購入7012,500
24 日702 工事で消費60
31 日月末在庫40
  • (注1)11 日に 10 日購入分につき、30,000 円の値引を受けた。
  • (注2)18 日の戻りは 12 日出庫分である。戻りは出庫の取り消しとして処理し、戻り材料は次回の出庫のとき最初に出庫させること。
  • (注3)棚卸減耗は発生しなかった。
  • (2) 乙材料は仮設工事用の資材で、工事原価への算入はすくい出し法により処理している。当月の工事別関係資料は次のとおりである。(単位:円)
工事番号501602701702
当月仮設資材投入額(注)39,00050,40043,600
仮設工事完了時評価額8,8009,50012,400(仮設工事未了)
  • (注)501 工事の仮設工事は前月までに完了し、その資材投入額は前月末の未成工事支出金に含まれている。
  • 4.当月の労務費に関する資料 当社では、重機械のオペレータとして月給制の従業員を雇用している。基本給及び基本手当については、原則として工事作業に従事した日数によって実際発生額を配賦している。ただし、特定の工事に関することが判明している残業手当は、当該工事原価に算入する。当月の関係資料は次のとおりである。
  • (1) 支払賃金(基本給及び基本手当 対象期間 6 月 25 日〜7 月 24 日) 725,000 円
  • (2) 残業手当(602 工事 対象期間 7 月 25 日〜7 月 31 日) 52,000 円
  • (3) 前月末未払賃金計上額 110,500 円
  • (4) 当月末未払賃金要計上額(ただし残業手当を除く) 100,500 円
  • (5) 工事従事日数(単位:日)
工事番号501602701702合計
工事従事日数785222
  • 5.当月の外注費に関する資料 当社の外注工事には、資材購入や重機械の提供を含むもの(一般外注)と労務提供を主体とするもの(労務外注)がある。工事別の当月実際発生額は次のとおりである。(単位:円)
工事番号501602701702
一般外注162,000139,00073,50054,500
労務外注126,000117,00061,00047,000
  • (注)労務外注費は、月次の完成工事原価報告書の作成に当たっては、労務費に含めて記載することとしている。
  • 6.当月の経費に関する資料
  • (1) 直接経費の内訳は次のとおりである。(単位:円)
工事番号501602701702
動力用水光熱費10,7009,3006,6004,900
労務管理費8,5009,1005,3004,300
従業員給料手当32,10029,00018,80014,400
法定福利費5,5005,6003,9003,350
福利厚生費6,2006,1004,5004,600
事務用品費4,3003,7002,2002,900
計67,30062,80041,30034,450
  • (注)経費に含まれる人件費の計算において、退職金及び退職給付引当金繰入額は考慮しない。
  • (2) 役員であるA氏は一般管理業務に携わるとともに、施工管理技術者の資格で現場管理業務も兼務している。役員報酬のうち、担当した当該業務に係る分は、従事時間数により工事原価に算入している。また、工事原価と一般管理費の業務との間には等価係数を設定している。関係資料は次のとおりである。
  • (a) A氏の当月役員報酬額 707,000 円
  • (b) 施工管理業務の従事時間(単位:時間)
工事番号501602701702合計
従事時間2018121060
  • (c) 役員としての一般管理業務は 130 時間であった。
  • (d) 業務間の等価係数(業務 1 時間当たり)は次のとおりである。 施工管理 1.2 一般管理 1.0
  • (3) 工事に利用する重機械に関係する費用(重機械部門費)は、固定予算方式によって予定配賦している。当月の関係資料は次のとおりである。
  • (a) 固定予算(月間換算) 基準重機械運転時間 180 時間 その固定予算額 270,000 円
  • (b) 工事別の使用実績(単位:時間)
工事番号501602701702合計
従事時間66683515184
  • (c) 重機械部門費の当月実際発生額 278,000 円
  • (d) 重機械部門費はすべて人件費を含まない経費である。

解答欄

問1 完成工事原価報告書 自 20×0 年 7 月 1 日 至 20×0 年 7 月 31 日 X建設工業株式会社(単位:円)
科目金額
Ⅰ.材料費
Ⅱ.労務費
 (うち労務外注費)
Ⅲ.外注費
Ⅳ.経費
 (うち人件費)
完成工事原価
円
円
A=借方残高、B=貸方残高
円
A=借方残高、B=貸方残高

金額はカンマなしでも入力できます。

正解

問1 完成工事原価報告書 自 20×0 年 7 月 1 日 至 20×0 年 7 月 31 日 X建設工業株式会社(単位:円)
科目金額
Ⅰ.材料費1,660,600
Ⅱ.労務費1,312,000
 (うち労務外注費)451,000
Ⅲ.外注費441,000
Ⅳ.経費756,700
 (うち人件費)414,700
完成工事原価4,170,300
問2 当月末の未成工事支出金の勘定残高1,029,050 円
問3 ① 重機械部門費予算差異の月末残高9,200 円
問3 ① 記号A
問3 ② 重機械部門費操業度差異の月末残高10,500 円
問3 ② 記号B

解き方

  1. 工事別に原価を集計する。当月完成は 501・602・701 の 3 件、702 は月末現在未成。月初未成工事原価(501・602)は外注費を一般外注費と労務外注費(内書)に分けておく。501:一般外注費 134,000 - 97,500 = 36,500。602:79,500 - 49,500 = 30,000。
  2. 甲材料(先入先出法):10 日購入分は 11 日に値引を受けているので単価を (12,000 × 60 - 30,000) ÷ 60 = 11,500 に修正する。7 日(602):10,000 × 30 + 11,000 × 30 = 630,000。12 日(701):11,000 × 40 + 11,500 × 40 = 900,000。18 日の戻り 10 単位は 12 日出庫分の取消しなので 11,500 × 10 = 115,000 を 701 から減らして 785,000。24 日(702):戻り分 11,500 × 10 + 11,500 × 20 + 12,500 × 30 = 720,000。月末在庫 12,500 × 40 = 500,000(検算:受入合計 2,635,000 = 出庫 2,135,000 + 在庫 500,000)。
  3. 乙材料(すくい出し法):投入時に投入額を工事原価とし、仮設工事完了時に評価額を控除する。501:0 - 8,800 = -8,800(投入額は前月末の未成工事支出金に含まれているので当月は評価額の控除だけ)。602:39,000 - 9,500 = 29,500。701:50,400 - 12,400 = 38,000。702:43,600(仮設工事未了のため控除なし)。
  4. 労務費(月給制):当月消費額 = 支払賃金 725,000 + 当月末未払 100,500 - 前月末未払 110,500 = 715,000。日当たり 715,000 ÷ 22 日 = 32,500。501:32,500 × 7 = 227,500。602:32,500 × 8 + 残業手当 52,000 = 312,000。701:32,500 × 5 = 162,500。702:32,500 × 2 = 65,000。
  5. 外注費:一般外注 162,000/139,000/73,500/54,500、労務外注 126,000/117,000/61,000/47,000。労務外注費は報告書上は労務費に含めて「うち労務外注費」として内書きする。
  6. 直接経費の人件費(従業員給料手当+法定福利費+福利厚生費):501 32,100 + 5,500 + 6,200 = 43,800。602 29,000 + 5,600 + 6,100 = 40,700。701 18,800 + 3,900 + 4,500 = 27,200。702 14,400 + 3,350 + 4,600 = 22,350。
  7. A氏の役員報酬:配賦率 = 707,000 ÷ (60 時間 × 1.2 + 130 時間 × 1.0) = 707,000 ÷ 202 = 3,500。施工管理 1 時間当たり 3,500 × 1.2 = 4,200。501:4,200 × 20 = 84,000。602:4,200 × 18 = 75,600。701:4,200 × 12 = 50,400。702:4,200 × 10 = 42,000(合計 252,000。一般管理業務分 3,500 × 130 = 455,000 は工事原価に含めない)。役員報酬の工事分は人件費に含める。
  8. 重機械部門費(固定予算・予定配賦):予定配賦率 = 270,000 ÷ 180 時間 = 1,500。501:1,500 × 66 = 99,000。602:1,500 × 68 = 102,000。701:1,500 × 35 = 52,500。702:1,500 × 15 = 22,500(合計 276,000。人件費を含まない)。
  9. 工事別の当月経費:501 67,300 + 84,000 + 99,000 = 250,300(うち人件費 43,800 + 84,000 = 127,800)。602 62,800 + 75,600 + 102,000 = 240,400(うち人件費 116,300)。701 41,300 + 50,400 + 52,500 = 144,200(うち人件費 77,600)。702 34,450 + 42,000 + 22,500 = 98,950(うち人件費 64,350)。
  10. 問1 完成工事原価報告書(501・602・701 を集計。月初未成工事原価を忘れない)。材料費:(121,500 - 8,800) + (65,400 + 630,000 + 29,500) + (785,000 + 38,000) = 112,700 + 724,900 + 823,000 = 1,660,600。労務費:(88,800 + 97,500 + 227,500 + 126,000) + (70,200 + 49,500 + 312,000 + 117,000) + (162,500 + 61,000) = 539,800 + 548,700 + 223,500 = 1,312,000。うち労務外注費:(97,500 + 126,000) + (49,500 + 117,000) + 61,000 = 451,000。
  11. 外注費:(36,500 + 162,000) + (30,000 + 139,000) + 73,500 = 198,500 + 169,000 + 73,500 = 441,000。経費:(89,400 + 250,300) + (32,400 + 240,400) + 144,200 = 339,700 + 272,800 + 144,200 = 756,700。うち人件費:(63,400 + 127,800) + (29,600 + 116,300) + 77,600 = 191,200 + 145,900 + 77,600 = 414,700。完成工事原価 = 1,660,600 + 1,312,000 + 441,000 + 756,700 = 4,170,300(工事別:501 1,190,700、602 1,715,400、701 1,264,200)。
  12. 問2:月末現在未成の 702 工事の原価が未成工事支出金の残高になる。702 は当月着工なので月初残高はない。材料費 720,000 + 43,600 = 763,600、労務費 65,000 + 47,000 = 112,000、外注費 54,500、経費 98,950 → 1,029,050。
  13. 問3 ①予算差異:固定予算方式なので月間予算額と実際発生額の差額。270,000 - 278,000 = -8,000(借方差異)。月末残高 = 1,200(前月末・借方)+ 8,000 = 9,200 の借方残高(A)。
  14. 問3 ②操業度差異:予定配賦率 × (実際操業度 - 基準操業度) = 1,500 × (184 - 180) = 6,000(貸方差異)。月末残高 = 4,500(前月末・貸方)+ 6,000 = 10,500 の貸方残高(B)。(検算:予定配賦額 276,000 - 実際 278,000 = -2,000 = -8,000 + 6,000)
引っかけ:10 日購入分の値引は単価を 11,500 に下げてから払い出す。18 日の戻りは 12 日出庫分(11,500 の単価)の取消しで、24 日の出庫で最初に払い出す。501 の乙材料は当月投入 0 でも完了時評価額 8,800 を控除するので材料費がマイナスになる。労務費は支払賃金をそのまま使わず未払の期間調整(+100,500 - 110,500)をし、残業手当 52,000 は 602 に直課する。役員報酬は等価係数 1.2 を掛けた時間で配賦率を求め、工事分だけを人件費に含める。重機械部門費は人件費に含めない。当月着工・当月完成の 701 を未成と取り違えない。問3 は当月の差異だけでなく前月末残高と通算した勘定残高を答え、予算差異は前月末も当月も借方なので加算になる。

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