第29回 第5問 論点:完成工事原価報告書・工事原価計算表と未成工事支出金重要度 A配点 36点未着手

完成工事原価報告書の作成(移動平均法・仕入先返品・すくい出し法・予定賃率・役員報酬の等価係数配賦・運搬車両部門費の変動予算)

これは建設業経理士1級 原価計算 第29回(2021年9月12日(日)実施) 第5問(配点 36点)の問題です。論点は「完成工事原価報告書・工事原価計算表と未成工事支出金」(重要度A・解答の形は表+金額+差異(金額+記号A/B))。採点すると、解き方 13 手順・引っかけの指摘が読めます。

下記の<資料>は、全日本建設工業株式会社(当会計期間:20×1 年 4 月 1 日〜20×2 年 3 月 31 日)における 20×1 年 9 月の工事原価計算関係資料である。次の設問に解答しなさい。月次で発生する原価差異は、そのまま翌月に繰り越す処理をしている。なお、計算の過程で端数が生じた場合は、計算途中では四捨五入せず、最終数値の円未満を四捨五入すること。

問1 当月の完成工事原価報告書を作成しなさい。ただし、収益の認識は工事完成基準によること。

問2 当月末における未成工事支出金の勘定残高を計算しなさい。

問3 次の配賦差異について、当月末の勘定残高を計算しなさい。なお、それらの差異については、借方残高の場合は「A」、貸方残高の場合は「B」を解答用紙の所定の欄に記入すること。 ① 運搬車両部門費予算差異 ② 運搬車両部門費操業度差異

  • 1.当月の工事の状況
工事番号着工竣工
10220×1 年 3 月20×1 年 9 月
10320×1 年 5 月20×1 年 9 月
10420×1 年 9 月(未完成)
10520×1 年 9 月20×1 年 9 月
  • 2.月初における前月繰越金額
  • (1) 月初未成工事原価の内訳(単位:円) (注)( )の数値は、当該費目の内書の金額である。
工事番号材料費労務費外注費経費(人件費)合計
102188,000113,500182,80050,100(36,300)534,400
10374,10044,40065,50025,500(12,200)209,500
  • (2) 配賦差異の残高 運搬車両部門費予算差異 ¥1,200(貸方残高) 運搬車両部門費操業度差異 ¥1,700(貸方残高)
  • 3.当月の材料費に関する資料
  • (1) 甲材料は常備材料で、材料元帳を作成して実際消費額を計算している。消費単価の計算について移動平均法を使用している。当月の受払いに関する資料は次のとおりである。
日付摘要数量(本)単価(円)
9 月 1 日前月繰越2517,000(先に購入)
1518,000(後から購入)
6 日購入2519,000
9 日105 工事へ払出し30
11 日仕入先への返品5
13 日購入3020,000
18 日102 工事へ払出し40
21 日購入2520,800
22 日戻り5
27 日104 工事へ払出し30
30 日月末在庫
  • (注1)11 日の返品は 6 日購入分である。通常の払出しと同様に処理する。仕入先への返品単価と材料元帳上の返品単価に差は生じなかった。
  • (注2)22 日の戻りは 18 日出庫分である。戻りは出庫の取り消しとして処理する。
  • (注3)棚卸減耗は発生しなかった。
  • (2) 乙材料は仮設工事用の資材で、工事原価への算入はすくい出し法により処理している。当月の工事別関係資料は次のとおりである。(単位:円)
工事番号102103104105
当月仮設資材投入額44,100(注)40,50041,400
仮設工事完了時評価額13,6009,880(仮設工事未了)28,000
  • (注)103 工事の仮設工事は前月までに完了し、その資材投入額は前月末の未成工事支出金に含まれている。
  • 4.当月の労務費に関する資料 当社では、Z作業について常雇作業員による専門工事を実施している。工事原価の計算には予定賃率(1 時間当たり ¥2,500)を使用している。9 月の実際作業時間は次のとおりである。(単位:時間)
工事番号102103104105合計
Z作業時間15234620104
  • 5.当月の外注費に関する資料 当社の外注工事には、資材購入や重機械の提供を含むもの(一般外注)と労務提供を主体とするもの(労務外注)がある。工事別の当月実際発生額は次のとおりである。(単位:円)
工事番号102103104105合計
一般外注77,900109,000281,00087,000554,900
労務外注178,200239,800293,000186,200897,200
  • (注)労務外注費は、月次の完成工事原価報告書の作成に当たっては、そのまま外注費として計上する。
  • 6.当月の経費に関する資料
  • (1) 直接経費の内訳は次のとおりである。(単位:円)
工事番号102103104105合計
従業員給料手当65,400118,200119,00046,500349,100
法定福利費6,50012,50013,7005,98038,680
労務管理費44,50086,10088,00038,400257,000
福利厚生費8,10020,50033,9007,98070,480
雑費他23,10031,30039,50023,300117,200
計147,600268,600294,100122,160832,460
  • (2) 役員であるS氏は一般管理業務に携わるとともに、施工管理技術者の資格で現場管理業務も兼務している。役員報酬のうち、担当した当該業務に係る分は、従事時間数により工事原価に算入している。また、工事原価と一般管理費の業務との間には等価係数を設定している。関係資料は次のとおりである。
  • (a) S氏の当月役員報酬額 ¥644,000
  • (b) 施工管理業務の従事時間(単位:時間)
工事番号102103104105合計
従事時間10205020100
  • (c) 役員としての一般管理業務は 80 時間であった。
  • (d) 業務間の等価係数(業務 1 時間当たり)は次のとおりである。 施工管理 1.5 一般管理 1.0
  • (3) 当社の常雇作業員によるZ作業に関係する経費を運搬車両部門費として、次の (a) の変動予算方式で計算する予定配賦率によって工事原価に算入している。関係資料は次のとおりである。
  • (a) 当会計期間について設定された変動予算の基準数値 基準運転時間(Z労務作業)年間 1,200 時間 変動費率(1 時間当たり)¥450 固定費(年額)¥1,020,000
  • (b) 当月の運搬車両部門費の実際発生額は ¥136,000 であった。
  • (c) 月次で許容される予算額の計算 ア.固定費 月割経費とする。固定費から予算差異は生じていない。 イ.変動費 実際時間に基づく予算額を計算する。
  • (d) 運搬車両部門費はすべて人件費を含まない経費である。

解答欄

問1 完成工事原価報告書 自 20×1 年 9 月 1 日 至 20×1 年 9 月 30 日 全日本建設工業株式会社(単位:円)
科目金額
Ⅰ.材料費
Ⅱ.労務費
Ⅲ.外注費
Ⅳ.経費
 (うち人件費)
完成工事原価
円
円
A=借方残高、B=貸方残高
円
A=借方残高、B=貸方残高

金額はカンマなしでも入力できます。

正解

問1 完成工事原価報告書 自 20×1 年 9 月 1 日 至 20×1 年 9 月 30 日 全日本建設工業株式会社(単位:円)
科目金額
Ⅰ.材料費1,501,120
Ⅱ.労務費302,900
Ⅲ.外注費1,126,400
Ⅳ.経費899,360
 (うち人件費)550,160
完成工事原価3,829,780
問2 当月末の未成工事支出金の勘定残高1,890,400 円
問3 ① 運搬車両部門費予算差異の月末残高3,000 円
問3 ① 記号A
問3 ② 運搬車両部門費操業度差異の月末残高5,100 円
問3 ② 記号B

解き方

  1. 当月完成は 102・103・105、未完成は 104。完成工事原価報告書には完成 3 工事の月初未成工事原価と当月発生原価を集計し、104 の分は未成工事支出金として残す。
  2. 甲材料(移動平均法):月初 25 × 17,000 + 15 × 18,000 = 695,000(40 本、平均 17,375)。6 日購入後 695,000 + 25 × 19,000 = 1,170,000 ÷ 65 本 = @18,000。9 日 105 工事へ 30 × 18,000 = 540,000(残 35 本 630,000)。11 日の返品は通常の払出しと同様に 5 × 18,000 = 90,000 を減らす(残 30 本 540,000)。13 日購入後 540,000 + 600,000 = 1,140,000 ÷ 60 本 = @19,000。18 日 102 工事へ 40 × 19,000 = 760,000(残 20 本 380,000)。
  3. 21 日購入後 380,000 + 25 × 20,800 = 900,000 ÷ 45 本 = @20,000。22 日の戻りは 18 日出庫の取り消しなので 102 工事の消費を 5 × 19,000 = 95,000 減らし(102 の消費は 35 本 665,000)、在庫は 45 本 900,000 + 95,000 = 50 本 995,000(@19,900)。27 日 104 工事へ 30 × 19,900 = 597,000。月末在庫 20 本 398,000。甲材料の消費額:102 665,000、104 597,000、105 540,000。
  4. 乙材料(すくい出し法):投入額から仮設工事完了時評価額を差し引く。102:44,100 - 13,600 = 30,500。103:投入額は前月の未成工事支出金に含まれているので、当月は評価額 9,880 を材料費からマイナスする。104:仮設工事未了なので 40,500 をそのまま算入。105:41,400 - 28,000 = 13,400。
  5. 当月材料費:102 665,000 + 30,500 = 695,500、103 -9,880、104 597,000 + 40,500 = 637,500、105 540,000 + 13,400 = 553,400。Ⅰ材料費 = 月初(188,000 + 74,100)+ 695,500 - 9,880 + 553,400 = 1,501,120。
  6. 労務費:予定賃率 2,500 × 実際作業時間。102 37,500、103 57,500、104 115,000、105 50,000。Ⅱ労務費 = 月初(113,500 + 44,400)+ 37,500 + 57,500 + 50,000 = 302,900。
  7. 外注費:労務外注費はそのまま外注費に含める。102 77,900 + 178,200 = 256,100、103 109,000 + 239,800 = 348,800、104 281,000 + 293,000 = 574,000、105 87,000 + 186,200 = 273,200。Ⅲ外注費 = 月初(182,800 + 65,500)+ 256,100 + 348,800 + 273,200 = 1,126,400。
  8. 役員報酬の工事原価算入額:等価係数を掛けた業務量は施工管理 100 × 1.5 = 150、一般管理 80 × 1.0 = 80。644,000 × 150 ÷ 230 = 420,000(従事 1 時間当たり 4,200)。102 42,000、103 84,000、104 210,000、105 84,000。これは人件費に含める。
  9. 運搬車両部門費の予定配賦率 =(450 × 1,200 + 1,020,000)÷ 1,200 = 1,300。配賦額 = 1,300 × Z作業時間:102 19,500、103 29,900、104 59,800、105 26,000(合計 135,200)。人件費を含まない経費。
  10. 当月経費:102 147,600 + 42,000 + 19,500 = 209,100、103 268,600 + 84,000 + 29,900 = 382,500、104 294,100 + 210,000 + 59,800 = 563,900、105 122,160 + 84,000 + 26,000 = 232,160。Ⅳ経費 = 月初(50,100 + 25,500)+ 209,100 + 382,500 + 232,160 = 899,360。
  11. うち人件費 = 従業員給料手当 + 法定福利費 + 福利厚生費 + 役員報酬算入額(労務管理費・雑費他は含めない)。102 65,400 + 6,500 + 8,100 + 42,000 = 122,000、103 118,200 + 12,500 + 20,500 + 84,000 = 235,200、105 46,500 + 5,980 + 7,980 + 84,000 = 144,460。月初(36,300 + 12,200)+ 122,000 + 235,200 + 144,460 = 550,160。
  12. 完成工事原価 = 1,501,120 + 302,900 + 1,126,400 + 899,360 = 3,829,780。問2 未成工事支出金 = 104 工事の当月原価 = 637,500 + 115,000 + 574,000 + 563,900 = 1,890,400。
  13. 問3 予算差異:実際時間に対する予算許容額 = 450 × 104 + 1,020,000 ÷ 12 = 46,800 + 85,000 = 131,800。131,800 - 実際 136,000 = -4,200(借方)。月初貸方残高 1,200 と相殺して借方 3,000(A)。操業度差異:予定配賦額 135,200 - 予算許容額 131,800 = +3,400(貸方)。固定費率 850 × (104 - 100) = 3,400 でも同じ。月初貸方残高 1,700 + 3,400 = 貸方 5,100(B)。
引っかけ:11 日の仕入先への返品は「通常の払出しと同様に処理」するので、返品時点の移動平均単価 18,000 で在庫から減らす(購入単価 19,000 ではない)。22 日の戻りは 18 日の出庫単価 19,000 で戻し、102 工事の消費を減らしたうえで在庫に加えて平均単価を計算し直す。103 工事の乙材料は当月投入がなく、完了時評価額 9,880 を材料費からマイナスする。役員報酬の工事原価算入額は人件費に含め、労務管理費は人件費に含めない。運搬車両部門費の月次予算は固定費を 12 で割った 85,000 に変動費 450 × 実際時間を加える。

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出典:一般財団法人 建設業振興基金が実施した建設業経理士1級 原価計算 第29回(2021年9月12日(日)実施) 第5問。問題文は本試験の問題にもとづいています。解答・解説・論点の整理は資格試験対策.netの独自コンテンツです。最終更新 。この問題の誤りを報告する