2期分の財務諸表による諸比率の算定(A〜J)と建設業の流動性分析(建設業特有の勘定科目への配慮と別法のある比率)の空欄補充

これは建設業経理士1級 財務分析 第36回(2025年3月9日(日)実施) 第5問(配点 30点)の問題です。論点は「建設業特有の流動性比率(未成工事収支比率・立替工事高比率・運転資本保有月数・必要運転資金)」(重要度A・解答の形は問1:別添資料から10比率(A〜J)を算定(2点×10)。問2:分析文の空欄10個を用語・数値群から選ぶ(1点×10))。採点すると、解き方 15 手順・引っかけの指摘が読めます。

A建設株式会社の第35期(決算日:20×5年3月31日)及び第36期(決算日:20×6年3月31日)の財務諸表並びにその関連データは<別添資料>のとおりであった。次の設問に解答しなさい。

問1 第36期について、次の諸比率(A〜J)を算定しなさい。期中平均値を使用することが望ましい数値については、そのような処置をすること。また、Hの完成工事高増減率については、プラスの場合は「A」を、マイナスの場合は「B」を解答用紙の所定の欄に記入し、数値欄にその符号は付けないこと。なお、解答に際しての端数処理については、解答用紙の指定のとおりとする。

A 自己資本事業利益率 B 有利子負債月商倍率 C 完成工事高キャッシュ・フロー率 D 付加価値率 E 設備投資効率 F 資本集約度 G 受取勘定回転率 H 完成工事高増減率 I 金利負担能力 J 配当性向

問2 同社の財務諸表とその関連データを参照しながら、次の文章の【 】に入れるべき最も適当な用語・数値を下記の<用語・数値群>の中から選び、その記号(ア〜ヘ)で解答しなさい。期中平均値を使用することが望ましい数値については、そのような処置をし、小数点第3位を四捨五入している。

建設業における流動性に関する分析では、建設業独特の勘定科目に対して特別な配慮を必要とする。別法がある比率としては、流動比率の他に【1】比率や【2】比率があるが、この二つの比率において数値が【3】方が望ましい比率は、【1】比率である。また、これら三種類の比率のいずれの比率にも用いられている建設業特有の勘定科目が、【4】である。工事に関係する固有の流動性については、【5】比率が有効である。この比率は、現在業務進行中の工事に関する立替状況を分析するものである。一方、すでに完成・引き渡した工事をも含めた工事関連の状況を分析するのが【6】比率である。この比率の分母と分子の両方に含まれる勘定科目が【7】であり、一般にはこの比率の数値は【3】方が望ましくないといえる。

第36期における、【4】を除いて計算した【1】比率は、【8】%である。第36期の【6】比率は、【9】%で第35期の数値と比べると【10】。

  • <用語・数値群>
  • ア 未成工事収支 イ 損益分岐点 ウ 未成工事支出金 エ 大きい オ 未成工事受入金 カ 小さい キ 当座 ク 自己資本
  • コ 負債 サ 流動負債 シ 立替工事高 ス 固定 セ 完成工事未収入金 ソ 固定長期適合 タ 固定負債 チ 完成工事高
  • ト 48.49 ナ 50.31 ニ 54.71 ネ 55.16 ノ 106.08 ハ 112.39 フ 119.02 ヘ 119.06
<別添資料>貸借対照表(資産の部)(単位:千円)第35期 20×5年3月31日現在第36期 20×6年3月31日現在
Ⅰ 流動資産 現金預金537,300565,300
 受取手形82,40043,740
 完成工事未収入金1,917,2002,104,000
 有価証券100―
 未成工事支出金69,500151,100
 材料貯蔵品6,6007,500
 立替金124,400194,200
 その他流動資産174,600133,650
 貸倒引当金△200△890
 [流動資産合計]2,911,9003,198,600
Ⅱ 固定資産 1.有形固定資産 建物638,400654,300
 構築物17,80017,900
 機械装置9,3009,400
 車両運搬具1,4001,500
 工具器具備品5,8005,200
 土地1,008,3001,007,400
 リース資産2,0002,400
 建設仮勘定12,30014,600
  有形固定資産合計1,695,3001,712,700
 2.無形固定資産 のれん4,0003,800
 その他無形資産58,10063,900
  無形固定資産合計62,10067,700
 3.投資その他の資産 投資有価証券238,100456,400
 関係会社株式160,200171,400
 繰延税金資産66,600―
 長期前払費用400300
 退職給付に係る資産25,80037,600
 その他投資資産125,100223,200
 貸倒引当金△700△3,700
  投資その他の資産合計615,500885,200
 [固定資産合計]2,372,9002,665,600
資産合計5,284,8005,864,200
貸借対照表(負債・純資産の部)(単位:千円)第35期 20×5年3月31日現在第36期 20×6年3月31日現在
Ⅰ 流動負債 支払手形39,20037,400
 工事未払金563,200581,600
 短期借入金592,400499,300
 未払金26,00074,200
 未払法人税等19,10034,700
 未成工事受入金172,400278,100
 預り金644,300696,700
 完成工事補償引当金16,60021,900
 工事損失引当金79,20043,800
 その他流動負債272,500289,100
 [流動負債合計]2,424,9002,556,800
Ⅱ 固定負債 社債910,000910,000
 長期借入金―175,000
 繰延税金負債―12,200
 退職給付引当金60,70060,500
 その他固定負債83,10099,800
 [固定負債合計]1,053,8001,257,500
 負債合計3,478,7003,814,300
Ⅰ 株主資本 1.資本金245,000245,000
 2.資本剰余金 資本準備金208,000208,000
  資本剰余金合計208,000208,000
 3.利益剰余金 利益準備金58,80058,800
 その他利益剰余金1,823,0001,942,400
  利益剰余金合計1,881,8002,001,200
 4.自己株式△573,400△573,400
 [株主資本合計]1,761,4001,880,800
Ⅱ 評価・換算差額等 その他有価証券評価差額金44,700169,100
 [評価・換算差額等合計]44,700169,100
 純資産合計1,806,1002,049,900
負債純資産合計5,284,8005,864,200
  • 〔貸借対照表の付記事項〕
  • 1.流動資産中の貸倒引当金は、受取手形と完成工事未収入金に対して設定されたものである。
  • 2.その他流動資産は営業活動に伴うものであるが、当座の支払能力を有するものではない。
  • 3.投資その他の資産は、すべて営業活動には直接関係していない資産である。
  • 4.引当金に該当する項目は、貸借対照表に明記したもの以外にはない。
  • 5.第36期において有利子負債に該当する項目として、その他流動負債の中にコマーシャル・ペーパー 20,000 千円が含まれている。
  • 6.第36期において繰越利益剰余金を原資として実施した配当の額は 36,000 千円である。
損益計算書(単位:千円)第35期 自20×4年4月1日 至20×5年3月31日第36期 自20×5年4月1日 至20×6年3月31日
Ⅰ 完成工事高3,397,6004,016,400
Ⅱ 完成工事原価3,060,4003,608,500
 完成工事総利益337,200407,900
Ⅲ 販売費及び一般管理費211,100219,600
 営業利益126,100188,300
Ⅳ 営業外収益 受取利息9002,700
 受取配当金5,7006,000
 その他営業外収益8,37013,400
 営業外収益合計14,97022,100
Ⅴ 営業外費用 支払利息7,1007,960
 社債利息300300
 支払手数料190220
 その他営業外費用1,6906,080
 営業外費用合計9,28014,560
 経常利益131,790195,840
Ⅵ 特別利益9,4508,080
Ⅶ 特別損失5,26014,670
 税引前当期純利益135,980189,250
 法人税、住民税及び事業税41,90039,900
 法人税等調整額△3,43023,500
 法人税等合計38,47063,400
 当期純利益97,510125,850
  • 〔損益計算書の付記事項〕
  • 1.第36期における有形固定資産の減価償却費及び無形固定資産の償却費の合計額は 5,400 千円である。
  • 2.第36期におけるその他営業外費用には、他人資本に付される利息 200 千円が含まれている。
キャッシュ・フロー計算書(要約)(単位:千円)第35期第36期
Ⅰ 営業活動によるキャッシュ・フロー347,500320,400
Ⅱ 投資活動によるキャッシュ・フロー△274,500△418,200
Ⅲ 財務活動によるキャッシュ・フロー△23,700125,800
Ⅳ 現金及び現金同等物の増加・減少額49,30028,000
Ⅴ 現金及び現金同等物の期首残高488,000537,300
Ⅵ 現金及び現金同等物の期末残高537,300565,300
完成工事原価報告書(単位:千円)第35期第36期
Ⅰ 材料費734,500866,100
Ⅱ 労務費306,100360,900
 (うち労務外注費)(306,100)(360,900)
Ⅲ 外注費1,683,2002,092,900
Ⅳ 経費336,600288,600
 完成工事原価3,060,4003,608,500
各期末時点の総職員数第35期第36期
総職員数88 人90 人

解答欄 主要比率表(算式)を別タブで開く

%
小数点第3位を四捨五入し、第2位まで記入
月
小数点第3位を四捨五入し、第2位まで記入
%
小数点第3位を四捨五入し、第2位まで記入
%
小数点第3位を四捨五入し、第2位まで記入
%
小数点第3位を四捨五入し、第2位まで記入
千円
千円未満を切り捨て
回
小数点第3位を四捨五入し、第2位まで記入
%
小数点第3位を四捨五入し、第2位まで記入。符号は付けない
A=プラス、B=マイナス
倍
小数点第3位を四捨五入し、第2位まで記入
%
小数点第3位を四捨五入し、第2位まで記入

金額はカンマなしでも入力できます。

正解

問1 A 自己資本事業利益率10.60 %
問1 B 有利子負債月商倍率4.79 月
問1 C 完成工事高キャッシュ・フロー率2.29 %
問1 D 付加価値率17.34 %
問1 E 設備投資効率41.20 %
問1 F 資本集約度62,634 千円
問1 G 受取勘定回転率1.94 回
問1 H 完成工事高増減率18.21 %
問1 H 完成工事高増減率の記号A
問1 I 金利負担能力23.29 倍
問1 J 配当性向28.61 %
問2 空欄1キ
問2 空欄2サ
問2 空欄3エ
問2 空欄4オ
問2 空欄5ア
問2 空欄6シ
問2 空欄7ウ
問2 空欄8フ
問2 空欄9ト
問2 空欄10カ

解き方

  1. 期中平均を使うのは、貸借対照表の残高(自己資本・有形固定資産・総資本・総職員数・受取勘定)を損益計算書のフロー(完成工事高・利益・付加価値)と対比させる比率。有利子負債月商倍率は期末の有利子負債を月商で割る比率なので第36期末残高で計算する。
  2. A 自己資本事業利益率=事業利益÷自己資本(※)×100。事業利益=経常利益+支払利息(他人資本利子)で、支払利息=借入金利息 7,960+社債利息 300+その他営業外費用に含まれる他人資本に付される利息 200(付記事項2)=8,460。事業利益=195,840+8,460=204,300。自己資本=純資産合計、期中平均=(1,806,100+2,049,900)÷2=1,928,000。204,300÷1,928,000×100=10.596… → 10.60%。
  3. B 有利子負債月商倍率=有利子負債÷(完成工事高÷12)。有利子負債=短期借入金 499,300+長期借入金 175,000+社債 910,000+コマーシャル・ペーパー 20,000(付記事項5)=1,604,300。月商=4,016,400÷12=334,700。1,604,300÷334,700=4.793… → 4.79 月。
  4. C 完成工事高キャッシュ・フロー率=純キャッシュ・フロー÷完成工事高×100。純キャッシュ・フロー=当期純利益(税引後)±法人税等調整額+当期減価償却実施額+引当金増減額−剰余金の配当の額。引当金は貸倒引当金(流動・固定)・完成工事補償引当金・工事損失引当金・退職給付引当金で、第35期末 200+700+16,600+79,200+60,700=157,400、第36期末 890+3,700+21,900+43,800+60,500=130,790、増減額=△26,610。純キャッシュ・フロー=125,850+23,500+5,400−26,610−36,000=92,140。92,140÷4,016,400×100=2.294… → 2.29%。
  5. D 付加価値率=(完成工事高−(材料費+労務外注費+外注費))÷完成工事高×100。労務費 360,900 は全額が労務外注費なので外注費として控除する。付加価値=4,016,400−(866,100+360,900+2,092,900)=4,016,400−3,319,900=696,500。696,500÷4,016,400×100=17.341… → 17.34%。
  6. E 設備投資効率=付加価値÷(有形固定資産−建設仮勘定)(※)×100。第35期末 1,695,300−12,300=1,683,000、第36期末 1,712,700−14,600=1,698,100、期中平均=1,690,550。696,500÷1,690,550×100=41.199… → 41.20%。
  7. F 資本集約度=総資本(※)÷総職員数(※)={(5,284,800+5,864,200)÷2}÷{(88+90)÷2}=5,574,500÷89=62,634.8… → 62,634 千円(千円未満切り捨て)。
  8. G 受取勘定回転率=完成工事高÷(受取手形+完成工事未収入金)(※)。第35期末 82,400+1,917,200=1,999,600、第36期末 43,740+2,104,000=2,147,740、期中平均=2,073,670。4,016,400÷2,073,670=1.936… → 1.94 回。
  9. H 完成工事高増減率=(当期完成工事高−前期完成工事高)÷前期完成工事高×100=(4,016,400−3,397,600)÷3,397,600×100=618,800÷3,397,600×100=18.212… → 18.21%、プラスなので記号はA。
  10. I 金利負担能力=(営業利益+受取利息及び配当金)÷支払利息=(188,300+2,700+6,000)÷8,460=197,000÷8,460=23.286… → 23.29 倍。支払利息はAと同じく社債利息と付記事項2の 200 を含めた 8,460。
  11. J 配当性向=配当金÷当期純利益×100=36,000÷125,850×100=28.605… → 28.61%。
  12. 問2【1】〜【4】 建設業特有の勘定科目(未成工事支出金・未成工事受入金)に配慮した別法がある比率は、流動比率のほか当座(キ)比率と流動負債(サ)比率。当座比率は大きい(エ)方が望ましく、流動負債比率は小さい方が望ましい。流動比率・当座比率は分母から、流動負債比率は分子から未成工事受入金(オ)を控除するので、3つの比率のいずれにも用いられる建設業特有の科目は未成工事受入金。
  13. 問2【5】〜【7】 業務進行中の工事の立替状況を見るのが未成工事収支(ア)比率=未成工事受入金÷未成工事支出金×100。完成・引き渡した工事も含めた工事関連の立替状況を見るのが立替工事高(シ)比率=(受取手形+完成工事未収入金+未成工事支出金−未成工事受入金)÷(完成工事高+未成工事支出金)×100で、分母・分子の両方に含まれる科目は未成工事支出金(ウ)。立替工事高比率は立替金の割合を示すので大きい方が望ましくない。
  14. 問2【8】 未成工事受入金を除いて計算した当座比率=当座資産÷(流動負債−未成工事受入金)×100。当座資産=現金預金 565,300+受取手形 43,740+完成工事未収入金 2,104,000+有価証券 0−貸倒引当金 890(付記事項1)=2,712,150。分母=2,556,800−278,100=2,278,700。2,712,150÷2,278,700×100=119.022… → 119.02%(フ)。
  15. 問2【9】【10】 第36期の立替工事高比率=(43,740+2,104,000+151,100−278,100)÷(4,016,400+151,100)×100=2,020,740÷4,167,500×100=48.488… → 48.49%(ト)。第35期=(82,400+1,917,200+69,500−172,400)÷(3,397,600+69,500)×100=1,896,700÷3,467,100×100=54.706… → 54.71%(ニ)なので、第36期の数値は小さい(カ)。立替工事高比率は期末の状態を示す比率なので期中平均は使わない。
引っかけ:AとIの支払利息には社債利息 300 と付記事項2の 200 を含め、支払手数料 220 は含めない。Bの有利子負債には付記事項5のコマーシャル・ペーパー 20,000 を加える。Cの引当金は投資その他の資産の貸倒引当金(700/3,700)と工事損失引当金の減少(△35,400)を落としやすく、法人税等調整額 23,500 は費用計上されているので加算する。Dは労務費全額が労務外注費なので控除に含める。問2【8】の当座資産は貸倒引当金を控除するので「ヘ 119.06」(控除しない値)ではない。「ノ 106.08」は流動負債合計で割った当座比率(別法)、「ネ 55.16」は未成工事受入金を引かない立替工事高比率、「ナ 50.31」は分母に未成工事支出金を加えない値で、いずれもひっかけ。

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出典:一般財団法人 建設業振興基金が実施した建設業経理士1級 財務分析 第36回(2025年3月9日(日)実施) 第5問。問題文は本試験の問題にもとづいています。解答・解説・論点の整理は資格試験対策.netの独自コンテンツです。最終更新 。この問題の誤りを報告する