商品有高帳(日商簿記3級)
商品有高帳は、商品の種類ごとに、受入・払出・残高を数量・単価・金額で記録する補助簿です。金額はすべて原価(仕入れたときの値段)で記入します。3級の第2問では、先入先出法か移動平均法で商品有高帳に記入し、売上原価・売上総利益・月末の残高(次月繰越)を答える問題が出ます。
要点
- 商品有高帳の欄は、受入(仕入れて増えた分)・払出(売って減った分)・残高の3つで、それぞれに数量・単価・金額を書きます。
- 売上の行でも、払出欄に書くのは原価です。売価(売った値段)は商品有高帳には書きません。
- 仕入れたときに当社が負担した引取運賃などの付随費用は、仕入原価に含めて受入の単価を計算します。
- 払出単価の決め方は、先入先出法と移動平均法の2つが3級の範囲です。どちらを使うかは問題文で指示されます。
- 1か月の売上原価は、売上の行の払出欄の金額の合計です。売上総利益 = 売上高 − 売上原価。
- 月末は、残高を払出欄に「次月繰越」と書いて締め切り、受入欄と払出欄の合計を一致させます。翌月の最初に受入欄と残高欄へ「前月繰越」と書きます。
先入先出法と移動平均法
| 方法 | 払出単価と残高の書き方 |
|---|---|
| 先入先出法 | 先に受け入れた商品から先に払い出したものとして、古い単価から使う。単価の違う商品が残っているときは、残高を単価ごとに分けて書く |
| 移動平均法 | 受け入れるたびに平均単価 =(残高の金額 + 受入の金額)÷(残高の数量 + 受入の数量)を出し直し、払出はその単価で計算する。残高は平均単価で1行にまとめる |
記入のパターン
| 場面 | 記入する欄 | 単価 |
|---|---|---|
| 前月繰越 | 受入欄・残高欄 | 前月末の残高の単価 |
| 仕入れた(引取運賃は当社負担) | 受入欄・残高欄 | (仕入代金 + 引取運賃)÷ 数量 |
| 売り上げた | 払出欄・残高欄 | 原価(先入先出法なら古い順、移動平均法なら平均単価) |
| 月末の締切 | 払出欄に次月繰越、受入欄と払出欄の合計 | 残高の単価 |
本来の商品有高帳は、日付・摘要と、受入・払出・残高のそれぞれの数量・単価・金額の11列です。このページの答えの表は、スマートフォンでも読めるように、1行に1つの欄(受入・払出・残高のどれか)を書き、日付と摘要、数量と単価をそれぞれ1つの列にまとめています。先入先出法で単価の違う商品が2つあるときは、本来の帳簿と同じく2行に分けて書きます(欄の列が空いている行は、上の行と同じ欄の続きです)。
例題
例題1〜3と例題5は、次の商品Aの5月の資料を使います。
| 日付 | 取引 | 数量 | 単価 |
|---|---|---|---|
| 5/1 | 前月繰越 | 100個 | 原価 @¥500 |
| 5/8 | 仕入 | 200個 | 原価 @¥530 |
| 5/12 | 売上 | 240個 | 売価 @¥800 |
| 5/20 | 仕入 | 90個 | 原価 @¥540 |
| 5/26 | 売上 | 120個 | 売価 @¥820 |
例題1
上の商品Aの資料にもとづいて、先入先出法により商品有高帳に5月26日までの記入をしなさい。
答えと解説
| 欄 | 摘要 | 数量・単価 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 受入 | 5/1 前月繰越 | 100個 @500 | 50,000 |
| 残高 | 100個 @500 | 50,000 | |
| 受入 | 5/8 仕入 | 200個 @530 | 106,000 |
| 残高 | 100個 @500 | 50,000 | |
| 200個 @530 | 106,000 | ||
| 払出 | 5/12 売上 | 100個 @500 | 50,000 |
| 140個 @530 | 74,200 | ||
| 残高 | 60個 @530 | 31,800 | |
| 受入 | 5/20 仕入 | 90個 @540 | 48,600 |
| 残高 | 60個 @530 | 31,800 | |
| 90個 @540 | 48,600 | ||
| 払出 | 5/26 売上 | 60個 @530 | 31,800 |
| 60個 @540 | 32,400 | ||
| 残高 | 30個 @540 | 16,200 |
- 5/8:@¥530 の200個を受け入れる。単価が違うので、残高は @¥500 の100個と @¥530 の200個に分けて書く。
- 5/12:240個のうち、先に受け入れた @¥500 の100個を全部払い出し、残りの140個を @¥530 から払い出す。払出は ¥50,000 + ¥74,200 = ¥124,200。残高は @¥530 の60個で ¥31,800。
- 5/20:@¥540 の90個を受け入れ、残高は @¥530 の60個と @¥540 の90個。
- 5/26:120個のうち @¥530 の60個を先に払い出し、残りの60個を @¥540 から払い出す。払出は ¥31,800 + ¥32,400 = ¥64,200。残高は @¥540 の30個で ¥16,200。
ひっかけ:売上の行の払出欄に売価(@¥800)を書かない。商品有高帳は原価で記入する。
例題2
上の商品Aの資料にもとづいて、移動平均法により商品有高帳に5月26日までの記入をしなさい。
答えと解説
| 欄 | 摘要 | 数量・単価 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 受入 | 5/1 前月繰越 | 100個 @500 | 50,000 |
| 残高 | 100個 @500 | 50,000 | |
| 受入 | 5/8 仕入 | 200個 @530 | 106,000 |
| 残高 | 300個 @520 | 156,000 | |
| 払出 | 5/12 売上 | 240個 @520 | 124,800 |
| 残高 | 60個 @520 | 31,200 | |
| 受入 | 5/20 仕入 | 90個 @540 | 48,600 |
| 残高 | 150個 @532 | 79,800 | |
| 払出 | 5/26 売上 | 120個 @532 | 63,840 |
| 残高 | 30個 @532 | 15,960 |
- 5/8:平均単価は(¥50,000 + ¥106,000)÷(100個 + 200個)= ¥156,000 ÷ 300個 = @¥520。
- 5/12:240個 × @¥520 = ¥124,800 を払い出す。残高は60個 × @¥520 = ¥31,200。
- 5/20:平均単価は(¥31,200 + ¥48,600)÷(60個 + 90個)= ¥79,800 ÷ 150個 = @¥532。
- 5/26:120個 × @¥532 = ¥63,840 を払い出す。残高は30個 × @¥532 = ¥15,960。
ひっかけ:平均単価は、仕入れた単価どうしの平均((530 + 540) ÷ 2 など)ではない。残高と受入の金額の合計を数量の合計で割る。
例題3
上の商品Aの資料にもとづいて、5月の売上高・売上原価・売上総利益と、5月末の商品の残高を、先入先出法と移動平均法のそれぞれで求めなさい。
答えと解説
| 項目 | 先入先出法 | 移動平均法 |
|---|---|---|
| 売上高 | 290,400 | 290,400 |
| 売上原価 | 188,400 | 188,640 |
| 売上総利益 | 102,000 | 101,760 |
| 月末の残高 | 16,200 | 15,960 |
- 売上高は売価で計算し、方法によって変わらない。240個 × @¥800 + 120個 × @¥820 = ¥192,000 + ¥98,400 = ¥290,400。
- 売上原価は、売上の行の払出欄の合計。先入先出法は ¥124,200 + ¥64,200 = ¥188,400(例題1)、移動平均法は ¥124,800 + ¥63,840 = ¥188,640(例題2)。
- 売上総利益 = 売上高 − 売上原価。先入先出法は ¥290,400 − ¥188,400 = ¥102,000、移動平均法は ¥290,400 − ¥188,640 = ¥101,760。
- 確かめ:月初の残高と当月の仕入の合計 ¥50,000 + ¥106,000 + ¥48,600 = ¥204,600 は、売上原価と月末の残高の合計と一致する(¥188,400 + ¥16,200、¥188,640 + ¥15,960)。
ひっかけ:売上高を商品有高帳の払出欄から求めない。払出欄は原価なので、売上高は売価 × 数量で計算する。
| 日付 | 取引 | 数量 | 単価 |
|---|---|---|---|
| 9/1 | 前月繰越 | 50個 | 原価 @¥1,200 |
| 9/6 | 仕入 | 100個 | 原価 @¥1,250* |
| 9/15 | 売上 | 120個 | 売価 @¥2,000 |
| 9/22 | 仕入 | 80個 | 原価 @¥1,300 |
| 9/28 | 売上 | 70個 | 売価 @¥2,100 |
* 9月6日の仕入では、商品の代金のほかに、当社負担の引取運賃 ¥3,000 を現金で支払った。
例題4
上の商品Bの資料にもとづいて、先入先出法により商品有高帳に記入し、9月30日に締め切りなさい(次月繰越は払出欄に書き、受入欄・払出欄の合計の行を書く)。あわせて、10月1日の前月繰越の記入もしなさい。
答えと解説
| 欄 | 摘要 | 数量・単価 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 受入 | 9/1 前月繰越 | 50個 @1,200 | 60,000 |
| 残高 | 50個 @1,200 | 60,000 | |
| 受入 | 9/6 仕入 | 100個 @1,280 | 128,000 |
| 残高 | 50個 @1,200 | 60,000 | |
| 100個 @1,280 | 128,000 | ||
| 払出 | 9/15 売上 | 50個 @1,200 | 60,000 |
| 70個 @1,280 | 89,600 | ||
| 残高 | 30個 @1,280 | 38,400 | |
| 受入 | 9/22 仕入 | 80個 @1,300 | 104,000 |
| 残高 | 30個 @1,280 | 38,400 | |
| 80個 @1,300 | 104,000 | ||
| 払出 | 9/28 売上 | 30個 @1,280 | 38,400 |
| 40個 @1,300 | 52,000 | ||
| 残高 | 40個 @1,300 | 52,000 | |
| 払出 | 9/30 次月繰越 | 40個 @1,300 | 52,000 |
| 受入 | 合計 | 230個 | 292,000 |
| 払出 | 合計 | 230個 | 292,000 |
| 受入 | 10/1 前月繰越 | 40個 @1,300 | 52,000 |
| 残高 | 40個 @1,300 | 52,000 |
- 9/6:引取運賃は仕入原価に含める。(100個 × @¥1,250 + ¥3,000)÷ 100個 = ¥128,000 ÷ 100個 = @¥1,280。
- 9/15:120個のうち @¥1,200 の50個を先に払い出し、残りの70個を @¥1,280 から払い出す。払出は ¥60,000 + ¥89,600 = ¥149,600。
- 9/28:70個のうち @¥1,280 の30個を先に払い出し、残りの40個を @¥1,300 から払い出す。払出は ¥38,400 + ¥52,000 = ¥90,400。
- 9/30:残高の40個 × @¥1,300 = ¥52,000 を払出欄に次月繰越として書く。受入欄の合計(50個 + 100個 + 80個 = 230個、¥292,000)と払出欄の合計(120個 + 70個 + 40個 = 230個、¥149,600 + ¥90,400 + ¥52,000 = ¥292,000)が一致することを確かめて締め切る。
- 参考:9月の売上原価は ¥149,600 + ¥90,400 = ¥240,000。売上高は120個 × @¥2,000 + 70個 × @¥2,100 = ¥387,000 なので、売上総利益は ¥147,000。
ひっかけ:引取運賃を別に払っていても、受入の単価は @¥1,250 ではなく運賃を含めた @¥1,280。次月繰越は残高欄ではなく払出欄に書く。
例題52027年4月から
例題1の商品Aについて、商品売買を販売のつど売上原価勘定に振り替える方法で記帳しているとする。5月12日に商品A 240個を売価 @¥800 で売り渡し、代金は掛けとした。この売上の仕訳を答えなさい。なお、払出単価は先入先出法で求める(例題1の商品有高帳の5月12日の払出欄)。
答えと解説
売上の計上
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売掛金 | 192,000 | 売上 | 192,000 |
売上原価への振替
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売上原価 | 124,200 | 商品 | 124,200 |
- 売上は売価で計上する。240個 × @¥800 = ¥192,000 を売掛金と売上に記入する。
- 販売のつど売上原価勘定に振り替える方法では、売った商品の原価を商品勘定(資産)から売上原価勘定(費用)へ振り替える。原価は商品有高帳の5月12日の払出欄の ¥124,200。
ひっかけ:売上原価に売価の ¥192,000 を使わない。原価は商品有高帳の払出欄の金額。
まちがえやすい点
- 商品有高帳は原価で記入します。売上の行の払出欄にも原価を書き、売価は書きません。
- 当社負担の引取運賃は受入の単価に含めます。売るときの発送費は商品有高帳に関係しません。
- 移動平均法の平均単価は、受け入れるたびに残高と受入の合計で出し直します。払い出しても平均単価は変わりません。
- 先入先出法で単価の違う商品が残っているときは、残高を単価ごとに分けて書きます。
- 次月繰越は払出欄に書き、受入欄と払出欄の数量・金額の合計を一致させて締め切ります。
- 仕入戻し(仕入れた商品の返品)は払出欄に仕入れたときの単価で、売上戻り(売った商品の返品)は受入欄に払い出したときの単価で記入するのが一般的です。問題文に指示があれば、それに従います。
2027年度の改定との関係
2027年4月1日以降の試験では、販売のつど売上原価勘定に振り替える方法が3級の範囲に入ります。この方法では、売るたびに商品有高帳の払出欄の原価を使って「売上原価/商品」の仕訳をします(例題5)。考え方は販売のつど売上原価に振り替える方法、三分法の仕訳は商品売買のページで確かめてください。改定の全体は2027年度の改定にまとめています。
よくある質問
商品有高帳の払出欄には売価と原価のどちらを書きますか?
原価を書きます。商品有高帳は商品をすべて原価で記録する帳簿で、売価は売上帳に記入します。
先入先出法と移動平均法で売上原価は変わりますか?
仕入単価が変わる月は変わります。売上高は同じなので、売上原価が変われば売上総利益も変わります。
移動平均法の平均単価はいつ計算しますか?
商品を受け入れるたびに計算し直します。(残高の金額 + 受入の金額)÷(残高の数量 + 受入の数量)で求め、次に受け入れるまでの払出はその単価で計算します。
出典:日本商工会議所「商工会議所簿記検定試験出題区分表」(2027年度 確定版)(2026-10-29 確認)
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