2期分の財務諸表による諸比率の算定(A〜J)と建設業特有の流動性比率・滞留月数分析の空欄補充
これは建設業経理士1級 財務分析 第31回(2022年9月11日(日)実施) 第5問(配点 30点)の問題です。論点は「建設業特有の流動性比率(未成工事収支比率・立替工事高比率・運転資本保有月数・必要運転資金)」(重要度A・解答の形は問1:別添資料から10比率(A〜J)を算定(2点×10)。問2:分析文の空欄10個を用語・数値群から選ぶ(1点×10))。採点すると、解き方 14 手順・引っかけの指摘が読めます。
A建設株式会社の第30期(決算日:20×5年3月31日)及び第31期(決算日:20×6年3月31日)の財務諸表並びにその関連データは<別添資料>のとおりであった。次の設問に解答しなさい。
問1 第31期について、次の諸比率(A〜J)を算定しなさい。期中平均値を使用することが望ましい数値については、そのような処置をすること。また、Fの総資本増減率がプラスの場合は「A」、マイナスの場合は「B」を解答用紙の所定の欄に記入しなさい。なお、解答に際しての端数処理については、解答用紙の指定のとおりとする。
A 総資本事業利益率 B 未成工事収支比率 C 固定比率 D 受取勘定回転率 E 設備投資効率 F 総資本増減率 G 完成工事高キャッシュ・フロー率 H 配当性向 I 自己資本比率 J 資本集約度
問2 同社の財務諸表とその関連データを参照しながら、次に示す文の【 】の中に入れるべき最も適当な用語・数値を下記の<用語・数値群>の中から選び、その記号(ア〜ヨ)で解答しなさい。期中平均値を使用することが望ましい数値については、そのような処置をし、小数点第3位を四捨五入している。
流動性比率には様々な基本比率や関連比率が存在する。その中で、建設業固有の計算式がある比率としては、当座比率の他に【1】や【2】がある。これら三種類の比率のいずれの比率にも用いられている勘定科目が【3】である。通常、この勘定科目を使用する銀行家比率ともよばれる【1】より、【3】等を用いない【1】のほうが【4】数値となっている。また、この三種類の比率の中で、【3】を分子に用いるものが【2】である。建設業では他産業と比較して、この数値は【5】ことが特徴である。流動性に関する分析には、他にも資産滞留月数分析がある。その中で、滞留月数をより厳密に算出する場合に、分母に完成工事高ではなく、【6】を用いるべき指標が【7】滞留月数である。このときの【6】を用いた第31期における【7】滞留月数は【8】月である。なお、分子に加算及び減算項目のある指標が【9】滞留月数であり、第31期における【9】滞留月数は、【10】月である。
- <用語・数値群>
- ア 未成工事収支比率 イ 棚卸資産 ウ 未成工事受入金 エ 立替工事高比率 オ 流動比率 カ 受取勘定 キ 完成工事未収入金 ク 必要運転資金
- コ 未成工事支出金 サ 自己資本 シ 当座資産 ス 流動負債比率 セ 完成工事原価 ソ 総資本 タ 高い チ 低い
- ト 同じ ナ 工事未払金 ニ 支払手形 ネ 0.18 ノ 0.19 ハ 0.20 フ 0.22 ヘ 0.25
- ホ 2.32 ム 2.62 モ 2.99 ヤ 3.23 ヨ 3.35
| <別添資料>貸借対照表(資産の部)(単位:千円) | 第30期 20×5年3月31日現在 | 第31期 20×6年3月31日現在 |
|---|---|---|
| Ⅰ 流動資産 現金預金 | 751,600 | 713,400 |
| 受取手形 | 823,400 | 841,500 |
| 完成工事未収入金 | 1,104,200 | 1,182,300 |
| 有価証券 | 6,300 | 6,000 |
| 未成工事支出金 | 78,600 | 64,500 |
| 材料貯蔵品 | 1,700 | 1,600 |
| 未収入金 | 298,300 | 294,800 |
| その他流動資産 | 73,900 | 75,500 |
| 貸倒引当金 | △2,200 | △2,300 |
| [流動資産合計] | 3,135,800 | 3,177,300 |
| Ⅱ 固定資産 1.有形固定資産 建物 | 84,200 | 92,300 |
| 構築物 | 13,100 | 13,400 |
| 機械装置 | 48,300 | 49,200 |
| 車両運搬具 | 11,300 | 11,500 |
| 工具器具備品 | 44,900 | 45,200 |
| 土地 | 147,900 | 151,100 |
| 建設仮勘定 | 3,200 | 3,800 |
| 有形固定資産合計 | 352,900 | 366,500 |
| 2.無形固定資産 ソフトウェア | 400 | 500 |
| その他無形資産 | 5,000 | 5,100 |
| 無形固定資産合計 | 5,400 | 5,600 |
| 3.投資その他の資産 投資有価証券 | 193,200 | 254,100 |
| 関係会社株式 | 35,600 | 36,800 |
| 長期貸付金 | 7,800 | 6,400 |
| 破産更生債権等 | 300 | 300 |
| 繰延税金資産 | 103,300 | 72,500 |
| その他投資資産 | 22,900 | 20,200 |
| 貸倒引当金 | △2,100 | △1,800 |
| 投資その他の資産合計 | 361,000 | 388,500 |
| [固定資産合計] | 719,300 | 760,600 |
| 資産合計 | 3,855,100 | 3,937,900 |
| 貸借対照表(負債・純資産の部)(単位:千円) | 第30期 20×5年3月31日現在 | 第31期 20×6年3月31日現在 |
|---|---|---|
| Ⅰ 流動負債 支払手形 | 234,100 | 214,100 |
| 工事未払金 | 731,000 | 631,400 |
| 電子記録債務 | 295,800 | 374,400 |
| 短期借入金 | 40,800 | 41,700 |
| 未払法人税等 | 30,900 | 38,400 |
| 未成工事受入金 | 199,300 | 119,300 |
| 預り金 | 294,900 | 346,200 |
| 完成工事補償引当金 | 4,200 | 4,700 |
| 工事損失引当金 | 4,700 | 1,600 |
| その他流動負債 | 179,400 | 134,300 |
| [流動負債合計] | 2,015,100 | 1,906,100 |
| Ⅱ 固定負債 長期借入金 | 81,900 | 77,300 |
| 退職給付引当金 | 162,400 | 166,300 |
| その他固定負債 | 112,300 | 18,500 |
| [固定負債合計] | 356,600 | 262,100 |
| 負債合計 | 2,371,700 | 2,168,200 |
| Ⅰ 株主資本 1.資本金 | 301,100 | 301,100 |
| 2.資本剰余金 資本準備金 | 251,600 | 251,600 |
| 資本剰余金合計 | 251,600 | 251,600 |
| 3.利益剰余金 利益準備金 | 5,600 | 5,600 |
| その他利益剰余金 | 918,600 | 1,173,500 |
| 利益剰余金合計 | 924,200 | 1,179,100 |
| 4.自己株式 | △4,500 | △4,500 |
| [株主資本合計] | 1,472,400 | 1,727,300 |
| Ⅱ 評価・換算差額等 その他有価証券評価差額金 | 11,000 | 42,400 |
| [評価・換算差額等合計] | 11,000 | 42,400 |
| 純資産合計 | 1,483,400 | 1,769,700 |
| 負債純資産合計 | 3,855,100 | 3,937,900 |
- 〔貸借対照表の付記事項〕
- 1.流動資産中の貸倒引当金は、受取手形と完成工事未収入金に対して設定されたものである。
- 2.その他流動資産は営業活動に伴うものであるが、当座の支払能力を有するものではない。
- 3.投資その他の資産は、すべて営業活動には直接関係していない資産である。
- 4.引当金及び有利子負債に該当する項目は、貸借対照表に明記したもの以外にはない。
- 5.第31期において繰越利益剰余金を原資として実施した配当の額は 66,000 千円である。
| 損益計算書(単位:千円) | 第30期 自20×4年4月1日 至20×5年3月31日 | 第31期 自20×5年4月1日 至20×6年3月31日 |
|---|---|---|
| Ⅰ 完成工事高 | 4,361,500 | 4,502,300 |
| Ⅱ 完成工事原価 | 3,906,500 | 4,021,500 |
| 完成工事総利益 | 455,000 | 480,800 |
| Ⅲ 販売費及び一般管理費 | 200,600 | 280,700 |
| 営業利益 | 254,400 | 200,100 |
| Ⅳ 営業外収益 受取利息 | 400 | 400 |
| 受取配当金 | 3,300 | 3,700 |
| その他営業外収益 | 3,200 | 4,900 |
| 営業外収益合計 | 6,900 | 9,000 |
| Ⅴ 営業外費用 支払利息 | 1,900 | 1,900 |
| 債権売却損 | 500 | 300 |
| 為替差損 | 200 | 100 |
| その他営業外費用 | 1,700 | 1,900 |
| 営業外費用合計 | 4,300 | 4,200 |
| 経常利益 | 257,000 | 204,900 |
| Ⅵ 特別利益 | 20,700 | 1,400 |
| Ⅶ 特別損失 | 7,200 | 24,500 |
| 税引前当期純利益 | 270,500 | 181,800 |
| 法人税、住民税及び事業税 | 61,800 | 66,300 |
| 法人税等調整額 | 14,400 | 15,400 |
| 法人税等合計 | 76,200 | 81,700 |
| 当期純利益 | 194,300 | 100,100 |
- 〔損益計算書の付記事項〕
- 1.第31期における有形固定資産の減価償却費及び無形固定資産の償却費の合計額は 20,800 千円である。
- 2.その他営業外費用には、他人資本に付される利息は含まれていない。
| キャッシュ・フロー計算書(要約)(単位:千円) | 第30期 | 第31期 |
|---|---|---|
| Ⅰ 営業活動によるキャッシュ・フロー | 3,500 | 66,000 |
| Ⅱ 投資活動によるキャッシュ・フロー | △22,900 | △43,100 |
| Ⅲ 財務活動によるキャッシュ・フロー | △53,600 | △61,100 |
| Ⅳ 現金及び現金同等物の増加・減少額 | △73,000 | △38,200 |
| Ⅴ 現金及び現金同等物の期首残高 | 824,600 | 751,600 |
| Ⅵ 現金及び現金同等物の期末残高 | 751,600 | 713,400 |
| 完成工事原価報告書(単位:千円) | 第30期 | 第31期 |
|---|---|---|
| Ⅰ 材料費 | 781,300 | 844,600 |
| Ⅱ 労務費 | 39,100 | 40,300 |
| (うち労務外注費) | (39,100) | (40,300) |
| Ⅲ 外注費 | 2,578,300 | 2,613,900 |
| Ⅳ 経費 | 507,800 | 522,700 |
| 完成工事原価 | 3,906,500 | 4,021,500 |
| 各期末時点の総職員数 | 第30期 | 第31期 |
|---|---|---|
| 総職員数 | 60 人 | 62 人 |
解答欄 主要比率表(算式)を別タブで開く
正解
| 問1 A 総資本事業利益率 | 5.31 % |
|---|---|
| 問1 B 未成工事収支比率 | 184.96 % |
| 問1 C 固定比率 | 42.98 % |
| 問1 D 受取勘定回転率 | 2.28 回 |
| 問1 E 設備投資効率 | 281.72 % |
| 問1 F 総資本増減率 | 2.15 % |
| 問1 F 総資本増減率の記号 | A |
| 問1 G 完成工事高キャッシュ・フロー率 | 1.59 % |
| 問1 H 配当性向 | 65.93 % |
| 問1 I 自己資本比率 | 44.94 % |
| 問1 J 資本集約度 | 63,877 千円 |
| 問2 空欄1 | オ |
| 問2 空欄2 | ア |
| 問2 空欄3 | ウ |
| 問2 空欄4 | チ |
| 問2 空欄5 | タ |
| 問2 空欄6 | セ |
| 問2 空欄7 | イ |
| 問2 空欄8 | ハ |
| 問2 空欄9 | ク |
| 問2 空欄10 | モ |
解き方
- 期中平均を使うのは、主要比率表で(※)が付く貸借対照表の残高を損益計算書のフロー(完成工事高・利益・付加価値)と対比させる比率(Aの総資本、Dの受取勘定、Eの有形固定資産、Jの総資本と総職員数)。B・C・Iのように期末の状態を示す比率と、Fの増減率は期末残高で計算する。総資本の平均=(3,855,100+3,937,900)÷2=3,896,500。
- A 総資本事業利益率=事業利益÷総資本(※)×100。事業利益=経常利益+支払利息=204,900+1,900=206,800(付記事項2のとおり、その他営業外費用に他人資本の利息は含まれない。債権売却損・為替差損は利息ではない)。206,800÷3,896,500×100=5.307… → 5.31%。
- B 未成工事収支比率=未成工事受入金÷未成工事支出金×100=119,300÷64,500×100=184.961… → 184.96%。
- C 固定比率=固定資産÷自己資本×100。自己資本=純資産合計。760,600÷1,769,700×100=42.979… → 42.98%。
- D 受取勘定回転率=完成工事高÷(受取手形+完成工事未収入金)(※)。第30期末 823,400+1,104,200=1,927,600、第31期末 841,500+1,182,300=2,023,800、平均 1,975,700。4,502,300÷1,975,700=2.278… → 2.28 回。
- E 設備投資効率=付加価値÷(有形固定資産−建設仮勘定)(※)×100。付加価値=完成工事高−(材料費+労務外注費+外注費)=4,502,300−(844,600+40,300+2,613,900)=1,003,500。有形固定資産−建設仮勘定は第30期末 352,900−3,200=349,700、第31期末 366,500−3,800=362,700、平均 356,200。1,003,500÷356,200×100=281.723… → 281.72%。
- F 総資本増減率=(当期末総資本−前期末総資本)÷前期末総資本×100=(3,937,900−3,855,100)÷3,855,100×100=82,800÷3,855,100×100=2.147… → 2.15%、プラスなので記号はA。
- G 完成工事高キャッシュ・フロー率=純キャッシュ・フロー÷完成工事高×100。純キャッシュ・フロー=当期純利益(税引後)±法人税等調整額+当期減価償却実施額+引当金増減額−剰余金の配当の額。引当金は貸倒引当金(流動 2,200→2,300、投資 2,100→1,800)・完成工事補償引当金(4,200→4,700)・工事損失引当金(4,700→1,600)・退職給付引当金(162,400→166,300)で、第30期末合計 175,600、第31期末合計 176,700、増減額+1,100。法人税等調整額 15,400 は費用として計上されているので加算する。純キャッシュ・フロー=100,100+15,400+20,800+1,100−66,000=71,400。71,400÷4,502,300×100=1.585… → 1.59%。
- H 配当性向=配当金÷当期純利益×100=66,000÷100,100×100=65.934… → 65.93%。配当金は付記事項5の 66,000。
- I 自己資本比率=自己資本÷総資本×100=1,769,700÷3,937,900×100=44.940… → 44.94%。
- J 資本集約度=総資本(※)÷総職員数(※)=3,896,500÷{(60+62)÷2}=3,896,500÷61=63,877.0… → 63,877 千円(千円未満切り捨て)。
- 問2(用語)建設業固有の計算式がある流動性比率は、当座比率のほかに流動比率(オ)と未成工事収支比率(ア)で、3つとも未成工事受入金(ウ)を使う。流動比率(建設業式)=(流動資産−未成工事支出金)÷(流動負債−未成工事受入金)×100 は第31期で 174.21%、未成工事受入金等を用いない一般的な流動比率(銀行家比率)=流動資産÷流動負債×100 は 166.69% なので、一般的な流動比率のほうが低い(チ)。未成工事受入金を分子に用いるのは未成工事収支比率(ア)で、前受金の多い建設業では他産業より高い(タ)のが特徴。
- 問2(棚卸資産滞留月数)滞留月数をより厳密に求めるとき、分母に完成工事高ではなく完成工事原価(セ)を用いるべき指標が棚卸資産(イ)滞留月数。棚卸資産=未成工事支出金 64,500+材料貯蔵品 1,600=66,100(第31期末)。66,100÷(4,021,500÷12)=66,100÷335,125=0.197… → 0.20 月(ハ)。
- 問2(必要運転資金滞留月数)分子に加算・減算項目があるのは必要運転資金(ク)滞留月数(必要運転資金月商倍率)。必要運転資金=受取手形+完成工事未収入金+未成工事支出金−支払手形−工事未払金−未成工事受入金=841,500+1,182,300+64,500−214,100−631,400−119,300=1,123,500。1,123,500÷(4,502,300÷12)=1,123,500÷375,191.6…=2.994… → 2.99 月(モ)。
同じ論点の過去問
第31回の前後の問題
出典:一般財団法人 建設業振興基金が実施した建設業経理士1級 財務分析 第31回(2022年9月11日(日)実施) 第5問。問題文は本試験の問題にもとづいています。解答・解説・論点の整理は資格試験対策.netの独自コンテンツです。最終更新 。この問題の誤りを報告する