第35回 第5問 論点:完成工事原価報告書・工事原価計算表と未成工事支出金重要度 A配点 34点未着手

完成工事原価報告書の作成(先入先出法と戻り・すくい出し法・予定賃率・役員報酬の等価係数配賦・運搬車両部門費の変動予算)

これは建設業経理士1級 原価計算 第35回(2024年9月8日(日)実施) 第5問(配点 34点)の問題です。論点は「完成工事原価報告書・工事原価計算表と未成工事支出金」(重要度A・解答の形は表+金額+差異(金額+記号A/B))。採点すると、解き方 14 手順・引っかけの指摘が読めます。

下記の<資料>は、X建設工業株式会社(当会計期間:20×1 年 4 月 1 日〜20×2 年 3 月 31 日)における 20×1 年 9 月の工事原価計算関係資料である。次の設問に解答しなさい。月次で発生する原価差異は、そのまま翌月に繰り越す処理をしている。なお、計算の過程で端数が生じた場合は、計算途中では四捨五入せず、最終数値の円未満を四捨五入すること。

問1 当月の完成工事原価報告書を作成しなさい。ただし、収益の認識は工事完成基準を採用すること。

問2 当月末における未成工事支出金の勘定残高を計算しなさい。

問3 次の配賦差異について、当月末の勘定残高を計算しなさい。なお、それらの差異については、借方残高の場合は「A」、貸方残高の場合は「B」を解答用紙の所定の欄に記入すること。 ① 運搬車両部門費予算差異 ② 運搬車両部門費操業度差異

  • 1.当月の工事の状況
工事番号着工竣工
05220×1 年 5 月20×1 年 9 月
07320×1 年 7 月20×1 年 9 月
09120×1 年 9 月(未完成)
09220×1 年 9 月20×1 年 9 月
  • 2.月初における前月繰越金額
  • (1) 月初未成工事原価の内訳(単位:円) (注)( )の数値は、当該費目の内書の金額である。
工事番号材料費労務費外注費経費(人件費)合計
052188,000126,300199,50049,200(29,900)563,000
07377,50046,60071,50030,500(14,400)226,100
  • (2) 配賦差異の残高 運搬車両部門費予算差異 2,200 円(貸方残高) 運搬車両部門費操業度差異 3,500 円(貸方残高)
  • 3.当月の材料費に関する資料
  • (1) 甲材料は常備材料で、材料元帳を作成して実際消費額を計算している。消費単価の計算については先入先出法を採用している。当月の受払いに関する資料は次のとおりである。
日付摘要数量(個)単価(円)
9 月 1 日前月繰越5010,000(先に購入)
3011,000(後から購入)
5 日購入10012,000
8 日073 工事へ払出し70
15 日091 工事へ払出し90
18 日戻り10
20 日購入10013,000
25 日092 工事へ払出し70
  • (注1)18 日の戻りは 8 日出庫分である。戻りは出庫の取り消しとして処理し、戻り材料は次回の出庫のとき最初に出庫させること。
  • (注2)棚卸減耗は発生しなかった。
  • (2) 乙材料は仮設工事用の資材で、工事原価への算入はすくい出し法により処理している。当月の工事別関係資料は次のとおりである。(単位:円)
工事番号052073091092
当月仮設資材投入額(注)45,50045,10040,800
仮設工事完了時評価額10,6009,500(仮設工事未了)26,600
  • (注)052 工事の仮設工事は前月までに完了し、その資材投入額は前月末の未成工事支出金に含まれている。
  • 4.当月の労務費に関する資料 当社では、L作業について常雇作業員による専門工事を実施している。工事原価の計算には予定賃率(1 時間当たり 2,500 円)を使用している。当月の実際作業時間は次のとおりである。(単位:時間)
工事番号052073091092合計
L作業時間20254514104
  • 5.当月の外注費に関する資料 当社の外注工事には、資材購入や重機械の提供を含むもの(一般外注)と労務提供を主体とするもの(労務外注)がある。工事別の当月実際発生額は次のとおりである。(単位:円)
工事番号052073091092合計
一般外注78,200101,000282,00088,000549,200
労務外注149,200209,800279,700155,000793,700
  • (注)労務外注費は、月次の完成工事原価報告書の作成に当たっては、そのまま外注費として計上する。
  • 6.当月の経費に関する資料
  • (1) 直接経費の内訳は次のとおりである。(単位:円)
工事番号052073091092合計
従業員給料手当65,800110,500106,70048,400331,400
労務管理費47,70088,80089,00041,200266,700
法定福利費7,30012,90016,5007,90044,600
福利厚生費7,70022,20030,9009,25070,050
雑費他20,90029,80044,50023,300118,500
計149,400264,200287,600130,050831,250
  • (注)経費に含まれる人件費の計算において、退職金および退職給付引当金繰入額は考慮しない。
  • (2) 役員であるQ氏は一般管理業務に携わるとともに、施工管理技術者の資格で現場管理業務も兼務している。役員報酬のうち、担当した当該業務に係る分は、従事時間数により工事原価に算入している。また、工事原価と一般管理費の業務との間には等価係数を設定している。関係資料は次のとおりである。
  • (a) Q氏の当月役員報酬額 745,800 円
  • (b) 施工管理業務の従事時間(単位:時間)
工事番号052073091092合計
従事時間30304525130
  • (c) 役員としての一般管理業務は 70 時間であった。
  • (d) 業務間の等価係数(業務 1 時間当たり)は次のとおりである。 施工管理 1.2 一般管理 1.0
  • (3) 当社の常雇作業員によるL作業に関係する経費を運搬車両部門費として、次の (a) の変動予算方式で計算する予定配賦率によって工事原価に算入している。関係資料は次のとおりである。
  • (a) 当会計期間について設定された変動予算の基準数値 基準運転時間 L労務作業 年間 1,200 時間 変動費率(1 時間当たり)400 円 固定費(年額)1,020,000 円
  • (b) 当月の運搬車両部門費の実際発生額は 132,500 円であった。
  • (c) 月次で許容される予算額の計算 ア.固定費 月割経費とする。固定費から予算差異は生じていない。 イ.変動費 実際時間に基づく予算額を計算する。
  • (d) 運搬車両部門費はすべて人件費を含まない経費である。

解答欄

問1 完成工事原価報告書 自 20×1 年 9 月 1 日 至 20×1 年 9 月 30 日 X建設工業株式会社(単位:円)
科目金額
Ⅰ.材料費
Ⅱ.労務費
Ⅲ.外注費
Ⅳ.経費
 (うち人件費)
完成工事原価
円
円
A=借方残高、B=貸方残高
円
A=借方残高、B=貸方残高

金額はカンマなしでも入力できます。

正解

問1 完成工事原価報告書 自 20×1 年 9 月 1 日 至 20×1 年 9 月 30 日 X建設工業株式会社(単位:円)
科目金額
Ⅰ.材料費1,785,100
Ⅱ.労務費320,400
Ⅲ.外注費1,052,200
Ⅳ.経費1,033,700
 (うち人件費)672,850
完成工事原価4,191,400
問2 当月末の未成工事支出金の勘定残高2,311,350 円
問3 ① 運搬車両部門費予算差異の月末残高3,700 円
問3 ① 記号A
問3 ② 運搬車両部門費操業度差異の月末残高6,900 円
問3 ② 記号B

解き方

  1. 工事別に原価を集計する。当月完成は 052・073・092 の 3 件、091 は月末現在未完成。052・073 には月初未成工事原価(材料費・労務費・外注費・経費と人件費の内書)があるので、完成分に合算する。
  2. 甲材料(先入先出法):8 日(073)70 個 = 10,000 × 50 + 11,000 × 20 = 720,000。15 日(091)90 個 = 11,000 × 10 + 12,000 × 80 = 1,070,000。18 日の戻り 10 個は 8 日出庫分の取消しで、8 日に最後に出庫した単価 11,000 の分なので 073 から 110,000 を減らして 610,000。25 日(092)70 個は戻り材料を最初に出庫する:11,000 × 10 + 12,000 × 20 + 13,000 × 40 = 870,000。月末在庫 13,000 × 60 = 780,000(検算:受入合計 3,330,000 = 出庫 2,550,000 + 在庫 780,000)。
  3. 乙材料(すくい出し法):投入額から仮設工事完了時の評価額を差し引いた額が工事原価。052:投入額は前月の未成工事支出金に含まれているので、当月は評価額 10,600 の控除だけで -10,600。073:45,500 - 9,500 = 36,000。091:45,100(仮設工事未了のため控除なし)。092:40,800 - 26,600 = 14,200。
  4. 労務費(予定賃率):2,500 × 実際作業時間。052:2,500 × 20 = 50,000。073:2,500 × 25 = 62,500。091:2,500 × 45 = 112,500。092:2,500 × 14 = 35,000。
  5. 外注費:労務外注費はそのまま外注費として計上するので、一般外注と労務外注を合計する。052:78,200 + 149,200 = 227,400。073:101,000 + 209,800 = 310,800。091:282,000 + 279,700 = 561,700。092:88,000 + 155,000 = 243,000。
  6. 直接経費の人件費(従業員給料手当 + 法定福利費 + 福利厚生費。労務管理費と雑費他は人件費に含めない):052 65,800 + 7,300 + 7,700 = 80,800。073 110,500 + 12,900 + 22,200 = 145,600。091 106,700 + 16,500 + 30,900 = 154,100。092 48,400 + 7,900 + 9,250 = 65,550。
  7. Q氏の役員報酬:等価係数を掛けた換算時間 = 130 × 1.2 + 70 × 1.0 = 226。換算時間当たり 745,800 ÷ 226 = 3,300。施工管理 1 時間当たり 3,300 × 1.2 = 3,960。052:3,960 × 30 = 118,800。073:118,800。091:3,960 × 45 = 178,200。092:3,960 × 25 = 99,000(工事原価分合計 514,800。一般管理業務分 231,000 は工事原価に含めない)。役員報酬の工事分は人件費に含める。
  8. 運搬車両部門費(変動予算・予定配賦):予定配賦率 = 400 + 1,020,000 ÷ 1,200 時間 = 400 + 850 = 1,250 円/時。052:1,250 × 20 = 25,000。073:1,250 × 25 = 31,250。091:1,250 × 45 = 56,250。092:1,250 × 14 = 17,500(合計 130,000。人件費を含まない)。
  9. 工事別の当月経費:052 149,400 + 118,800 + 25,000 = 293,200(うち人件費 80,800 + 118,800 = 199,600)。073 264,200 + 118,800 + 31,250 = 414,250(うち人件費 145,600 + 118,800 = 264,400)。091 287,600 + 178,200 + 56,250 = 522,050(うち人件費 154,100 + 178,200 = 332,300)。092 130,050 + 99,000 + 17,500 = 246,550(うち人件費 65,550 + 99,000 = 164,550)。
  10. 問1 完成工事原価報告書(052・073・092 を集計。月初未成工事原価を忘れない)。材料費:(188,000 - 10,600) + (77,500 + 610,000 + 36,000) + (870,000 + 14,200) = 177,400 + 723,500 + 884,200 = 1,785,100。労務費:(126,300 + 50,000) + (46,600 + 62,500) + 35,000 = 320,400。外注費:(199,500 + 227,400) + (71,500 + 310,800) + 243,000 = 1,052,200。
  11. 経費:(49,200 + 293,200) + (30,500 + 414,250) + 246,550 = 1,033,700。うち人件費:(29,900 + 199,600) + (14,400 + 264,400) + 164,550 = 672,850。完成工事原価 = 1,785,100 + 320,400 + 1,052,200 + 1,033,700 = 4,191,400(工事別:052 1,123,000、073 1,659,650、092 1,408,750)。
  12. 問2:月末現在未完成の 091 工事の原価が未成工事支出金の残高になる。091 は当月着工なので月初残高はない。材料費 1,070,000 + 45,100 = 1,115,100、労務費 112,500、外注費 561,700、経費 522,050 → 2,311,350。
  13. 問3 ①予算差異(変動予算方式):月次の許容予算額 = 変動費 400 × 実際 104 時間 + 固定費 1,020,000 ÷ 12 = 41,600 + 85,000 = 126,600。予算差異 = 126,600 - 実際 132,500 = -5,900(借方差異)。月末残高 = 2,200(前月末・貸方)- 5,900 = -3,700 → 3,700 の借方残高(A)。
  14. 問3 ②操業度差異 = 固定費率 × (実際操業度 - 基準操業度) = 850 × (104 - 100) = 3,400(貸方差異。予定配賦額 130,000 - 許容予算 126,600 でも同じ)。月末残高 = 3,500(前月末・貸方)+ 3,400 = 6,900 の貸方残高(B)。(検算:予定配賦額 130,000 - 実際 132,500 = -2,500 = -5,900 + 3,400)
引っかけ:18 日の戻りは 8 日出庫分のうち最後に払い出した単価 11,000 の分を取り消し、25 日の出庫で最初に払い出す。052 の乙材料は当月投入 0 でも完了時評価額 10,600 を控除するので材料費がマイナスになる。労務外注費は労務費ではなく外注費に含める(第39回などと指示が違う)。人件費は従業員給料手当・法定福利費・福利厚生費と役員報酬の工事分で、労務管理費は含めない。役員報酬は等価係数 1.2 を掛けた換算時間で配賦率を求める。問3 は当月の差異だけでなく前月末残高と通算した勘定残高を答え、変動予算方式なので予算差異は実際時間に基づく許容予算と実際発生額の差、操業度差異は固定費率 850 × 4 時間で求める。

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